ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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月下の怪談話
日時: 2011/06/04 19:21
名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: t51BWMGM)

どうも、初めましてまたはこんにちは。九龍と申します。
前回の奴で挫折したという悲劇。

ここでも百物語とか書きます。
とりあえず、目指せ百冊読破!

さて、いつもの注意点。
僕(九龍、クロウ)が嫌いな人は、帰った方がいいです。
次に、荒らし、チェーンメールを貼りに来た人も、帰った方がいいです。
オカルトな話とかもあるので、そういうのが苦手な人も、帰った方がいいです。
最後に僕に文才という文字があるかどうかはわかりません。心配な方は帰るといいです。

……これでも、残ってくださるんですか?
できれば本文も読んで行ってくださると、嬉しいです。


目次

Page:1



Re: 月下の怪談話 ( No.1 )
日時: 2011/06/04 19:31
名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: t51BWMGM)

どうも、こんばんは。



今日は月が綺麗ですね。
こんなに月が綺麗な夜は、不思議なことが起こりそうですね。


……ところで、あなたはどのような用件でここにいらっしゃったのでしょうか。
ただ、私の話を聞きに来ただけ、ですかね?
それとも、道に迷ったのですか?
それとも、もっと別の御用件で?

とりあえず、立ち話もなんですし、そこら辺に座ったらいかがでしょうか。
とはいっても、椅子はありませんがね。クッションにでも座ってください。


……さて、と。
そろそろ話を始めるとしましょうか。



私、今回百物語を語らせていただきます、この図書館の従業員の九龍と申します。
火をともした蝋燭を百本と、百冊の本。
当館は屋根が透明なので、星空も見れますし、私の話がつまらないというのなら、星空を見ながら夢の世界へと落ちて行くのもまたいいかもしれませんね。

……私には、あなたを寝かせる気などないのですけれど。





では、話を始めます。

まずは、一冊目の本から。
どうぞ、お楽しみください……。

Re: 月下の怪談話 ( No.2 )
日時: 2011/06/10 15:48
名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: DE3AAuff)

さて、一冊目の本はこれにしましょうか。




それは、手でした。
手首から切り取られた、手でした。
それがいつからそこにあったのかはわかりませんが、それを疑問に思う事はありませんでした。

その手は、死人の手のように白く、少し伸び気味の爪は青く塗られています。
細く長い指はやわらかく、小さなそれは女の手のようでした。

その手は、爪の色と同じ、青い髪の男性の家にありました。
男性はその手を大切にし、マニキュアで爪を青く塗ったのも、この男性でした。
男性は手を濡れたタオルで優しく拭きながら、小さく笑います。

「今日も、貴方は綺麗ですね」

男性は優しく手に語りかけ、その手に自分の手を重ねます。
すると、手は青年の手を優しく握ります。
青年がその手の手首を撫でると、手は青年の頬を優しく撫でました。


まるで、青年が自分に愛情を与えていることを分かっているかのようで。

そして、自分もそれにこたえようとしているようでした。


男性がその手の指先に、唇を落とした時。家に呼び鈴の音が響きます。




「月ー、いるー?」

若い女性の声が聞こえ、それから、ドアをたたく音が聞こえました。
男性は少し顔をしかめましたが、手の甲に唇を落としてから、小さく笑いました。

「ちょっと待っててくださいね、すぐに帰ってきますから」


男性はそう言って、玄関まで歩いていきます。
すると、手はさびしそうに、少しだけ斜めに傾きました。


少しすると、聞きなれた男性の足音と、それともう一つの、聞きなれない足音。
ドアノブをひねる音。ドアが開くと、男性と若い女性が部屋に入ってきました。
女性の髪は、肩まである茶髪。目はたれ眼気味の黒目です。
白いスーツを着たその人は、部屋のドアを閉めると、机に乗った手をじっと見ました。


