ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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天使の右手〜Angelus=dextram〜お知らせ
日時: 2011/04/02 17:55
名前: EEE (ID: BZFXj35Y)

シリアス・ダークを初めて書くEEE(トリプルE)です。
まぁ…話の内容はSF&超能力系です…( 一一)
楽しんで読んでくれたら幸いです。ではでは、お楽しみに。


▽お客様▽
神埼虚空様(現・紅蓮の流星様),スサノオ様







▼EEEのお知らせ掲示板▼
3月31日 参照100突破 これからもお願いします
4月02日 更新の頻度が遅くなります。ご了承を。>>14






○  ●   ○   ●   ○   ●   ○   ●   ○
Savan rule >>12
Prologue >>1
Keyword >>10

【Episode1 不条理な世界】
>>002−Episode1-1 『新境地』
>>008−Episode1-2 『天使の右手、閃光の左手』
>>009−Episode1-3 『正義』
>>011−Episode1-4 『哀れすぎるエゴイスト』
>>013−Episode1-5 『新たな人生』
Episode1-6
Episode1-7
Episode1-8
Episode1-9

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Re: 天使の右手〜Angelus=dextram〜 ( No.10 )
日時: 2011/03/31 21:05
名前: EEE (ID: BZFXj35Y)

@非現実思想語り部屋サイト(裏サイト)“タキオン”@
物語の起点であるネット裏サイト。サヴァン、ロジッカー、ハーミット等が噂されている。
このサイトに黒谷蒼空が書きこんだことによって、複数の人間がサヴァンが実在することを確信した。
このサイトの管理人は不明で、2013年の現在も存在する。
蒼空曰く、「普通の知識でも天才でも行くことが不可能」と言っている。
タキオンはラテン語で“光ある可能性”という意味。

@住人@
タキオン利用者の総称。

@サヴァン@
超能力者であって超能力者ではない者(病的超能力者)の総称。
超能力者とは似て異なる存在。

@空谷学園高等学校@
東京都内にある名門エリート高校。私立高校であり、校舎の設備も他の高校とは桁外れに豪華。
5階建ての白色を基調とした校舎。冷暖房完備で、窓は対災害不審者用に防弾防音ガラスとなっている。
毎年、全校生徒が現役で大学に受かるほど生徒の知能は高い。
常に教頭が生徒の前で話をしており、職員や生徒会長でさえ校長の姿を見たものは少ない。

@2013年4月8日 始まりの日@
タキオンのサイトでは、この日を「全ての始まりの日」と呼んでいる。

Re: 天使の右手〜Angelus=dextram〜4話UP ( No.11 )
日時: 2011/04/01 15:14
名前: EEE (ID: BZFXj35Y)

【Episode1-4 哀れすぎるエゴイスト】

優衣は左手を拳に変え、机の陰から飛び出した。
が、そんな単純すぎる攻撃は蒼空に見切られていた。

「サヴァンともあろう者が、そんな攻撃しかできないなんてな!!!」

蒼空は机を1つ飛び越え、軽快な身のこなしで回し蹴りを優衣の顔面に喰らわした。
「きゃっ!!」
優衣は机、壁、床、化学薬品の並んだ棚の順にぶつかりながらも、どうにか体勢を戻した。
「君みたいな利口な人が裏切るとは、俺は残念すぎて殺したいよ。」
「蒼空……考え直すべきよ………世界再建なんて…で…できない……よ。」
優衣は吐血しながらも、必死の思いで蒼空に訴えた。しかし、蒼空は鼻で笑うだけ。
蒼空は机の上に飛び乗り、息を荒げて頭や口から血を流す優衣を見下ろす。


「我々はなぜ生まれた?サヴァン、ハーミット……まぁ、ロジッカーも含めて、我々は神に選ばれた。」



「喰らえ!!!」



蒼空が喋り始めた瞬間、机の陰から奏太が飛び出し、空瓶が投げられた。
「ちっ!」
舌打ちをしながらも意図も簡単に瓶を避ける。瓶は床にパリンと言う音を鳴らして割れた。

