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- 赤ずきんは助からない
- 日時: 2011/02/28 21:32
- 名前: くじら (ID: zxZEzDNk)
CAST
荒瀬 佳乃子
大木 鈴
川口 百合子
御堂 友貴
Page:1
- Re: 赤ずきんは助からない ( No.1 )
- 日時: 2011/02/28 22:25
- 名前: くじら (ID: zxZEzDNk)
1.おつかい
祖母は病気だった。
いつでも顔は不健康な色を隠しきれていなかった。
歩くときはいつも折れてしまいそうだったし、
座っていても苦痛の表情を浮かべていた。
市の役員から保護を受けていたときもあったが、
彼女の世話をしていた女は、彼女の心を裏切り、
金と珍品を持って外国へと逃げていった。
祖父はもう既に癌で亡くなっていて、
彼女の周りには誰もいやしなかった。
親戚の者は、彼女の非友好的な態度に、
鼻を笑わせ嘲った。
「あんたにはなにもない。」
私は彼女が好きだった。
お互い、おしゃべりは得意ではなかった。
だから一緒にいるときはいつでも一人遊び。
彼女は口をもごもごさせながら、うつつと眠そうに本を読み
私は雑誌や漫画をよみあさった。
ひとり、が好きな二人だったから。
ひとりだったらなんにも焦らなくていい。
歌ってもお世辞はこないし
雑誌を読んでいても嘘の共感は来ない。
お互い寂しい人間だったのだ。
閉鎖的。根暗。
いつ、そう言われてしまうかドキドキしていた。
ある日、母から大きな箱を持たされた。
白い箱に赤い包み紙が張られただけの質素な箱。
おばあちゃんの所に持って行ってくれない?
私、いそがしいのよね、今日は会議があるし。
お姉ちゃんも今受験期でしょう?
あなたはおばあちゃんと仲が良いみたいだし。
母の目にはすこしの信頼と軽蔑がふくめられていた。
バスを降りて、祖母の住むアパートに到着した。
白かっただろう壁は、排気ガスやらなんやらによって
黄色く染まっていた。
階段は暗くいつでも湿っていて、変なにおいがした。
三階の一番端の部屋が、彼女の部屋だ。
名札は無く、薄緑の鉄板のようなドアは
私にはとても魅力的にみえる。
インターフォンを押す。
遠くから、野球の球が打たれる音がした。
すこし経ってから、ドアの向こうに人の気配を感じた。
ドアは開かれた。鉄がひしめく音を立てながら。
鈴。
おはよう。
何の用だ。
お母さんが、届け物。
ふぅん。
何がはいってるの。
お前も無粋だね。
無粋って何?ブスのこと?
入りな。
部屋の中に入った。
祖母はソファに座って、箱をあけていった。
その間、私は渇いたのどを潤すために
水道水をコップに汲んでいた。
透明無色。水色なんてうそつき。
一時間ぶりに水分をとった喉にみるみるしみこんでいく。
小腹がすいて、なにか無いものかと冷蔵庫を開ける。
案の定冷蔵庫の中身はほとんど空だ。
冷凍用のご飯と、少しの漬物と、牛乳。
前に来たときは母が少なすぎると呟いているのを見た。
ふと壁にかかっている写真を見た。
見たことが無い、祖父の姿があった。
あの祖母が明るい顔をしてピースしている。
突然なにか嫌な感じがした。
祖母の部屋から異様な雰囲気が漂ってくる。
鈍感な私はなにも気がつかなかった。
祖母が何かを持っている。
ぼやけて、みえる。
赤い。光っている。
なにそれ
その瞬間に
人間の声じゃない叫び声が聞こえた。
空気が、振動するのを感じた。
恐ろしいものを目にした。
怖いものを目にした。
見てはいけないものを目にした。
まだ彼女は叫び続けている。
血塗れた包丁を持ちながら。
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