ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 巡ツテ地獄
- 日時: 2011/02/19 09:29
- 名前: 毒を食らわば皿まで ◆jS4UFL/cLE (ID: gwrG8cb2)
初めまして。毒を食らわば皿までです。
和風(歴史?)のグロ系を目指して頑張ります。素人故、下手な所もあります。そう言うのが不快な方は退室下さい。
アドバイスやコメントはいつでもお待ちしております。
基本的なルールは守って下さい。では、宜しくお願いします。
次は登場人物です。CVでは勝手に声優さんをイメージさせてもらってます。敬称略です。
艶香/つやか/女 CV 鈴木麻里子
「敵も馬鹿ね。私一人に大袈裟よ」
妖しい雰囲気を持つ謎の美女。強さは超一流。
焔 夏炎/ほむら かえん/男 CV 草尾毅
「姫。貴方は私がお守りします」
忠誠心溢れる義士。槍の名手。
蘭姫/らんひめ/女 CV 桑原法子
「許しません。何があっても許しません……」
無力な事を嘆く姫君。心優しく美しい。
弌片 清瀧/ひとひら せいりゅう/男 CV神奈延年
「別に私はお前の味方だったわけではない」
残忍で非道。人は捨て駒。大剣を扱う事に長けている。
これくらいです。また増えるかもしれません。
「巡ツテ地獄」
第壱章「蘭花の覚醒め」>>01 >>02 >>03
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- Re: 巡ツテ地獄 ( No.1 )
- 日時: 2011/02/18 17:37
- 名前: 毒を食らわば皿まで ◆jS4UFL/cLE (ID: gwrG8cb2)
「いたぞ、敵国の姫だ!!」
「捕らえろ、捕らえろー!!」
炎上する城に、たった一人で、怯えた様子もなく立つ姫と呼ばれた存在。
彼女は不敵な笑みを浮かべて、こう告げた。
「可愛い蘭の花の復讐ね。愉しい所に連れて行ってくれるんでしょう?」
第壱章 「蘭花の覚醒め」
「……そうですか、よくやりました」
彼女は蘭姫。かつて城を滅ぼされ、父母を殺され、それでもまた姫と言うに相応しい地位にまで登ってきた女。
否、女と言うには余りに幼い。まだ少女の顔つきをしている。
「あの女の拷問は如何様に……」
彼女に跪き、敵国の姫を捕らえた事を告げる兵。顔には疲れの色がありありと見える。
姫きっての願いで、わざわざ遠方の、魔が棲む国から攻めたのだ。
「私が直々に確かめます。あの者が、本当にお父様より力を誇ったお方なのか……」
その大きな黒い瞳には似合わない、憎悪の色が広がる。その瞳はただ遠くを、誰も知らない遠くを見ていた。
「……」
蘭姫の前には、麻の縄で縛り上げられた、蘭姫より幾分大人の女の身体が在った。
蘭姫に見下ろされ、怯えた様子なくただ口元に薄い笑みを浮かべているのは捕虜に取られた艶香と言う女。
「……」
二人の間に沈黙が流れる。あまりに短いが、永遠と感じられる時間。人の感覚は不思議なものだ。
「……貴方が殺めたお人の名前は、お忘れでしょうか……」
蘭姫は不意にこう告げる。艶香に問うたのではない。ただ、本当に呟いただけだった。
「一々殺した人間の名前なんて覚えてないわ」
挑発気味に艶香はこう言う。答えなければ、彼女の憎悪を再び燃え上がらせる事はなかった。
- Re: 巡ツテ地獄 ( No.2 )
- 日時: 2011/02/18 17:51
- 名前: 毒を食らわば皿まで ◆jS4UFL/cLE (ID: gwrG8cb2)
「お黙りなさい!!」
か細い大声で怒鳴る。だが、その程度で艶香は怯みはしない。
「……でも、貴方の父母の事はよく覚えてるわ」
不意に艶香はこう言う。蘭姫も少しは話を聞く気になったのか、艶香の方を向く。
「私の足元に跪いて『娘だけは、蘭だけはどうか助けてくれ』と縋って懇願したのよ」
ふふふ、と上品で非道な笑い声が響く。
「黙りなさい、黙りなさい! お父様を侮辱する事は許しません!!」
目に涙を一杯溜めて、頭を左右に振り、そう喚く。
「『許さない』からどうするの?」
その続きを愉しみにしているようだった。死に恐れなどない。そう瞳が告げていた。
「っ……!!」
胸に隠していた小太刀を抜き取り、降り下ろそうとする。だが、彼女にはできない。
心優しき姫には、人を傷つけるなどできない。だが、艶香はそれを嘲笑う。
「如何したの。この胸に刺せばいいのよ。そうすれば憎い相手は死ぬのよ。復讐は成功するのよ」
言葉で散々甚振って、心に傷を付ける。この行為に悪意を感じる事はない。感じるのは優越感。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」
狂ったように泣き喚く蘭姫。
殺したい、殺したいほど憎い。でも殺せない。殺せたら、どれだけ救われるだろう。
「殺していいのよ……。簡単じゃない。その鋭利な刃物で一突きにすればいいのよ……」
泣き狂う蘭姫を見て優越を感じつつ、尚も蘭姫を挑発する。肌蹴た胸元を自ら小太刀に近付ける。
「このまま力を入れて御覧なさい……」
- Re: 巡ツテ地獄 ( No.3 )
- 日時: 2011/02/19 09:28
- 名前: 毒を食らわば皿まで ◆jS4UFL/cLE (ID: gwrG8cb2)
小太刀に近づく白い胸元。やがて、小太刀はその白い肉の間に分け入り、赤い血を滴らせる。
「いやっ!!」
軽く刺さった程度。勿論、蘭姫が力を込めたのではない。艶香が自ら傷を付けた。
「如何したのよ……。貴方は私が死ぬ事を望んでいるのでしょう?」
本当に不思議だ、と言う顔を艶香は見せた。殺したい相手を何故殺さない。
何故殺す事に躊躇いを持つ。あまりに人を斬りすぎた艶香には、それが解らなかった。
「確かに、この時代は人を斬っていかないと生きていけません。でも……」
蘭姫の声に、艶香は静かに耳を傾けていた。自分とは全く違う感覚を持った、その女に惹かれたのだった。
「やっぱり人を殺すのは悪い事なんです。それはどんな世界でも変わりません」
喩え恨んだ相手であろうと、同じ人間から生まれた同じ人間。何処かで繋がりはあると思う。
その繋がりを絶やす事は、蘭姫にはできなかった。
「……綺麗事ね」
反吐が出るほど綺麗事。この時代、人を殺してはいけないと教わった人間はいない。
教え通り、憎しみ合い、殺し合い、裏切り合い……。この汚い世界に従って行く。
だが、次第に感覚は麻痺し、憎しみ、殺し、裏切り……。それにある種の快楽を覚えるようになった。
所詮人間は自分が一番可愛い。誰だって自分が死にかければ、どんな存在であっても見捨てる事が出来る。
それが一番人間らしい。人間らしく足掻き、時には裏切り……。その無様な様を艶香は嗤っていた。
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