が、それが蒼空の狙いだった。

瓶が割れた瞬間、密室の理科室に鼻を壊すほどの悪臭が漂い始めた。
「なっ!!この匂いは……アンモニア……たかが人間が味なまねを………」
蒼空は目つきを変えて奏太を睨む───が、先程の机の陰に、奏太の姿はなかった。
蒼空が何かを感じて後ろを振り向くと、先程まで吐血していた優衣さえいなかった。
「逃げたか………ちょこまかとゴキブリみたいに………」



          「終わりよ。」



蒼空が暴言を吐いた直後だった。
閃光の左手を持つ優衣が目の前に現れ、蒼空の肩を掴み、後ろには硫酸の瓶を持った奏太も現れた。
「俺も殺すのか?会長やクズどもみたいに。」
「黙って、私は正義のために今から生まれ変わる。」
「正義?………ハハハッ、今更偽善者振るのか?お前は甘いんだ!!!」
蒼空は肩に乗っていた優衣の左手の左手首を持ち、右手を拳に変えた。
「お前なんざ、左手封じれば人間同様だ。くたばれ。」
蒼空は不気味に微笑み、優衣の腹部めがけて右ストレートを咬まそうとした次の瞬間だった。

「わぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!」

後ろにいた奏太は瓶のふたを開け、蒼空に向かって投げ飛ばした。
蒼空が振り向いた瞬間には、硫酸は視界全体を覆うほど範囲が広かった。
更に、右手は拳に変え、左手は優衣を掴んでいるため動けない。
「逃げて!!」
奏太の叫び声で、優衣は蒼空の手を振り払って机の陰に飛び込む。



               ──────バシャァァァァァァァァ



蒼空は硫酸を避けることが出来ず、顔面から直接喰らい、悲鳴にならない声をあげて床に転げ落ちた。





「ッ!!!!」




こんなに、呆気なく終わるなんて、優衣は思ってもいなかった。
「蒼空……」



「ぎ、ぎゃぁぁぁぁ!!顔が!!!顔がぁぁぁぁぁ!!!!!あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



両手で顔を押さえながら、枯れている声で叫ぶ。
どうにか体勢を戻そうとしているが、硫酸は左足首にも当たり、制服を溶かして皮膚に当たっていた。
「優衣ぃぃぃ、久遠ぉぉ………久遠ぉぉぉぉ!!!!!!!」
蒼空は痛みに耐えて右手を拳に変え、奏太めがけて走り始めた。
「しまった!!久遠君!!逃げて!!!!」
「え?」


叫んだときには遅かった。






「死ね………久遠………ぞうだ…」





硫酸を喉に喰らい、枯れた声で奏太の耳元で呟いた。
強烈な右ストレートは確かに奏太の腹部に、めり込むほどの威力で炸裂した。





       だが、全ては次の瞬間に逆転した──────





『シツボウシタヨ、クロタニ…ソラ……』





      「え!?」





蒼空の頭に響く謎の女性の声。と思った直後、蒼空の右手に今まで感じたことのない痛みが走る。
「うっぐ………次がら次に……なん…だ………あっ?」
蒼空は自分の右手を見た瞬間に言葉を失った。





   ━右手にあった天使の刺繍が消えていた━




「なんだ………能力が消えだ……!?ごれば…なんだ!?いっだいなんだ!?」



蒼空は自分の右手を見ながら、硫酸で溶けた皮膚を引き攣らせて膝から落ちた。
左の眼球は硫酸で使い物にならず、残っていた右の眼球から一滴の涙を流した。
「優衣……そいづをごろぜ…………」
「嫌よ。あなたの命令は聞かない。あなたはただのエゴイスト、幼稚な夢はここまでよ。」

「だのむ……だ……だず…げで………のうりょぐ……もないんだ…………どごにいっだ…」

蒼空は右目で、目の前に立つ奏太を見た。
そういえば、奏太は蒼空の攻撃を喰らったのに死ぬどころか平然としている。
「あ、あの……これなんですか?」
奏太は右肘まで袖を捲りながら、右肩から右手にかけてある‘とんでもない物’を2人に見せた。
「どうじで……お…おまえ……がもっでる…………」





