ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 人魚の唇
- 日時: 2011/04/29 19:46
- 名前: 漂浮 ◆2uG75eLD9M (ID: Hsu/pkT7)
ファンタジー小説なのですが、一応こちらにしておきます。
初心者なので、至らないところがあり、読みにくいと思いますが、よろしくお願いします。
誹謗中傷はお止めください。
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- Re: 人魚の唇 ( No.1 )
- 日時: 2011/04/29 19:49
- 名前: 漂浮 ◆2uG75eLD9M (ID: Hsu/pkT7)
夜、何かが蠢き始める。
ざわり、ざわり。不気味な音が、ある本屋の中から聞こえる。騒いでいるような、これからを予兆しているような、そんな音が。
古びた本屋の中で、眩い光が一瞬、窓の外の暗闇をも照らした。
不気味な音は、もう聞こえない。
- Re: 人魚の唇 ( No.2 )
- 日時: 2011/04/30 15:46
- 名前: 漂浮 ◆2uG75eLD9M (ID: Hsu/pkT7)
ルルド・ベルナデットは、十五歳の少女だ。肩に付く程度の亜麻色の髪、大きな赤色の目。そして、青い衣に白い帯をしていた。
ルルドは見るからに、元気、明るい、楽しい、という言葉が当てはまらず、気だるげで無気力に見える。それだけ彼女の周りの空気が淀んでいるのだ。暗く、湿っている。
その見た目、雰囲気だからなのか、彼女は周りの人間から話しかけられるということはなく、いつも一人だ。苛められる、というわけでもないが、冷ややかな視線は彼女を縮こまらせた。
彼女に関わる人間が彼女に、大袈裟なくらい距離をとるのには理由がある。それは、彼女の両親がいない、ということ。それだけならば皆、彼女に同情を持って近づいたかもしれない。だが、彼女の両親が死んだ訳を聞けば、誰も彼女に近づかない。
彼女の両親は魔物によって殺された。ここの村に、魔物が出るというのは珍しいことで、他の村や国では珍しいことでもない。だが、ここは特別だったのだ。この村には聖母マリアがいると言われていたのだ。
聖母マリアがいると、ある少女が言い始めたのが最初だ。それは十一年前のことで、ある幼い少女が「見た」と言うのだ。勿論村にいた皆は信じなかった。
その当時、村は頻繁に襲ってくる魔物に困らされていた。村は約一万五千人が住む小さな村だ。魔物が多勢で襲って来た時には、もう全員が食い殺されてしまうのではないかと、皆が思っていたほど。
だが、ある日を境に魔物はぱったりと来なくなったのだ。あの「見た」と親告した幼い少女が、「マリア様が聖堂を建ててほしいって言ってるよ」と言ったので、村の神父であった少女の父が建てた、その日から。
村全員は少女を、今度は崇高なる者として見るようになった。尊ばれて、扱いが恭しいものになった少女の心境は素直なもので、嬉しいと純粋に思っていた。両親もそれと同じで、娘が変な目で見られなくなった———良かった、と一安心していたものだ。
周りから過保護と言えるほどの待遇を受けていた少女が、今度は「マリア様なんて見えないよ」と言い出した。同年代の少年と、川原で居る時の出来事だった。
それを聞いた少年は当然「何で?」と聞いた。少女は「だって、マヤカシなの」と、頬を膨らまして答えた。それは、一つ上か、二つ上の少年に「見えるなんて、嘘だ。マヤカシだ」と言われたことに対しての愚痴だった。だが、その言葉を愚痴だとは思っていなかった少年は、少女がインチキを言ってるのだと、勘違いしたのだ。「インチキだ」、少年は大人達が集まっている集会に大急ぎで行き、大声で叫んだ。その衝撃的な発言に、大人たちは話しを中断させ、少年の話を聞いた。少年が嘘を言ってるのだとは思わなかった。その少年は素直で、優しくて、それで村の長の息子だったからだ。いくら奇跡を起こした少女でも、村の長の息子には勝てない。話し合いが行われていたのは、皮肉にも彼女がマリアを通して「建てて」と言った聖堂だった。
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