ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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「Stray Sheep」
日時: 2011/05/02 17:35
名前: やなぎ (ID: cx1920xY)

どうもやなぎといいますw
今回でもう三回目となります。
まぁそんなことはどうでもいいんですがw
タイトルの「Stray Sheep」とは迷える子羊という意味です。
ちなみに今回の話の主な登場人物は殺し屋さん達ですw

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Re: 「Stray Sheep」 ( No.1 )
日時: 2011/05/02 20:35
名前: やなぎ (ID: cx1920xY)

 「鰐は。」

バシャ・・・バシャ・・・・バシャ・・・
激しい水音を立てて女は水で満たされた洗面器の中から必死に顔を上げて呼吸をしようと抵抗する。無理やり暴れるまわるので洗面器からは大いに水が飛び散るがその水を補うかのようにドボボボボ・・・とものすごい勢いで水が蛇口から放たれる。そのせいで洗面器は既に決壊寸前のダムの様になっている。女が抵抗するためその決壊寸前のダムはもう完全に崩壊していて女が抵抗する際に飛び散らす水とこぼれ落ちる水で床はすでにビチャビチャに濡れていた。
とりあえず俺は女が溺死するまで女の頭を右手でおさえつけて欠伸するのを左手でおさえ俺の右腕を掴もうとする女の両手を払いのける。




わに・・・そう鰐だ。肉食性水棲爬虫類の俗称のあのでかい鰐じゃないそう俺の名前だ。

バシャ・・・バシャ・・・・どんどんと女が抵抗する力をやめてだんだんと動きがおとなしくなる。が、最後に命の蝋燭が激しく燃え上がるように突然ものすごい勢いで俺の右腕を掴み顔を上げようとして水が激しく飛び散るが俺がそれを許さなかったおさえつけられて女は一気に力を弱めてやがて俺の右腕を握る両手は力なくブラン、と垂れ下がった。その水飛沫が俺のほほにかかりやけに冷たく俺のほほをつうっと舐めた。

終わったか・・・・。


俺は左手で女のひんやりとして濡れた首筋を押さえて脈を確認し止まっていることを確認すると右腕を離し。芸術となった女の首を丁寧に持ち上げて作品のもっとも重要な部分である死に顔を見る。
女の顔は血の気が引いて真っ青で唇は青紫に変色し目は白目を剥いて唇の端に泡を吹いていた。俺はべったりと張り付いた前髪を分けて唇の両端の泡をハンカチで拭ってやり丁寧に目を閉ざさせる。
べったりと張り付いたきれいな艶のある髪、高い鼻、とかなり整った清純な顔をしている。最高の素材だったので俺はこの芸術とも呼べる溺死体に少なからず、いやかなりの興奮を覚えて。つい・・・。

「最高だ・・・。」と感嘆の声を漏らした。

俺は女を丁寧に抱え上げて床に置きその美しい顔をじいっと眺めた。
その青白い顔はジジジ・・・と音を立てて光る蛍光灯がくっきと輪郭を縁取っていた。俺は顔の輪郭を恭しくなぞりそして青紫に変色した唇に触れる。
・・・・その綺麗な死に顔に思わず抱きしめたくなるほどの愛おしさと儚さが胸をいっぱいにして胸をギュッとしめた。

俺にとって溺殺こそ究極にして至高の芸術だと思う。
殺してる過程なんざ正直どうでもいいむしろ億劫だあれなら普通にナイフで切り殺すほうが遥かに効率がいいうえに後始末が楽だ。
だがそんなこともどうでもよくなるほどに溺死体は美しく思えるのだ・・・。綺麗に現世の垢を禊いで穢れのなくなった浄化された顔。その顔に例えようのない感動を覚えるどっかの学者が言ってたように神の最高傑作である女は特に美し映えるどんだけキツい顔だったとしても溺死すれば俺にとってはそこらへんの美女よりも美しく輝いている。
まぁ、出来立てほやほやの溺死体じゃねえと芸術と呼べねえがな。
俺が仕事の後の芸術鑑賞をしている途中その空気をぶち壊すようにして携帯がけたたましく響いたと思えるほど鳴った。

