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新・失われた皇女 前作参照1400突破!
日時: 2010/11/28 18:21
名前: アリア (ID: 4jdelmOD)

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こんにちは!

前に「失われた皇女」をかかせていただき(もう消えてしまっていますが)みなさまに熱い声援を何度もいただいたので(未完に終わってしまい申し訳ありませんでした)、今回は新しい物語を書きたいと思います!

長編になる予定ですので、よろしくお願いいたします!!

登場人物、目次は付け足していきます。

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Re: 新・失われた皇女 前作参照1400突破! ( No.1 )
日時: 2010/11/28 18:30
名前: アリア (ID: 4jdelmOD)


崩壊



僕は息を殺して終焉の唄が終わるのを待ち続けた。

体のいたるところから血がしたたり落ちてきて、すでに僕の服は真っ赤に染まっている。

君はもう僕を見ていない。憶えてもいない。

何よりも君の微笑が好きだったのに、せめて世界が終わる前に、君の笑顔を見たかった。

一言でいいから、僕の名を呼んでほしかったよ。

僕は最後の希望を信じて君を見つめた。

だけど、君は振り返ることはなかった。


  

  『大切ナ人ハダレ?』

Re: 新・失われた皇女 前作参照1400突破! ( No.2 )
日時: 2010/11/28 19:10
名前: アリア (ID: 4jdelmOD)


       [至上の愛を君に]



          *



「ハルト!!」

アリアナが嬉しさを隠そうともせず、小麦の金色の絨毯を走り進んできた。

僕は突進してくる彼女を必死にひきとめた。アリアナは僕の腕につかまると、ニコッと笑って輝く小麦の冠をそっと僕に手渡した。僕はためらいがちにその冠を受け取った。

「すごいでしょう。私が作ったの。それ全部ここに生えてた小麦よ」

彼女が無邪気につぶやく。
新鮮な小麦の匂いが、手元の冠からフッと伝わってきて僕は思わず笑い声を洩らした。

金色の輝き。
本当に王家の冠みたいだ。
だけど静かに微笑を浮かべているアリアナの方が、ずっと美しくて魅力的だった。アリアナは恥ずかしそうに僕の銀髪にふれ、そして自分の金髪に触れた。

「……どうして、ハルトの髪は銀色なの?私の国のひとたちはみんな金髪だわ」

「そうかな?銀髪だって珍しくないよ」

そうは言ったものの、銀髪なんてこの国に僕と父さんくらいしかいないことぐらい知っていた。僕が街を歩くとよそよそしく見つめられるが、今ではなれっこだ。

それに、僕の銀髪を好きでいてくれているアリアナがいれば僕は満足だった。生まれがこの国ではないことくらい全然気にならない。

アリアナは自分の金髪に指をからませながら口をとがらせた。

「私銀髪が良かったわ。金髪なんてありきたりだもの」

でも君にはアクアマリンの瞳があるじゃないか、と僕は笑った。アリアナは苦笑を浮かべる。
たしかに、王家にアクアマリンの瞳をもつ人なんていなかったし、もちろんこの国にも一人もいなかった。

皇女であるアリアナだけが例外だった。

「でも、この目のせいでよく周りの子達に「ニセモノ」ってからかわれるの。お父様もお母様も目の色がゴールドなんだもの。アクアマリンなのは私のせいじゃないのに」

さっきとはうってかわって、アリアナは悲しそうに首をうなだれた。僕は彼女の肩を軽くたたき、金髪に優しく触れた。するとアリアナは顔を上げた。

「ハルトって、私が悲しそうにしてるといつもこうしてくれるのね」

「君が悲しんでると僕もイヤなんだ」

「ほんとう?」アリアナは目を輝かせた。

そのとき、うしろから聞きなれた声が響いてきた。


「アリアナ様!ハルト!もうお帰りなさい!」

僕たちが振り向くと、そこには灰色のドレスをまとったマダム・プランリオが立っていた。彼女はいつもいかめしい顔をしているが、今日はもっとひどかった。

「マダム、私まだ遊びたいわ」

アリアナが不満げにつぶやくと、マダム・プランリオは額にしわをよせて低い声で返した。

「皇妃様のご命令です。ここは夜になるとオオカミも出ますからね」

「夜にね?」

アリアナは得意そうに言った。マダム・プラナリオは黙って僕たちに近づき、さっきよりも大きな声でいった。

「クマもでますからね!」

アリアナは耳をおさえてキャーと笑った。

「分かったわ!分かったってば!もう帰る」

マダム・プラナリオは満足そうにうなずくと、僕に目をやって厳しい視線を浴びせ、アリアナの小さな手をひいて歩き出した。
アリアナは僕に振り返りながら精一杯笑い、そして手をふってくれた。
僕もそれに振り替えし、笑みを投げた。

