ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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junk
日時: 2011/01/03 22:09
名前: 夕* (ID: bEtNn09J)





     くだらなく役に立たない
  


     罪人みたいに忌み嫌われる



     私はそんな人間なのよ





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Re: junk ( No.1 )
日時: 2011/01/03 23:03
名前: 夕* (ID: bEtNn09J)



「 という事だ……キャンディ 」



  電話越しに聞く紅茶のコードネーム
  アタシのコードネームだった



  通称【ティータイム】と呼ばれる国際犯罪組織



  組織に属する人間は飲料に関するコードネームを持つ
  幹部クラスに属する私達は紅茶に関するネームだ
  電話越しにボスの信頼される組織の中枢人物の


「 ……分かってるわ、アッサム 」


  携帯を閉じた前の光景は人気も無い夜の海が広がる
  ボスからの命令された使命に溜息しか出ない
  携帯のメール一覧に見慣れた

  大親友である【彼】の名前を見る



「 ………宮本謙一を殺せ、か 」



  不思議と自分が愛する人を殺すのに
  罪悪感なんて感じなかった

  仕事の所為だろうか


  一度沼に自ら入り込んだ者は二度と上がれる事は無い
  あたしは闇の組織という沼に入り込んだのだから
  例え親が組織の一員だからという
  見苦しい言い訳もせず出来ずに生まれ落ちた環境が



  【組織の沼】なのだから



  簡単に言えば親の所為と言うのかしらね
  早速あたしは何を言いたいのか
  分からなくなってきたわ
  


  組織の監視付きでも大学に通える身分だ
  組織の監視付きでも友達と遊べたし
  

  性別を越え大親友になった謙一も居る



  だけど組織はあたし達が対抗する
  正義側の組織の息子だった
  ボスという血眼に探し求めてる奴の子



  あたしの両親を殺しやがった




「 ……謙一がボスの息子だったのか 」




  知ってたから近づいたかもしれない
  だとしたら返り討ちしましょう
  別に殺しなんて日常茶飯事だもの
  何も感じない
  愛用のピストルをウエストバックに入れる



  立ち上がる際にミネラルウォーターを落とした
  ペットボトルの水が地面に零れ黒く濡れる様
  気にせずペットボトルを蹴飛ばした後
  その場をゆっくり歩いた
  

  カラカラ軽い音を立てながら転がり
  音は聞こえなくなった
  


  浜辺に捨てられたペットボトル



  役に立つ事は永遠に無いだろう
  それは酷く下らない世間の常識だ





Re: junk ( No.2 )
日時: 2011/01/03 23:38
名前: 夕* (ID: bEtNn09J)



