ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

 − 血 −
日時: 2011/02/21 21:47
名前: ひーらぎ (ID: BcdVt4VG)



—————もし私がこんな血を持っていなかったら、

     もし貴方がそんな血を持っていなかったら。




こんなに涙を流すこともなかった。
こんなに後悔することもなかった。
こんなに苦しくなることもなかった。
こんなに貴方に会いたいと思うこともなかった。




————全部全部、









”血”のせい。

Page:1



Re:  − 血 − ( No.1 )
日時: 2011/02/21 22:03
名前: ひーらぎ (ID: BcdVt4VG)


真っ暗な世界。真っ暗な視界。
———全て全てが、真っ暗な所に私はいる。



「………」


目をこすり、すくっと立ち上がる。


…真っ暗な世界にいる私はというと、真っ暗な世界にいるからこそ、人間の血を持っていない。
——別に、いらない。人間の血などいらない。
…けど、もっともっと、もっともっともっと……



———もっともっと、いらない血を持っている。



「ミクリ!」




私の名がどこかで呼ばれている気がした。

……キョロキョロと周りを見てみるけど誰もいない。
気のせい?そうだよね。気のせいだよね。


「ミクリ!こっちだミクリ」


……いや、気のせいじゃない。


「…!お父様」


私は声のするほうへと走った。急がなくちゃ。急がなくちゃ…!




「…すっ、すみません!早く来れず…っ」


——————声には聞き覚えがあった。


けれどまさかお父様が私を呼んでいるとは思わなかった。
…嘘だと、信じたかった。


「呼ばれたらすぐ来いと言っているだろう!!??」




———ガスッ




黒く尖った物で刺され、私は壁に飛ばされる。



痛い。痛い。痛い。







……けど、そんな言葉、口にする事などできない。






「すみませんでしたお父様…」

「全く、相変わらずだな御前は」


はぁっと大きなため息をつくお父様を見て、私は胸が苦しくなった。
怖い、怖い、怖い。
お父様が怖い。早く話をしてどこかへ行ってほしい…!



「あ、あの…それで、お話とは」

「あぁ、そろそろ御前には天使を呪ってほしいと思ってな」




「……え!?」




ヒゲをいじりながら楽しそうにいうお父様の言葉に私は叫んだ。
お父様は目を丸くし、「なんだ嬉しくないのか?」という。

……さっき言った、”いらない血”……





———この血をついに、お父様の為に、たくさん使う日がやってきた。

Re:  − 血 − ( No.2 )
日時: 2011/02/21 22:15
名前: ひーらぎ (ID: BcdVt4VG)


———いらない血とは何か?


……この世で最も、私がいらなかった血。人間の血より、どの血よりもいらなかった血——…






”悪魔の血”








…私のお父様は悪魔の大王。
その娘の私は、もちろん悪魔の血を引いている。
人間を呪ったりと、大王のお父様には私は仕事をたくさん任される。
…もちろん、お父様の言うことは絶対だから。

本当は嫌だ。
人間を呪うことなどやりたくないし、悪魔にもなりたくなかった。


どちらかというと………




「…人間の方が、悪魔よりいい」

「ん?何か言ったか、ミクリ」

「———いっ、いえ!なんでもないです!」


「?そうか」

「………え、えっと、私…天使を呪う為の準備にいってきます!」




———大王のお父様の血を引く私は、悪魔の力はとても強い。
だからお父様に頼まれ、これまでいろんな人間を呪ってきた。

どれも全て完璧に呪えた。




…これは、悪魔にとっては軽い仕事。






…大仕事なのは、











「…天使を呪うこと…!」






悪魔の敵の天使をうまく呪えた人など10人中3人しかできなかった………
などと、天使を呪えた悪魔はとても”すごい”のだ。



私のお父様はこれまで何千人もの人間を呪い、うまく呪えることが難しい天使も10人前後呪ってきた。
このことからお父様は大王となり、悪魔の頂点を立っている。




…だから、お父様は次の大王は私に任せたいのだろう。






「…はぁ」



正直、あのお父様でさえ10人前後しか呪えなかった天使を、こんな私が天使を1人でも呪えるとは思えない。
———…でも、きっと呪えなかったら……また、痛い目にあうんだろうな。


