ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 機械騎士 ‐knight‐
- 日時: 2010/12/30 18:58
- 名前: right ◆TVSoYACRC2 (ID: zuIQnuvt)
- 参照: |ω・`)<どうでもいい豆知識。rightは女の子だよ!
↑黙れや…>(^ω^#)ピキピキ
ただのろぼっととにんげんのおはなし。
>>01プロローグ
>>02-04第一話[平和だった]
>>05-06第二話[異変]←準備中
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- Re: 機械騎士 ‐knight‐ ( No.1 )
- 日時: 2010/12/27 14:21
- 名前: right ◆TVSoYACRC2 (ID: zuIQnuvt)
- 参照: テスト
プロローグ
—ヘブン軍付属学習院、ナイト格納庫にて—
後頭部で一つに束ね、ポニーテールの様にした自分の嫌いな血の色に似ている、赤の髪が風になびく。
大量に掻いた汗で、黒と白を基調としたパイロットスーツの中が湿っていくのを感じた。そのせいでか、中に着ているランニングが肌にまるで全身タイツのようにぴったりとくっついている。少し気持ちが悪い感触だ。今すぐ脱ぎたいという欲求に襲われる。
「雨崎少尉、ありがとうございました」
変声期を終えていないまだ高い声が薄暗く、油臭い格納庫内に心地良く響く。
まだ十五、六歳ぐらいの幼さの残る顔立ちで、栗色の短い髪の、新人用の白を濁らせたような水色のパイロットスーツを着た少年が頭を下げていた。照れるような表情をして。
俺はその行動に僅かながらも戸惑った。
別に、礼をされるほどのことはしてはいない。むしろ、しないで欲しい。
人を殺すための技術を教えているようなものだから。
今、彼とやっていたことは『ナイト』同士の模擬戦だ。戦いながら、ナイトのコックピット内にあるモニターを通じて、敵を倒すコツや命取りになることなどを教えていた。
彼から誘いがあったのだ。
『敵からみんなを守る方法を教えてください』と。
このヘブン軍付属学習院の中でこんなにも熱血な生徒は見たことがなく、感心するほどの熱心さだったが、それが時に“迷い”にもなる。わかるんだ。俺は知っているんだ。あの時アイツがいたから。彼は、アイツに似ている。俺は彼にアイツの面影を映している。駄目だ。そんなんじゃ駄目だ。それじゃあアイツから“抜け出せない”じゃないか。
「覚えておいて欲しい」
「はい」
「迷ったらお終いだ。だから、迷うな」
少年は不思議そうに俺を見つめ、何かを言いたそうだった。
「あの」
その何かを言われる前に、俺はこの場を去った。
——ジャーナリスト兼日本の軍人として戦争に行き、この世を去った父のことを俺は思い出す。
十年前、父さんはあの明細柄の軍服を着て、俺の頭を撫でて、十五年間大切にしてきたという埃と砂でまみれた黒いカメラを俺に渡した。「もう帰って来ないかもしれないからな」と低く聞き取れない程小さな声で呟いて。今でもそれは大切に保管している。“あの時”の父さんを忘れないように——
「父さん」
どうやら俺は“殺す方”になるかもしれない。そんな気がするんだ。
——そして俺は天を仰ぐ。
空は、何も知らない無垢な少女のようで。
続く
- Re: 機械騎士 ‐knight‐ ( No.2 )
- 日時: 2010/12/27 14:26
- 名前: right ◆TVSoYACRC2 (ID: zuIQnuvt)
- 参照: 文字数オーバーとかwくそうorz
第一話[平和だった]①
—日本太平洋沿岸部・ヘブン軍所有港、横浜港—
軍に物資を送って来る、輸入船がいくつも停められている軍所有港。だいぶ昔に在った、東京ドームというドーム約二百個分は軽々収まるだろう広さ。広くても、此処には大型物資輸入船数隻と小さな建物ぐらいしかない、ほとんど何もない場所。周りは緑という緑の森で囲まれている。模擬戦闘には打って付けだ。
彼ら二人のナイトが夕日によって照らされ、港には大きな二つの影が写る。まるで人が二人、互いを見据えているよう。
『また、ですか。さっきのように負けたいんですねあなたは』
