ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- L I N Q
- 日時: 2011/04/21 17:27
- 名前: ライダー (ID: BZFXj35Y)
人工的に造られた人間─────彼らを『LINQ』と呼ぶ。
彼らは人間の平均寿命の4分の1しか生きることができない。
彼らは世界の終焉を止めるためだけに命を授かった。
使命を果たしたその時、彼らは何に気付くのだろうか。
こんにちは、こんばんわ、おはようございます。
初めて小説を書く…投稿するライダーです!!今後ともよろしくです。
内容は読んで確かめてください、僕には理解できない………勝手ですいません。
まぁ第1として、楽しんで読んでくれたら幸いです。
↓登場人物↓
>>000 Linq.01 ゲイン
>>000 Linq.02 クルーエル
>>000 Linq.03 バミング
>>000 Linq.04 グアマンド
>>000 Linq.05 セイム
>>000 Linq.06 エレクト
>>000 Linq.07 カイン
>>000 Linq.08 ラヴ
>>000 Linq.09 スリーズ
>>000 Linq.10 レイト
>>000 Linq.11 イーズ
>>000 Linq.12 スプリット
>>000 Linq.13 リカ
>>000 Linq.14 ティミッド
〔用語集〕
>>004(LINQ (LINQ HOUSE
プロローグ >>001
1話>>002 2話>>003 3話>>005 4話>>008 5話
- Re: L I N Q ( No.2 )
- 日時: 2011/04/11 00:21
- 名前: ライダー (ID: BZFXj35Y)
庭から聞こえる小鳥の囀り。窓から見える一面の青い海。そして、その海の真ん中にある日本本土。
LINQ HOUSEの5階から見える景色は絶景だ。
“Room Linq-07”と書かれたドアを開けると、そこには1人の青年が外の景色を見ながら立ち尽くしていた。
「綺麗な…水だな………」
窓から見える‘海’を‘水’と解釈した青年は、微笑みながらベットに腰を下ろした。
壁も床も一面白い部屋には、勉強机に椅子とベットだけというシンプルなものだった。
しかし、天井の隅にある監視カメラを見ると部屋の雰囲気がガラリと変わる。
無地の黒色のパーカーに青いジーンズというラフな格好をしたLinq-07のカインは、白色の天井を見上げる。
「カイン、入るよ。」
ドアをノックする音が聞こえ、1人の小柄な少女がカインの部屋に入ってきた。
ショートカットの黒髪の先はカールがかかり歩く度に揺れ、純白のワンピースもリズミカルに揺れている。
「もうすぐ外出可能時間だよ。一緒に外に行かない?」
Linq-08のラヴは、無邪気な笑顔を見せながらカインに向かって問いかけた。
「いいよ、どこ行く?」
「港にいる‘鉄さん’のとこ行こうよ。また面白い配給物が届いてるかもしれないし。」
「分かった。じゃあ、5分後にエントランス前に集合しよう。」
カインが時間を決めると、ラヴは頷いてスキップしながら部屋を出ていった。
カインは窓から見える山のふもとにある港を見る。
港には多くのコンテナが山積みにされたコンテナターミナル、倉庫や灯台が建てられている。
しかし、働いている人間は100人もいない。せいぜい50人前後程の屈強な人間達だけが働いている。
カインは見た目が高校生だが、その正体は7番目に造られたLINQである。
人工的に造られても歳はとるし、人間同様に喜怒哀楽や夢も持っている。
カインの夢は、LINQ HOUSEから見える日本本土に行く事だった。
生涯をLINQ HOUSEで過ごしてきたカインは、使命を果たす前に本土に行きたい思っている。
なぜなら、「世界終焉」を食い止める使命を果たすか20歳(20年間)生きたらLINQは死ぬのだ。
