ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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—私が小説を書き始めた理由—
日時: 2010/11/27 23:25
名前: 瑠依 (ID: NTBCloh9)

初めて投稿しますので、分からないこともあるかもしれませんがよろしくお願いします!

〜人物紹介〜

春川 雅

一人称 私 
極々平凡な少女だが、周りからはよく面白いだとか変だとか言われている。
校則違反するのが面倒なので校則通りに制服を着ている。真っ白なセーターや深い青色のセーターを持っていて白や青、黒などの色が好き。
愛称はミヤビちゃん。

先輩
一人称 僕 二人称 君
不思議な雰囲気を漂わせている。
心理的な病気を抱えていて、苦労している。
脳に障害を負ったのか、それとも心理的ショックによるものか謎だが人のことがとても忘れやすく、一週間もその人に出会わなければ忘れてしまう。

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Re: —私が小説を書き始めた理由— ( No.1 )
日時: 2010/11/27 23:26
名前: 瑠依 (ID: NTBCloh9)

朽ちて壊れた時計を手にし

僕らは時計塔の真上で

立ったまま誓いを交わす

くるり くるり 壊れた音が鳴り響く

壊れた筈の時計塔

かちり

何かのスイッチが入る音がした
朽ちて壊れた時計を手にし

僕らは時計塔の真上で

立ったまま誓いを交わす

くるり くるり 壊れた音が鳴り響く

壊れた筈の時計塔

かちり

何かのスイッチが入る音がした

Re: —私が小説を書き始めた理由— ( No.2 )
日時: 2010/11/27 23:31
名前: 瑠依 (ID: NTBCloh9)

「ミヤビちゃ〜ん」
気色悪い猫なで声に私の頬は引き攣った。

「はろーはろーではさようなら」
適当なことを言って即効で私は下駄箱からダッシュ!

「はい、ダウトー」
・・・無理でした。

「さて、今日も部活に行こうではないか」
文芸部の顧問である先生はにこりともせずにそんな台詞を言う。
「分かりました」
私は陰鬱な気分で部活への道を急いだ。
別に背後の人間がほーら走って!と囃し立てるからだという訳じゃない。
・・・実を言うとそうです。

廊下の掲示板には部活の宣伝のチラシが張られてあり、私は部活に入ったときのことを思い出し溜息をつく。
どうしてこうなったのか、それは誰にも分からない。

「失礼します」
こんこん、とノックをして扉を開ける。
埃っぽい空気に、私は入ってすぐ換気をするため窓を開けた。
窓を開けると、外には一本の立派な木が聳え立っていた。

色鮮やかな紅葉が、窓枠に降り立つ。

何気なくその紅葉を拾い太陽に当てて見てみる。
太陽の光が差し、明るく仄かに輝く紅葉は綺麗だった。

「えーっと、どなたでしたっけ?」
背後から言われる言葉に私はまたか・・・とげんなりした。

私が振り向くと、彼は困った顔でそれでもにこにこ笑っている。
所謂、苦笑というやつだ。

「一年の部員の春川雅です」
「ご、ごめんね!また僕忘れた?」
「気にしないでください、慣れましたから」

忘れもしない、桜が舞い散る季節。

『新入部員の人・・・かな?
ごめんね、僕記憶障害で・・・あんまり人のこと覚えてられないんだ』
後で先生から聞いた話だけど、どうやらこの先輩は過去に何かあったらしく、その時に脳に衝撃やら精神的ショックやらで人のことはとても忘れやすくなったらしい。

一週間会っていないと、その人のことは忘れてしまうようだった。

なのでGWや夏休みを超えると私は部活に行きにくくなる。

『・・・?』
知らない人へと向ける、その瞳が尚更怖くなる。

忘れられる、そのことがこんなにも辛いだなんて私は知らなかった。

Re: —私が小説を書き始めた理由— ( No.3 )
日時: 2010/11/27 23:31
名前: 瑠依 (ID: NTBCloh9)


「あの、何を描いているんですか?」
前々から思っていたことを尋ねる。
彼はこの部が何部かも忘れてしまい、しかも誰も指摘しないものだから彼は絵を描いている。何故文芸部にしたのか分からない。

そして、絵を描くことだけはずっと続けてる理由も。

「・・・さぁ?」
そういえば、どうしてこの部のことを忘れてしまったんだろう。
人に関することも、忘れやすいその人なら、と何時もなら片付けるのに

何だか私は気になった。

どうして、この人はとても寂しい瞳をしているんだろう。

ただ、一人きりで青い青い絵を描き続ける。
何度も、何度もその上から塗っていく。

油絵だからおかしくはないのかもしれないけど・・・でも、青一色のキャンバスは不思議だった。

「絵の中にはね」
ぽつり、と彼は呟いた。
私は聞き逃さないようにじっと耳を澄ませる。

「色んな想いが篭められてる。
それは様々な形で表現されていて、人によってそれは違う風に見える。
その時の気持ちかもしれないし、その人の価値観や感じ方にもよる。

絵は小説や言葉と同じなんだ。

どれだけ描き手が自分の伝えたいメッセージを篭めてもそれは人によって違う風に受け取られる。
それによって誤解や感動が生まれて、嬉しさや悲しさ、人々は色んなことを想うんだ。

