ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

移動ーー
日時: 2011/05/22 17:00
名前: カキ子 ◆74EC9roHQw (ID: JC/wmrqc)

「不穏と孤独な芸術家」


登場人物にかわりなし・・・・。





ミステリ好きの方には是非、ご意見ご感想を伺いたいものです。
もちろん、そうでない方にも…。

では、始まります。




第一章 加賀見ケイと坂田雄二郎
>>1-2>>3-4




登場人物紹介
(ご覧にならなくても小説を読む上で差し支えはありません。ただ「こいつ誰だ」とか「なんて読むんだ」などは随時確認して頂けるといいと思います。)


加賀見 ケイ<カガミ ケイ>
15歳。高1。性格も女としても「終わっている」。
特徴:身長152センチ。痩身。元々茶色掛かった髪色。めったに梳かさないので、ボサボサ。近眼で、常時眼鏡着用。雄二郎とは共に生活する。

坂田 雄二郎<サカタ ユウジロウ>
15歳。高1。リアリスト。祖母の家でケイと共に生活しているが、ケイの事は好いていない。
特徴:身長168センチ。体型は標準的。黒髪ストレート。

伊勢崎 基子<イセザキ モトコ>
15歳。高1。優しく、おおらかな性格。ケイの唯一の友達。趣味はお菓子作り。成績も優秀。
特徴:身長155センチ。体型は標準的。黒い艶のある髪は癖毛でウェーブしている。色白美人。

伊勢崎 正<イセザキ マサル>
基子の兄。
特徴:身長171センチ。細身。癖毛。


Page:1 2



Re: <タイトル、保留> ( No.1 )
日時: 2011/04/01 12:36
名前: カキ子 ◆74EC9roHQw (ID: oShmi/gg)

第一章 加賀見ケイと坂田雄二郎

     1


 坂田雄二郎は、目の前の光景に極めて白けた表情を向けていた。

 「あーピファ。ピファらべたいよお」

 そんな視線を気にする——いや、気付く事さえなく、彼女は悲しげな声をあげ口をもごもご動かす。この女、茶色かかったボサボサの髪に、顔の半分を覆う眼鏡、下はくすんだ青色のジャージに、上は灰色のTシャツ。どうやら下着を着てないらしいそのTシャツの上からは——これ以上はご想像におまかせするとして、格好からして多少の色気は感じさせてもおかしくないのだが、テーブルの上におかれた大きなボール、その中には大量のブロッコリー、そして小皿にブロッコリーを数個取っては多量のマヨネーズをぶっかけ、手を止める事無く口に容れていく姿には最早「女」の欠片もないように見受けられた。

 こいつは、まだ昨日の事を根に持っているのか…。雄二郎はこの女の変人っぷりには感動すら覚えていた。

 昨日の夜、祖母が外出中であったがため、雄二郎はピザのデリバリーを取った。夕方この女が本屋で大量に本を購入していた所を目撃していた事から、どうせ今日は部屋から出てこないだろうと踏んだ。だいたい二週に一度は本屋で引くほどの量を購入し、それが読み終わるまで一歩も部屋から出ない、というのがお決まりだった。

 しかしピザを食べ終わった頃、部屋の食料が尽きたのか、のそっと幽霊のように現れたこの女は、雄二郎が一人でピザを食べてるのに対して「ずるい!ずるい!」と完全に子供と化したのだった。確かに何の提案もなしに、雄二郎が一人でピザを食べてしまったのはいけなかったと雄二郎も思っているが、それでもこの女が馬鹿みたいに非常識な存在であるが故、常人の雄二郎は冷静に己の非を認めざるを得ないのだ。「逆恨みだ」と一蹴してしまえばいいものを…。

 だが常人の感覚を麻痺させるものこそ、非常識というものである。この女——そろそろ名前を出しておこうか——そう、加賀見ケイと約三年義兄弟として暮らし始めたのがそもそもの元凶、狂いの始まりだったのだ。

 「ブロッコリーうま!」
 ——なんて雄二郎がため息をついているうちに、ケイの機嫌は元通りになっていて、美味しそうにブロッコリーを頬張っていた。


Page:1 2