ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Over the twilight〜黄昏の彼方に
- 日時: 2011/01/12 21:15
- 名前: レーネ (ID: cQ6yvbR6)
こんにちは。レーネといいます。
今回は、二人の王女の生涯をかきます。
ダークな雰囲気にしたいと思います!!
以前このサイトさんにのせていたのですが、消えてしまったようなので、また1から!
ぜひお暇なときに来てくださいね!
長編です。
♪登場人物♪
ローザリア・ルイーザ・デ・ケルンブルク
暗黒の国ハーレスクの王女、王位継承者。
妖艶な雰囲気をかもしだす美少女。両親に似て、高慢で残虐な性格の持ち主。
エレナント・リー・デュ・アルフォンス
輝く銀髪に素晴らしい美貌をもつ心優しい少女。幼いながらに聡明で、人を疑うことをしらない天使のような性格をしている。
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- Re: Over the twilight〜黄昏の彼方に ( No.1 )
- 日時: 2011/01/12 18:13
- 名前: レーネ (ID: cQ6yvbR6)
神はすべて、無垢なるものを救いたもう——
という書き出しからはじまる18世紀の書物によると、ヨーロッパ、ピレネー山脈のふもとにある対立した二つの国があったという。
一つは、通称「暗黒の国」と呼ばれる、ハーレスク。
そしてもう一つは「純白の国」と呼ばれるエリスモーラ。
ハーレスクは暗黒の国と呼ばれるにふさわしい国だった。
歴代王たちはほとんどが暴君として知られ、ロシアのイワン雷帝よりもひどい独裁政治を行ったという。
貴族たちは一年中民の税で遊びほうけ、罪のない民を大量処刑したり、惨殺した。王妃でさえ、処刑を紅茶を飲みながらまるでゲームのように楽しく観察したと記録されている。
ヨーロッパ随一の残虐な国といわれたこのハーレスクに、ただ一つ対立する国があった。
それが、エリスモーラである。
エリスモーラはハーレスクとまったく違う国だった。王侯貴族は誰よりも民を気遣い、贅沢な暮らしをできるだけ控えていた。そして民たちも、どの国よりも王侯貴族を敬い、尊敬していた。
神のすまう国、純白の国として知られたエリスモーラは、もちろんハーレスクの残虐きまわりない雰囲気に憤慨していた。
そしていがみあう二つの国に、ある日同じ時刻に王女が生まれたという。
ハーレスクには、ローザリア・ルイーザ・デ・ケルンブルク。
エリスモーラには、エレナント・リー・デュ・アルフォンス。
二人の王女は対照の美しさをもっていた。
ローザリアは金髪の狡猾な考えをもつ王女だった。生まれながらに整った顔立ちをしていて、チャーミングであったと記されている。ただ、人を嘲ることが好きな性格は両親にそっくりだった。
そしてエレナントは輝く銀髪に女神のような微笑を浮かべる、天使のような王女だった。人を疑うことを知らず、つねに前向きな少女を、誰もが愛した。
だが、あるときこの二人が成長したとき、とりかえしのつかない悲劇なおころうとは、誰も知らなかった……
- Re: Over the twilight〜黄昏の彼方に ( No.2 )
- 日時: 2011/01/12 18:34
- 名前: レーネ (ID: cQ6yvbR6)
「ねえ、リーナ?わたしってなんて美しいのかしら」
ローザリアはそういって召使のリーナに振り向くと、冷たい微笑を浮かべた。ツンと高い鼻には、高慢さがにじみでていて、実に意地悪そうだった。
「聞こえた?リーナ」
「はい。王女様。おっしゃるとおりでございます」
リーナは恐怖を懸命におさえながらゆっくりとうなずいた。その答えをきいて満足したのか、ローザリアは愉快げな笑い声をあげた。
「あなたはわかっているのね。うれしいわ、リーナ。この世の白雪姫とは、わたしのことをいうのだわ。母よりも美しいわたしは、女神にもふさわしい…」
「そうでございます」
ローザリアは再び冷笑した。「あのいまいましい国の醜い王女など、きっとくらべものにもならないわね。そうでしょ、リーナ?あの王女はじぶんが世界一美しいと思っているものね。だがそれは間違えだわ」
彼女は髪をとかしつけると、優雅に立ち上がってクルリと一回転して見せた。どぎつい薔薇色のドレスに、ルビーやダイヤモンドがちりばめられ、彼女の並外れた美貌を引き立たせていた。リーナは王女にエメラルドとルビーの高価な対のイヤリングを差し出した。
「近頃の男たちはみんなわたしのことを見ているわね。気づいてるでしょう。あなたも。わたしは周りの女たちとは違うわ。別に着飾らなくても十分きれいなの。妙に媚びったりしなくても男なんかすぐに吸い寄せられるのよ」
「おっしゃるとおりです」
「あなたもそう思う?やっぱりね。そうだわ、父様に1000ペリオのお金を出しておいてといってちょうだい。靴を30足買いたいの」
リーナはそっと王女の靴入れに目をやった。
