ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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-星霜の魔導書-
日時: 2011/03/02 22:47
名前: 深山羊 (ID: DZWfhZUD)

どうも、初めましての方は初めまして、見知った方はこんにちは、深山羊です。

今回は『深山流』王道ファンタジーを書かせていただきます。

今作はファンタジーと銘打っておりますがなにぶん『深山流』なのでよろしくない表現を含みます。
多くを語るよりも文面で魅せて行きたいと思います(見れる文にはなってると思います)。
それでもよろしい方はどうぞ読んでやってください。

ほかにも色々書いてますのでよければそちらもどうぞ。

もくじ
プロローグ
>>1
第一節 -レリオロス騎士団-
>>2-8


【用語】
レリオロス騎士団【れりおろすきしだん】
魔導書【まどうしょ】


【魔導書リスト】

【偶者の旅断ち】(ぐうしゃのたびだち)

【憧れの君】(あこがれのきみ)

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プロローグ ( No.1 )
日時: 2011/02/10 20:19
名前: 深山羊 (ID: wkhjenUE)


 空には幾億の星が輝いていた。
 幾億の星空の下に赤みがかった茶髪をした青年が横たわっていた。
 彼の額からは血が流れ、やがてそれが閉じられた眼に浸みていく。
 すると青年はゆっくりと目を開けて片腕で目をぬぐう。
 血で濡れていた目は徐々にその色を表す、エメラルドグリーンの色をした瞳。
 青年は体を起して辺りを見回す。
 空は暗く唯一の光は星の輝きだけだが辺りは昼の様にしっかりと目で分かる。
 緑に覆われたその場所に唯一の家が青年の視界に入った。
 草原の上に立ち、スボン、コートについた草を掃う。
 少しだが血で濡れたコート。しかし、元々赤に浸したような色をしているので目立つことは無かった。
 広い草原に一人。走ることも焦ることもせずに家に近づく。
 形容しがたいその家の材質に青年は触れたりして考えるが結局何も分からなかった。
 そして、木製のドアに手を当ててゆっくりと押して中に———

第一節 -レリオロス騎士団- ( No.2 )
日時: 2011/02/13 00:34
名前: 深山羊 (ID: wkhjenUE)

「ここに集まった生徒諸君、君たちはレリオロス騎士団に一年間研修として配属される。その意味は———」
 頭の毛が薄くなってきている年を取った男が声を張り上げ壇上にて話を始めた。
 何人もの生徒の中に取り分け目立つ訳でもないが少し奇妙な髪色をした青年が小さく欠伸を噛み殺している。
 せっかく整えた髪をくしゃくしゃと掻いて不貞腐れた顔を上げて話を聞く。
 彼はこの年から騎士団に研修として入団することとなるケートラル・カテフモイ。
 まさか荷物を持ったままで話を聞くことになるとは思っていなかったので、気だるそうにして話を聞き流す。
 どこを見回しても同じ色のコートを着込み同じ刺繍の刻まれた鞄を持った者達が気だるそうに立って聞いていた。
「では、次に皇女殿下のお言葉だ」
 それを聞くと気だるそうにしていた者たちも含め全体が一斉にシャキッとする。
 喋っていた男が後ろに下がり、少ししてから真っ赤なワインレッドのドレスを着た女の子が壇上で口を開く
「みなさん、おはようございます。ミトレルカです。今年から研修という形で騎士団に入隊するみなさまに皇女として叱咤激励をさせていただきます」
 決して大声ではないのに透き通るように響く声。
 ミトレルカはドレスと同じ綺麗な赤い髪をまとめて後ろで括り(くくり)動きやすいようにしている。
 顔を左右に動かしたり目線を変えたりとまるでここに居る全ての生徒の顔を一人一人見ているかのようだ。
 その真っ赤な瞳と目線が合うとつい生徒たちは頬を赤らめて目をそらしてしまうほどに皆を魅了する、そんな雰囲気を持った人物。
「———であるからして、私は皆さまに———」
 叱咤激励の途中、ミトレルカは一人、回りが暗めの髪の色をしていたのが原因で一人の青年が目についた。
 赤みがかった茶髪にしっかりと見える緑色の瞳。赤い眼で緑の眼を見る、すると目線が合った。
 緑の眼の青年は眼をそらすどころか赤い眼を見据えている。
 そうなると今度はミトレルカが目をそらして話を続けた。
 演説中に目を見返してくる者など身内にしかいなかったのに、と思いつつ少し長い叱咤激励を終えようとしていた。
「———それではみなさん。この国をよろしくお願いします」
 ミトレルカは演説を終え、深々と頭を下げた。そして、舞台袖に消えていく。
「ったく……。テメェ等ッ!」
 次にめんどくさそうに出てきて叫んだのは普通じゃあり得ない黒色の騎士団制服を着た男、そのまま壇上に立ち、喋り出す。
 この男は髪の色から瞳の色まで真っ黒で統一されているようだった。
「おれは騎士団の中の一つの隊長のヴォラルドだ、テメェ等見習い共はまず各隊に配属される。それをここで決める」
 そう言うと男は壇上の上に置かれた本を手にした。
「とりあえず、肝だめしだ」
 そう言って手にした本のページをめくり全体の三分の一のところで手を止め
「偶者の旅断ち(ぐうしゃのたびだち)、第二節、一文抜粋、

