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- 王女と天才の事件目録
- 日時: 2011/02/28 13:53
- 名前: 山の辺麦 (ID: ra5/85Hy)
- 参照: http://ouzilyototennsai@co.jp
1859年のドイツの首都ベルリン郊外に、まるで人々から隔離するように建つ、王族・貴族専用の学園———Eine blaue Rose(蒼き薔薇)。
その学園にはかのドイツ王族の子女であるマリアージュ・ド・ルードルシュタットが牛耳っており、多くの生徒や教師は彼女の言いなりであった。学園の実権はほぼマリアージュが握っていると言っても過言ではなく、多くの生徒や教師達は悪夢のような日々を送っていた。
今日も今日とてマリアージュは、女子寮の一室を自分好みに改築させた豪奢な自室で、キングサイズの天蓋付きベットに腰掛け、自分の足のマッサージするメイドに話しかけた。
「ねぇ」
「は、はい! 何でございましょうか! マリアージュ様!」
突然マリアージュに話しかけられたメイドは、ビックリした面持ちでマリアージュの問いかけに応じた。
何故驚いたのかだって? それもその筈。
何せ、このマリアージュときたら。普段はこちらから話しかけても無視して通り過ぎるくらいなのだが、たまに機嫌がいいと話しかけてもいないのに、勝手に話しかけてくるのだ。
全く、少しはこちらの身にもなって欲しい。
しかし、マリアージュはメイドの心情を理解するでもなく、気だるげな様子でメイドに淡々と話しかける。
「お前は、週明けに来る転校生の噂を知っているかしら?」
メイドは目を何度も瞬かせ、思わずそんなことを尋ねてくる数祭年下のマリアージュを見上げてしまう。
「えぇ、確か法外な学費免除の天才だとか何とか。難問と言われる入学試験も全問正解とか何とか、いろいろ噂されていますね」
「それで、お前はどう思うの?」
いきなり自分に振られるとは思ってもみなかったので、しばらく逡巡してみる。だが、メイドは考えるのは止めて、自分の思ったことを口にしようと決めた。多分、それがマリアージュが尤も欲している答えだと思うから。
「私はそうですね。全部、本当だと思いますよ。火がないところから煙は出ないって言いますしね」
「そう・・・・・・。お前、意外と博識なのね。気に入ったわ。みんな馬鹿ばっかりよ、この学園の者たちは」
と、マリアージュは妖精のように整った顔を物憂げに歪ませ、ベット脇に取り付けてある窓を見つめる。
しかし、生憎今日は曇っており、外の風景はいつもの美しい色を失っていた。
「あたし、この学園である人を探しに来たの。ずぅーと前にいなくなった大好きな幼なじみを。別に学園を牛耳るとかそんなつもりはなかったわ。だけど、勝手に学園の奴らが王族であるからとあたしを祭り上げたのよ。最初は否定しつつづけたんだけど、なんかもう捜し物は見つからないわで、もうどうにもよくなちゃって。気づいてたらもう止まらなくなちゃって、この様ね」
ほんと笑っちゃうでしょ、と肩をすくめておどけた風に言うマリアージュに、一メイドである自分はどう言ったらいいのか分からなくて、ただ俯いてマリアージュの話を聞いていた。
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- Re: 王女と天才の事件目録 ( No.1 )
- 日時: 2011/02/28 15:08
- 名前: 山の辺麦 (ID: ra5/85Hy)
- 参照: http://ouzilyototennsai@co.jp
「一度失った大事なものは二度と手に入らない。ここに来てそれがよく分かったわ。王族として生きてきたあたしはこんな事、今まで経験したことがなかった。だって、欲しいって言えば何だって手に入ったもの。
人も物も欲しいものはぜーんぶ」
マリアージュは大きく両の腕を広げて嬉しそうに言うが、その表情もほんの一瞬で、すぐにまた切なそうな表情を浮かべた。
「平民であるお前には分からないでしょうけど、あたし達高貴な身分は決して犯してはならないことがあるの」
「・・・・・・それは"恋"でございましょうか?」
メイドは極めて落ち着いた声音でそう答えると、マリアージュはこくりと頷いて見せた。
「そうね。恋、恋愛。でも、人の心は不便なものね。頭では分かっていても、心はね駄目なの。いきなりどうしようもないほどの恋に落ちることがあるの」
「それじゃあ・・・・・・」
メイドはマリアージュが探していた人との関係性に気づき、恐る恐る口を開くも、その先は唇が震えて出てこなかった。
「えぇ、あたしは恋をしてしまったの。あたしの専属家庭教師であるロイス・バルツェルにね。そのことに気づいたお父様に城を追い出されたのよ。ロイスは何にも悪くないのにね。あたしの一方的な恋愛感情によって」
禁忌を犯したあたしは城の奥に幽閉されて、この学園に押し込められた。将来の結婚相手を探してこい、という言いつけと共にね、とマリアージュは自嘲気味に呟く。
メイドはマリアージュが口にした名前を聞いて、ピンと来て思わず顔を勢いよく上げて、マリアージュの端正な顔を見つめた。
その迫力にマリアージュはたじろぎながらも、
「お前、ど、どうしたの? いきなり顔を上げて・・・・・・」
「お嬢様・・・・・・、そう言えば私、転校生の名前を上司の方から聞いたんですけど・・・・・・、コレって偶然なんですかね?」
「? 偶然って何が?」
メイドは神妙な顔つきで続きを口にした。
「その転校生の性が、マリアージュ様の申していた方の性と同じなんですね」
「!? ほ、本当に!? 教えなさい! さぁ、早く!」
マリアージュはメイドのメイド服の襟首を掴み、ガクガクと激しく揺さぶる。メイドは激しく揺さぶられながらもその名を口にする。
「あ、あ、あああ、あの、名前は確か・・・・・・、ヨハン・バルツェルだっ、だったと思います」
「ヨハン・・・・・・? ロイスじゃあ、ないの?」
マリアージュはその名を耳にした途端、メイドのメイド服の襟首から手を離し、表情の抜けた顔でポスンとベットの上に再び腰を下ろす。
「はぁ、はぁはぁ・・・・・・。えぇ、だから偶然かなって。性なんて似たようなものいくらでもありますし、だからマリアージュ様の探している人とは関係ないと・・・・・・」
メイドは荒く息を吐きながら言葉を絞り出すも、マリアージュはもう聞いちゃいない様子。魂が抜けたようにボンヤリと天蓋を見上げていた。
- Re: 王女と天才の事件目録 ( No.2 )
- 日時: 2011/02/28 15:22
- 名前: 山の辺麦 (ID: ra5/85Hy)
- 参照: http://ouzilyototennsai@co.jp
はじめまして。ここに初めて来ました山の辺麦です。
よろしければオリキャラを募集したいとおもっています。
皆さんの考えつくキャラをドシドシ投稿してください。
キーパーソンや物語に絡む重要キャラに等に役を振って登場させたいと思います。
ではでは、よろしくお願いします。
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