大王の娘が天使を呪えなかったら…なんて、恥だものね。





「……もうやだ」






……でも、これが私の人生だから。






……——————————人生、だから……。

Re:  − 血 − ( No.3 )
日時: 2011/02/21 22:28
名前: ひーらぎ (ID: BcdVt4VG)

「では、いってきます…っ!」

「おう、必ず1人でも呪ってくるんだぞ」

「…っ、は、はい!!」



私は地獄を抜ける。
…天使といったらやっぱり、天国にいるのかな?
でも…私は悪魔なんだし(見た目も)天国に行けるのは難しいよね…。



「どーしよ…」




……やばい、まず天使にどうやって会うかって所から悩んでる。
…やっぱり、天国に行くしか方法はないよね。うん。

じゃぁ見た目をどうにかして天使に化けて、天使を騙して最後には呪う————…よし、こういう方法でいけばいい!





…でも天使ってどんな感じだっけ?
えと、頭の上に黄色い輪っかがあって羽はえてて……みたいな感じだよね?




…じゃぁ、こんな真っ黒な服と悪魔の羽と黒い鎌なんてダメダメだよね。


えーと、じゃぁまず白い服着よう。で、鎌はでっかいリボンで隠して、黒い羽はペンキで白く塗る…っと。



「…あ、黄色い輪っかどうしよう」



…ま、いいや。この時点で結構天使に見えてるし。
黄色い輪っかはなくしたっていえばいいか。(ぉい




————よし!






このまま天国までいかなくちゃ!

Re:  − 血 − ( No.4 )
日時: 2011/02/21 22:40
名前: ひーらぎ (ID: BcdVt4VG)


「——…貴方は本当に天使ですか?」

「…は、はい!天使です」


天国に入るには何故か門番がいるらしく、本当に天使かどうか確かめなくてはいけないらしい。
ここで私が悪魔だとバレたら大変だ。

だから絶対バレないようにしなくちゃいけない…っ!


「…では、パスワードを」

「…え?パスワード…?」


「はい、パスワードです。天使なら全員言えるパスワードがあるでしょう?言えないのなら貴方は天使ではありません。悪魔ということになります」


「え……っ」





—————どうしよう!!!????





ど、どうしよう。どうすればいいの?
パスワードなんて分かるわけがない。(私、悪魔だし)
どうしよ—————————っ!!!!助けてお父様!!!


「1059104」


「…え?」




耳元で誰かの声が聞こえた。
振り向いてみると——……


「1059104。これでOKだよね?」

「…えぇ。OKです。…ですがゼロク様。先客がいたのですから。順番は守ってください」

「あはは、ごめんごめん。俺待つの嫌いだからさ」


「…はぁ。まぁいいです。ではもう1人の——………と?貴方お名前は?」


門番の人はため息をつきながらも、眉をピクリと上げ、私の顔を見て目を細める。



…え、えっとえっと…っ、パスワードは1059104だよね!?
語呂合わせで”てんごくてんし”!(※10=テン 5=ご 9=く 4=し)



「え、えっと、1059104!」

「いえ、パスワードではありません。名前を聞いています」

「あ、そ、そうでしたね!えっと……っ、ミ、ミクリといいます!ミクリ・ドロ・アワクです!」

「…はて?そのような名前の方は悪魔でいたような…」





「————!!(やばっ)」




私のバカ!こういう時は偽名よ偽名!




「ま、まちがえました!ミクレ・ドロ・アワク!」

「…ミクレ様。ではどうぞ」






————あっ、危なかった…っ!!


Page:1



この掲示板は過去ログ化されています。