雨崎友幸は、第一前衛部隊隊長兼作戦考案副長の杉村ルーファ中佐と、本日二回目の模擬戦闘を行おうとしていた。一戦目は彼の圧勝。小さな油断を見抜かれ、あと一歩間違えたら死んでいたとこっぴどく彼に説教された。これぞまさしく油断大敵。
そして今はリベンジの二戦目。友幸は彼に勝てばいいのだ。勝つだけで。
コックピットの右上にあるモニターには彼の、凛とした姿が映っていた。釣り上がっている口角、怪しげに俺を見つめる海の底のような暗い青い瞳、がっちりとはしていないが、それなりに細い体。その体は、瞳と正反対の空のような明るい青と、草原の草に似た明るい緑に、雲の如く柔らかい白色のカラーで染められているパイロットスーツを身にまとっている。ヘルメットでよくわからないが、金色の髪が汗のせいだろうか、少しだけ濡れていた。
友幸も同じく汗を掻いている。あまり動かないものの、コックピット内は暑いのだ。体感温度は四十から四十二度ぐらいだろうと彼は予測する。尋常ではない暑さだがこれは当たり前のことで、ナイトに乗ってもう二年目の友幸は慣れてしまった。
今着ているパイロットスーツのせいもあるが、それは、ナイトを常に起動させている——つまりモーターが常に働いているということとなり、時間が経つにつれてモーターが熱を持ち始める。その熱が金属部分へ移って全身へ伝わって行き、コックピット内に及んできたということだ。
友幸は神経を研ぎ澄ませ、ゆっくり深呼吸をする。
——さっきの言葉、俺を挑発しているようにも聞こえた。できるだけ、無視をしておこう。
友幸は彼の言葉には模擬戦闘中、耳をあまり貸さないことにしている。杉村中佐は相手を言葉で惑わすことが得意だからだ。彼は戦闘向きではなく、心理戦と作戦考案、指示向き。しかしそれでも強い。さすが中佐という階級を取得している人間だ。一筋縄ではいかない。
友幸の戦闘用人型ナイト、ドラゴンナイトの血の色に近い赤色の頭部が、夕日によって黄金に輝く。どちらとも動こうとはしない。
彼のナイトの装備は、昔の西洋の騎士が持つようなフェヴァリア製の剣と盾、F(フェバリア)ソードとFガード。Sガードの内側には小型のコンバットナイフが装備されており、ナイトの腰の部分にはガリア社製のGB(ガリア・ビーム)ライフルを完備。まるでライフルのような巨大な銃だ。装甲は主に血のような赤色とレモンのように明るい黄色、赤を少し混ぜたオレンジ、白で塗装されている。
対峙するは杉村中佐の同じく人型ナイト、すべてのナイトの原点。一番最初に作られた、ナイトフルバージョン。装甲の塗装は、白が八割、金が二割といったところだ。
装備はオリハルコンとプラチナをあわせて作られた剣、エクスカリバー。同じく、オリハルコンとプラチナで作られた盾、ESシールド。高性能ビームガンよりも銃弾が多く装備できるESガン。基本は同じだ。それぞれ、体長は二十メートル程度で、昔の西洋の騎士の見た目をしており、コックピットは人間で言う、みぞおちの辺りだ。
『黙っていては拉致が明かないので、こちらから行かせてもらいます』
彼のナイトが動き出した。こちらとの距離は約七百メートル。ナイトフルバージョンはブースター全開でその手にエクスカリバーを持ち、空中に浮かびながら、まるでジェット機のように向かってくる。速い。時速二百キロメートルは軽々超えるほどのスピード。友幸は操縦レバーを握りドラゴンナイトの腕を動かす。ドラゴンナイトはGBライフルを腰から抜き、ナイトフルバージョンに向けて撃った。幾つもの青色の閃光がGBライフルから放たれる。
『遅い!』
コックピット内に杉村中佐の余裕と笑いの混じった声が響いた。
ナイトフルバージョンは、そのビームを左右に、瞬間移動するようにすべて避ける。美しい、とつい思ってしまうほどのしなやかな避け方。距離が五十メートルほどになる。友幸はドラゴンナイトのビームガンを素早く腰に戻し、Fソードを抜いた。そして、右手に持たせ、構える。
その構えに入る瞬間の隙を狙ってか、エクスカリバーがドラゴンナイトに振り翳される。しかし、それを何とかソードで受け止めるドラゴンナイト。コックピット内がまるで地震が起こったかのように揺れると同時に、金属同士が擦れ合う音が大きく港に響いた。
『受身になっていてはだめです。自分から攻めていかないと。ほら、僕を押し返すように……!』
