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メタトロン
日時: 2011/05/21 21:31
名前: 104番 (ID: BZFXj35Y)

名前は見ての通り。深い意味は特にないです。
ではではお楽しみに。




時代は2020年、そう遠くない未来で物語の歯車は動きだす。

「どうして………どうしてこんなことするんですか………………」


人は‘大切な人’を奪われたその瞬間──────


「絶対に許さない。僕は、こんな呪われた力…………お前らの欲のために使うつもりはない。」



                                覚醒する──────


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Re: メタトロン ( No.1 )
日時: 2011/05/22 00:47
名前: 104番 (ID: BZFXj35Y)

(1)
「人造人間」と言って最初に頭に思い浮かぶのは、恐らく某アニメで出てくる機械人間や特殊兵器を搭載した人間等だろう。つまり簡単に説明すれば、人造人間とは種類が多種多様にあるということだ。だが、共通して言えることがある。

   ─人造人間は人外の力を持つ─

2020年に政府が極秘で始めた「人造人間開発プログラム」。地図に載っていない無人の島に実験施設を建て、彼らは孤児や天涯孤独の人間を実験材料として実験を進めてきた。実験体となり囚われた者たちは、肉体に謎の化学物質を混ぜ込まれたり、肉体の一部に他の生き物の細胞を取り入れたりと法を幾多も破る行為を続けてきた。
勿論、そんな卑劣な実験が行われている等、日本国民は知る由もない。
実験当時は失敗を繰り返していたものの、人間は学習する生き物だ。
実験は重なり、次々と人造人間は完成して行く。そして、政府の手で調教され、完全に政府の兵士と化す。
どうして政府がこんなものを法を犯してまで製造しているのか。その理由は簡単である。
「世界を牛耳るため,世界を手にするため,世界の頂点に立つため。」

欲に負けた人間は、その瞬間に禁忌を犯す──────

この定義は何百年経っても変わることはない。
そしてその定義が、国の柱ともいえる「政府」の思考をズラしたのだ。
人間には学習する者もいれば、中々学習しない者もいる。




      「………兄貴は政府に殺されたんだ。」




船の一室、簡易ベットに座る彼もまた、実験体の対象者だった。
「それは残念だが………まぁ、自分が生きてるだけでも良いと思えよ。俺だって………俺だって妹が………」
横山永一郎の言葉を聞いた真向かいの簡易ベットに座っている佐市夕介は、唇を噛み締めて涙を堪える。
「でもよ、どうして俺ら、いきなり実験から外されたんだ?」
「そんなことはどうでもいい。それよりも、俺達はこれからどうして生きて行く?家族もいない、家もない、それはおろか金さえない。所持してるのは………この呪われた力だけ。」
永一郎は右手を大きく開き、掌の上に全神経を集中する。
すると、緑色の電流が音をあげて発生し、掌の上で不格好な球状に集合した。
夕介はそれを見ると左手を前に出す。その瞬間、左手首から左手を真っ赤な炎が包み込んだ。
「こんなもの、今後役に立つと思うか?」
「まぁ、ガス代は浮くな………ハハハッ!!」
「笑い事じゃない。本気でどうする?今から船を奪って、施設のある島に戻らないか?」
永一郎の無謀な提案に、笑っていた夕介の表情が一瞬にして引きつった。
「ば、馬鹿言うなよ。戻った所でどうなる。たかが2人のしかも‘半人造人間’がよ。」


「その案、俺は良いと思うぜ。」


2人しかいない筈の部屋の中から第3者の言葉が聞こえた瞬間、永一郎と夕介は目を合して周りを見渡す。
すると、部屋の壁をすり抜ける様にして1人の男性が現れた。
「お前も実験体か。」
「あぁ。俺もお前らと同じ‘半人造人間’だ。俺は名前がない。ハルクとでも呼んでくれ。」
「名前がない?」
夕介がハルクの言葉を復唱する。ハルクは鼻で笑うと、夕介のベットに勢いよく座った。
巨体のハルクが簡易ベットに腰を下ろすとベットは軋み、夕介は軽く一瞬だが浮いた。
「俺は生まれてすぐ捨てられてな。そのあと政府の役人に拾われて、ずっと奴らの元で過ごしてきた。」
「へぇ。どうしてそんなあんたが、この船にいる?」
永一郎が尋ねると、ハルクは腕を組んで表情を険しくする。
「さぁな。だが、恐らく数日前に起きた事故が絡んでるだろうな。お前ら、事故当時は施設の3階にいただろ?」
ハルクの質問に2人は目を丸くして驚いた。ハルクは2人の表情を見て、答えが出る前に確信した。

「これは噂だが、事故当時に施設の3階にある研究所で化学物質が複数散乱したらしい。それが俺らをダメにした。」

「ダメにした?どういうことだ。」
「簡単に言えば、美味しい食べ物にクソ不味い調味料をかけたもの。つまり、俺らは不良品になったわけだ。」
いまいちの例えに2人は不満を持ったが、大体のことは理解できていた。
すなわち、その複数の化学薬品が製造過程にある人造人間をダメにした。
しかし、それなら疑問が思い浮かぶ。
「待てよ。それならどうして処分しない。なぜ、俺らを一々普通の生活に戻す?」
「そうだな。俺らは不完全だがアビリティも持っている。それを承知でどうして、処分せずに生活に戻すんだ?」
夕介と永一郎の問いにハルクは口を瞑らせ、首を無言で横に振る。
「分からない。奴らの考えていることはさっぱり分からない。」

「……施設に戻ろう。こんな呪われた力、俺は手放して普通の人間になりたい。」

永一郎の言葉に、ハルクはニヤリと笑い、夕介は大きなため息をついた。
「いいぜ。やってやろうじゃねぇか。」
「おいおい…………本気かよ…………。」
永一郎は立ち上がると、右手を2人の前に出した。
「とりあえず、絶対に普通の人間に戻ることを誓おう。絶対に生き延びよう。また普通の生活に戻ろう。」
3人は顔を合わせ、最初にハルクが永一郎の手の上に自身の手を置いた。
「別にこの力は嫌いじゃない。むしろ好きだ。だが、普通の生活はもっと好きだ。戻ろうじゃねえか。」
ハルクは未だに手を置かない悠夕介を見ると、大きくゴツイ手で凄まじいゲンコツを喰らわした。
「って!!な、なんだよ…………」
「妹取り戻すんじゃねえのか。へこたれんな。弱い兄貴のままでいんのか?」
「おまっ……どこから話聞いてたんだよ。」
「最初からだ、ガッハッハッ!!!」
夕介はハルクの豪快な笑い声を聞いてため息を吐くと、立ちあがって2人と手を重ねた。
「分かったよ。確かに、このまま弱い兄貴のままでいるわけにはいかないな。」
こうして3人は結束した。

             普通の人間に戻ると_______






人間は面白い生き物だ。


1人じゃ何も出来ないが、集まればどんな困難でも乗り越えて行く。



だが



現実はそうはいかない。


しかし


そうとも限らない。




         未来は誰にも分からない──────。


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