ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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僕等は非日常に恋をする act.05更新
日時: 2011/03/14 11:52
名前: 千臥 ◆g3Ntw.kZAQ (ID: QiHeJRe.)

Click Thanks!!

シリアス・ダークお初の千臥(チカ)と申します。
ではまず、幾つかの事前通告を↓

■Advance Notice...
・荒らし目的の方は今すぐUターン。
・題名、内容が似ているなどの苦情は受け付け、善処いたしますが
 題名、内容を変えてくれなどという要望は受け付けられません。
・本体同士の喧嘩はお控えください。
・また、流血表現などが苦手な方は閲覧を極力お控えください。

以上です。
上記を読み「自分は大丈夫!!」という方は先にお進みください。
とてつもない駄作となりますが、楽しんでいただけたら光栄です^^

■Contents...

Prologue  >>01

act.01  >>02  【始まりは僕等の好奇心から[ⅰ]】
act.02  >>04  【始まりは僕等の好奇心から[ⅱ]】
act.03  >>05  【紅き花の想いとは[ⅰ]】
act.04  >>06  【紅き花の想いとは[ⅱ]】
act.05  >>09  【紅き花の想いとは[ⅲ]】

■Reader...

RYUKI様・風様

■News...
東日本大震災  >>10

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Re: 僕等は非日常に恋をする ( No.1 )
日時: 2011/02/22 10:03
名前: 千臥 ◆g3Ntw.kZAQ (ID: 4fZ9Hn2K)

Prologue...

AM.7:00
鳴り響く目覚まし時計も
母親の作った美味しそうな朝食の匂いも
父親がコーヒーを啜(スス)りつつ捲る新聞の音も
星座占いのBGMも

いつもと何も変わらず
しかし、変わらないことが嫌だというわけでもない。
むしろこの何も変わらない“日常”が少年は好きだった。

「この日常から脱却したい!!」

なんて友人は言っていたが、少年はそうは思わない。
日常からの脱却、つまり奇奇怪怪な非日常を体験しにいくということ。
自らこの幸せな日常を捨ててそんな危なげな橋を渡りたいだなんて、理解しかねる。
ここまで読めば、少年がどんな人間なのか少しは理解できただろう。
一言で言えば、冷めてしまっているのだ。
十六歳、高校二年生……
一生の中で最も楽しいと言われている高校生活。
悪に憧れる年頃でもあるし、いつも違うことが体験したいと思うのも普通であると言える。
しかし少年にはそういう考えがなかった。
この日常が、普通が、平凡が、愛しい。
そんなまるで中年のような、もしくは老年のような考えを持っていた。

そんな日常を愛する少年の住む地域で
あるものが流行りだした。

“都市伝説”

それは、近代あるいは現代に広がったとみられる口承の一種で、
原点はオルレアンの噂、
1969年、フランスのオルレアン地方で「ブティックに入った女性が次々と行方不明になる」というものだ。
行方不明となった女性は臓器売買に使われる、四肢を切断され見世物にされる、など様々だった。
有名なものなら
人面犬や口裂け女、首なしライダーなどが挙げられる。

もちろん流行に敏感な高校生の間でも都市伝説は瞬く間に広がっていった。
少年の友人も例外ではなく、
毎日毎日ネタを仕入れてきては、聞いてるか聞いてないか分からない少年に延々と話し続けていた。

ふと、鼓動が速まるのを少年は感じた。
口では「馬鹿らしい。ガキか」なんて言っていたが、
内心……わくわくしていたのかもしれない。
己が嫌う、非日常に
少年が心を惹かれた、そんな瞬間だった。



僕 等 は 非 日 常 に 恋 を す る







Re: 僕等は非日常に恋をする ( No.2 )
日時: 2011/02/24 12:40
名前: 千臥 ◆g3Ntw.kZAQ (ID: 4fZ9Hn2K)

act.01 【始まりは僕等の好奇心から[ⅰ]】

「千歳千歳千歳!!」

午前の授業が終了し、昼食時間となった。
そんな時、廊下辺りから聞き慣れた声が聞こえる。
馬鹿の一つ覚えみたいに自分の名を連呼するのはアイツぐらいだ。
久我千歳(クガ チトセ)は残り数秒で教室に乱入してくる人物の顔を思い浮かべ、額に青筋を浮かべた。
「千歳!! 聞いたか!?」
ほら、来た。
乱暴に開けられたドア。
そこには友人である柏木伊月(カシワギ イツキ)が立っていた。
恐らく廊下を爆走してきたのだろう。
随分と息を切らしているようだ。
「聞いてない。聞かない。興味ない。帰れ!!」
千歳は目の前に立った伊月にそう言って、己の昼食である調理パンを頬張った。
「今回の都市伝説はすげぇんだよ!! 目撃者も被害者もいるんだから!!」
いつもなら一度断れば、勝手に喋って勝手に満足して帰っていくのだが……。
今日はなんだか妙に息巻いている。
……正直、引いてしまいそうだ。
いや、引いた。
「……分かった。聞いてやるから早く話せよ」
伊月の目の輝きようはもはや異常の域ではないだろうか。

