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- 夜月の鍵と七人の姫君
- 日時: 2011/04/17 10:36
- 名前: 更紗蓮華 (ID: lNJ.MCVY)
夕月の鍵は夢。希望と祈り、心の光と影。
伊月の鍵は炎。力であり破壊、万物の為の灯火。
璃月の鍵は無。何も持たぬが故に全てを持つ。
煌月の鍵は空。夜も昼も、全てを受け入れる器。
蒼月の鍵は護。意思と想いは、全てに勝る。
玖月の鍵は癒。安らぎを与え、願いを叶える。
そして、夜月の鍵は・・・。
七つの鍵は神の遺産、六つの鍵は世界の要。
五つの鍵は希望を持って闇を祓い、四つの鍵はその祈りと共に悪を滅する。
また三つの鍵は常に狭間を揺れ動き、二つの鍵は意思を導く。
そして、一つの鍵は創世の娘。
最も遠くありながらも最も近く、また最も眩く、最も強い存在。
それは決して鍵とは相いれず、しかしながら鍵そのものを守る命。
光であり闇でもある、夜月の真の後継者。
救世の聖者であり新たな神、希望と光を受け継ぐ大いなるもの。
だが、その存在は極めて薄弱、光にも闇にもなれる最も危うき者。
ただ一つでは在れない、最も幼く、儚いもの。
純粋であるために染まりやすい、透き通った祈りを持つもの。
世界を救いたくば、その鍵はただ一つ。
しかしながら、それのみが堕ちる可能性を持つわけではない。
悪たる闇は、いつも身の内に潜む。内なる闇は、何よりも強く、恐ろしい物。
だが、闇を退けてはならない。ただかたくなに、拒絶してはならない。
闇は光と共にある物、闇が消えるときは、光もまた去るものと知れ。
己のやるべき事を、ただ己のみの役目を見極めよ。
さすれば、鍵はあるべきように働くだろう。
それを見誤った時、鍵は砕け、世界は混沌へと戻るだろう。
七つの鍵よ、それを持つ者たちよ。
拒むな、疑うな。世界は、人が思うよりも真実で満ちている。
だが、受け入れてはいけない。その望む明るい未来を。
本当に必要な未来は、常に痛みと、絶望と、深い闇と共に。
それを望むならば、選ぶことが出来るだろう。ただ一つ、真実を。
全てを失う覚悟であっても、全てを守り通そうとしても。
決して、忘れてはならない。この世界の、真実の在り方を。
たとえ、行き着く先が、ただ一つしかないとしても。
絶望に打ちのめされても、深き闇に堕ちても。
忘れてはならない。この世界を、その全てを、守ろうとした者がいた事を・・・。
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- Re: 夜月の鍵と七人の姫君 ( No.1 )
- 日時: 2011/04/30 13:34
- 名前: 更紗蓮華 (ID: lNJ.MCVY)
プロローグ 目覚めの前に
「かなめ、おはよっ!」
「あ、おはよー千草」
桜並木の中で、仲良く歩く2人の少女。
ふわふわした長い髪に色素の少ない紅茶色の目の優しそうな少女、夕月かなめ。
ショートカットの黒髪にキリっとした顔立ちの活発そうな少女、伊月千草。
2人は笑いあいながら、少しずつ咲き出した桜の下を歩く。
よくある、だけどちょっと久しぶりの、普通の登校風景。
「あーあ、もう春休み終わっちゃったのかー。ボク、まだ全然遊んでなかったのにな」
「もう、千草ったら。春休み短いし、しょうがないでしょ?
というか、2週間弱の休みで、何をどう遊んだって千草は満足できないでしょ」
「あっはは、バレたか。今年は受験だし、あんまり遊べなくなりそうじゃん?
だから自分なりにめいっぱい遊んだつもりだったんだけど・・・うーん、全然足りないや」
つまんないの、と唇をとがらせる千草。それを見て、クスクスと笑うかなめ。
まだ少し冷たい空気の中に、ふんわりと微かに暖かい風が吹き、かなめの長い髪を揺らす。
それはとても楽しそうで、とても優しい春の風景。
2人ともそれなりに整った容姿なので、端から見ていると結構絵になっていたりする。
「だけど、クラス替えとかあるでしょ? 楽しみじゃない?」
「そりゃ、楽しみだけどさぁ・・・なんつーか、こう、『ああ、ありふれた日常が始まっちゃうんだな』と・・・
ねえ、かなめもそんな感じしない? なんか、すんごくつまんない」
「・・・ないわけじゃないけど」
千草は、スリリングなのが好き。遊園地行っても、真っ先にジェットコースターに乗るタイプだ。
逆に言うと、日常が続くと退屈で死にそうになる。
「あーあ、つまんないのー・・・」
千草は、はあ、と大きくため息をついた。
「おはようっ!」
クラス替えでは、違うクラスだった。
ガラガラッ、と勢い良く千草が自分の教室の扉を開け放つと、パラパラとその返事が返ってきた。
みんな、元気に挨拶されたからつい返してしまっただけで、千草にそんなに大勢友だちがいるわけではない。
それでも満足気に笑う親友を見て、かなめも自分の教室に入っていく。
・・・後で、少しでも様子を見ればよかった、なんて後悔するとは知らずに。
- Re: 夜月の鍵と七人の姫君 ( No.2 )
- 日時: 2011/05/02 19:30
- 名前: 更紗蓮華 (ID: lNJ.MCVY)
第一話 祈りの子 [Side かなめ]
見てしまった。聞いてしまった。
決定的な、瞬間を。・・・他ならぬ、私が。
廊下で、壁に寄り掛かってうつむく私。
呼吸が浅く、速くなる。足が震えて、視界が暗くなる。
まさか、まさか。そんな。
なんで・・・どうして?
頭の中を、無数の『?』が渦巻く。
恐れとも、怒りとも知れない感情が膨れ上がり、痛いほどに速く、強く打つ鼓動。
「っ、・・・・・・はぁっ」
止まりそうになる呼吸を、無理やりに整える。
酸欠か過呼吸か、それとももっと違う理由? 頭がガンガンと痛く、激しい耳鳴りがした。
あははは・・・
楽しげな、だけど残酷な哂い声が長い廊下に響く。私は、ビクッと体を震わせた。
恐る恐る、声のする方に顔を向けるけど、誰も廊下には出てこない。
一時中断
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