ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- マンデルブロの傍観者
- 日時: 2011/06/19 16:55
- 名前: ロジック豆腐屋 ◆NQvQVKeIHQ (ID: 3CNtvX8U)
- 参照: 荒唐無稽なロジック豆腐屋
————奇妙な世界へ、ようこそ。
最後に聞いた言葉は、それだった。
[>Srinivasa.Blomstedt
[>Index.........
>>1 Clock1 不完全的ヴィスワナス
>>2 Clock2 破格的インディゴブルー
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- Re: マンデルブロの傍観者 ( No.1 )
- 日時: 2011/06/18 13:23
- 名前: ロジック豆腐屋 ◆NQvQVKeIHQ (ID: 3CNtvX8U)
- 参照: 荒唐無稽なロジック豆腐屋
Clock1 不完全的ヴィスワナス
蒼穹。とは真逆な天候が人々の頭に過る。
傘を差し、雨の対策をする人が多い中、彼は対策方法を取らなかった。
雨を受け入れるかのように、天に手を挙げ……そして目を瞑った。
実に不可解な行動だ。何かの実験か?それとも、何かが来るのか?それは理解できない、誰にも。
「……神は私達を見捨てた!バベルの塔にて、神の命、頂戴致す!」
…意味が分からない。
此処は町の中心。一番視線が集まる“中心”で、意味の分からない事を叫び始める人間は、もちろん気持ち悪がられるに決まっている。
しかし、意味深な単語を放った点については興味深い。バベルの塔?この大陸に存在する塔といえば、ハウスドルフとの国境に位置するアネルクの塔だが…
孰れにしろ、彼の発言は常人には理解できないという事なのか?
「命運は我らにかかっている!ラグナロクの剣を手にした者に、永遠の栄光を授け————」
再び不可解な単語が飛び出した、と思った直後の出来事だ。
突如現れた雷光が、槍の様に“彼”にへと突き刺さる。
黄色い衝撃波は人々を圧倒させ、冷たい視線を浴びせていた人間をその場から立ち去らせた。
しかし、私はこの様な事に怯えるほど軟ではない。これ以上に恐怖を味わっているからこそ、冷静に対応できる。
だが…バベルの塔、ラグナロクの剣。彼が口ずさんだ単語は、聞いたことのないものばかり。
恐らく彼が口ずさんだ単語を追及しているのは私だけだろう。他の人々は遠巻きに目をそらしているからだ。
私はこの目でその状況を見た。雷光を浴びた彼の姿は、既に消失していたのだ。
瞬間移動?空間操作?どんなイリュージョンでも不可能だった、瞬間移動をこの目で見たのだ、何が起きた?これは、魔法か?。
この時だけ、異常に判断力が衰えたのを私は確認する。科学では判明できない謎の存在を今まで一蹴していたが、それはこの出来事で終わりとした。
実際に理解できない謎を目視し、その事に対して深く考える気になれたのは、幸いだろう。
それから人生は狂い始めたと言っても過言ではない。
- Re: マンデルブロの傍観者 ( No.2 )
- 日時: 2011/06/19 16:59
- 名前: ロジック豆腐屋 ◆NQvQVKeIHQ (ID: 3CNtvX8U)
- 参照: クソ厨二病
Clock2 破格的インディゴブルー
時は満ちた。
滴る水滴の音は静寂の中響き、木々の梢が風に鳴る。
水滴の音とは違い、独創的な木々の匂いが鼻孔を擽る。
空を見上げてみれば、群青色に光る月が青々しい光を放つ。
月明かりは我を照らし、聞こえるのは木々が揺れる音と、小動物が駆け抜ける小さな音のみだ。
「しかし、王国から逃げ出して来たのは良いものの、逃げる場所が無いのは事実。果たして、私はどうすればいいものか。」
我を妨げる者は、現時点では存在しない。良い事だ。
だが、同時に目標は失った。もちろん目標以外にも、失った。
簡潔に言えば全部を失った。
「ふぅ……静かな夜は良いものだな。王国は騒がしかった。喧騒とは離れ、静寂を求める旅もなかなか粋なものだ。」
コトン、と音がした。床に何か物を置く様な音。
ここは草原と同じで木々が茂る。平面的な床など以ての外。
別種の音は段々と近づいてくる。その音は耳朶に響き、静寂を邪魔する。
同時に草を踏みしめる音も聞こえた。一体何が近づいてくるのだろうか?私は少し疑問に感じた。
あたりを見渡す。月光が無ければ、暗闇同然の森林を見渡しても、何も発見する事はできないだろう。
「邪魔だ、そこを退け、異人よ。」
我の静寂を邪魔した正体は、鎧を被った大きい男。
声は野太く、熊を連想させるほどだ。
コトン、という音の正体も判明した。ガントレットに剣が当たっている音だった。男はなおもそれを続ける。
「異人とは失礼な口ぶりだな。我がこの森の人間ではないと、即座に判断できるのか?」
私は多少煽ってみた、が。反応はしない。ガントレットの上に持たれている長い剣を見るたび、私の目が泳ぐ。
「ヘルベルト王国。」
その単語に私は身が凍るのを感じた。この男、まさかヘルベルト王国からの使いか。
クソッタレ。思わず舌打ちをしてしまった。王国から逃げて早二週間。こうも素早く捕まるとは予想していなかった。
「王国からの使いか?それなら、全力で叩き潰す。二度とあの王国…いや、地獄に戻りたくなど無い。さあ、死にたくないなら背を向けて帰れ。」
私は焦ったせいか、より相手を挑発する口調になってしまった。酷い焦燥感に陥った私の身は、すでに動かないほどガチガチになっている。
近くに置いたレイピアをそっと手に取り、鎧の男を睨みつけた。
やはり反応はしない。大きな兜をかぶっている故か、こちらを正確に認識できているのだろうか?
