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蝶蛾の話(オリジナルキャラクター募集中)
日時: 2011/01/16 15:55
名前: 村瀬 奏 (ID: clpFUwrj)

序章

────世界は決して美しくなんか無い────

 醜くて美しい。美しくて醜い。人間で人間じゃない。人間じゃなくて人間。そう。

────美しいものには毒がある────


「欲望。嫉妬」

 町をゴシックの服を着た少年が歩く。

「本当に人間は醜いね」

 そういって闇の中に消えた。

第一話 蝶の話

 ゴシックの服を着た少年がシルクハットをくるくる指で回す。

「人間は醜いね」

 すっ、と頭にかぶる。そして、冷たい視線を向ける。

「残念だけど、僕は人間は嫌いだ」

 そして、言葉のあとに「それが」と付け足す。

「それが僕の使命だから」

 この少年は人間ではなかった。この少年は「蝶」と「蛾」の間に生まれた「蟲」だ。人間に化ける、世界に一つだけの「木の実」を食べて人間になっている。この少年は「蟲」の時、世界一の殺し屋だった。「蟲」たちはそれをほしがっていた。そんな「蟲」たちを殺しつつ、木の実を食べた。王の命令だった。「人間」の排除を任された、優秀な「殺し屋」。

「欲望は僕にとってご馳走だよ。人間のみなさん」

 楽しそうに歌うように言う。

『そうなのね』
 
 耳に響く女の人の声がする。少年の背後にすう、と少女の姿が浮かび上がる。ロングの髪の毛を左右に揺らしながら少年に囁く。美しい少女。人間の少女だ。しかし、もう死んでいる亡霊だ。

「歌音さんですか」
『私も人間は嫌いだったわよ。意味分る?ふふ、自分が嫌いだったってことよ?可愛い「殺し屋」』
「そうですか」
『ええそうよ涙』

 少年の名前はるい、少女の名前は歌音かおんというらしい。

「さあ行こうか」
『そうね』
「・・・・人間を狩に」
『人間を殺しに』
「人間は滅びるべきだ」
 
 そういって立ち上がった。

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Re: 蝶蛾の話 ( No.1 )
日時: 2011/01/12 10:45
名前: 村瀬 奏 (ID: clpFUwrj)

「三郷ー」
 
 一人の少年が少女を呼ぶ。その声に少女が振り向いたとたん少女がビクッと肩を震わせた。

「なっ・・・・雪永君・・・」
「どうしたの三郷」
「いや、いきなり声掛けられたからびっくりし・・・て・・・」
 
 少女の名前は美郷春菜。極端にびくびくしている。昔からではなかった。小1くらいまでは積極的で明るい少女だった。しかし、4年の時「いじめ」にあった。5人組の少女たちのいじめを受け、中学校と高校は私立に行った。その時、幼なじみの雪永稔が心配だから、と一緒に来てくれた。「俺、どうせ親いないし。平気平気」と言って付いてきてくれた、春菜が大好きな稔だった。
 しかしね態度で表すことなどできない。しかし、稔には一秒一秒、感謝している。

「どうしたの?」
「あ、ああ。コレ、お昼」
「あ・・・・。タマゴサンド・・・ありがとう雪永君」
「これ好きだろ?」

 「うん」と顔を赤くしてサンドを受け取る。タマゴサンドは亡くなったおばあちゃんが良く作っていたものだった。渡すと呼び出しの放送が鳴って走ってこの場を去った。そして、タマゴサンドの袋を握って思った。

「もっと正直だったらなぁ・・・・・」

 思う。渡り廊下でポツンとたっている春菜は孤独に見えた。稔が近くて遠い存在。遠くて近い存在。好きで好きじゃない。好きじゃなくて好き。この気持ちは───・・・・。

「好きなのかい?」
「え?」
『迷える子羊よ』
「自分を変えたいかい?」
「貴方は誰?」

 そこに立っていたのは、ゴシック少年が立っていた。シルクハットのふちを指をつまむ。そして怪しげに口を開いた。少年意外には少女は見えない。

「僕は人間に悪夢を見せる」
「悪夢・・・・?」
「そう。人間に無限の悪夢を見せる」
「貴方・・・・悪魔?!」
 
 春菜が言うと少年が人差し指を立てて、チッチッとやった。

「悪魔じゃない。僕は南雲涙」
「でも・・・悪夢って・・・」
「見てみるかい?君が望む世界を」

 一つおいてからまた口を開く。

「美しい君の世界を」
「えっ・・・・」

 ぱっと、明るくなってまた目を開くと少年はいなかった。そして、心地良い風が春菜の綺麗に束ねられた三つ編みを右に揺らす。そして、そこらへんに綺麗な蝶が飛ぶ。緑、青、赤の見たことも無い色で綺麗な模様の蝶だった。

「・・・雪永君が蝶なら、私は蛾ね」

 絶望的だった。そう思って手を見た。

「タマゴサンドが無い・・・・」
「ここは君が望んでいる世界」
「え?」
「ゆっくり感じてみるといいよ」

 そういって、声が途切れた。



Re: 蝶蛾の話 ( No.2 )
日時: 2011/01/12 15:22
名前: 村瀬 奏 (ID: clpFUwrj)

