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剣を振るう者 -The Lost Time-
日時: 2011/01/06 09:48
名前: 月詠 ◆hjAE94JkIU (ID: 81HzK4GC)

  その剣、誰が為に振るう—————
 
        「剣を振るう者 -The Lost Time-」



どうも初めまして。月詠/tukuyomiです。
久しぶりの執筆で少々緊張気味ですが、頑張っていきます。
シリアス・ダークなのか微妙なところですが、
そこはどうかあしからずご了承くださいw
コメント・アドバイス大歓迎です。


@Contents
序章「夢」 >>1
第一章「出逢い」 >>2 >>3 >>4


@Guest

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Prologue「夢」 ( No.1 )
日時: 2010/12/29 22:35
名前: 月詠 ◆hjAE94JkIU (ID: 81HzK4GC)

真っ直ぐに剣を構え、前進する。舞うように軽やかに、美しく。
次々に広がる赤い波紋が、彼の周りを満たす。

しかし、男の目にあるのは一人の女のみ。
女は軽く口端を上げるように笑う。目の前に命を散らす者など気にも止めずに。
返り血を浴びても尚、美しいその姿は、さながら戦いの女神というところか。

徐々に距離を詰めていく男と、それを楽しむかのように傍観する女。
遂には女の前に立ちはだかる者もなくなり、男はその切っ先を女へと向ける。

女は動じず、手にした長剣を軽く払う。
右後方に回した長剣が光を帯び始め、女は口を開く。

「お前は、何の為に戦う。誰が為に、その剣を振るうのだ」

男は構わず剣を降り上げ、切りつけようとした刹那_____________


長剣から閃光が走り、意識が遠のいていった。

第一章 出逢い ( No.2 )
日時: 2011/01/02 13:04
名前: 月詠 ◆hjAE94JkIU (ID: 81HzK4GC)

「夢……か」

葉がこすれる音。小鳥のさえずり。少し冷たい空気。
その中で、エルンスト=ハンスは目を覚ました。
よっかかっていた切り株から体を起こすと、深い紫色の髪がふさりと揺れる。
肩につくかつかないかぐらいの、男にしては少し長めの髪。

「僕は……」

頭の中を探り、何故自分がここにいるのか思いだそうとした。
が、何も思い出せない。いくら考えてみても、自分の名前意外、何も出てこないのだ。

「僕は……エル。エルンスト=ハンス、なんだね。」

少年______エルは一人で呟いた。
ふと、辺りを見回してみたが、周りは木ばかりで、人の気配すらない。
ふと自分の姿を見てみると、白いワイシャツにチェックの半ズボンという軽装に、
何故か背中には自分の身長とほぼ同じくらいの剣を担いでいる。

「剣……。何で僕こんなもの持ってるのかな……。
 ねえ。僕、どこから来たのかな。君達、知ってる?」

答える筈が無いと分かっていながら、木の上で冴えずる小鳥達に問いかけてみる。

「まあ、返事するわけないか」

そう肩を落とした時、自分の真上から物音を感じて顔をあげた。
すると、

「うわっ! ちょっ、上向くな_________ 」

上から降りてきた(落ちてきた?)何かがエルの顔面に突っ込んできた。

「痛っ! 何だ……?」

顔を抑えていたエルが目を開けると、そこには色鮮やかな鳥が。

「ただの鳥じゃねーぞ! オレはオウムだ。 オ、ウ、ム! よーく覚えとけ!」

先の赤い緑色の羽をバサバサさせながらそう言い放つ鳥を、
エルは呆気にとられたように凝視した。

「何だよ。そんなに見るなよ。恥ずかしーなー」

「と、とと、鳥が……喋ってる……」

「鳥が喋ったら悪いかよ?」 

「い、いやいや……そんなこと無い……無い……けど」

「そうだろー? 何せオレ様は特別だからな」

鳥(自称オウム)は偉そうにふんぞり返りながらそう言った。
エルは「特別」という言葉に引っかかって訊きかえす。

「特別?」

「あぁ。オレ様は選ばれし鳥だからな。知識も豊富なんだ」

羽先で自分の頭を指(?)指す鳥(自称オウム)を見て、エルはふとあることを思いたった。

「ねぇ、何でも知ってるんだよね?」

「あぁ、もちろん!」

「じゃあ、この森から出る道も知ってる?」

「あったり前だろ!」

「じゃあ、連れてって」

「え……」

「何でも知ってるんでしょ?」

エルが怪しむような目つきで鳥(自称オウム)を見つめると、
オウムはしばらく考えこんだあとに顔をあげた。

「わかったよ! 案内してやる。ついてこい!」

それを聞いたエルはにっこりと笑うと、勢いをつけて立ち上がった。

Re: 剣を振るう者 -The Lost Time- ( No.3 )
日時: 2011/01/02 23:33
名前: 月詠 ◆hjAE94JkIU (ID: 81HzK4GC)