 『我は汝の道知らず、己が道さえ前見えず』」

 言い終わったと同時に辺り一面が闇に沈んだように暗闇に支配される。
 その瞬間叫び出す者や焦り出す者様々な態度をとった。
 その中でケートラルは焦りを見せる前に考え、
 これには何の意味があるのだろうかと、そう思考した直後、足を誰かに引っ張られた。
 後ろからでもなく前から左右からでもない。真下から足を引かれ、暗闇のさらにその奥へと引きずりこまれる———
 感じた直後、ケートラルは先ほど本を読んだヴォラルドの前に立っていた。
 ヴォラルドは関心する様な声を上げてニヤリと笑い
「なんて名前だ?」
 反射的にケートラルは答えた。
「ケートラル・カテフモイです」
「良い返事だ」
 ヴォラルドは頷き踵を返して歩き出す
 それをケートラルが茫然と見ていると
「ついてこい」
 足を速めてヴォラルドの後ろについてケートラルは歩き出した。
「あの」
 後ろをついていきながらヴォラルドに声をかけて聞く。
「さっきのって一体何なんですか?」
 一切振り向かず淡々と目的地に向かい歩く、しかし質問に対して律儀にもヴォラルドは答え
「あれは偶者の旅断ちって魔導書だ」
 それを聞いて魔導書?、と繰り返す。
「そうだ。あれは人の心を、考えを、その他諸々でそいつがどんな奴か分かるって代物だ」
 ケートラルはゾクリとした。そっちを見るまでもなくヴォラルドは豪快に笑う。
「安心しな、お前は中々面白い奴だ。今回はおれにもツキがあったって訳だ」
 後半は何を言っているのか分からないと言った表情をする。そしてすぐにとりあえずは何ともないと分かり安堵した。
「それと、一体どこに向かっているんですか?」
 ヴォラルドは今度はかっかっかっと笑い
「うちの隊だよ。カテフモイ君、君はうちの隊に所属するんだよ」
 芝居がかった風にまた一人笑いだす。
 ケートラルは何故か肩に下げた鞄が重く感じた。

第一節 -レリオロス騎士団- ( No.3 )
日時: 2011/02/13 22:19
名前: 深山羊 (ID: wkhjenUE)