俺は舌打ちしながら携帯の着信先が表示されるディスプレイを見るとそこには「柴島 桃」と表示されているの見るとさらに舌打ちが出た。が一応上司と部下という立場上出ないわけにもいかず渋々と携帯を開き通話ボタンを押して耳を当てて言った。
「はぁ〜鰐だけど?何か用かよ?」
正直上司に対する言葉づかいじゃないがコイツに対して誰も使ってないので俺も使わないことにしている。柴島桃と実に女らしい名前だが正体はサングラスをかけた四十前後の汚らしいオッサンだ。清潔感はまったくなく常にボサボサの茶髪からフケを出している。どこか迫力のあるようでなさそうな顔をしている。ダメ人間っぽさそうな雰囲気がそうさせている。
「よう、仕事は終わったか?ってまぁ終わってるよな。そりゃもう朝の五時だ。とりあえず始発にのって報告して来い。」
「え、そ、そうだな・・・。」
俺は携帯を離し表示された時刻を見るとすでに五時を回っていて驚いた
仕事にかかったのは二時だから三時間俺は芸術鑑賞していたこととなる。正直5分くらいしかたっていなかったような気がするが。
「おいおい、どうした?まさかまだ終わってねえことなんてねえよな?」
少し声色を低くして柴山が尋ねる。
「んな、訳ねえだろ。じゃ、今から斡旋所に帰るわ。」俺は言うが早いか携帯をきり慌てて後始末を始める。
最近芸術鑑賞のせいでじかんを忘れてしまっている。何とかしねえと仕事に支障が出るな・・・。何て考えながら大量生産された普通のシャツに着替えて、7分ほどで後始末を終えて用事がすみ玄関から出ようとする。
「おっと忘れてたぜ・・・。」
俺はひとり言をつぶやいてもう一度女がいる洗面所に向かい携帯を取り出して写メを撮った。俺は仕事した相手の顔をちゃんと写メで記録、まぁ画像収集をしてたまに芸術鑑賞をしているがやはり生に限ると毎度毎度思いすぐに携帯を閉じるがまたみてしまうのだ。そういう自分が嫌いでもなかったので俺はいつも集めている。ちなみにこれで50人目だ。

「じゃあな。」芸術に名残をおしくも別れを告げて玄関から出るとすでに空は明るんでいた。
六階建てのマンションの六階から見える地平線の先からまぶしく光る太陽が空気を暖めながら照らしていた。
そんな気分のいい朝の仕事終わりの一服をするため俺は近くのコンビニでタバコを買い。青白い空に向かって煙を吐きながら駅へと向かった。

鰐 溺殺専門自己完結型の殺し屋

Re: 「Stray Sheep」 ( No.2 )
日時: 2011/05/02 23:42
名前: やなぎ (ID: cx1920xY)

「蠍」

真昼の繁華街は飽きれるほどに雑踏であふれかえっていた。
季節は秋だというのにまるで真夏日の様に熱くさらに人通りの多い繁華街はさらに蒸すように扱った。
そんななか一人やけに目を引く厚手のロングコートを着たメガネの男が一人周囲に暑苦しそうにいらがられるよう見られている男、蠍だ。
蠍は半袖のYシャツを着たセールスマンでも汗だくになって歩く繁華街を汗一つかかずもっと熱くても問題ないとでもいいたげなほど涼しげな顔をしていた。

蠍 彼は殺し屋だ。ターゲットに近づきすれ違いざまに痛みを感じない細い丈夫な毒針をターゲットの肌に差し込む。謂わば毒殺専門の通り魔的殺し屋だ。
そんな彼に蠍と名付けたのが柴山桃シバヤマモモだった。柴山は政治家から専業主婦に至るまで幅広い層にわたって殺し屋を紹介する斡旋所の様なものを開いている。その業界では有名で日本では最大規模の斡旋所だ蠍はその内の一人として所属している。
日本最大の殺し屋斡旋所「Stray Sheep」では彼の様に蠍などといった自身の殺しの流儀または見てくれに則した動物の名が与えられる。
殺し屋という特異なサービス業を素人のものでも分かりやすくさせるために名づけているそうだ。