「ねぇ」

「あ?」

「どこまで歩くのさー!」

エルはがっくりと両手を下ろしながら歩く。
出発してから歩いた時間は、優に1時間を超えているだろう。
背中に等身大の剣を担いだエルには、そろそろ限界が近づいていた。
相変わらず辺りには木が生い茂っているばかりで、出口らしきものは全く見えない。

「もう少しだっつの」

「嘘だ! さっきからもう少し、もう少しって全然出れないじゃない」

エルは不服そうに口を尖らせながる。
しかし、頼りになるのは今のところこの鳥(自称オウム)しかいないため、
着いていく他に選択肢は無いのだ。

「まあまあ。もう少しだって。ところで、お前の名前は?」

鳥(自称オウム)にお前呼ばわりされ、少々気にさわるエルだったが、
案内してもらっている手前、名乗るのは礼儀だ。

「僕はエル。エルンスト=ハンス」

「ハンス……? どっかできいたことあるような……」

鳥(自称オウム)はくちばしをパクパクさせながら少し考えこみ、顔をあげた。

「気のせいだな! オレも最近記憶が曖昧な……て歳はきくなよ! オレ様はまだピチピチだ!
 そう言えば、名乗っていなかったな。オレの名はチッテリウス=バルダ=ロスタだ。
 まぁ、何だ、長いからな。チッテで良いぞ!」

威張る鳥を呆れたように見上げたエルは、物音を感じて足を止めた。
どうやら誰かの足音のようだが、人間か動物かはわからない。

「チッテ。何がいるかわかる?」

「(早速呼び捨てかよ……)オレは視力はすん……ごく良いが、聴力はあんまりなー。
 でも、何も見えねーぞ?」

チッテがそう言う間にも、足音が近づいてくるのが、エルにははっきりと分かった。
自分に扱えるのかもわからないが、一応背中の剣に手をかけて警戒してみる。
じりじりとした緊張感がエルを襲い、全身に震えが走る。
足音は確実に大きくなり、すぐ近くまで来ているのを感じた。

「だ、誰だ! 隠れてないで出てこい!」

エルは震える声を必死の思いで張り上げた。

Re: 剣を振るう者 -The Lost Time- ( No.4 )
日時: 2011/01/24 22:25
名前: 月詠 ◆hjAE94JkIU (ID: 81HzK4GC)

背後からの足音を感じ、振り返ったその瞬間。
エルは目に見えない何かによって羽交い締めにされ、首にひんやりとした鉄の感触を感じた。

「その剣、何で抜かなかったの?」

目の見えない何か。いや、誰かがそう言って、首にあてたものを少し強く押し付けた。
声からして、エルを羽交い締めにしているのは、女の子のようだった。
エルには人も、首にある刃物も、見えていない。
エルはふと、“死ぬかもしれない”と思った。だが、不思議と恐怖を感じない。
“死ぬ”ということがあまりにも現実味離れしているように思えて、
自分はまだ夢から目覚めてないのではないかと疑う。
もし夢なら、何も怖くはない。エルは意を決して口を開いた。

「僕は戦わない。この剣を扱えるのかもわからないし。だって、何も覚えていないから」

「……何も覚えてない……ってどういうこと?」

「……さっき森の中で目が覚めてから、その前のことは全く覚えてない。
 ここがどこなのかもわからないし、名前以外、自分が何者なのかもわからない……」

_________何故初めてあった人に、こんな話をしているのだろう。
しかも相手は、自分を殺そうとしているというのに_________

エルは心のどこか奥のところでそう思いながら、話した。
背後に立つ誰かがぴくりと動き、首から冷たい感触が消え、エルは解放された。

「何か事情があるみたいだね」

今度はさっきの声とは違う、落ち着いた、低い男の声が聞こえた。
目の前の空間が一瞬ぶれたように見えて、その後に二人の人間が立っていた。

「んー、どっかで見たことあるような顔なんだよねー」

「話を聞こう」

一人はエルと同じ14、5才に見える少女で、顎に手を当て、首を傾げていた。
ウェーブのかかった金色の髪を腰まで伸ばし、左右でツインテールにしている。
明るいピンク色の瞳が印象的な少女だ。

もう一人の男は20代後半から30代前半という見た目だが、実際のところはっきりとはわからない。
瞳は吸い込まれそうに深く、落ち着いた緑色で、エルをじっと見つめていた。


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