ナイトフルバージョンの押す力が、その声と共に格段に強くなった。
「くっ」
ドラゴンナイトが徐々に後方へ退がって行っている。これほどこのナイトフルバージョンにはパワーがあるのか、と友幸は思わず感嘆としてしまう。
実際、そんなことをしている場合ではない。考えろ。何とかしないと、負ける。勝たないと。負けたら、負けてしまったら。
一週間、トイレ掃除という地獄が待っている。
②へ
- Re: 機械騎士 ‐knight‐ ( No.3 )
- 日時: 2010/12/27 14:38
- 名前: right ◆TVSoYACRC2 (ID: zuIQnuvt)
- 参照: 文字数オーバーとかwくそうorz
第一話[平和だった]②
自分たちが所属している横浜基地のトイレは、汚くそして広いと有名で、掃除するのにかなりの時間を費やし、掃除したものは三日間腰が痛くなる現象に悩まされ、戦争で死んだ兵士が夜な夜な蘇ってそこを彷徨っているという、ヘブン軍の中で都市伝説化している恐怖のトイレなのだ。
それを思い出した友幸は「嫌だな」と小さく呟き、ブースターレバーを限界まで上げ、右腕の傍にあった“エネルギー出力制限解除装置レベル二”と表示されているレバーを手前に引いた。すると、杉村中佐が映っていたモニターが赤く点滅し、制限時間という文字が表示され、その下には三桁の数字が現れた。百五十、百四十九、百四十八……と一秒ずつ正確に数字が減っていく。
五秒経ったところで、急にドラゴンナイトが軽くなった。形勢逆転、ナイトフルバージョンが後ろへ大きく退がる。
この機能はパワードモードと言い、パワー出力制限解除装置のレバーを引くことにより、エネルギーのロックが完全に解除され、エネルギーをフルの状態で使えるようになる。その結果、今までより遥かに強いパワーを生み出すことが出来るが、多くのエネルギーを常に垂れ流しているということにもなるので、様々な機能が暴走する可能性が含まれている、大変危険で強力な装置なのである。それを防ぐため、エネルギーを開放する上限がレベルで分けられており、小さいほどエネルギーが小さく、大きいほどエネルギーは大きくなる。さらにそれには制限時間が設けられている。これはレベルが小さいほど時間は長く、大きいほど時間が短い——というとても複雑な設計だ。
『——なッ?!』
その強すぎるドラゴンナイトのパワーに耐え切れなかったのか、ナイトフルバージョンのエクスカリバーが上に大きく弾かれ、海に突き刺さり、小さな波を起こす。
そして、ドラゴンナイトはコックピットに向けてソードを突き刺そうとするが、寸前で止める。
『負けました』
モニターの中で降参だと言うように、両手を頭上に上げた。
その頃には、夕日はもう海に沈みかけていた。
—ヘブン軍支部横浜基地・ナイト格納庫—
杉村中佐との模擬戦闘の後、彼は杉村中佐より一足先に格納庫に戻っていた。
格納庫は、大量の量産型凡庸ナイトがずらりと友幸の左右にびっしりと並んでいる。黒に染まっているものや、整備途中なのか、まるでプラモデルの右腕がいとも簡単に外れてしまっているかのようになくなっているもの、ましてや首のみしかないものもいる。何ともおかしい光景だ。
——見下ろされているような感じで、あまり、良い気分じゃないな。
彼ら、もといナイトたちは整備用の巨大な機具で固定され調整、整備されている。金属を削るような音、飛び交う整備士たちの暗号のような言葉と大きな声、天井にある通気孔から聞こえる風の音。ここは五月蝿くてあまり好きではないが、なぜか居心地が良い。慣れてしまった——いや違う、ナイトたちはここに彼がいても何も文句は言わないからだ。
基地は先程の港から数十キロ離れた森に位置している。といってもそんな森の中で、でかでかと真ん中に目立つように設置されているわけでもない。上から見れば、ただの森にしか見えないように基地が上から木々によって隠されている。敵から見えないように。基地の武装は対ナイト用重戦車だ。敵のナイトが襲撃してきてもある程度耐えれるような装備を施されており、凡庸ナイトと比べ装甲が若干堅い。それが二十機近く森のあちこち、または基地内にて待機している。
