ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- たとえ世界が僕を見捨てたとしても
- 日時: 2011/02/04 21:36
- 名前: 夕凪みかん (ID: cQ6yvbR6)
こんにちはー。
夕凪みかんです!
妹を連れ去られ、王女に仕立て上げられてしまった主人公の
物語をかきたいとおもいます。
中世ヨーロッパあたりな雰囲気にしたいと思いますー!
*注意*
*グロありです。
*更新がおそい場合も
*アドバイスがあったらお願いします(注意じゃない…
でゎでゎ……
登場人物
ロラン・ディ・アリストレーネ
セレリア国にすむアリストレーネ家の長男。
亜麻色にサファイアブルーの目。兄弟を大切に思っていて、とくにか弱い妹アンバーの面倒をみる。
アンバー・ディ・アリストレーネ
アリストレーネ家の次女。心優しく美しい少女。
周辺では歌姫ともよばれるほどの美声の持ち主。輝く銀髪に琥珀色の目をしている。
ラーク・ディ・アリストレーネ
次男。ワイルドで荒々しい性格の持ち主だが、気遣いができる意外な奴。
ジェーン・ディ・アリストレーネ
三女。幼く、ロランと同じ亜麻色の髪にブルーの目。
可愛らしい顔をしているが、世話は人一倍かかる。
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- Re: たとえ世界が僕を見捨てたとしても ( No.1 )
- 日時: 2011/02/04 22:11
- 名前: 夕凪みかん (ID: cQ6yvbR6)
プロローグ 苦い記憶
「何をいっているの?わたしたち、初対面じゃない。
初めまして。わたしはリー・ライオリーン。
母は王妃ミネリア、父は国王ハトルスア」
まるで僕を本当に知らないかのように微笑みを浮かべるアンバーに、
僕は失望と懇願を交えた視線を向けた。
だがアンバーは気づく様子もなく、すっかり王女らしくなって憐れむような表情をしている。
「…嘘だよな……? アンバー?」
アンバーは笑い声を上げた。
「だから、リーといっているでしょう。人違いではないですか。たしかにわたしの瞳は琥珀だけれど…」
僕は耳をふさいだ。
「やめろ…、やめてくれ!アンバー!
僕を忘れたふりをしても無駄だ。
僕は君を忘れることなんかできないんだからな。
さあ、帰ろうよ。
僕らの家に。ラークも、ジェーンもまってる。母さんだって」
それでも微笑を浮かべたまま不思議そうに僕を見つめるアンバーは、まるで別人のようだったが、透き通るような声に銀髪、琥珀の瞳、白い肌もなにもかもあのアンバーのものだった。
「家に送ってさしあげます。今召使を呼びますから。お疲れなのでしょう」
アンバーは王女よろしく、召使を呼び寄せると、僕ににっこり笑いかけて見送ろうとした。
だが僕は目をみはって、召使に対抗した。
「アンバー!ジェーンが泣いてるんだよ、君が必要なんだ!ラークだって、君が好きだった。思い出してくれよ。君はさらわれたんだ…!」
アンバーは困ったように視線を投げかけたが、すぐに礼儀正しくお辞儀をしていった。
「さあ、おいきなさい。ああ、ジェイムズ。馬車をご用意させてあげてくださいな。ロランさま、もう疲れて……」
「アンバー…!!冗談はよせよ!僕だ、兄のロランなんだよ」
「落ち着いてください。ロラン様。案内をしますから…」
「妹がこんなところにいるのに、落ち着いてられるか!」
僕は声を荒げてジェイムズをにらみつけた。
だがもうアンバーも微笑みは浮かべておらず、けげんそうに僕をみすえたまま、怒ったように部屋に戻って行った。
「アンバー!!!………」
ふと、ジェーンのアンバーを求めて泣く声がした気がした。
- Re: たとえ世界が僕を見捨てたとしても ( No.2 )