  公衆電話から謙一に電話する
  指紋が無いよう手袋した
  これで証拠なし

  街の人はいちいち構わないだろう



「 けーんいち!…今から遊びに行こっ! 」

【 何だよ急に…別に良いけど……急に如何したんだよ? 】

「 ……話したい事があるんだよ、謙一 」

【 ふうん……分かったぜ 】

「 とゆー訳で駅で待ってるからー! 」

【 へいへい 】



  —— ガチャッ



  受話器を本体に戻しボックスを出た
  本当に謙一がボスの息子なのか

  ……何という皮肉な運命なんだろ


  これから殺されると知らずにのんきに会いに来る



  【カクテルカラー】というアメリカ政府に認められた
  世間で俗に言う正義の味方である組織に
  あたし達【ティータイム】は敵対しているからには



  殺さなきゃね……




「 あたしの家族を殺したボスの息子を今から消す 」





  一言呟き終えタクシーを呼んで駅へ向かった
  タクシーで執拗に絡んでくる中年親父に

  あたしは愛想笑いして駅に着いた




「 えーと……何処なのよ? 」




  駅前に約束したのに謙一はまだのようだ
  舌打ちして中犬ハチ公前のベンチに座った
  早く殺したいのに………
  だけど謙一を殺すなんて無理よ


  という心情も表れ始めた
  本当に殺したくない
  

  大親友で気が良く合う奴だったから……


  
  何となく寂しく感じる感情にあたしは首を振った




「 なーに首を振ってんだー? 」


  声の主はあたしの前に居た


「 ……謙一? 」

「 で、話しって何だよ 」

「 此処だと話しにくいからさー
  あたしの部屋に来てよ! 」

「 えー……女の部屋に行くのかよ 」

「 何かおごるからさー 」

「 んじゃ、高級レスト…すいません 」




  何であんたに連れて行かなきゃいけないのよ
  と睨んだら謙一は大人しく謝った


  駅近くだから歩きで誤魔化しながら
  あたしの部屋に着いた
  この使命が終わった後は引っ越そ



  気分悪くなるし




「 此処があたしの部屋よ 」




  ガイドさん風に言うあたしに構わずに
  物珍しそうに見る謙一だった


  —— 蹴り飛ばしてやる



  という衝動を抑えながら謙一に話しかける




「 なんか飲む? 」

「 んーと…ダージリンかなぁ? 」




  ダージリンという単語にあたしは驚き慄いた
  

  だけど冷静を装いながら
  あたしは謙一に言い返した




「 ダージリン?何それ? 」

「 知らねーのかよ!……紅茶の名前だよ 
  知らないなら持ってるはずねーな
  
  普通にコーヒーで良いやコーヒーで 」

「 無知ですいませんね、はいコーヒー 」




  机にコーヒーカップを置いた
  謙一は美味しそうに飲み干した

  自分の分のコーヒーを置いた後、本を片付ける




  なかなか本題に行けない状況だわ
  謙一は知ってるのかしら?
  自分はある組織のボスの息子だという事を



  謙一の目は冷めているのにあたしは気付いた






Re: junk ( No.3 )
日時: 2011/01/04 00:08
名前: 夕* (ID: bEtNn09J)




  あたしも怪しまれないようコーヒーを飲み干す
  途端に急に眠気が襲い掛かってきた


  嗚呼……謙一は知ってたんだ


  幹部なのに簡単な手口で騙された罠か
  単純さが時に役立つんだ……
  何という作戦失敗だろう
  


「 コードネームはキャンディだろ……お前らしく無いな 」




  謙一の言葉を最後に意識が途絶えた
  途絶える前にあたしは思い出す



  ボスにお母さん達が殺される様を
  ボスはあたしだけ助けた事を
  ボスは組織にわからない施設に送らせた事を




  これだけは忘れてたまるか




  ———



  気付き目覚めれば牢屋にあたしは手足を鎖で拘束されてた
  多分組織にバレたらあたしはあの世逝きだわ
  果たしてバレてるかバレてないか分からないけど
  絶対に組織の事はバラさずに死んでやるわ
  これがあたしに出来る抵抗かしら?



  だけどあたしは組織に恨みがあるから
  簡単に裏切らないと組織は考えるだろう
  拷問か自白剤だと考えるだろう


  組織は簡単にあたしを殺さないはず



  予測だけど組織はカクテルカラーの内部を知りたがってる
  あたしが殺されるかも知れないのに組織に戻れば
  一旦はあたしの言う内部を信用するかもしれないわね
  唯一組織でコイツ等の内部に拘束という【潜入】出来たから



  ボスもここのボスも互角の頭脳を持つ
  天才組織だからお互いに簡単に潰れない




  だからこそあたしというスパイに
  彼等に内部を話せば助かるな
  でも拷問などで組織の事を話されている疑惑も付いて来る



 
  そこを如何するかは骨になるわね……
  



「 ……はあ 」

「 そりゃ溜息するわな 」




  突如聞きなれた声の方に振り向けば




「 そうよ……あたしの正体を知ってたのね 」

「 俺を疑うまでは正解だったのになあ
  まさかコーヒーに薬を入れられてる
  と疑わないなんてマヌケすぎるぜ? 」




  椅子に座ってる謙一に軽蔑な視線がウザい



  だけど油断が招いた結果だから
  仕方無いけど腹立つわね






「 あいにく俺は敵に甘く無いのでね 」






  謙一はそう言いあたしの腕に注射を刺す
  多分これは


  ……自白剤だろう





  例え打たれてもあたしは喋らない





「 ……なっ!? 」

「 何だよお前は自白剤とでも思ったのか?
  残念でした自白剤ではありませーん

  組織が開発した薬の人体実験って奴? 」





  体中が熱く感じる意識も途絶えがちだ……





  本当にアメリカ政府黙認の組織なの?
  こんな事しても良いのかしら…?
  あたしは……


  幹部クラスの人間なのに………




  ふん……そこまで堕ちたという事か






  正義という暴走に誰も気付かずに
  調子に乗って最後に破滅するタイプね
  誰も気付かないという所が破滅を早めるわ




  馬鹿なのはどちらかしら?






  あたしは謙一を見て笑った後
  意識が途絶えた










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