「私、お茶を持ってきますね。貴女は、ベッドにでも座っていて待っていてください」

男性はそういうと、部屋を出て行ってしまいました。
部屋に残るのは、ベッドに座った女性と、机の上の手だけ。


女性は、ベッドに座りながら、手をじっと見つめていました。

女性は手に触れ、それを撫でます。
手はなにもせずに、ただじっとしているだけでした

女性は立ちあがり、手と自分の目線があうところまで、かがみました。


「月、なんでこんな物持ってるんだろう? こんな、気持ち悪い手なんか……」


女性はそう言い、ぐっと顔を近づけます。
と、次の瞬間です。







手が、女性の首を掴みます。
女性は悲鳴をあげ、手を振り払おうとします。
ですが、その手はか弱い女性の物にも関わらず、強い力で女性の首を締めあげます。

頭を上げようとしても、手を離そうと、力いっぱい引っ張っても、その手は首をじわじわと締めあげます。
やわらかい指が、女性の首に食い込みました。

手は、力いっぱいに女性の首を絞めます。
その手が考えるのは、自分の爪と同じ色の髪を持つ、あの男性のことだけ。





青い爪が女性の首を傷つけました。
女性の呼吸が少なくなると、手は嬉しそうに、また力を込めます。



男性の名を呼べる、この女性。
自分は口がないから、名を呼べないというのに。

男性のいる場所へといける、白い足。
自分には足なんてないのに。

男性と愛の誓うための唇。
自分は、彼に答えられないのに。


憎らしい、憎らしい。この女の全てが憎らしい。

手はその手に力を込め、憎しみをぶつけました。








「おや、またですか」

男性が紅茶の入ったティーカップを持ちながら部屋に入ってくると、手は申し訳がなさそうに、指を内側に曲げる。

「いえ、良いんですよ。今日の子は、おいしかったですか?」

男性はそう言いながら、冷たくなった女性へと目を移す。
手は満足そうに、上下に揺れた。
男性はそれを見て、優しく微笑んだ。


「それは、よかった」

男性は手を撫でながら、喉を震わせて笑います。








——さて、次のご飯は、誰にしようか。












いかがでしたか?

今回は手と、それを病的に愛す男性のお話です。
その男性と手は、今は何処にいるのでしょうか?
そして、次の犠牲者は誰なのでしょうか?


もしかしたら、この図書館にもその男性と、手がくるかもしれませんね。





嫌ですねぇ、ただの冗談ですよ。まだ帰るのには早いですよ。















一本の蝋燭にともった赤い火が、消えた。

Re: 月下の怪談話 ( No.3 )
日時: 2011/06/10 17:10
名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: DE3AAuff)

さて、今度は私が本を読ませていただきます。



……申し遅れましたが、私、従業員の月冴と申します。
これから、私も九龍と交代で本を読みますので、よろしくお願いします。

……私の髪の色、珍しいですか?
これ、地毛なんですよ。ちゃんと、根元も青ですよ。
青い髪って、日本にはほとんどいませんものねぇ。珍しいかもしれませんね。



さて、と。
そろそろ話をいたしましょうか。
これは、私の体験談です。
嘘偽りはありませんよ。多分……ね。









月が美しい夜のことでした。

それは、美しい月明かりが差し込む、図書館の中の出来事。

私は青いマニキュアを買って、家に帰る途中でした。

家に帰る途中、普段は気にも留めないような風景に、ついつい見いってしまいました。
月明かりに照らされた風景は、どれもが幻想的に光り、生命の美しさを感じさせます。

そのなかで、ひときわ美しく光るものがありました。
それが、この図書館なのです。
図書館の白い壁が、月の光を反射して輝いている。
それはなんとも幻想的で、美しいものでした。


私は図書館の前で、ぼぅっと突っ立っていました。
その時、明かりもついていない図書館の扉が、ゆっくりと開きました。


「……おや、こんばんは」

図書館の扉の中から、声が聞こえました。
その次に、扉の間から、黒髪の男性がひょっこりと顔を出しました。
切れ長の瞳に、白い肌。まぶたには薄くアイシャドウを塗った男性でした。
その肌は、まるで死人のように白く、唇も青い。
だけど、それが不気味とは思いませんでした。その男性には、どこか人間離れした美しさがあったのです。



