ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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遊愚連
日時: 2011/07/06 01:06
名前: テポック (ID: iYtio35i)


はじめまして!!

テポックと申します^^

小説を書くのは初めてなので、面白い作品を書けるかどうかわかりませんが、がんばって更新をしていきますので、よろしくお願いします。

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Re: 遊愚連 ( No.1 )
日時: 2011/07/06 01:40
名前: テポック (ID: iYtio35i)

「……コホッ」

肌を裂くような寒さが襲う。静かなる聖夜。

街は艶やかな装飾を身に纏い、黄金色にライトアップされた商店街を人々が行き交い、それはとても活気に満ち溢れていた。

しかし、その幸福に満ちた光景の片隅に、それは転がっていたのだ。

その一角、ゴミ箱の傍らにしゃがみ込んだ小さな体。

寒さのせいか、その小さな体を小刻みに震わせている。

「……ゴホッ。ゴハッ」

時折、苦しそうに咳き込んでは、また震え出す。

そして、そのまま……。

小さな体は空気だ。

やがて、灰色の空から白い粉が降り注ぐ。

まるで、その存在感の無さに追い討ちをかけるかのように、小さな体は白く侵されていく。

夜が来る。

残ったのは静寂と薄暗い白の世界。

肌を刺すような寒気。毛穴の1つ1つに冷たい針が刺さったような感覚。

目を閉じる。

小さな体はもう動かなかった。

そして、真っ白に塗りたくられた。

2つの影が……映って消えた。







「忘れ物はない!!」

俺は朝からウキウキとしていた。

ノリノリで歯を磨き、焦げた目玉焼きを頬張り、買ったばかりの真新しいジャケットに袖を通し、買ったばかりの真新しいドラムバックを拾い上げた。

玄関の前の鏡で丹念に身だしなみチェックを行う。

髪型。
ジャケット。
ベルト。
ボトムス。
ブーツ。

問題なし。

これから始まる大学生活に全く支障のない姿だ。

俺は扉を蹴散らすようにして、緩やかに注ぐ太陽の下へ飛び出した。





街は相変わらず活気に満ちていた。

高層マンション群の隙間から挨拶する太陽。

そして、荒川からの湿った横風。

レンガを敷き詰めた道路を突っ走っていると、目に映るのは中世西洋のごとき街並み。商店街だ。

そして、それを這う人の群れ。

俺はそれを掻き分けるように突っ走る。

ワクワクと胸を躍らせながら突っ走る。

これからはじまる大学生活。

思わず、頬が緩む。

さあて、まずはサークルに入って女の子と仲良くならなきゃなあ……。

そんな淡い妄想をしながら突っ走る。

やがて、商店街が途絶えた交差点に差し掛かる。

そう、見えてくるのは市内循環のバス停だ。

そこに立ち並ぶ数名の若い男女。

初登校のせいか、お互い警戒し合って目もくれない。

一心に携帯電話をいじっている者もいれば、今日の予定表に目を落としつつ傍らの人間にチラチラと視線を投げかける者もいる。

なんと初々しい光景だろうか。

俺は最後尾に足を滑らせた。

そして、携帯電話を開く。

この電話帳をいっぱいに埋めなくちゃなあ。

昨日作成した「大学」の電話帳フォルダ。

当然、入っている名前はまだない。

ウキウキと胸が躍る。

半ば不審者まがいの笑みを浮かべながら、俺は携帯電話を閉じて周囲を見回した。

かわいい娘いねえかな!?

ムフフとスケベな笑いがこぼれる。

すると、願いが叶ったのか。

大和撫子という形容が間違いないだろう。

黒い髪を腰まで伸ばした清楚な女の子。

女の子が商店街の方から姿を現し、バス停の最後尾、すなわち俺の後ろを目がけて走ってきた。

俺は心の中でガッツポーズをした。

かわいい!!

これぞ、俺の待ち臨んでいたシチュエーション。

よっしゃ!! では、手始めに。

女の子が俺の後ろに並び、携帯電話をカタカタといじっている。

「おはよう」

俺は胸の高鳴りを抑えながら、口を開いた。

女の子は手を止めず、視線だけをチラリと俺に向けた。

ドキッ!!

思わず、俺は赤面してしまった。

かわいい!!

そうだ、もっと俺を見てくれ!!

心の中で悶絶する。

と、女の子は俺を空気のように無視し、俺の脇をすり抜けていった。

「!?」

俺は愕然とした。

いつの間にかバスが到着していた。

数名の男女が次々にバスの中へと吸い込まれていく。

さらに最後尾の会社員風のおっさんも俺の脇をすり抜けていく。

おっさんがバスの中へ吸い込まれると、制帽を被った男、運転手がバスの中から覗き込んできた。

「君ー乗らないの?」

「あ!の、乗ります!!」

俺はズカズカとバスの中へ足を踏み入れた。

心なしか、心臓に針が刺さったような感覚に襲われた。

初日から……残念なスタートだ。


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