- 日時: 2011/02/05 09:54
- 名前: 夕凪みかん (ID: cQ6yvbR6)
「兄さん。ロラン兄さん」
僕がゆっくりと振り返ると、妹のアンバーが微笑んだまま僕を見つめていた。僕は作業を止めずに答えた。「なんだい」
「ジェーンがミルクを飲みたいっていうんだけど、ないの。兄さんどこにあるかしってる?」
僕はかぶりを振った。「いいや。ラークが知ってるんじゃないか?ともかく僕は木を彫らなきゃいけないし、ジェーンの面倒はみれないしな」
アンバーは残念そうにうつむいた。
「そっか……。じゃあラークに…」
「俺がどうかしたか」
ふいに不機嫌そうな声がし、僕たちが声の方向に目をやると弟のラークが腕をくんで戸口にたっていた。
「ジェーンなら寝ちまったよ。それに俺はミルクなんか知らねえし、ひょっとしたら全部飲んだかもな」
「ラーク!」僕は声を荒げた。どうせ飲んではいないくせにこんな冗談をいうラークはあまり好きじゃなかった。
ラークは笑った。
「だって、またおとなりのシーさんの家のヤギのとこ行けっていうんだろう。ミルクが尽きたの知ってるからな、俺」
「なんで早くいってくれなかったのよ。ラーク。ジェーンはきっと喉がかわいたままで寝ちゃったのよ。かわいそうに」
アンバーがため息をついた。
「そうだ、ラーク。できればシーさんのところ行ってくれないか。僕はこれを終わらせて町に売りに行くし、アンバーは力がない」
僕は懇願するように彼に目をやってから、木を彫り始めた。ここ最近の油の売れ行きが悪く、僕たちアリストレーネ家は生活の困難を極めていた。仕方なく僕は木を彫って飾り物をつくり、町に売る仕事を務めていた。
母さんは病気で体が悪く、父さんはここ数日なぜか家にいない。
「はいはい、分かりましたよ。俺がいくさ。けどそのかわり今日の夕飯は俺が一番多くしてくれよ」
アンバーが仕方なくうなずくと、ラークは意気揚々とかけていった。最後にアンバーが叫んだ。「バケツ忘れないでね」
僕がまた仕事に専念していると、やがてアンバーが決心したように僕に目をやった。琥珀色の瞳が物憂げに光っている。
「兄さん。わたし歌を歌おうかしら。わたしが得意なのは家事と歌だけだもの。そろそろ町中の人たちにお金をいただいてもいい頃だと思うの」
僕は深く考え込んで目を細めた。アンバーはたしかに歌が上手い。まるで小鳥のさえずりのように、生まれた時から歌をしっていたようで、洗練された歌手よりも自然で美しい歌を歌うことができた。
近所では「歌姫」とも呼ばれる彼女のことだから、たとえ町で公演をやったとしてもすぐにお金が入るだろう。
けれど僕はなぜかイヤだった。
「やめたほうがいいよ、アンバー。君の声は大切にしまっておくんだ。なんとか今は少量の油と僕の木彫りでお金を稼いでる。ほんとうにみんなが苦しむようになってから君が助けてほしい」
アンバーはふと黙り込んで僕を上目づかいで見つめた。
- Re: たとえ世界が僕を見捨てたとしても ( No.3 )
- 日時: 2011/02/05 21:28
- 名前: 夕凪みかん (ID: cQ6yvbR6)
「わかったわよ、兄さん。けど、もし大変なことになったらもう手段を選ばないからね」
いつもはか弱い少女が、このときばかり男勝りなのをみて、僕は思わず顔がほころんだ。アンバーは目を細めて、ちゃんとした計画を立てるといった。
「いつ不況になってもわからないからね。この国は。わたしができることをしないと」
「ありがとう、アンバー。ラークもそうだといいんだけど」
アンバーは笑った。「あら、ラークもたまにはちゃんとやってくれるのよ。感謝しないと」
「たまに……か」僕は苦笑をもらした。