最近流行りだした“都市伝説”
嘘くさいものから現実味のあるものまで……。
たった一ヶ月の時間で千歳達の住む地域は都市伝説で埋め尽くされた。
情報と流行に敏感な高校生の間でも瞬く間に広がったのは言うまでもない。

「いいか? 今回話すのは……」

“切り裂き魔”

どうやら今回の都市伝説は切り裂き魔、というものらしい。
伊月の話では、少し前から刃物を持った人物が夜間うろついていると噂されており、男か女かも分からない。
その刃物は刃渡り20cm程のナイフか何からしい。
そして目が合うと、
「貴方の血が見たいの……」
なんて物騒なことを呟いて笑うらしい。
だが、襲ってくることはない。
ただそう一言言って消えるらしい。

「へーそーなのか。……よし。伊月、お前今すぐ窓から落ちろ。あれだけ息巻いといてそんなメジャーで誰でも知ってるような話かよ!! どこが面白いのか俺には分からん。あえて言うならそんな話、とっくの前から知ってるわ!!」
千歳は伊月に背を向け、パンを食べることに専念することにした。
少しぐらいなら聞いてやろうと思った俺が馬鹿だった。
千歳は大きなため息を零した。
「待て待て待て話はここからだから!! 俺が一番言いたいのは、被害者が出たってことだよ!!」

被害者——

その言葉に少々興味を抱いた千歳は再び伊月に向き合った。

「俺のクラスに竹中、って奴いただろ? アイツが昨日、切り裂き魔にやられて入院したんだってよ」
「ただの通り魔なんじゃねぇの?」
別にこの世の中だ。
人が刺されたりなんてこと、特別珍しくはない。
「違う違う。竹中、ずっと魘されてんだってよ。“来る……。切り裂き魔が……アイツが来る”って」

今思えば、
伊月の話したこの都市伝説が始まりだったのかもしれない。
全ての……
そう、全ての恐怖の

始まり——



始 ま り は 僕 等 の 好 奇 心 か ら






Re: 僕等は非日常に恋をする ( No.3 )
日時: 2011/02/23 15:19
名前: RYUKI ◆DsY2NV9mak (ID: kSn9MtQS)

はじめまして☆

面白いですぅ。続きが気になる(>ω<*)♪

更新待ってます。

Re: 僕等は非日常に恋をする ( No.4 )
日時: 2011/02/24 13:20
名前: 千臥 ◆g3Ntw.kZAQ (ID: 4fZ9Hn2K)

act.02 【始まりは僕等の好奇心から[ⅱ]】

本日の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
「今日は何処行く?」
「あ、服買いに行かない? あそこの店、セールやってんだって」
そんなクラスメートの会話を耳に流しながら、千歳は昼休みに聞いたあの話を思い出していた。

“人を襲う切り裂き魔”

真偽が気になった千歳は、先程教師に尋ねたのだ。
「竹中が入院してるってホントですか?」と。
教師は頷いた。
「あぁ。竹中は総合病院に入院している」と、そう言って。
伊月の話は本当だったのだ。
正直疑い半分だった千歳は都市伝説が実在することに多少驚いていた。
だが、その事実を知ったところで何か行動を起こそうとは思わない。
竹中とも特別親しいわけでもないし、
ましてや攻撃性のある相手に、自らの命を張ってまで立ち向かおうとも思わない。
こんな自分を周りは薄情だと、言うだろうか。
いや、誰も言わない。
よく知らない相手の為に命を張ろうだなんて……
そんなことが出来るのは漫画やドラマの中の人間だけだ。
現実の人間は
自分が可愛くて、愛しくて仕方ない。
「伊月ならここで、犯人見つけて竹中を安心させてやろうぜ……なんて言うだろうな」
アイツはまるで漫画の主人公みたいな奴だから。
自分のことより相手を優先させるお人好しだから。
「残念ながら、俺はアイツみたいに人の為に行動出来るお利口さんではないからな」
そんなことを呟いて、千歳は帰路を一人歩いた。

   *

夕方五時。
日没の時間は多少遅くはなったが、既に空は茜色から紺色へと変わり始めていた。
「あー……。のんびり歩いてたら遅くなっちまった」
早く帰ろう、そう歩みを速めようとした時だった。
何かが、
自分の横を通り過ぎていった。
尋常ではない速さで、風のように。
「……え、何」
千歳の数メートル前で止まった“それ”は