 そうこう思考している間にヴォラルドは足を止めドアを開く。
 肩に下げた鞄を下ろすことなくケートラルは配属先の隊室へと連れてこられた。
 ヴォラルドが入ると中から数人の声が聞こえ
「お前ら、面白い研修生を捕まえてきたぜ」
 隊室へと足を踏み入れて中を覗くケートラル。中にはヴォラルドの他に四人の隊員がそれぞれ自由に腰かけていた。
「隊長」
 口にしたのは金髪の青年。
「なんだ、ハルジルト」
 ハルジルトと呼ばれた青年は眼つきを鋭くしてケートラルを睨む。
「こいつが今年の、ですか」
「ああ、生きがいいぜ?」
 からかう様な口調にハルジルトは剣呑な表情を浮かべて手に持っていた己の剣を磨き始める。
 ケートラルは乾いた笑いを浮かべて、この隊で一年戦うのかと考えて心の中で嘆息たんそくした。
「とりあえず、自己紹介しな」
 ドンッと背中を押されてケートラルはよろめく、すぐにバランスを取り気を引き締めて声を出した。
「この隊に配属となりました、ケートラル・カテフモイです。よろしくお願いします」
 小さな拍手が短い間あるだけ、あとは皆が皆自分のことをやり始め、ケートラルはそろそろ不安の色を隠せない。
「まあ、気にするな。付き合いが長くなればマシにはなるだろうさ」
 ヴォラルドはたいして気にすることじゃないと笑い飛ばす。
「はい、分かりました」
 明らかに嘆息した様子で肩を落とし、肩に掛けた鞄をしっかりと肩にかけなおした。
「んじゃ、まあ今日はこの辺でいいぜ、後は寄宿舎でゆっくりして来い。明日からは忙しいからな」
 それを聞いて失礼しますと言って、とぼとぼとした足取りで今日から住むことになる寄宿舎へケートラルは足を運ぶ。
 寄宿舎は隊室から遠く、半刻ほど歩かなければならないほど。
 ぶつくさと文句を垂れつつその半刻ほどを歩く。
 ケートラルが気がつくころには寄宿舎の前に立っていた。
「……ここか」
 ぽつりとつぶやく。
 外観は赤茶色の壁に緑の屋根、大きなお屋敷といった雰囲気の建物。
 玄関の前には向こうが透けるように見えるくらいに透明な髪の色をした女性が箒を手に掃除している。
 ケートラルに気がついたのか箒を立て掛けて近づく。
「もしかして今日から寄宿舎泊まり?」
「はい。ケートラル・カテフモイと言います」
 礼儀正しく頭を下げるケートラル。それを見て柔和な笑みを浮かべて
「私はカジルア、ここの寮長よ」
 その表情にケートラルは見惚れてしまう。
「どうしたの?」
 カルジアは覗きこむようにケートラルの瞳を覗いた。
 ケートラルはカルジアの銀色の瞳にさらに引きこまれそうになったが自制心を働かして
「えっと、どの部屋を使えばいいですかね」
 あらいけないと表情でそう言って玄関へ向かう。振り向いて
「ほら、ついてつなさい」
 優しい表情にケートラルはついつい見とれてしまう。
「はい」
 長い髪を揺らすカジルアの背中についていく。
 中に入ると大きなロビーが正面玄関と合体していて、二階に上がる階段は白く手入れが行き届いてある。
「それじゃあっと、どこ開いてたかなー」
 楽しそうしてロビーの受付カウンターに入って一冊の本を取り出した。
 カジルアはカウンターに本を置いて五分の二ページほどめくり指を止め
「憧れのあこがれのきみ、第五節、一文抜粋、

 『今はどこ、君のいるのはどこの部屋』」

 歌う様な声にケートラルは体に鳥肌を覚えた。
 数秒もせずに本をたたむ、そしてもう一度開くとページとページの間にキープレートの付いた鍵が挟まれてあった。
 それを何一つためらわず手に取りケートラルに手渡した。
「2-33号室ね」
「ありがとうございます」
 鍵を受け取り呆けた笑顔を浮かべている。
「二階の左側の通路に2-33号室あるから。あと相部屋じゃなくて一人一部屋だから気軽に使ってね、それとそれとゴミの日は決まってるから後で確認に来ること」
 矢継ぎ早始に言い終えるとカジルアは玄関先へ戻った。
 これまた呆けた顔でその背中を見送るケートラルであった。
 見届けてからケートラルは二階への階段を見てから意気揚々と自室へ向かう。
 白い階段を出来るだけ汚さないように昇り左側の通路へと向きを変える。
 左に曲がってすぐの扉から三つ目の扉に鉄のプレートで2-33と書かれているのを目にしてケートラルは受け取った鍵を差し込み部屋に足を踏み入れた。
 部屋の内装は落ち着いた雰囲気で奥に窓があり傍にベットが一つ。何も入ってない本棚に、机と椅子がセットで置いてある。
 丁寧にクローゼットまで用意され、何時でも誰かが入って来てもすぐ使えるような仕様。
 今日から約一年、ここがケートラルの部屋となるのだ。
 期待と不安を重ねケートラルはゆっくりと後ろ手に部屋のを閉めた。




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