「夜になれば光に溢れ、その輝きは星よりも月よりも綺麗だ。僕はその正体を知りたい。」
カインは日本本土のことは勉強の日本史で少し習っただけで、詳しい事は何も知らない。
ただ、施設の人やマスターから「人間の住む島」としか言い聞かされていない。
しかし、カインは日本史を勉強していく過程で本土に行くことが夢となった。
LINQという政府の造り出した兵器にだって、感情があるのだから夢も見るし持つこともある。
カインが造られたのは16年前。つまり、後4年ほどしか生きることができない。
カインは残った4年間という短い月日の間に、どうしても夢を叶えたいと思っている。
「………港に行けば、船で行けるかもしれない。」
カインは椅子にかけていた黒いダウンを着ると、ラヴとの待ち合わせであるエントランスへ向かった。
* * * * * *
施設の最上階である8階。赤い絨毯が敷かれ、廊下の天井には小さなシャンデリアが吊り下げられている。
『8階 最上階でございます。』
女性のアナウンサーと共にエレベーターのドアが開き、スーツを着こなした男性が出てくる。
オールバックで強面の男性は廊下を歩き、一番奥にあるドアの前で止まった。
“chief room”
男性はドアをノックして返事を待つ。
「どうぞ。」
ドアの向こうから聞こえた声に「失礼します」と答えて、男性は静かにドアを開けた。
壁一面が窓になっており、最上階のだけに景色は最高級である。海を一面見渡せ、本土も綺麗に見える。
窓の前にある豪壮な主任専用のデスクに腰掛けて立っているストライプのスーツを着た男性は微笑んでいる。
「ようこそLINQ HOUSEへ。私はこの施設の主任である赤城志年だ。よろしく。」
黒髪を後ろで束ねて室内であるにも関わらずにサングラスをかけている赤城を見て、男性は表情を一瞬変えた。
赤城はその一瞬の表情の変化を見逃さなかった。
「どうしました?」
「い、いえ……その…どうしてサングラスをお掛けになっているのかと………」
「歳に似合わない光視症という目の病気です。」
赤城は微笑みながら男性に説明した。しかし、その笑みが本物なのかはサングラスのせいで分からない。
「政府のLINQ専門指導員であります工藤優一郎です。今後とも、宜しくお願いします。」
工藤は内ポケットから指名を取り出し赤城に渡す。赤城は指名を受け取り、見もせずにデスクの上に置いた。
「それで、どうして指導員がこんな辺鄙な所に?」
「上層部から連絡を預かっており、私は赤城主任に伝言を伝える様にお願いされました。」
「伝言?」と呟き、赤城はソファーに指さして工藤を座らせた。赤城も続いて座る。
「LINQ達はそろそろ思春期に入り面倒を起こす可能性がある。彼らは自身の能力を悪用しかねない。
もし問題が起こり、世間の生活に支障が出るような状況になれば、あなたを失脚させる。
例の計画を成功させるためにも、なるべくは穏便に事を進めたい。
今後も宜しく頼むよ。とのことです。」
工藤は伝言を伝え、赤城の顔をチラリと見る。
「………御苦労だったね。こんな所までありがとう。泊っていくかい?」
「いえ。夕方ごろに迎いが来るので、今回は遠慮させていただきます。」
工藤は頭を下げながら断る。赤城は「そうかい。」といい笑顔を見せて振り向いた。
「では、失礼します。」
「伝言を頼めるかな?」
工藤が振り向こうとした瞬間、赤城は声のトーンを変えて言う。
工藤は赤城の声の変化に驚いて思わず、体をビクリと動かす。
「なんでしょうか?」
「上層部に、私は遠慮しておくと伝えてくれ。言えば分かる。」
「………?分かりました。」
工藤は一礼して、主任室を後にした。
- Re: L I N Q ( No.3 )
- 日時: 2011/04/12 18:01
- 名前: ライダー (ID: BZFXj35Y)
- 参照: http://修正バージョン コメント待ってます