「私が望む・・・・?」

 いまいち意味がわからない。私は何を望んでいる?なにも望んでなどいない。

「君の望みは心の海深くに眠っている。気付かないだけだよ。人間に願望がないなどそんなことはありえないからね」

 今度こそ言葉が途切れた。

「私の・・望み?」

 呟くと同時に予鈴が鳴った。春菜は昼を食べれなかった。食欲がなくなっていた。次の時間は数学。大の苦手な教科だ。勉強してもわからない。塾に行ってもスピードが速くてなおさらわからない。春菜は勉強も運動も苦手だった。取り柄や才能のない自分。そして、こんな人間に産んだ親を憎む。だからいじめられた。引っ越した。何もできない。親なんて、いなければいいのに。春菜のことを分かってくれる人はもうこの世にはいないが、叔母しかいなかった。親なんて、親なんて死んでしまえ死んでしまえ死んでしまえ・・・・・。
 そう思いながら教室に向かった。すると教頭先生が入ってきて、春菜を呼ぶ。

「おばあさまから電話があったわ。帰りの仕度をして」
「え?」
「はやくしなさい」

 やむをえなく「はい」と小さく返事をして鞄を手に取る。その時、春菜の頭の中は何が何だか全くわからなかった。何故叔母が、春菜に電話をした?叔母は死んでいるのに。何故だ。頭の中の疑問がぐるぐる回る。手を動かす。そして、待っていた教頭先生に手招きされ、教室を出て行った。

「教頭先生?」

 立ち止った教頭先生を不審に思い、尋ねた。複雑な顔をして黙っていたが、口を開いた。

「落ち着いて聞いてちょうだい」
「?」

 ぐっ、教頭先生の言葉が詰まる。

「お母様とお父様が事故で亡くなってしまいました」
「・・・・・え?」

 お父さんとお母さんが?本当に?最初は不審に思った。しかし、ふと思い出す。

『ここは君が望んでいる世界』

 本当に私の望みの世界になった。徐々にじわじわと嬉しさがこみあげてくる。教頭先生に気付かれないようにニヤリと笑うと、一瞬にして不安な顔になった。演技だった。よく考えれば、春菜は演技が得意だった。

「・・・・・して?」

 悲しそうにつぶやく。心では嬉しさが満たされていた。

「お母さんっ・・・!お父さん・・・っ!」

 しゃがみ込んで嘘泣きをする。心配そうに教頭先生が肩に手をかける。

「三郷さん・・・・・・」
「お母さん・・・・っ」

 泣く泣く。心で笑う。嬉しい。本当に望みがかなった。親が死んだ。死んだ死んだ死んだ。

「三郷さん・・・・外にパトカーが来たわ」
「はい・・・・」

 ぐじゅぐじゅと泣きながら立ち上がる。

ここから、三郷春菜の欲望が爆発する。

Re: 蝶蛾の話 ( No.3 )
日時: 2011/01/13 10:36
名前: 村瀬 奏 (ID: clpFUwrj)

 その日の夜の高いビルの上。少年がシルクハットをくるくる回しながら今日の少女のことを思い出していた。美郷春菜という少女。地味で目立たそうな少女。欲望に飲まれた若き魂。狩るにはとても相応しいではないか。思いつつ、腰から短剣を取り出して抜く。そして刃の先を立てて左手の手首から五センチほど切った。

「・・・っ」

 痺れる熱い痛みとともに一つの真っ赤な粒が腕から地面に滴った。少女の姿がすう、と浮いて亡霊が現れる。そして通り抜ける手で傷口をなぞる様に動かす。

『あらあら、自分を傷つけるようなことしちゃ駄目よ可愛い<涙>』
「蛾の羽を傷つけるのは人間。自分で傷つけても悔いは無い」
『面白い子ね。私もそうかもね。私は自殺したんだもの』

 くすくす、と口元に笑いを浮かべて一つおいてからまた言った。

『カッターの刃は素晴らしい物よ。人を殺せる凶器にもなるもの。カッターで死んだ私には分る。そうカッターは「殺し屋」なの。貴方と同じね』

 くすくす、と微笑み続けた。

Re: 蝶蛾の話 ( No.4 )
日時: 2011/01/13 18:14
名前: チロル ◆iPIAnVtKco (ID: S3B.uKn6)

こんばんわ^^
小説訪問ありがとうございます!

カッターは殺し屋!?
なんかすごいですね・・・



がんばってください^^

Re: 蝶蛾の話 ( No.5 )
日時: 2011/01/15 10:36
名前: 村瀬 奏 (ID: clpFUwrj)

 ぢぎぢぎぢぎぢぎ・・・・・

 カッターの刃を出す。16歳の柊 歌音だ。まだ生きている頃の話。刃を皮膚に当てるとビリと薄い痛みが走る。そして刃を良くに薄く引くと横に火がつくような熱い痛みが走った。慣れている歌音はその痛みに顔さえも顰めなかった。左手の手首には無数の跡が残っている。そして、その上に包帯を巻いて家を出た。歌音にとって学校など下らないものだった。無くても生きられる。それに使命でもない。歌音は学校はそう考えていた。だから、行かない。親には色々と言われるが、自分の為だか知らないが、親の人生ではない。歌音の人生だ。

「ひ、柊・・・・」
「・・・・・・」

 一人のクラスメイトが腕を見てギョッとした。包帯ににじんでいる新しい血を見て。

「何?」
「・・・・ひっ!」

 短い悲鳴。ひして、学校の方へ逃げていく。


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