「明日もここにいてね!私絶対行くからね!」

アリアナが大きな声で叫ぶ。マダム・プラナリオの大柄な体が一瞬ピクついたが、彼女は振り返らずアリアナをほとんどひきずるように歩くスピードを上げた。

アリアナは僕が見えなくなるまでずっと手を振っていた。


僕はその様子をずっと眺め、彼女達がいなくなるとゆっくりと向き直り、反対側へ歩き出した。


いつも、彼女と別れたあと不思議な声が心の中で響く。

彼女と離れろ、と。
身分が違いすぎる、と。

だけどやっぱり僕はアリアナが好きだった。

心の隅では、いけないとは感じていたが。

それでも彼女と離れたくなかった。

Re: 新・失われた皇女 前作参照1400突破! ( No.3 )
日時: 2010/11/29 17:49
名前: アリア (ID: 4jdelmOD)


「ハルト。起きなさい。父さんはもう仕度しているわ。今日は皇妃様じきじきに呼ばれているのよ」

母さんの声が、扉の開く音と同時に響き、僕はあわてて飛び起きた。

そうだった!今日は僕と父さんふたりとも宮殿に呼ばれている。しかも、皇妃様に。何のようがあるのか全くわからないけれど父さんの騎兵隊長の出世の話ではないだろう。だって僕も呼ばれているのだから。

「母さん、制服でいいよね?」

「ええ。汚れてたから洗ったわ」

「ありがとう」

僕はそばにかけてある制服に腕をとおし(宮廷用の服だ)急いで髪をととのえ、階下へ降りていった。

「お早う」父さんはすでに朝食を食べ終えていた。僕の席にはパンがおいてあったので、僕は一気に食べ、水も飲まずに父さんの背中についていった。

「良かったな。おいていくしかないと思ったぞ」

「ごめんなさい」

僕はすまなさそうに会釈をすると、見送る母さんに手をふって家を出た。外はまだ少し暗い。皇妃様がなぜこの時間に呼んだのかも謎だ。

「はやくのれ」

すでに用意されていた馬車に急かされて乗ると、馬車は凍りついた道をすごい勢いで走り出した。胃の中の食べ物が揺れてすごく気持ち悪い。
父さんは金でできた時計に目をやりながら外に視線を這わせた。つられて僕も外に目をやる。

まだ家の灯火があまり見えない。
ということはやっぱりみんな寝ている。僕は思わずあくびが出てしまった。すると鋭く父さんが目を光らせた。

「皇妃様の前で絶対にしてはいけないぞ。なんにせよ、お前はアリアナ姫の世話係なんだからな」

「わかってます」

僕は小さくうなずき、やがて見えてきた美しいフィンステラウ城に目をやった。森にかこまれ、堂々とそびえたつこの城は他ではなかなかお目にかかれない荘厳なつくりだ。
歴史学ではこの国の富の象徴としてつくられたと聞いている。そんなところに住むアリアナもつくづくすごいなあと思う。


馬車が門前でとまり、僕と父さんはまだ霧の深い道を歩いて入城した。兵に案内されると(兵は父さんが騎兵隊長なのを即座に理解したらしく、とても緊張したているのが分かった)応接間のようなところで待つように言われた。
僕たちはとりあえずそばにあった椅子に腰掛け、コートを脱いだ。

しばらくするとノックの音がし、父さんが返事をしながらスッと立ち上がった。あわてて僕も立ち上がり、震える足を必死で隠した。

優雅な足取りで入ってきたのはもちろん皇妃様で、うすい紫のドレスに、ルビーとサファイヤをちりばめたネックレスを白いのどで輝かせていた。アリアナとおなじ金髪には白百合の冠がのっている。あまりの眩しさに僕は目を細めた。皇妃様がその様子を見て微笑を浮かべた。

「ごめんなさいね。今日は朝から隣国の大使をお迎えすることになっているのです」

父さんはあわてて言った。

「めっそうもございません。妃殿下。ところで今日は……」

「そうだわ!急にお呼びしてすまなかったわね」

皇妃様は両手をパチンと合わせて白い頬を紅潮させた。歴史上最も美しいとされる皇妃様はこんなときが一番きれいだ。僕は思わずどぎまぎした。

「ハルトに、もう少し大きくなったらアリアナの護衛隊、もしくは補佐大臣として活躍してもらいと思っているのです。これは、皇帝も乗り気ですの。もちろん娘も大喜びで宮廷人にも不満はないようなのです。だから、今のうちからハルトに専門の教師をつけて勉強させたいと思っているのですが……」

皇妃様は顔に微笑を浮かべながらサラリと告げた。父さんは信じられないとでもいうように目を見開き、手を震わせて皇妃様を見つめていた。
僕はうまく話が飲み込めず、ただとまどうだけだった。
しばらく沈黙が続いたが、それを破ったのは父さんだった。父さんは感激に声を震わせた。

「ハルトをでございますか?!」

「そうです。彼にしかこの仕事はやりこなせないと思うのです」

皇妃様は確信をもって言った。
ようやく僕にも話がつかめて、初めて知ったその光栄な言葉に僕は驚きをかくせなかった。


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