舗装された山中の道をカインとラヴは並んで歩いていた。
心地良い風がラヴの髪と純白のワンピースを靡かせ、カインの鼻にフルーティーな香水が臭う。
「ラヴ、香水してるの?」
「そうだよ。私のマスターが香水は‘女の必須アイテム’って言ってた。配給物の中にあればいいけど……」
ラヴは山のふもとにある港を見ながら言った。港には現在、停泊している船は一隻もない。
船が港に停泊するのは月の初めと終わり、後は政府の役人が視察に来る時ぐらいだ。
「お〜す。カインにラヴ、港に向かってんのか?」
2人が歩いていると、後ろから橙色の派手な短パンに無地の黒いTシャツを着た青年が声をかけてきた。
青年はツンツン髪を金色に染めている。Linq-11のイーズは、今日もハイテンションのようである。
「やぁイーズ。そうだよ、鉄さんの所に向かってるんだ。」
「ん?鉄さん……って、今日の朝方に島から出て行ったらしいぜ。」
「え?」
カインとラヴはイーズの言葉を聞いて足を止めた。そして、2人同時にイーズの方を振り向く。
イーズは平然とした表情で話しを続けた。
「施設員の姉ちゃんから聞いた話だけどよ、なんか政府に呼び出されて戻ってくるかどうかとか。」
「せ、政府に呼び出されたって、鉄さん何かしたの?」
「知らねえ。聞いたけど詳しくは教えてもらえなかった。」
イーズは2人を追い越し、足早に港の方へと向かって行った。
カインとラヴは未だに足が止まっており、ほぼ放心状態である。沈黙が続いたが、カインが沈黙を破った。
「とりあえず港に行こう。鉄さんの家に行こうよ。」
「……うん。」
今にも泣き出しそうなラヴの表情を見て、カインは優しく頭を撫でた。ラヴは顔をあげ、ニッコリと微笑む。
「ありがとう。ごめんね、能力のせいで悲しさが増して……」
ラヴの固有能力は「激情」であり、感情が誰よりも何倍も感じやすい。
それは近くにいる人間、Linqにも影響を及ぼす能力だ。
ラヴは綺麗な白い手で涙を拭き取ると、カインの目を見つめながら再び優しい笑みを浮かべた。
「行こう。」
「うん。」
2人は顔を合わせて微笑むと、港の方へと足を進め始めた。
* * * * * *
豪壮に防波堤の先の方に建っている灯台は、Linq達にとってはとても不思議な物に見えていた。
いや、港にあるコンテナや船、海でさえLinq達にとっては触れたことのない万物である。
港に到着したカインとラヴは、鉄さんが家として使っている灯台に向かった。
いつもの通り鍵の掛かっていないドアを開け、螺旋状の階段をカンカンと音を鳴らして上がっていく。
上がっていくと、“鉄元 茂”と彫られた木製のドアに着いた。カインがノックするが、中から返事はない。
「やっぱり、いないんだ……。」
一瞬だけ不気味なほど静まり返り、ラヴがため息をついて階段に座り込んだ。
カインはもう一度ノックをしたが、やはり返事はない。ふと、ドアノブを回してみる。
ガチャガチャ ガチャガチャ………──────
鍵はかかっている。カインもため息をつき、目線を下に落とした。
「ん?」
ドアと床の僅かな隙間に、一枚の紙が落ちていた、いや、置かれていた。
カインが紙を拾い上げると、そこには殴り書きの様な汚い字で文章が書かれていた。
カイン、ラヴ、イーズへ
俺は恐らく、もう島には戻って来ることはできない。
理由は時間がないから書けないが、君達には助かってほしい。生きてほしいと願っている。
近いうちに施設に政府の人間がやってくる。
夕方頃には、そいつを迎えに港の方に政府専用の船が来る筈だ。
それに乗り込んで本土へ逃げるんだ。
3人で逃げろ。ほかのLinqには絶対に言うな。特に、イーズには口を酸っぱくして言っとけ。
俺は、お前らを信じている。
俺の部屋に入って1人1つずつ鞄も持って行け。それに必要な物が入っている。
じゃあな。お前達の幸せを願う。精一杯、生きろ。
手紙を読んでも、カインには意味が全く分からなかった。
助かってほしい? 生きてほしい?