─────奏太の右手には







          笑みを浮かべた天使の刺繍が浮かびあがっていた_______

Re: 天使の右手〜Angelus=dextram〜4話UP ( No.12 )
日時: 2011/04/01 16:41
名前: EEE (ID: BZFXj35Y)

 サヴァンの持つ力に正しい名前等はない。彼らは「超能力」や「魔法」と例えているだけ。
サヴァンは、人間の2倍の身体能力を持ち合せている。更に、知能や精神も向上している。
メリットばかり持ち合せる得な存在に見えるが、サヴァンはデメリットも持ち合せている。

 ─人間離れした“思想”─ ─押さえきれない“異常殺人衝動”─ 

しかし、これはサヴァン個人によるもので、善意があるサヴァンには傾向がみられない。
悪の心を宿しているサヴァンには、はっきりと状態で確認できる。
サヴァンの使用する力には、とある条件が存在する。以下の通りである。
〔1〕
 能力の使用は自分の体力を削ることで発動している。そのため、使いすぎると死に繋がる。
 これは攻撃系でも防御系でも回復系でも、サヴァン全員に関わる条件である。
〔2〕
 能力には、稀に意思が存在する能力がある。脳に喋りかけてくることはあるが害はない。
 意思の存在する能力は特別で、能力と相性が合わない場合、能力は自然に消滅する。
 また、サヴァン以外の者(人間)に触れると、能力が勝手に人間へと転移する。
 その場合、サヴァンから人間に成り下がった瞬間に体が拒絶反応を起こし、苦しみながら死亡する。
〔3〕
 能力を人間・サヴァンに人工的(手術など)に受け渡すことは不可能である。
 もし行った場合は、両者共々痙攣を起こして苦しみながら死亡する。
〔4〕
 以上のルールを破ることは絶対不可能であり、仮に破られた場合は全ての概念が崩壊する。

※このルールはサヴァンにだけ適応されるものである。

Re: 天使の右手〜Angelus=dextram〜5話UP ( No.13 )
日時: 2011/04/02 12:46
名前: EEE (ID: BZFXj35Y)

【Episode1-5 新たな人生】

不気味なほど、理科室は閑散としていた。
右目だけを残して溶けた顔面でも、蒼空の表情が引き攣っているのが分かった。
袖を肘まで捲り上げ、奏太は自分の手に浮かぶ奇妙な文字と天使の絵に見とれていた。
「これは……何?」
奏太は立ち尽くしている優衣の方を向いて聞いた。

「天使の右手……あなたも、私たちの仲間よ。」

優衣は頭の中が混乱しながらも、冷静を装って奏太に言った。
しかし、奏太はサヴァンの存在すら知らないのだ。自身の右手から右肩に浮かぶ刺繍を見つめる。


「くどう………俺が…いぎでるうぢに………ぢゅうごくしでおぐ………」


硫酸で壊れた喉を必死に動かし、枯れた声で蒼空は奏太に言う。
「ザ……サ…ヴァンになっだいじょ………ふづう…の……じんぜい…………おぐれるど……」


      ──────バタッ


喋っている途中であったが、蒼空はその場にバタリと倒れた。
「蒼空!!!」
優衣は蒼空の名前を叫んで駆け寄る。
蒼空は顔面から血を大量に流して、たった今、失血死した。
これがエゴイストの最後であった。
数時間前までは「世界を再建する」などと夢を語っていた人間が、目の前で死んでいった。
「………あの……死んだんですか?」
「えぇ……けど、私は悲しくなんかない。彼の死は神の鉄槌、サヴァンが人間になり下がった結果。」
優衣は立ち上がり、若干だが悲しげな表情を見せながら奏太の方を見る。
「あなたは、これからこちら側の世界で生きていくことになる。」
「…こっち側?」

