ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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廃病院の殺人鬼
日時: 2011/01/29 19:54
名前: 燕返し ◆geiwiq3Neg (ID: ADUOsQyB)

どうもこんにちは、燕返しです。


リレー小説を書きたいなぁー…と思ってスレ立ててたんですけど、
悲しい事にリク板から締め出されてしまったので、一人で書いていきたいと思います((泣
話し合いにご参加くださっていた皆さん、どうもすいませんでしたm( _ _)m


さて、この話はある廃病院と“ジサツシガンシャ”のお話です。
推理ホラー?的なモノを書いてきます^^
主人公は合計8人です((多
ではよろしくお願いしますorz

登 場 人 物


【紅威 裕馬 - アカイ ユウマ - 】17歳(男)チャット名=ゆー
高校2年生で親からの虐待でジサツを志願した男の子。
頭の回転が速く人間観察が趣味。少し疑い深く警戒心が強い。
学校には通っていたが、最近は不登校気味。頭の回転が速い。

【望月 帝 - モチヅキ ミカド - 】17歳(男)チャット名=神楽  
パソコンにかなり詳しく、早打ちが得意。高校2年生。
生きることに嫌気がさしたらしい。 めちゃ賢いけど少々チャラい。
祐馬の親友。


【斉藤 龍也 - サイトウ リュウジ - 】23歳(男)
眼鏡をかけている謎だらけの人。サイトにもいなかった。
何を考えているか分からないし、冷静でポーカーフェイス。

【五十嵐 純一 - イガラシ ジュンイチ - 】15歳(男)チャット名=JOKER
少し病み気味の中学3年生。口癖は「死にたい」。マイナス思考。
チャットでも棘のある話し方だったが、真意は…

【奥村 左之 - オクムラ サノ - 】18歳(男)チャット名=ああ 
何か普通の人とズレた考えを持つ人物。
荒らし発言をしていたが一応志願者の一人で、性格も荒々しい。

【伊藤 眞希 - イトウ マキ - 】18歳(女)チャット名=梓 
チャットでは男言葉で一人称も俺であった。(実際には私)
入学した大学で虐めに遭い…

【山本 愛歌 - ヤマト アイカ - 】22歳(女)チャット名=洋梨
お姉さんって感じでしっかりしている。
本人曰くただ何となく(軽い気持ち)で志願したらしいが本当は…

【白城 彩音 - シラギ アヤネ - 】16歳(女)チャット名=レイ
オドオドしていてお淑やか、控えめ。
家族で旅行中、事故に遭い自分以外死んでしまい…

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Re: 廃病院の殺人鬼 ( No.1 )
日時: 2011/01/25 19:32
名前: 燕返し ◆geiwiq3Neg (ID: ADUOsQyB)

序 章



鉛色の空…今にも雨が降り出しそうな曇天の空の下で、とある少年はただ虚ろな瞳でとある建物を眺めていた。
手には携帯電話が握られており、今はその腕はぶらりと力なく垂れ下っている。
少年はゆっくりと携帯電話に目線を落とすと、少し安堵したような、辛そうな表情をしてポツリと呟いた。

「あと1日で…ようやく楽になれるんだね…」

———カチカチカチ。
少年はふと携帯電話の画面を見て、親指で巧みにある言葉を羅列させた。
画面に映るのは、とあるサイトのチャット画面だった。


[ ゆー:○○病院に今着きました。 ]


すると、間も開かないうちに言葉が羅列される。

[ JOKER:着きましたか。では明日の午前10時過ぎにその場所にお願いします >>ゆーさん ]
[ 梓:おー、それより誰か警察に連絡したらマジ許さねぇ ]
[ 洋梨:んー、本当に場所合ってるよね?○○病院? >>ゆー君 ]
[ 神楽:私が教えたから大丈夫ですよう、心配性なんですね^^ >>洋梨さん 
  神楽:嫌ですねー梓さん、誰もケーサツなんかに電話しませんよ! >>梓さん ]

少年はその文字を見て苦笑する。けど、いずれも彼等はチャット仲間であって、そして…


[ ゆー:はい、とにかく明日死にましょう]


…共に命を絶つ仲間でもあるのだ。

[ 神楽:りょーかいですッ☆でヮ皆さん明日絶対会いましょうねッ!! ]
[ JOKER:本当は明日まで待ちたくないです ]
[ 洋梨:まぁまぁ^^; どうせ明日だし、最後の1日くらい楽しみましょうよ? >>JOKER君
  洋梨:了解〜、じゃあ今日は落ちますねー >>神楽ちゃん ]

  −洋梨さんが退室しました−

[ JOKER:…僕も落ちます ]

  −JOKERさんが退室しました− 


[ ゆー:お疲れさまでした >>洋梨さん、JOKERさん]
[ 梓:乙様 ]
[ 神楽:さーて、私達もお開きにしましょう^^ 
  神楽:今日来てない人にはちゃんと知らせときますね☆]
[ 梓:ん ]

  −梓さんが退室しました−


少年は梓という人物が退室した後、さて、という風に溜息をついた。
そして、再び携帯電話に向かい合った。
チャットに残ったのは、ゆーという自分と、神楽という人物であるが…

