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- 幸い住むと人の言う
- 日時: 2011/06/22 09:59
- 名前: 栗田 (ID: yjY9NVuD)
僕は毎日、夢を見る。
それだけならまだ、普通だと思う。
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- Re: 幸い住むと人の言う ( No.1 )
- 日時: 2011/06/22 12:50
- 名前: 栗田 (ID: yjY9NVuD)
あぁ、今日もまた
夢から始まるんだ。
「ハイネ君ってさぁ」
名前はよく覚えてないけど、小学校の頃仲の良かったクラスの女子に言われた事がある。
「なんか冷めてるよね」
・・・・言いえて妙、だ。
どこか夢現な頭で、僕・・・・琲音 巡(はいね めぐる)は考える。
別に客観的に描写したからって哲学的な論理を語りだす訳でも、稚拙な語彙となけなしの知識を誇示したい訳でもない。
強いていうなら、言い訳がしたいだけ。
僕は昔から周りの皆の二倍生きている。
だから、冷めてんじゃなくて飽きてるんだよ、って。
僕は毎日夢を見る。
それは決まって明日の夢で、人はそれを予知夢と呼ぶらしい。
でも、僕は少し違うと思う。
僕の夢は、確定された”明日”で、明日を体験した後、僕はまた明日を迎える。
運命は変えられないのか不幸を回避する事は出来ないが、心構えくらいは出来るので割と便利だと思う。
小さい頃は、それが普通だと思ってた。
今ではそれが僕の普通なのだと思う。
「・・・・っは」
息苦しさで僕は目覚めた。
”目覚めた”は間違いかもしれない。だってこれは夢だから。
夢の中の明日が始まったのだ。
「変なの・・・」
なんだか胸がざわざわするような、嫌な目覚めだ。
一体”明日”の僕に何があったのだろう。
とりあえず身支度を整えた僕は、制服に着替えて学校に向かった。
只今は昼休み。
偏差値と立地条件だけで決めた高校の唯一の売りだという広大な中庭に続く廊下を、とぼとぼ歩きながら僕はため息を吐いた。
「・・・・・・・」
いつも通りだ。嫌なくらいに。
別にそれといってめぼしいイベントなんてない。
なら、どうして目覚めた僕はあんなに怯えてたんだろ・・・・。
そう考えてから、はたと立ち止まる。
・・・・・・・・・怯えてた?
(・・・・っ違、なんかほら、ちょっと驚いたとか、そんなんだよ、多分)
あまりに動揺に句読点が増えてしまった。
一人心の中で言い訳をしていると、後ろから声をかけられる。
「あの・・・・めぇちゃん」
振り向けば、そこにはよく知った少女が立っていた。
「・・・・・なんだよ、峰」
”よく知った”の部分に、特に深い意味がある訳じゃない。
僕にオドオドと声をかけてきた、名前のわりに冬生まれだったりするコイツ、峰 香夏子(みね かなこ)は真っ黒な髪に真っ黒な目が印象的な、ただの幼馴染みだ。
「あの、今日の帰りにね、お買い物に行くんだけど・・・めぇちゃんも一緒に」
「やだ」
「えぇっ!?な、なんでかな?」
「僕に聞くなよ・・・・」
困ったように首を傾げる峰に、僕はがっくり項垂れる。
いつもと違うどきどきイベントがお前との買い物なんて、僕の青春は終わってる。
そんな現実、僕が認めん。
「でもでも、めぇちゃん。めぇちゃんは私とお買い物行く運命なんだよ?」
「・・・っ」
夢の事を言われたようで一瞬ドキリとした。
こいつ、たまに変な所で核心突いてくるから恐ろしい。
「はいはい、わかったよ。付き合えばいいんだろ、付き合えば」
「うん!やったぁ♪」
ものすごい期待の篭った視線に耐え切れず、僕は仕方なく折れる。
すると峰は「絶対だよぉ??」と叫びながら校舎の方へ消えていった。
時計を見ればもうそろそろ授業が始まる時間だ。
「やっべ・・・」
若干焦りながら、僕も慌てて校舎の中に引き返した。
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