「あなたは人間じゃない。……サヴァン、超能力者よ。」

言葉を聞いた瞬間、奏太は唖然となり首を傾げた。
「サヴァン?なんですかそれ?」
「病的超能力者。あなたの右腕に浮かぶ刺繍、それが何よりの証拠。」
右腕に浮かぶ天使の白目と、奏太の目が重なる。奏太は優衣の説明を聞いても理解できなかった。
いや、理解できないのではなく、理解することが不可能なのだ。
そのような非現実なことは映画、アニメ、マンガ等だけの話であるからだ。




「これから、あなたは新しい人生を歩むことになるのよ。新しい道ができたの。」




「あなたも、サヴァンなんですか?能力を…持っているんですか?」
奏太の質問に、優衣は大きく頷いた。そして、左掌を奏太に見せる。
六芒星が5つ円状に書かれ、その中央に五芒星が書かれている。
「私の左手は通称‘閃光の左手’。触れた物や自分を好きな所に飛ばせる。」
優衣は説明すると、左手と右手を合した。その瞬間、奏太の目の前から優衣が消えた。

「あっ!!」

しかし、数秒後に再び優衣は現れた。
「ハワイまで行っちゃった♪ハイこれ、どうぞ。」
優衣はハワイアンブルーのかき氷を奏太に渡した。
確かに、かき氷の入った紙の容器には外国語で全て表示されている。
「嘘……すごっ…………」
「これで信じてくれる?」
「はい……でも、僕の能力は一体………」
奏太は右手に少し力を込めてみる。



     ジュワァァァァァァ…………────────



かき氷が、発煙しながら溶け始めた。
「え…?え…!?な、なにこれ!?」
かき氷は一瞬で溶けて、透き通った青色のハワイアンブルージュースになった。
「……能力が変わってる、なんだろう?」
優衣が奏太の右手に触れると、沸騰したやかんに並ぶ熱さを感じた。
「あっつ!!な、え……どういうこと!?」




        『天使の右手……能力機能が変わっている!?』




優衣は目の色を変えて驚いたが、まずは奏太に理解させることを優先することにした。
「そ、そう、あなたの能力は………あれよ、えっと………天使の右手よ。」
「天使の右手?どこが?」

正当な質問に、優衣は思わず納得した。

「………蒼空は元々、あなたみたいに優しくて善人に近い人間だった。だけど、その手のせいで変わった。」
優衣は自分でも知らぬ間に、なぜか蒼空の昔のことについて話し始めた。
優衣は一瞬意味が分からなくなり、「今のは忘れて。」と言い、奏太の右腕に指を指した。
「ただ単に、右手に天使の絵が浮かび上がっているからよ。」
「でも、どうして突然こんな物が………」
「天使の右手には自我があるの。その能力には意思が存在するのよ。」

    能力に意思──────

その言葉を聞いて、奏太は何を言えばいいのか分からなかった。



非現実的な能力を手に入れ


ハワイアンブルーのかき氷を溶かし


その能力には自我がある






      ───────







「………えらいこっちゃ。」
奏太はとりあえず、ここは簡単に整理した。
「あなたはここで待ってて。私は、蒼空を埋葬してくるから。」
「警察に言った方が良いんじゃないですか?」
「この状況、警察に話し様がないわ。」
優衣はそう言うと、蒼空の遺体の横にしゃがみ込み、左手を蒼空の胸に置いた。

「あなたが好きだった場所に埋葬してあげる。さようなら、蒼空。」

優衣は左手に力を込め、蒼空の遺体と共に理科室から姿を消した。



「新しい人生か……まぁ、それもアリかな。」



理科室に残った奏太は微笑むと、散らかった理科室の後片付けを始めた。


 

Re: 天使の右手〜Angelus=dextram〜5話UP ( No.14 )
日時: 2011/04/02 17:54
名前: EEE (ID: BZFXj35Y)

4月から更新のペースが落ちます………高校2年生は勉強が厳しいっす………
読者の方はご了承ください。


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