内緒モード[ 神楽:さーてっ、二人だけですネ☆ ]
内緒モード[ ゆー:その喋り方やめてくんない、男でしょ ]

内緒モード…二人で会話し、過去ログに残さない為の方法である。
…そう、この神楽という人物は男である。

内緒モード[ 神楽:えーっ?嫌だお^^ ]
内緒モード[ ゆー:親友として恥しい。お前だけ警察に通報してやる ]
内緒モード[ 神楽:ちょ、親友じゃんマジ勘弁orz ]

しかも少年の友人…親友と来た。
少年は深い深い溜息をついて、一言。

内緒モード[ ゆー:死ぬ気あんのお前 ]
内緒モード[ 神楽:それはある。一刻も早く死にたいくらい ]

だが、神楽もとい親友は…大事な条件はクリアしている。
このチャットは死にたい人が集う場所…少年も無論死にたがりの一人である。
チャットでふざけた言葉遣いの親友は一見すれば冷やかしの様に思えるが、
少年は自分の親友の私情を知っているが為か…それ以上追及しなかった。

[ ゆー:じゃあ僕も落ちますね ]
[ 神楽:了解ですッ☆ ]

そして少年はチャットから退室し、携帯電話を閉じた。
明日ここで…死ぬ。それは少年にとって救いになるはずだった。

そう…なる“はずだった”—————


少年は最後の空を仰ぐ。その空は皮肉にも美しく見えた。
月は病院をくっきりと夜の街に照らしあげ…



…星は怪しく、何度も瞬いていた。



Re: 廃病院の殺人鬼 ( No.2 )
日時: 2011/01/29 20:21
名前: 燕返し ◆geiwiq3Neg (ID: ADUOsQyB)


一 話   廃 病 院 と チ ャ ッ ト





死期が近づいているからと言って、時が遅く流れるように感じる…という事も無い。
何故なら、僕…“紅威 裕馬”にとって死期が近づくというのはむしろ喜ばしい事だったから。


  −ゆーさんが入室しました−

[ ゆー:おはようございます、あと一時間後ですね ]


とあるチャット…昨晩の過去ログはすでに消えており、まっさらなページにその文字が浮かび上がった。
その言葉は、僕がたった今打ち込んだ言葉だ。するとそれに反応するかのように、表示が現れる。

  −神楽さん・レイさん・JOKERさん・ああさんが入室しました−

[ 神楽:おっはー☆あぁー、もうすぐですね!皆さん! ]
[ レイ:おはようございます、昨日のログはチェックしておきました ]
[ JOKER:早く死にたい ]
[ ああ:おまいら気ィ早すぎ乙wwwwwww ]

僕が書き込みをした瞬間、昨日顔を出していないメンバーも含み四人一気に入室した。

…、
この会話を聞く限り、普通のチャットでないのは一目瞭然である。


——— そう、このチャットは…“自殺チャット”。
ジサツ志願者の集うこのチャットで、僕を含む7人がいるのだが…


今日、それも一時間後に僕等は共に命を絶つ————


  −梓さん・洋梨さんが入室しました−

[ 梓:どうも。そうか…もうあと1時間か ]
[ 洋梨:おはよう^^これで皆そろった? ]

と、そんな時に再び2名入室した。これで、今日死ぬメンバーがそろった。

[ ゆー:えぇ、皆さん揃いましたね ]

後は集合場所に集まり、死ぬ。これでようやく僕等は楽になれるのだ。
そう思うと、自然と溜息が出る…やっと終れるという解放感と安堵によって。

[ JOKER:じゃあ早く死のう ]
[ 洋梨:相変わらず鬱ってますねー^^; >>JOKER君 ]
[ JOKER:本当に死にたいんです >>洋梨さん]
[ 神楽:まぁ02☆残りの1時間くらい会話を楽しみましょうよ!
  神楽:とか言ってるけど、実は私はもう現地到着してたりするんですけどねー ]

『もう着いたのか…早いな』
僕は苦笑を浮かべ、神楽もとい親友の言葉に尋ねてみる。

内緒モード[ ゆー:マジ?もう着いたの? ]
内緒モード[ 神楽:おー、マジマジ。つーかとっくに着いてるぜ]

すると、素早く親友はそう返信してきた。

…神楽もとい僕の親友である“望月 帝”は、ある意味僕以上にジサツ志願者である。
詳しい理由は知らないが、彼はこのチャット内では最も死亡願念を抱いているであろう人物だ。
チャットではいつもふざけた口調であるが…そうでもしないと自分を保っていられないのだろう。


[ 神楽:ん?あ!もしかしてどなたか着きましたかぁ!!?今車が入って来てるんですけど? ]
[ 洋梨:あ、私。今着きました^^
[ 洋梨:神楽ちゃん何処? >>神楽ちゃん ]

まぁチャットでは女って感じに振る舞ってたから…パッと見分らないだろうな、と苦笑する。
それから一時二人の書き込みが表示されていない事から、きっと内緒モードで二人やり取りしているのだろう。

[ JOKER:皆早い、僕ももう着きます ]
[ レイ:あ、私も着きました! 
  レイ:お二人は何処? >>神楽さん・洋梨さん]

…どうやら、続々と現地に集まり始めたようだ。


[ ゆー:早いですねー、僕も早い事行きます ]


取りあえず僕はそう書きこんで、走り出す。
今は9時30分過ぎ…流石にヤバいか?