鉄の残した手紙を読んでいると、それに気付いたラヴが覗き込んできた。
「何それ!?鉄さんの手紙!?」
ラヴは笑みを浮かべて手紙に書かれた文を目で追いながら読む。
しかし、その笑みは段々と悲しい表情に変わっていき、文を読み終えた時には涙を流し始めた。
「…まるで、遺言書じゃん………」
ラヴは歯を食いしばって涙を堪えるが、涙は次々と溢れ出てくる。
カインは読みなおし、
━俺の部屋に入って1人1つずつ鞄も持って行け。それに必要な物が入っている━
という文に疑問を抱いた。なぜなら、鍵が閉まっているからだ。
「カインの能力で……鍵を壊せば………いいんじゃない?」
ラヴが呟くように言う。カインに迷いはなかった。
カインの固有能力は「硬質化」、つまり体をダイヤモンドよりも硬く変化できるのだ。
カインが右腕に力を込めると、右手の指先から肌の色が黒茶色に徐々に変わっていく。
「危ないから離れて。」
カインはラヴに警告し、ラブは階段を数段下る。
そして、カインは右手を拳に変えて構え、特に大声も出さずに拳をドアの中心めがけて放った。
木製のドアはメキメキと音をあげて中央から横に真っ二つに割れ、木の破片が辺りに飛び散る。
カインとラヴは鉄の部屋に入ると、そこにはすでに見慣れた家具や鉄の私物は無くなっていた。
「ラヴ、これだ。」
部屋の床には唯一、リュックサックが3つだけ置かれている。
これが鉄さんの残した手紙に書いてあった鞄だ。
リュックサックの上には一枚の紙が置かれており、‘カイン’、‘ラヴ’、‘イーズ’と書かれている。
2人は自分のリュックサックを手に取り、ラヴがイーズのリュックサックを持つ。
「イーズを探しに行こう。事情を説明して考え直そう。」
- Re: L I N Q ( No.4 )
- 日時: 2011/04/21 17:26
- 名前: ライダー (ID: BZFXj35Y)
@LINQ(リンク)
2046年、米国との貿易で手に入れた最新機械技術を駆使して人工的に造り出された。外見は人間そのもの。造り出された理由は「世界終焉を喰い止める為」と政府は発表しているが真相は不明。どのようにして造り出したのか、根本的な部分は10年経った現在2056年の時点でも不明。 日本政府は機密扱いしており、LINQの誕生を全て知ってる者は一握り。
LINQの存在は2048年頃に世間に知れ渡り、社会の教科書に載るほど一時は有名になったが実物を見た一般市民は誰一人としていない。
LINQは日本国内で14体確認されている。外国にも存在するのかは現在明らかになっていない。姿は中高生、男性12人と女性2人。見た目はどこにでもいる高校生の姿に見える。日本本土には危険性を考慮して住まわせておらず、太平洋に浮かぶ名もない島に施設LINQ HOUSEを建て、そこで勉強や訓練を重ねて生活を過ごしている。LINQ1体につき‘マスター’という戦闘能力に長けた人間を配置させ、LINQの戦闘技術を向上させる訓練を実行している。
LINQ1体1体には固有能力が備え付けられており、例として以下の通り。
カイン→硬質化(皮膚をダイヤモンドに並ぶ強度に変える。
ラヴ→激情(人間、LINQの約5倍ほど感性豊か。周りにも影響を及ぼす。)
イーズ→楽観(念じると物事や出来事を自身に有利な方向へと変える。)
固有能力はLinq01〜Linq07が物理的攻撃,Linq08〜Linq14が精神的攻撃と2種類に分かれている。
@LINQ HOUSE(リンク ハウス)
本土から数十キロ離れた位置にある無人島に建てられた、LINQ居住施設。政府専用の船で丸1日の時間をかけて行くことができる。島に名前ない。ほぼ海から露となった岩で囲まれており、島の一角にある港からしか入出港できない。島の8割が生い茂った森で、森の中にLINQ HOUSEが建てられている。