蠍は歩きながらロングコートのポケットにある真っ黒なやけに重厚な感じのケースを取り出す。それを人目に付かないように周囲が自分から目を離したすきにケースの中に丁寧に何本も収まっている細長い針のうちの一本を取り出した。遠目からでは見えないであろう細長い針を・・・。
元から手癖が悪かった。子供の時から万引きを毎日のようにしていた。
バレルバレないのスリルを楽しみたかったといううわけでもない最早自分にとっての日常の一つと言っていほどに馴染んでいた。
そんなある日だった有名な私立校に進学しても最早日常の習慣はなおるどころか拍車をかけ日に何度も同じ店に立ち寄り万引きをしていた、が見つかるはずがないという慢心のせいか、それともあの人間がただ単に周りの節穴の目をした大人どもとは違ったのかどうかは今でも分からないがその日彼は一人の刑事に万引きを見つけられ万引きが犯罪であることを知った刑事に出会い自分の歪みがひどく浮き彫りになり刑事を憎んだ。と同時に感謝した。何の変哲のない人生に変化が訪れたと思ったからだその後補導の後家に帰り初めて親に激怒された。そしてその一年後蠍の人生は悪い方向へと急激に変わった一家は離散した。元もとそういう家族だった、少しの事で泣いたり笑ったりと幸せそうな家族だったがまさか自分が万引きを犯しただけで一家が離散するなんて夢にも思わずなんだか虚しくなった。高校中退を余儀なくされ親からも見捨てられ怖くなった万引きをやめるにやめれず成果する毎日に自己嫌悪がしていつも死ぬことばかりと自分の人生を壊した刑事を恨んだ、ただただ放浪をつづけ精神だけが腐敗していく彼は一人の男に出会う。
それが柴山だった、柴山は彼の万引きを助長させ巧みにその技術を向上させるよう彼を操りやがて一人の殺し屋として成長した。その初めての相手が彼を捕まえた林「ハヤシ」という刑事だった言うまでもなく私怨だった、彼は自分の人生を狂わせた林を許せず殺し屋として成長した時蠍は林を殺す誓いを立てていた。柴山に操られて言いように利用されているのを承知で訓練を受けたのは林を殺すという一方的な私怨を復讐を果たすためだった。
が、内心不安でたまらなかった。
いやどちらでも良かったと言うべきか彼は別に見つかり未遂に終わってもよかったのだむしろ未遂で終わってほしかったのかもしれない、こんなバカげた真似をしようとしている自分をまたあの時の様に叱ってほしかっただけなのかもしれないが元々神の領域ともいえるほどに手先が器用だった蠍は訓練を受けた後の手先の器用さはまさに神がかり的な域に達する。林は気付くことなく毒によって繁華街でもがき狂い死んだ。
その戦慄する光景を見た蠍が感じた感情は得も言えぬ満足感だった。
先ほどまでの罪悪感や後悔で押しつぶされそうになった胸がスカッとしたの覚え一気に幸福を感じた。蠍が既に20になったときである。

そして4年がたった彼はすでに殺しも日常の一部となり仕事がない日はいつもイライラするようになった。
・・・だが今日は気分がいい。

なぜなら・・・・・。


「ぎゃアアアアアアアアアアアアアアアア」
突如人ごみの中から断末魔の様な叫び声が響く。
その叫び声に連鎖するように女性の甲高い悲鳴も響く。
背後からざわざわと一人もがき苦しむ男の周りで雑踏が輪を作り唖然とその男をただただ見つめる。
男は声にならない声を出し息苦しそうに首をおさえてコンクリで整備された道路を爪がはがれるまでひっかき回しのたうち回るやがて口元からは泡立った血が口元から零れ顔色は急激に変化し土色となり体格のいい男はうつ伏せになって静止した。
何が何なのか分からないその状況に周囲は沈黙したのち叫び声が繁華街全体に轟き野次馬たちは散り散りになって蜘蛛の子を散らすようにして消えた。
その叫び声を後方で聞いた蠍は口元を歪ませて一人ほくそ笑んだ。

蠍と気付く時には既に手遅れだ何故なら彼は既にお前を殺しているから。


今では柴島と良きビジネスの相手だ。

Re: 「Stray Sheep」 ( No.3 )
日時: 2011/05/02 21:12
名前: やなぎ (ID: cx1920xY)

「ヒトという名の殺人鬼」

人・・・ひと・・・ヒト
そのあまりにも一貫性がなく無差別で非常な殺し方からその殺人鬼の名は「ヒト」と呼ばれた。
或る時は元気いっぱいの小さな園児を惨殺、或る時は幸福な一家全員を惨殺、或る時は田舎でひっそりと暮らす老人を虐殺。

推定されるだけで60人がヒトの犠牲となった。
まだ未発見(どこかで死体遺棄されている可能性がある)の犠牲者を含めて100人だとさえ言われる。

その残酷性から犯人は人間ではなくいつしか人間とは別の生き物人間の形をした何か・・・『ヒト』と呼ばれるようになった。

だがヒトはただの人間だ。暑苦しい繁華街の中のたうち回りもがき苦しむ男を見る周りの野次馬と同じように鏡を映したかのように恐怖に染まった顔をする。

普通なんだ、ただヒトは意志がない。というよりも分からないんだ。こんなときにどうすればいいかを、どれが最高の選択なのかを。ヒトは子供のころ親に虐待され感情を殺されてから鏡になった。楽しそうに周りが笑っていたらそれを映すようにヒトも笑う。悲しそうな顔をすればその感情を映すように悲しむ。死にたくないと命乞いする者がいれば同じように恐怖に染まり震え始めいもしない誰かに命乞いをする。また映す対象が一人とは限らないヒトの映す対象は常に社会だそして人間を映す。ヒトは鏡のように社会の意志・感情を映す、すると何故だか無性に殺したくなってくる。野次馬たちと同様に慌てふためき走り出し駆け込んだファーストフード店で愉快そうにバカ笑いをする楽しそうな学生達、その隣でせわしなくパソコンのキーボードを叩くサラリーマン。どちらでもいい理由は目に入った、いや太陽がまぶしかったから?そんなことはどうでもいい、とりあえず殺したくなる。無性に。無慈悲に。