「館長、そのお方、お客様ですか?」

ひょこり。
もう一人、扉から顔を出しました。
その人はまだ幼い従業員の様で、黒い髪に黒い目の子供でした。



「お客様だったら、外で待たせてはだめですよ」
「ああ、九龍の言うとおりですね。では、中にお入りください。

私はそう言われて、半ば強制的にこの図書館へと足を踏み入れました。
廊下を抜けると、そこには本棚がズラリと並んでいました。
天井が透明で、そこの本棚は、全てが月明かりに照らされています。




「それでは、ごゆっくり」

九龍と館長がそう言って、暗い廊下へと姿を消していきました。



私は本棚から、本を一冊抜き取り、それを読みました。
それは黒い背表紙の、ホラー小説でした。


もう、本の内容の半分程、本を読んでしまいました。
そろそろ、帰らないと。
私はそう思い、廊下へ出ました。




カツン、カツン、カツン。

静かな廊下に響く、一人の男の足音。
誰もいない、冷たい空気の廊下に、その音は高く響きました。


カツン、カツン、カツン。
ぺたり、ぺたり、ぺたり。


音がした。
自分の足音ではない、誰かの足音。

さっき、あんな小説を読んだから、こんな音が聞こえると勘違いするんだ。
私はそう思い、また歩き出します。
ここにいるのは、見たところ、九龍と館長だけ。
それに、聞こえたのは素足で歩くような音。
図書館の中で素足で歩くなんて、注意されるはずだ。


カツン、カツン、カツン。
ぺたり、ぺたり、ぺたり。


「え……?」

私は、思わず立ち止りました。



ぺ た り 。


はっきりと、音が聞こえました。
自分は足を止めたのに、音がする。

ペた……


その音は、急に止まった。
まるで、私の足音に合わせようとしているようで。

カツン、カツン、カツン。
ぺた、ぺた、ぺた。

足音を先ほどより小さくして、なにかが私の後ろからついてくる。
しかも、先ほどより、速足で。

カツン、カツン、カツン。
ぺた、ぺた、ぺた、ぺた、ぺた、ぺた。

また、足を速めた。
私も速足で歩き、早くこの図書館から出ようとする。

カツン、カツン、カツン、カツン、カツン。
ぺたぺたぺた、ぺたぺたぺたぺたぺたぺた。

足音は、どんどん近付いてくる。
私は入り口まで、全速力ではしった。

カツカツカツカツカツッ。

ぺた。



ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ。


カツッ。

カツン。


足音が、急に止んだ。
私はいったん立ち止まり、ふうっとため息をついた。


「……全く、なんであんな音が聞こえたんだろう」

カツン。
また、足を進める。
だけど、やはり、足音は聞こえなかった。
私は自嘲気味に笑いながら、後ろを見る。
後ろには、誰もいない。ただ、底なしの闇。



その時。

足に、痛みを感じた。
爪が食い込むような、足首を絞めつけるような、私が歩くのを邪魔するかのような。
恐る恐る足元を見てみると、そこには、二つの白い手。











「つーかまーえた」

低い声で、誰かがそういった。





「……おや、どうかしましたか?」

その時、九龍が走ってきた。


すると、足を押さえる者が消えた。


「いえ、なにも」
「そうですか。あ、そうだ。廊下で走るのは、なるべく控えてください。転んだら危ないので」

九龍はそう言って、右手に持った懐中電灯を私に向けた。
私は苦笑して、あやまった。










その後、私はこの図書館の従業員になりました。
ここにいると、何故だか居心地がいいのです。
入ったときは、なにも考えてはいなかったのに。帰ろうとすると、帰れなくなるんです。



では、私の話はこれで終わりです。

















一本の蝋燭にともった青い火が、消えた。

Re: 月下の怪談話 ( No.4 )
日時: 2011/06/13 15:37
名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: wH27GNaO)

さて、次は私の番ですね。


どうも、私、この図書館の館長です。
あの二人と交代で、私も時々話をしますので。
今後、よろしくお願いします。

さて、雨が降ってきましたね。
今回は、雨にちなんだ話をしましょうか。





私は、雨の日が好きでしてねぇ。
雨の日に、少し散歩をしていたのですよ。
さて、それから、ちょうどここへ帰ってきたときのこと。
花壇に、赤いあじさいが咲いていたんですよ。
私は赤いあじさいが好きだったので、別によかったのですが、よこし気になる事がありました。