ヘブン軍の基地は全て地下制で、二階三階などはない。ここ横浜基地は地上一階から地下十二階まである。ヘブン軍専用基地にしては大きいほどだが、東京の本部ほどではない。あそこは地上四階から地下二十八階まであるらしい。
——どんだけ広いんだって話だ。
東京本部に行ってみてえなあ、と友幸は疲れたような掠れた声で呟いた。
東京本部は、ヘブン軍に所属する人間たちの夢のような場所。特殊な設備が施されている訳でもなく、隊員にサービスが付いてくる訳でもなく、そこは階級がどれだけ低くても支部の人間より偉くなることができるのだ。そこにいるだけで大佐と同じ程度の特権を持つことが出来る。詳細は不明だが、何か特殊な能力があれば何もしなくても東京本部に入れることが可能だそうだ。
——ぶっちゃけ、俺じゃ無理だよな。特殊能力とか漫画じゃあるまいし。
「よっ! レッドドラゴン」
③へ
- Re: 機械騎士 ‐knight‐ ( No.4 )
- 日時: 2010/12/27 14:31
- 名前: right ◆TVSoYACRC2 (ID: zuIQnuvt)
- 参照: 文字数オーバーとかwくそうorz
第一話[平和だった]③
突然の大声に肩をびくつかさせる。何だと振り向くと後ろからまだ若い、油や泥に汚れたまるで苔のような深緑色の作業つなぎを着た、黒色の短髪の男が急ぐ足音と共に近づいてくる。
——次は、背中を思いっ切り叩かれるな。
ちなみにレッドドラゴンというのは、友幸の別称だ。これは、杉村中佐が面白半分で考えたそうだ。理由は簡単。彼が『赤い』髪色で『ドラゴンに乗っている』だからだそうだ。そこから赤の『レッド』、龍を意味する『ドラゴン』を取って付けられたコードネームのようなもの。いつの間にかそれが、この基地の皆に知られていて、そう呼ばれるようになってしまった——と考えているうちに、背中に予想通りの衝撃と音と痛みが走る。まるで、地面に思い切り背中を叩きつけられたかのようで、風船が割れるような音が背中を叩かれたときに格納庫に響く。他者からすればかなり痛そうな音だ。それにこの薄いパイロットスーツだと尚更痛い。
「……うおっ!?」
足に力を入れていたはずなのに、前につんのめっていしまい転びそうになるが、なんとかバランスを取り戻し、体勢を立て直した。
「何、すんだよ」
背中を思い切り叩いてきた彼の方を向き、睨みつける。背が叩かれたせいでか、熱を持ちひりひりする。彼は、自分の目を見てか「ゴメン、ゴメン」と笑いながら謝ってくる。右手に握っているこのヘルメットで殴ってやろうか、と思いつつ口を開く。
「で、何の用だよ。何か、あったのかよ」
そう尋ねると、「その言葉を待ってました」と言わんばかりに彼の目が輝く。ちなみに彼はナイト整備士の青井颯太、彼の二つ歳上の友人と呼べる人間の一人だ。
「来るらしいんだよ」
「何が」
——お前には具体的な説明をするという知識がないのか。そう思いながらも口に出さないという優しさぐらい、俺にはある。俺はそんなにひどい野郎でもない、と思いたい。
「他のところは少ないけどいるだろ? 女パイロット」
確かに、女性のパイロットは少ない。男との技量、体力の差だろう。男に勝る力を持つ女は早々いない。
だからそれが何だというのか。
「それが来るらしいぜ。横浜基地初めての女パイロット! しかも子供ときた!」
——このはしゃぎ様は餓鬼かお前は。五歳児か。ここは適当にあしらっておこう。この疲れた体で、颯太の長話に付き合ってられるほど、体力が残ってないんだよ。さっき、杉村中佐と模擬戦闘をやった後だしな。
「……あっそ」
あきれたように言い放つと、彼は足早に格納庫の出口に向かう。それを止めようと、後ろから颯太の声。さらにその後ろからの整備長の低く、大きな声が颯太を叱る。
しかし、何かが引っ掛る。
颯太は言った。
『それが来るらしいぜ。横浜基地初めての女パイロット! しかも子供ときた!』
つまりは女の子。
——子供……?
いや、調子が悪いんだろう、自分は。だから些細なことに疑問を持つ。子供は、極稀にいる。変なことじゃない。さっさと部屋に戻って休もう。彼は格納庫の出て、目の前に現れた、パイロットたちの部屋に繋がっている通路を気だるそうに歩いていった。
後ろからの怒涛の声を聞きながら。
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