アンバーは僕ににっこりと笑いかけるとジェーンの様子をみるために部屋を立ち去って行った。まるで妖精のようだ、と僕は思った。
シャンパンゴールドのような琥珀の瞳をきらめかせ、輝く銀髪を波打たせる彼女は本当に美しかった。
兄だから妹が美しいだなんて思ってはいけないのかもしれないが、あの整った顔立ちに微笑を浮かぶと、思わず見入るのはどうしようもなかった。
あのラークでさえ、アンバーを見るたび僕のみみもとでささやくのだ。
「アンバーは将来、えらい別嬪になるぞ。俺たちきっと置いてけぼりだ」
*
翌日、ヤギの乳を飲むことができて上機嫌なジェーンが騒ぎ出した。
「アンバー!アンバー!お外につれてって。外はあったかいわ」
僕はあわててかけよった。
「よしよし、ジェーン。アンバーはいま忙しいんだ。もう少し待とうね」
かわいいジェーンの唇がピクっと動いた。
「じゃあ、ロランでもいいの。おねがい、お外!!」
僕は困り果てて黙ってしまった。これから木彫りの完成品を売りにいくところだったのに。アンバーはタペストリーを売るとかで部屋にこもって布でつくっているし、ラークは母さんの看病をしてる。
仕方なく僕はジェーンをつれていくことにした。不機嫌になって貴重なヤギの乳を全部飲まれたらたまらない。
「じゃあ、行こう。背中に背負ってやる。けど、あまりかまってはやれないよ。売りにいくんだからね」
ジェーンはゆっくりとうなずいた。
その日はジェーンのいったとおり、とても暖かく、天気が良かった。
ここしばらく厳しい冬の寒さが続いていたので、町の人々すらみんな活気に満ちている。
また寒さがくるまえに満足するまで遊ぶつもりなのかもしれない。
「ロラン、あったかいわね。あ!あれ食べたいわ。どうしてウチにあれはないの?」
ジェーンがひっきりなしに僕をつついては不満げに鼻を鳴らした。そのたび僕はため息をついて彼女をなだめなければならなかった。
「いい子だから静かにしてくれよ。今回の報酬がこれからの生活が苦か楽かを決めるんだから」
「あたし、よくわからないわ」
わからなくてもとりあえずは黙らすことができた。やがて彼女もつかれたのか眠ってしまった。
その間僕は仕事に専念することができ、18個中13個をなんとか売ることができた。一つ一つ丹精こめてつくったので、上流階級の人々は気前よく金をはらってくれた。
「アリストレーネ家の子じゃないか。あの美人の母親によろしくな」
「はい」
「そうだ。これを持っていくといい。小さなお嬢ちゃんもきっと気に入るだろう」
そういってある紳士なんかは、ビスケットの箱を3つもくれた。
僕が感激して礼をいうと、彼は苦笑して答えた。
「気にするなよ。ただのおやつなんだから」
夕闇が町に迫ってくると、僕は帰路へついた。ジェーンはぐっすりと寝入っている。すると、広場の方から歓声が聞こえてきた。
「なんだ、あの子は!なんてすばらしい歌声だ」
歌声?アンバーのライバルでも出現したのだろうか?
僕は好奇心にかられて広場の方へかけていった。だが次の瞬間広場で可憐な声を響かせていたある少女を目にしたとたん、僕は心臓が凍りつくのを感じた。
広場の「ヘース・レディ」と呼ばれる台にのっている少女は紛れもなくあのアンバーだったのだ。アンバーはすてきな衣装をきて髪を優雅にたらし、目を閉じてその天使の歌声を披露していた。
すでに周りに集まっている人たちはゆうに100人を超えている。
「なんていう子だ?」
「きれいな子だな」
「ばか。お前なんかに釣り合うかよ」
数人の青年がそばで騒いでいるが、誰も僕がその少女の兄だなんて知らないだろう。僕は信じられない思いでその様子をみつめ、そしてまたアンバーの歌に魅入られていた。
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