ヒトは鏡だ。ただただ忠実に気まぐれに社会や誰かの意志や感情を映すなのに世論は理解不能だとか人間のする事じゃないと誹謗中傷する。
ふそれをみるたびにヒトは傷つくこんなに×を罵倒して何がいいのか×はただみんながしたい事をしただけだ、なのにどうして非難する?殺人鬼に人権はないのか?何てファーストフード店のテレビに流れるワイドショーを見て、考えて涙をこぼす。感情がないのに罪悪感はないのに涙がこぼれる。それがヒトが人間であるという証拠だ。

ヒトは欲求をおさえて適当に注文したハンバーガーを口をつけないままファーストフード店を後にした。
ヒトは目的を失くし殺したい欲求を抑えて彷徨い続けると無意識に人気のない路地裏に目鼻整ったかなりいい顔をしたサラリーマンとたっていた。あれ?いつのまに?
「ええと?何っだけそれで?」何故か男は面倒くさそうにそして早く用件を済ませと言わんばかりの口調でヒトに言った。
ヒトはこの状況に少し戸惑いを見せたが何の迷いもなく、その男を殺す決心をした。ヒトは映したのだ男の意志を鏡のようにそしてはっきりといつものように頭の中で男の声が響いた。
「俺を殺してくれ。」思い決断をしたかのような声が聞こえる。よくあることだ珍しくはないむしろ多い、稀に軽薄でいかにも頭の悪そうな言い回しで自分を殺してくれと懇願してきた奴もいる。
「お、おい何すんだ!?やめろ!!」
ヒトはナイフを男に突き付けると男は両手をあげて言った。
「安心してください。殺してあげますよ。」相変わらず高くもなく低くもない淡泊な声だ。いかにも普通といった感じの。
「ひぃっ!?な、、何言ってんだお前!!?」
サラリーマンは悲鳴を上げて後ずさりをする。
「はははっ怖がらないでください。速攻で殺してあげますから楽にコロッとね。だから両手を降ろしてください。分かるんですよ×にはあなたの気持ちが、あなた死にたいんでしょ?」
ヒトははにかみながらサラリーマンを見て微笑む。
ヒトの透き通る目を見てサラリーマンはゆっくりと両手を降ろす、サラリーマンは急に息が荒くなり胸を押さえて苦しそうにせき込むがヒトの目を離さない。ヒトはそれをニッコリとした笑顔のまま見ている。
サラリーマンはヒトの目を見るとまるで自分の嫌な部分や鬱な部分を見透かされているようで気持ち悪くなった。ヒトの目を見て全身が鬱に包み込まれて立っていられなくなる。サラリーマンは膝をつき苦しそうに嘔吐する。
バシャ、バシャ、と勢いよく吐しゃ物は地面にぶちまけられる。
ヒトの目を見なくなったおかげか息苦しさが治まり急な鬱から少しずつ開放されていった、呼吸を整えてサラリーマンは少しずつ開放されようとする鬱状態の中ヒトに呟いた。
「・・・・殺してくれ。」
ヒトは食い気味に嬉々として答えた。
「はい♪」

グサッ・・・・
サラリーマンはヒトにひざまづいた状態のがら空きになった後ろの首筋をナイフで突き刺される。のど元を突き破り貫通し赤い血が吐しゃ物を赤く染めた。のど元から血があふれだし口から絶え間なく吐血する、のどに激痛が走るナイフが抜かれたのだ勢いよく戦をしていたナイフが外されたことによって首から血が噴出して血の池をつくった。
やった死ねた・・・。鬱から解放されたと同時にサラリーマンはその場で崩れ落ちた。
「×はヒトそれ以上でもそれ以下でもない。」
カランッカラン・・・
ヒトは血だらけのナイフを落とし両手で顔を覆い叫び声をあげた
「あああ、ああけギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ヒトは路地裏から逃げるようにして走り出した。


ヒト人間の形をした人間を映す鏡、そして冷酷無比な殺人鬼。


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