ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 闇の刻印 光の乙女
- 日時: 2011/05/20 00:20
- 名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: JJ3BeOFP)
- 参照: http://www.h6.dion.ne.jp/~kazaya/yamiyokyara.htm
まだ未完の小説です。
いろいろなところで、こっそり公開していたりします。
もしよろしければ、お楽しみください。
URLには、キャラクター紹介のページとリンクさせてます。
HPもありますが、そちらの更新は、当分先になりそうですので、こちらで続きを楽しんでもらえると嬉しいです。
ジャンルは現代ファンタジーです。
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- Re: 闇の刻印 光の乙女 ( No.1 )
- 日時: 2011/05/20 00:21
- 名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: JJ3BeOFP)
- 参照: http://www.h6.dion.ne.jp/~kazaya/yamiyokyara.htm
1.涙
闇に支配された森の中。一人の老人と、一人の青年がいた。
老人は車椅子に座っていた。膝には暖かなケープが掛けられている。その老人の顔は、とても穏やかだった。
青年は闇ととけ込むような漆黒の短い髪を掻き上げた。年は二十代後半だろうか。長身でスマートな体つきをし、コートを着ていた。その脇の地面には、剣が刺さっていた。
ふと、老人が青年を見上げる。青年は頷くと、脇に刺さっている剣を手にした。青年と同じぐらいの長さの剣。まるで獣の持つ牙のような、鋭さを持つその剣を構えると、青年は老人の胸に突き立てた。
音もなく、静かに老人の胸を貫く。
老人は穏やかに微笑みながら、青年の顔を軽く撫でた。いつの間にか、青年の顔には涙が伝っていた。それを拭うかのように、老人の手は頬をさする。徐々にその手はゆったりとした動きになる。
剣は老人の胸にその全ての刃を与えた。
なおも青年のこぼれ落ちる涙は止まらない。老人の微笑みもまだ、止まらない。
でも、老人は変わっていた。
足からゆっくりと、まるで砂が舞うように消えて行く。時間を掛けて、確実に消えて行く老人。老人の手が止まり、その顔が消えるとき、
「さようなら」
青年の告げる別れの言葉は、老人に届いたのだろうか。
残されたのは暖かそうなケープと車椅子。そして、青年の手の中にある、濡れた剣だけ。
- Re: 闇の刻印 光の乙女 ( No.2 )
- 日時: 2011/05/20 00:21
- 名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: JJ3BeOFP)
- 参照: http://www.h6.dion.ne.jp/~kazaya/yamiyokyara.htm
2.裁判
気が付けば、私は警察に捕まっていた。普段では、このようなことはなかったのだが。
「はじめまして、リュート・ヴェル・ハイナイトさん」
目の前にいる、金髪碧眼の女性が微笑んだ。リュート・ヴェル・ハイナイトとは、私の名だ。私達はこれから、裁判を受けるために法廷の場へと向かっていた。
「あ、あたしの紹介が遅れたわね。あたしは、貴方の弁護士を勤めるキャサリン・ドレイアード。キャシーって呼んで」
何も返事をしないのも失礼だと思い、私は軽く会釈をした。
「今回の事件は謎な所が多いわ。死体もまだ見つからないし。それに、凶器ともいえる剣を持っていたからって、その人が犯人だと決めつけるのはおかしいと思うの。そう思わない?」
きっと、前の私なら、キャシーの言葉に素直に頷いていただろう。
「……何も喋りたくない気持ちも分からなくないわ。でも、何か事件のことで知っていることがあったら、教えて欲しいの。あたしは一人になっても、貴方の味方だから」
貴方の、味方か……。
「キャシー」
彼女の名を呼ぶ。
「何?」
嬉しそうな顔で、応えるキャシー。
「ありがとう」
「やだ。まだあたし、何もしていないわ」
ギイ。
重々しい、頑丈な作りの大きな扉が開いた。
とうとう、目的地についたらしい。
「いい? リュートさん。何を尋ねられても、黙秘権で何も言わないで。いいわね?」
そういって、キャシーはウインクした。
「これから、裁判を始める……」
裁判が始まったらしい。私は部屋の中心におかれている台の前に立っていた。
「貴方は、ジール・ブレイスさん殺害の容疑で……」
ジール・ブレイスとは、前に会った車椅子の老人のこと。もし、真実をこの場で話しても、信じる者はいるのだろうか? ふと、そんなことが頭によぎる。いや、いないだろう。そんな夢物語のような話を持ち出しても、却って混乱を招くだけ。
「では、貴方は、ジール・ブレイスさんを殺害したことを認めますか?」
無言を守っていた私に、検察官は尋ねる。
「はい。認めます」
答えた。後ろでキャシーが叫んだようだったが、私にはどうでもいいことだ。
そして、遠くで「有罪」という言葉が聞こえたような気がした。他の音は何も聞こえない。
警察官に連れられ、法廷を後にしようとしたが、その行く手を遮る者がいた。
「返して」
まだ幼い少女。赤いコートを身に纏い、癖のある亜麻色の髪を肩まで伸ばしている。
「返して、返してよ! 私のおじいちゃまをっ!」
「エリス様、もう、行きましょう」
側にいる、付き人のような男性が、エリスを押さえる。エリスはまだ、涙を零しながら、訴えた。
「私の、おじいちゃまを、返してよっ!」
彼女の前に、私は立った。
「私も出来れば、貴女のもとに、彼を連れて行きたかったです」
そう言って、微笑んだ。と、私の言葉に驚いたのか、エリスの涙が止まった。
何事もなかったかのように、私は法廷を後にした。
- Re: 闇の刻印 光の乙女 ( No.3 )
- 日時: 2011/05/20 00:22
- 名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: JJ3BeOFP)
- 参照: http://www.h6.dion.ne.jp/~kazaya/yamiyokyara.htm
3.面会
「全く、まるでまな板の上の鯉って感じね?」
私の目の前にいるのは面会に来たリーナと言う女性。長いストレートの髪を一つに纏めた、何処か気品漂っている、私の親友の恋人である。どうやら、私に用があるらしい。
「……」
「何も言わないのね? とにかく、かなりふぬけじゃない? もうちょっとしゃきっとしなさい! それに、リューちゃんには他にもやるべきことがあるんじゃないの?」
「……」
何も喋らない私を見て、苛ついているようだったが。
「ふう。何を言っても無駄かしら?」
ため息をつき、そして、リーナは続ける。
「でもまあ、アイツにも言われたしね、一応、伝えておくわ。『シーちゃん』が見つかったわよ」
その言葉に、つい視線を床からリーナへと向けてしまった。
「あら、流石に妻のことになると目の色が違うわね?」
意地悪そうにリーナが言う。彼女の言う、『シーちゃん』とは私の妻であるシイスのこと。そしてシイスが行方不明になって、はや5年が経とうとしていた。
「それで、彼女は何処に?」
呟くように紡ぎ出す言葉。
「ロスだって。ロサンゼルス……以前、行ったことあるわよね?」
リーナの言葉に黙って頷く。
「後は、貴方のやりたいことをしなさいな。罪を償うのも良し。それとも……大切なものを追い求めるかを」
私の様子に満足そうに笑って、リーナは手を振る。
「とにかく、頑張ってね。じゃ、また後で」
そう言い残し、さっさと外に出ていくリーナ。
「また後で……ですか」
また会えることを前提にした言葉に思わず笑みが零れた。
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