人はね———絵の中に想いを篭めるんだよ」

彼は普段と違い、饒舌になる。其れと同時に筆も滑らかに滑らしていく。

「ミヤビちゃん」
少し興奮していた口調が、変わった。

「君には、何がみえる?」

それは突然だった。

静かな、落ち着いた声で、彼は私の心に飛び込んできた。

心に染み渡るような、穏やかで優しい声。

でも、私はこの絵を何て表現すればいいのかわからなかった。

どこまでも厚い青。
悲しさも寂しさも、全部閉じ込めてしまったような分厚い色。
瑞々しさなんて、無い。
ただそこに広がるのは純粋で、とても重くて、悲しい色。

・・・上手く言葉に出来ない。

だから、私ははぐらかす様に手に持っている紅葉を彼に見せた。

「ねぇ、先輩。もしその絵が完成したら———」
私は今までにないほど、友好的に言ったと思う。意外と私、人見知り激しいし。
というか先輩と話すと息苦しくなる。

真っ直ぐな瞳が私を射抜き、また私は息苦しさを覚えた。

それでも、私は何とか言おうとして口を開く。

あとは、自然と言葉は唇から滑り落ちた。

「———この紅葉みたいな、絵を描いてください」

果たして先輩はどう受け取るのか、それはどんな意味でも構わない。

私は、彼の描いた絵が見たい。

彼がこの言葉から浮かんだイメージを、描きたいものを

「そしたら、私も言いますよ」

私は、彼がこの絵以外を描くのをずっと見たかった。

深い悲しみと寂しさ、慟哭が彩られた絵じゃなくて

明るくて、情熱的で、燃え上がらなくてもいい、もしかしたら穏やかでひっそりと人の心を照らす火なのかもしれない。

願わくば、彼のような色を。

私は、見たい。


「・・・・それは、難しいね」
それは諸刃の刃だったかもしれない。
けれど私は無理矢理にでも約束させた。

「良いじゃないですか、たった一人の後輩のために」
彼は淡く微笑んだ。

やはり私が見たかった笑顔ではない、悲しげな微笑み。

胸が、苦しくなる。

申し訳無い気持ちになって、私は顔を俯かせた。

彼がその絵を延々と描き続けるのは如何してだろう。

さっきの言葉は、まるでその絵の中にひたすら悲しみを篭めているような口振りだった。

・・・少しでも、その痛みが癒せたらいいのに。

一度も、この人が嬉しそうに笑う姿を私は見たことがない。

すまなそうに、自分を卑下して困ったように笑って、負い目を感じているようだった。
『忘れ・・・るんだ。
どれだけ覚えていたくても、何時も忘れて・・・また傷つける』
顔を手で覆い尽くして泣いてしまいそうな声で言う彼が忘れられない。

同時に、何時も悲しそうにしか笑わない彼を見たくなかった。

胸が痛くて、彼を見たくなくなって、でも笑わせたいと思って。

「・・・・この絵が、終わることはないよ」
——彼は淡々と否定の言葉を吐き出したのだった。

悲しみも寂しさも恐怖も尽きず、そんな感情を出そうとしているように見えた。

「描いてください」
私は、気付けば強く言い放っていた。

「卒業記念に何でも良いので絵を下さい」
にっこりと愛想笑いを頑張って作ってみたものの、自分でも失敗した感じがする。何時も苦笑ばかりしているせいに違いない。

「・・・はは、僕が貰う立場じゃないの?」
苦笑して、誤魔化せる訳なんて無い。
何時かは、逃げられない日も立ち向かわないといけない日も来る。

だから、私は言うんだ。

それが分かった途端、清らなで透き通った水のようなものが心の中に流れ込んできた。

「じゃあ、その絵をください」
彼の顔がみるみる強張っていき、厳しい目付きになった。
凛とした瞳が、影を帯び冷たさを増す。

「・・・出来ないよ、そんなこと」
わかってるんだろう?というニュアンスが含まれた言葉。

「でも———癒すことは、出来ません」
彼の筆を持つ手が震える。何かを恐れるように。

「その絵は、貴方を癒すことも励ますことも何も出来ない。
だって、貴方はただ自分の悲しみをその絵の中に閉じ込めているだけでしょう!?そんな絵———誰も惹かれないっ!」

『何でこんな真っ青な色なんですか?』
『何でだろう・・・冷たくて、悲しいからかな』
ぼんやりとした瞳を思い出す。過去を思い出し、痛みに堪えるような顔。
覚えていない筈なのに、でも身体は怯えていた。

「きみに・・・君に何がわかるって言うんだ!?」
真っ赤に燃え広がる冷え冷えとした炎。
一瞬で真っ赤になった炎が、青くなる前に何か言わないと!

「そんなものわかりませんよ!」
逆ギレって言うんだっけこれ?というかこんな台詞言われるの漫画の世界だけだと思ってた。

「だって、貴方はまだ何も教えてくれない!
言葉を通じないと、届けてくれないと、誰も何も分からないです!

貴方の言葉を、私に言ってください。

伝えて・・ください・・・」

怖い。先輩が初めて怒る姿に、私の心はすっかり萎えていた。
怖くて、頭が真っ白になる。

彼は放心したかのように、その場に立っていた。

その瞳が私を見て、私は居ても居られなくなり扉を乱暴に開けて駆け出して行った。

何処でもいい、何処かに行きたい!

あの場所から離れたかった、先輩に何かを言われるのが怖かった。


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