白色を基調した8階建てで、施設の周りは高さ10mのレンガの壁で囲まれている。施設に入る人間は限られているので、特に厳しいセキリュティは設置されていない。施設内で働いている施設員は、日本政府が選出した一般の市民で女性限定。内部は以下の通り。
〔1階〕
・エントランスロビー
・食堂
・庭
・施設員専用宿泊部屋
・ゲスト宿泊部屋
〔2階〕
・LINQ訓練場
〔3階〕
・LINQ訓練場
・筋トレルーム
〔4階〕
・LINQ各別部屋
〔5階〕
・LINQ各別部屋
・シアタールーム
〔6階〕
・展望温泉
〔7階〕
・会議室
〔8階〕
・主任室
〔屋上〕
・風力発電機
・休憩所
災害対策として窓は強化ガラス、壁はコンクリートの中に特別な物質を組み込み土砂や砲撃も防ぐことが可能。LINQが能力を悪用して逃げださない様に、深夜0時〜5時の間はLINQにしか効果がない特殊な電磁波を流している。
更に施設の裏にはヘリポートもあり、ヘリコプターが一機着地できるスペースがある。その他に乗り物は施設の車庫に厳重に保管されており、施設員か主任しか入室が許されない上にIDと指紋認証も必要となる。車庫の中には配給物や食材運搬用の大型トラックが2台。バイクが3台。軽自動車が3台、計8台が収納されている。
- Re: L I N Q ( No.5 )
- 日時: 2011/04/16 23:23
- 名前: ライダー (ID: BZFXj35Y)
「クルーエル、オイラ達も外に遊び行こうよ………」
現時刻の施設1階の食堂は閑散としていた。理由は、今の時間は唯一許された外出可能時間だからである。
ほとんどのLINQ達は施設におらず、山のふもとにある港や森の方へ外出中であった。
しかし、食堂には上下黒ジャージ姿のLINQと小太りのLINQが円卓に暇そうに腰をかけていた。
「1人で行って来い。俺は訓練場で鍛えてくる。」
「クルーエルは十分強いでしょ。14体の中で能力使わずにマスターと対等にやり合えるなんて。」
赤色の無地のパーカーを着た豚鼻が特徴的なLinq-04のグアマンドは、捻くれながらも尊敬を込めて言う。
「世界終焉なんてな、俺が1人で全部止めてやる。」
肩から足首に白いラインが1本入った黒ジャージを着た紫色の髪のLinq-02のクルーエルは微笑しながら言う。
「たまには息抜きも必要だよ〜、外に遊び行こうよぉ〜」
「俺らは‘兵器’なんだぞ?兵器に息抜きも遊びもあるかよ。」
クルーエルは冷めた口調でグアマンドに言うと、その場で首の骨を鳴らして手首をほぐし始める。
グアマンドはため息を吐くと、ズボンのポケットから水色の包み紙に包まれた飴玉を取り出して口に入れた。
「糖分取り過ぎは体に悪いぞ。」
「オイラの能力知ってるでしょ?糖分も脂肪分も関係ないよ。」
グアマンドは大きな手を広げ、掌をクルーエルに見せつけた。
掌には犬歯が伸びた口が奇妙に蠢いており、口の中からは3つの青い舌が不気味に動いている。
「相変わらずグロイな。ま、お前の能力と戦闘技術は認めるよ。」
クルーエルは笑ったが目が笑っていなかった。立ち上がり、食堂を後にしようとしたその時だった。
「クルーエル君、グアマンド君。」
食堂の出入り口から施設員である凪川明日花が2人を呼びとめた。
ポニーテールと赤い眼鏡をかけ、見た目は完全に天然女子に見える明日花は2人に歩み寄る。
「また訓練場?外出時間は外に行ってリフレッシュでもしてくれば?」
「人間は黙ってろ。リフレッシュなど、我々LINQに必要ない。」
クルーエルは冷めた口調で明日花に言い放ち、そのまま食堂から出て行った。
残ったグアマンドは明日花をチラリと見ると、駆け足でクルーエルの後を追って行った。
1人ポツンと食堂に残った明日香は、大きなため息を吐いて落胆する。
「………人間……か…………」
