ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

Shine
日時: 2010/11/23 22:13
名前: 綾瀬 (ID: 84ALaHox)

どこかの王国を舞台にした
ミステリーとは名ばかりのファンタジーです。
趣味をつめこんでみました。

タイトルは「しね」ではありません。
J('ー`)し

・少し暴力的表現あると思います。
一応注意書きです。

Page:1



Re: Shine ( No.1 )
日時: 2010/11/23 22:34
名前: 綾瀬 (ID: 84ALaHox)

■1-1

 手の中に握り締めていた紙は、気づけばじっとりと湿っていた。
 城内はひどい有様だった。ほとんどが燃えている。燃えていない部分も赤く血塗れていて、美しかったかの城とはだれもわからないだろう。かつて人にあふれていた城には、多くの人間が倒れている。

(地獄だ……)

 見知った顔がむごい姿で死んでいる。最初は出会うたびに吐き気をもよおしていたが、今はどうとも思わない。慣れだろうか? ……しっかりしろ、ウェイリヒトン・シュナイデル。
 しかし足は思いに反してもう動いてくれなかった。へなへなと座り込んで、あたりを見回す。

(ああ、姫さま)

 二人の美しい姫が僕に笑いかけている。不思議な気持ちだった。今までのどんなときよりずっと心はおだやかだ。
──生き残ったところで、意味があるのかな。
 もう皆死んでしまった。生きていた者もあの義理も容赦もない非情な王国の兵士たちにつれていかれ、今頃どうなっているか。

 目をつぶると、まわりがとても静かなことに気がついた。パチパチと炎が燃える音と、時折何かが崩れ落ちていく音……。
 ふと不安にかられた。
 国に、世界にひとりぼっちで取り残されてしまったような気分だ。幼い頃に存分に味わったと思っていた感覚が、恐怖がよみがえる。生きることも死ぬことも、どうでも思っていた日々だ。

(……もう、あの頃とは違う)

 体を奮い立たせる。
 ただ世界を憎んでいただけの、非力な頃とは違うんだ。僕にはもう、力がある。国に一人だけならば、僕が皆を助けるしかないんだ。

 手の中にあった紙を広げる。皆を守ってあげて……。力ない字だった。王妃が絶命寸前に書いて僕にたくしたものだった。

(復讐してやる)

 僕が国を救うのだ。国の光となるのだ。


Page:1



この掲示板は過去ログ化されています。