「はて、ここに赤いあじさいなんてありましたかねぇ?」

私はくっと首を傾げ、図書館へ入って行きました。
図書館へ入ると、九龍が暗闇の中から姿を現します。

「おや、お帰りなさいませ、館長。外、雨降ってましたけど、大丈夫でした?」
「えぇ、私、別に濡れても平気なので」
「……そういうと思った。今度、折り畳み傘買ってあげますよ」

九龍はそう言って、大きなため息をつきました。
そして、カウンターに乗った本を戸棚に入れに行こうとする。
私は九龍の肩を掴み、気になっていたことを聞いてみた。


「あの」
「はい?」
「九龍、赤い紫陽花とか、植えました?」


九龍はそれを聞いて、首をかしげました。

「紫陽花って、赤くするには、リン酸が必要なんですけど」
「リン酸の混ざった水でも、やったんですか?」
「いえ」

はっきりとした、否定の声。

私はううんとうなり、九龍の手を掴み、入り口まで引っ張って行きました。
九龍は何も言わずに、ただ、私についてくるだけでした。


花壇の前に来ると、九龍はくっと首を傾げました。
九龍も、この花壇に赤い紫陽花が咲いていたことは知らなかったようです。
九龍は紫陽花をいろんなところから見て、再び首を傾げました。

「へんですねぇ、ペンキで塗った後とかもないし」



九龍はそう言って、小さく笑った。
と、次の瞬間だった。
九龍の肩に、べとりと、なにかが乗った。

「九龍?」
「はい? 今度はなんです?」


「……いいえ、なんでもありません」

それを聞き、九龍は喉を震わせて笑った。


「館長も、夜に変な物とかが見えるんですか? まあ、そういうのって絶対に気のせいですけどね」
「…………」
「僕も、白いワンピースの女の子が見えたと思ったら、ベッドのシーツだったってことがありますよ」

九龍はそう言って、笑いながら図書館へ入って行った。
私も、額に手をあてながら、九龍と一緒に図書館へと入った。
図書館へ入ると、闇が私達を覆った。
今夜は、月が出ない。なので、この図書館は真っ暗だ。

と、その時気がついた。
私に見えて、九龍に見えなかったそれ。
九龍の肩に手を置いた、それ。

それは、完全な闇の中であるから、姿が確認できるものであった。
白い布を身にまとったそれは、べっとりと血に濡れた手をしていた。
片手には、ナイフを持っていて、そのナイフの切っ先は血まみれだった。

白い布の中で、なにかが、口のはしをあげて、いやらしく笑った。





「九龍ッ!」



「……えぇ?」

九龍がしぶしぶ後ろを向くと、白いそれは、消えた。



「どうしたんです、館長。目薬も買ってきた方がいいですか?」
「何気に失礼ですね、九龍は」
「……本当に、今日の館長、変ですよ。僕の後ろに、お化けでもいたっていいたいんですか?」


九龍がそう言って微笑むと、また、白い布をまとった何かの笑みが蘇った。




「そんなのいたって、僕は大丈夫ですよ。今日、塩なめましたもの」
「……なんのために、塩を」
「何となく、お清めの塩を、ちょっと……しょっぱいものがほしかったから」


「……今度、ポテトチップス買ってきてあげますよ」

私がそういうと、九龍は喜んで、図書室の奥へ消えた。





「……そういえば」

私は、九龍の言葉を思い出し、また花壇へと向かった。








花壇には、赤い紫陽花が咲いていた。
私は、その紫陽花の生えた土を掘り起こす。



そこには、やはり、あった。
白い布にくるまれ、包丁の刺さったそれが。




『紫陽花って、赤くするには、リン酸が必要なんですけど』






白いそれを開けた途端。



誰かが笑った。















ニ タ リ







……いかがでしたか?
あぁ、その後のことですか?
まぁ、なにもありませんでしたよ。あのあじさいも、今も綺麗に咲いています。






一本の蝋燭にともった紫の火が、消えた。


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