[ 梓:俺はもうちょいかかりそう ]
[ 洋梨:あ、急がなくてもいいよ?時間に間に合えば^^ >>梓君 ]
[ 神楽:そうですよー^^ 急がず焦らす、です!
  神楽:てゆうか皆さん酷いですよう、何で私を見てそんなに驚くんですかー?? ]
[ JOKER:? >>神楽 ]

驚くに決まってるだろ、と、心の中で帝に突っ込みを入れつつも、
イマイチ分っていないJOKERさんに返信してみる。

[ ゆー:あー、会ったら分りますよw >>JOKERさん ]
[ JOKER:??
  JOKER:リア? >>ゆー・神楽 ]

…だが、余計に混乱させてしまったらしい。
とりあえず僕は[ えぇまぁ ] と書き込み、しばらく病院に向け走っていったのだった。

Re: 廃病院の殺人鬼 ( No.3 )
日時: 2011/01/29 20:33
名前: 燕返し ◆geiwiq3Neg (ID: ADUOsQyB)




そこは相変わらずの静寂が支配している寂しげな場所だった。
夜と比べても、そのもの寂しげな雰囲気は変わらない…。

「おーい、裕馬!こっちだ、こっち!」

と、その時不意に僕の名を呼ぶ声がした。そちらに目をやると、親友の姿。
金色の髪に耳には紅いピアス…見た目には気を使っているのは変わらない、お洒落な奴だ。
そして、後方を見てみると三人の見慣れぬ人たちがいた。
おそらく、洋梨さん、レイさん、そして僕がチャットを覗いてない間に着いた人物だろう。

「へぇ…貴方がゆー君?思ったより可愛いじゃない。
 ———あ、私が洋梨ね。本名は山本 愛歌よ」

…このロングヘアーの大人っぽい人が洋梨さん。山本 愛歌、だ。
背も高く整った顔立ちで、スタイルもいい。

「えっと…私はレイです。本名は白城 彩音と言います」

で、このお淑やかで控えめそうな人がレイさん。白城 彩音。
眼鏡が似合う秀才そうな…僕と同い年くらいだろうか。

「…俺が、ああだ。奥村 左之」

と…このクールそうな人が、ああさん。奥村 左之。
チャットでは荒らし口調だったので、何だか意外だった。

「僕がゆーです。本名は紅威 裕馬です。————で…」

僕は一通りの人の顔を見ると、帝に向き直った。
すると、帝は眉をひそめ、腕組みをしながら言う。

「そんな目で見ないでもいいだろ、俺達はあくまで顔見知りなんだしさー」
「そうだけどさ」

僕はやはりチャットの神楽とのギャップ差を思い出すと…どうしても変な目で見てしまう。何か御免。

「でも、本当驚いたわ——まさか神楽ちゃんが男の子だったなんて」
「そうか?女口調が露骨だったからネカマって事くらいすぐ分ったけど」
「私も意外でした…」

そして、初対面の三人それぞれが帝を見て言う。ただし、ああもとい奥村は分ってたようだが。

「———あら?向こうから二人来るわね」
「ん?」

と、その時洋梨もとい山本さんが向こうをみてふと声を上げた。
4人そっちを見てみると、中学生くらいの男子と大学生くらいの女子。

「おーい、アンタ等がチャットの?」

すると、大学生女子の方はこちらに気が付き歩み寄ってきた。
…ん?残りは梓さんかJOKERさんしかいない筈。どっちもチャットでは男だったような…

「何だよー、幽霊でも見てるような顔しやがってー…私が梓だよ。本名は伊藤 眞希。んで、こっちが———」
「…JOKER。本名は五十嵐 純一」

…意外だった。梓さんって、女の人だったんだ…。だが、伊藤に神楽もとい帝の事を言うと、吃驚していた。
「うわーネカマ引くわー」「そりゃお互い様だろ」というやり取りがあったのは言うまでも無いが。
そしてJOKERさん…何か病んでる感じの中学生だ。無口そうでチャットでも少々口調が刺々しい。


「…兎にも角にも、全員そろいましたね。皆さん…後悔は無いですよね?無いなら中に入りましょう」

僕は全員の面子がそろったのを確かめると、中に入る様に促した。
できるだけ他人からの目撃を避けたいのも言うのもあったし、妙に打ち解けあってしまうのも嫌だった。
僕たちはあくまでただ一緒に死ぬだけの仲。それ以上の意味なんてないのだ。
…そう自分に言い聞かせながら、僕は一番最初に廃病院に足を踏み入れた。


————時刻は10時3分。
運命の時がゆっくりと近づいている事も知らずに、僕は死ねる事しか考えていなかった。


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