「貴方の血が見たいの……」

そう言ったのだ。
これではまるで、伊月の話していた都市伝説そっくりじゃないか。
千歳が唖然としている間にそれは消えていった。
全身の血の気が引くのを感じる。
背を額を冷たい汗が流れていく。
この感情は、そう……

とてつもない“恐怖”

恐怖を全身に感じた千歳は、近くにある奴の家へと走った。
息も切れ切れのまま奴の家のインターホンを押す。
「はーい、どちら様ですか……って千歳!? どうしたんだよお前」
玄関前で息を切らしている千歳に伊月は慌てて駆け寄った。

「……伊月。俺、見ちまった……。“アレ”を」
千歳は顔を上げずに呟いた。
「アレって?」

「人を襲う都市伝説“切り裂き魔”」



始 ま り は 僕 等 の 好 奇 心 か ら
(俺は恐怖という感情を今、初めて理解した)



————————————————————————
RYUKI様
コメントありがとうございました!!
かなりの亀更新になりそうですが、
頑張らせていただきます^^









Re: 僕等は非日常に恋をする ( No.5 )
日時: 2011/02/25 15:47
名前: 千臥 ◆g3Ntw.kZAQ (ID: 4fZ9Hn2K)

act.03 【紅き花の想いとは[ⅰ]】

伊月の部屋に通してもらい、彼の母親が淹れた温かいコーヒーを口にした。
呼吸も速まった鼓動も落ち着き、千歳は大きく息を吐いた。
「急に押しかけて悪かったな。俺も焦ってて……」
今考えれば夕方の五時にいきなり押しかけられてはいい迷惑だ。
それに、アレを見た場所なら千歳の自宅もそう遠くない。
それでも伊月の家を目指そうと考えたのは、話を聞いてもらい安心感が欲しかったからだろう。
「別に気にすんなよ。母さんも久しぶりに千歳に会えて良かった、って言ってるし」

それからさっき自分が見てしまったモノの話をした。
さすがの伊月も驚いているようだ。
都市伝説は所詮“伝説”であって、実在するものなんてほんの一握り程度。
そのうちの貴重な一つ“切り裂き魔”を友人が目撃してしまったのだ。
驚くのも無理はない。
「俺も切り裂き魔の存在は信じてる。竹中が襲われて、千歳が目撃したんだから」
「でも本物とは限らない。あの時は焦っててよく考えられなかったけど、ふざけ半分の模倣犯てこともありえる」
そうだ。
有名な切り裂き魔なら、誰かが悪ふざけで真似してもおかしくない。
「でもさ。なら、千歳の言ってた風レベルの足の速さは? 普通の人間じゃそこまで速く走れないだろ?」
「あぁ。……あの速さは普通じゃなかった。でもアレが本物なら、何故俺は攻撃されなかった?」
そう、千歳は攻撃を受けていない。
ただ「貴方の血が見たい」と言われただけだ。
本物だったなら竹中のように襲われていたのではないのか?

「あー確かに……。あ!! 千歳に何か伝えたいことがある、だから襲わない……とか?」
「そんな漫画みたいなことがあるかよ。アホか」
伊月の発言にそう突っ込んで、千歳は小さく笑った。

   *

「そろそろ帰らないとな……」
時刻、午後七時半。
流れで夕食までいただいて、伊月や伊月の母親には迷惑を掛けてしまった。
「なら俺送ってくよ。こんな夜道、一人で歩かせたら危ないし」
「そーいう台詞は可愛い女子に言ってやれよ」
なんてどこにでもあるような会話をしながら、すっかり暗くなった夜道を二人で歩いた。
「つかさ、なんで今更都市伝説なんてモノ流行りだしたんだろうな」
しかもこの地域が中心となって。
「あー確かに不思議だよな。俺が小学生の時も流行ったけど、ここまで広がりはしなかったし——」

「ギャアァァアァァッ!!」

二人の会話は耳を劈(ツンザ)くような悲鳴によって遮られた。
聞こえたのは二人の背後から。
「今の……悲鳴、だよな」
「俺、様子見てくる!!」
千歳が制止の声を上げる頃、伊月は既に走り出していた。
「ほら……。やっぱりアイツには主人公の気質があるんだ」

でも、
そんな友人を無視できずに後を追ってしまう俺にも
主人公の友人気質があるってことか?

千歳は前を走るお人好しでお節介な友人の背を急いで追ったのだった。



紅 き 花 の 想 い と は
(まるで主人公みたいな友人の後を追うのも嫌いじゃない)





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