靴がざっと140足は入っている。だがどれも新品同様で、一回も使っていないものがすみに押しやられ、気に入ったものがかさねられて形が崩れている。なんとも悲惨な光景だ。
だがこれは靴入れだけじゃない。ほかもみんなそうだった。
「あなたが掃除しておくのよ。いいわね?パーティーが終わってかえっきてもしこのままだったらあなたを鞭で100叩きにしてやるわ」
「承知いたしました」リーナは飛び上がって答えた。
それを見てさもおもしろそうに笑うと、ローザリアは重い冠を被ってショールを羽織り、堂々とした姿で部屋を出た。いく途中、あらゆる者たちが彼女を見つめ、感嘆していた。彼女は性格がよくなくても、やはりその美貌は誰もが認めるところだった。
すると一人の貴婦人がよってきた。
「おはようございます。王女様。今日はわたくしが会場で誘導係を務めさせていただきます」
ローザリアは不機嫌そうに鼻をならした。
「あらそう。執事のメーコンじゃないの」
メーコンはハンサムな青年で、ローザリアのお気に入りだった。それなのに、こんなヨボヨボの婦人に誘導されるなんて実に不快だった。
婦人はあわてて答えた。
「メーコンは別に仕事がありますので、わたくしが代わりでございます。申し訳ございません」
「ふん。わかったわ。だけど、もしなにか失敗でもしたらあなたは永久追放よ」
顔を真っ青にした婦人をおいて、ローザリアは男たちに愛想をふりまきながら歩いた。
- Re: Over the twilight〜黄昏の彼方に ( No.3 )
- 日時: 2011/01/20 15:42
- 名前: レーネ (ID: cQ6yvbR6)
「ローザリア、今日はとくに美しい」
父王ニコラウスが誇らしそうに近づいてくると、ローザリアは狡猾そうな微笑を浮かべた。「あら、お父様ごきげんよう。お父様もいつにもましてハンサムだわ」
ニコラウスは笑い声を上げながら娘の白い手にキスをした。
「ははは。それはどうもありがとう。今日は美しく愛らしいお前の16の誕生日だからな。とびきり華やかにするようにしたんだぞ」
「うれしいわ。お父様」ローザリアが礼をいうと、ニコラウスは満足げな表情をし、ふいに彼女の耳に口を近づけてささやいた。
「今日はお前にすてきなプレゼントを用意した。宝石や領土などよりもずっと素晴らしいものだ。きっとお前は気に入るだろう。楽しみにしておくのだぞ」
ローザリアは目を輝かせた、「わかったわ。楽しみにしてる。愛してるわよ、お父様」
「わたしはその倍愛してるさ」王は愉快げに笑い、去って行った。ローザリアはこみ上げる期待を必死におさえ、その贈り物がなんなのか想像した。
何十カラットものダイヤだろうか。それとも立派な別邸か……。
考えるだけでも胸がはずみ、ローザリアは思わず笑った。お父様の私に対する愛を使えば、靴40足ならず200足は買えるかもしれないわ。
もちろん宝石も買うし、ドレスも買おう。
ローザリアはふと国庫のことを考えたが、すぐに笑い消した。
王女である私に国庫など気にする必要はないわ。私は美しい。着飾ることは私の権利であり仕事だわ。美しくなければそれににあう王子も手に入らないのだから。
*
誕生日会は壮大なものだった。
あらゆる階級の者が着飾って現れ、談笑し、食べ、踊っては帰って行った。いやしい者はなかに紛れて食べ物を盗んだり、貴婦人たちの宝石を盗んだ。だが誰もそれに気づかないほどうかれていた。
ローザリアが人々の中に入ると、彼らは容赦なく王女に近づき、褒めちぎった。
「なんてお美しい!ギリシャ神話の乙女ヘレネも顔負けですわ。王女様」
「ほんとうです!きっと素晴らしい運命をになっているのですわ」
「それに、王女様にになう王子がいるかどうか……」
誰もが王女を称え、敬い、あこがれた。
ローザリアは彼らの声をききながら満足げにうなずくと、天使のような微笑みを振りまいた。だが、そのとき耳に入ってきた言葉に王女は思わず立ちすくんでしまった。
「ローザリア王女はこの世界で二番目に美しい。一番はやはり、エレナントさまだろう。あの方はまさに美の女神そのものだ」
ローザリアはあわてて周りを見渡した。低い声だった。
男か女か……いや、男だろう。妙に周りの声とちがうよくとおる声だった。
なんて無礼で恥知らずなものだろう。
ローザリアは憤激して、金切り声をあげた。
この私より美しい者?!
「王女が乱心されたぞ!」
誰かが叫んだと同時に、ローザリアは血走った目で寄ってくる者たちを一瞥した。
「いま私より美しいと申した者がいた!いったい誰?でてきなさい!!殺してやるわ!拷問にかけたうえ、切り裂いてやる!!」
ホールは騒然となった。
ローザリア王女よりも美しい者?
そんな者はいるのだろうか?
いいや、きっと間違えに違いない。
人々は口々に意見を交わし、真実をひきだそうとしていた。ローザリアだけは地団太をふみ、依然壮大なフォルテッシモで叫び続けていた。
「誰よ!!でてきなさいよ!臆病者!恥知らず!!」
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