「まあそうカッカするな。安心しろ。王国からの使いではない。……貴様に殺された父の恨み、今晴らしてくれる。」
何を言うかと思えば、すぐに私の記憶が甦った。
嗚呼、王国に仕え、王国を信頼し、王国こそ全てと誤認していた時期の事か。
初めて出された任務は、城下町に住んでいる、王を批判する一つの男の命を奪えという任務であった。
その時は、初めての任務だったという事もあり、胸を躍らせながら、変装しその男の住む家に入った。
やけに静かだったと思えば、母子が外出していた。実に幸運だったのであろう、私はすぐに任務遂行を目指した。
嗚呼、白昼の中、クロマキドクガエルの唾が塗られた短剣を懐から取り出し、男を探す。
床を踏むと同時に鳴る、軋む音が癪に障ったが、気にしなかった。
寝室に踏み入れると、男は安からに寝ていたのだ。これは絶好のチャンスといえるだろう。
私は毒を塗りたくった短剣を、心臓めがけて突き刺した。
睡眠中だったので、悲鳴なんてものは聞こえなかったが、男が泡を吹き、ベッドの上にたたずむ姿は非常に痛々しいものであった。
それから八年ほどの年月が経て、王国への信頼は薄れ、逃亡した頃。
後から聞いた話だが、あの男は一人の子供と母親を持っていたという。
「……そうか、私は王国を信頼していた頃に、君の親を殺していたのだな。悪かったよ。しかし、たった一つの命を失うほど、私は優しく無い。この場から消えれば、命は取り留めてやろう。さあ、どうする?だてに王国に仕えていない、剣の腕は1位2位を争っていたなぁ。」
一つの命を失うはずなどない。圧倒的不利な立場に置かれていたのは、鎧の男であった。
- Re: マンデルブロの傍観者 ( No.3 )
- 日時: 2011/06/20 18:57
- 名前: ロジック豆腐屋 ◆NQvQVKeIHQ (ID: 3CNtvX8U)
- 参照: 空の果てには宇宙ありき
Clock3 五月雨舞う中我踊り。
「………ふ。 後から聞いた話だが、息子はかなり成長していたと聞いた。今ではもう立派な青年か?素晴らしい事だ、さあ、顔を見せてみろ。兜という闇に包まれて何が楽しい、光を一度見てみるがいい。」
煽り口調は止まらない、相手の閾値をすでに超えていそうなほど、私は挑発を続ける。
兜に隠された表情を見ていないとはいえ、挑発し続けるのもどうかと思うが、このまま戦闘に持ち込めば、私の勝利はもう目の前に見える。
「口を切り刻んでほしいか?この不埒者め。さあ、剣を持て、かかってこい!親の恨み、今はら——————」
ぐだぐだと前置きを続けやがって、饒舌もいい加減終いにさせていただこう。
私はレイピアを手に持ち、男の兜めがけて突き刺した。実に痛々しい音が鳴る。
嗚呼、殺戮に目覚めるというのはこういう感覚であったのか、初めて覚えた。
倒れる男をよそに、私はレイピアをかざす。
「や、やめ、てく、わた、わたしが、わ、わりゆか、っ、っっ、っっ………」
兜の隙間にちょうどレイピアを突き刺したので、男の鼻からは鮮血が垂れ、見るにも恐ろしい状態だ。
月の光だけが頼り、照らし続けるこの舞台に倒れる男は、私の前で死ぬ。
「……悪いが、自他ともに認める剣技の前で、貴様はなぜあがく?」
気持ちが良かった。
- Re: マンデルブロの傍観者 ( No.4 )
- 日時: 2011/06/25 00:21
- 名前: ロジック豆腐屋 ◆NQvQVKeIHQ (ID: 3CNtvX8U)
- 参照: ゴミ野郎です
Clock4 無感覚アイデンティティ
草々の中に、一人倒れている男性が居た。
重い鎧を身に着けている、一体誰だろうか。
「……私が捕まるのも時間の問題だ、この男は放っておいて、また逃げる場所を探さなければ。」
この男、鎧の男を殺したようだ。
「北陸カラミティまで逃げるか……遥か西の大陸、ストームユートピアで身を隠すか。」
苦しげな顔を手で隠し、血塗られたレイピアを手に持つ。
月夜は何処へ、そろそろ夜が明ける、逃げなければ。
鎧の男の周りには赤い液体がちりばめられており、特に顔からの出血は凄まじい事態となっている。
だが、男はその様子をあざ笑うと、その場を去った。
見つかる可能性を無と感じているからこその、商社の余裕なのか。
真偽は分からない。だが、この男が人を殺したという罪は一生消えないという事は誰にだって分かる。
気のせいか、明けようとしている月夜は、妙に赤色に照らされていた。
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