明日花は自身の手を見ながら呟き、悲しげな表情を浮かべると唇を噛み締めた。
「どうして、彼らを造ったの………政府……………」
* * * * * *
鉄さんの灯台からリュックサックを手に出てきたカインとラヴは、防波堤に腰をおろして海を眺めていた。
「いつ見ても綺麗だね。」
「うん。私、もしこの島から出て行けるなら行きたい場所あるの。」
「どこ?」
カインがラヴを見ながら尋ねると、ラヴは恥ずかしそうに口を開いた。
「ここから見える大きな島、‘日本本土’に東京っていう国があるんだって。そこに大きな塔があるの。」
カインはラヴの言葉を聞き、以前歴史の授業で聞いたことを思い出す。
「東京にある赤い大きな塔……東京タワー?」
「うん。そこの展望台からの景色が絶景って、マスターが言ってた。」
「ラヴのマスターって、百合さん?」
カインが尋ねるとラヴは頷いた。
2人の遥か海の向こうにある本土。カインとラヴは本土を見つめて満面の笑みを浮かべる。
「おっと、失礼しまーす♪」
2人の間にニヤニヤと笑いながらイーズが入り込んできた。
カインはとラヴはイーズを見ると、顔を合わせて大きく頷く。そう、鉄さんの手紙のことを説明するのだ。
「イーズ、話したいことがある。」
「ん?なんだよ。てか、そのリュックサック何?」
イーズはラヴの横にある青いリュックサックを手に取り、中身を確認し始める。
「……お金に地図?携帯電話も………あっ、これ新品のゲームじゃんか!!新しい配給物届いたんだな。」
「配給物じゃない。イーズ、これをとりあえず読め。」
カインは立ち上がり、鉄さんの手紙をイーズに渡した。
イーズはカインの普段とは違う様子を見て察し、有無を言わずに手紙を受け取り読み始める。
そのあとのイーズが、どういうリアクションをとるかは2人には予想できていた。
文を読んで行く度、視線が段々と文の終わりに近づくにつれてイーズの表情は怪訝な顔つきとなっていく。
「なんだよこれ………鉄さん…どこにいる?」
「分からない。だけどこの島にはもういない。多分、本土の方……。」
「どうして俺らに本土へ逃げろと行ってる?」
「分からない。決断するなら時間はないよ。後1時間弱で夕方になる。」
3人は顔を見合わせ、もう一度手紙に視線を戻す。
「………私は………行きたい。」
最初に口を開いたのはラヴだった。ラヴは2人を見ると、自身のリュックサックを握りしめる。
「俺も行くぜ。理由は分からないけど、本土に行ってみたいし。こんな機会ないだろうしな。」
イーズは満面の笑みで言うと、リュックサックを持ってカインに言った。
カインの答えもすでに決まっている。答えは勿論「行く」だ。
「よし。大体の船は5時ごろに港に出入りする。その時、政府の船を見つけて乗り込むぞ。」
「配給物運搬船でも良いんじゃねえか?そっちの方が安全と思うぜ。」
イーズの言葉にカインは一瞬同意しかけたが、首を横に振った。
「そんなこと鉄さんだって分かってる筈だ。だけど、手紙には政府の船に乗れと書いてある。」
「今はこの手紙を信じましょう。」
ラヴとカインはイーズに言うと、イーズは反論もせずに「おぅ。」と言い賛成した。
「それじゃあ、灯台の鉄さんの家で待ってよう。ここなら港を見渡せるし、船も確認しやすい。」
カインはそう言うと、3人で灯台の中へと入っていった。
- Re: L I N Q ( No.6 )
- 日時: 2011/04/16 12:06
- 名前: 風(元:秋空 ◆jU80AwU6/. (ID: 4.ooa1lg)
初めまして,題名につられてクリックしました風です。
設定が面白いと思いました!描写もきちんとしていて読み応えがありますね♪
彼等がレールから離れて自らの意思で動いて何が起るのか?楽しみです。
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