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沈む絶望
日時: 2011/07/07 19:40
名前: シューマイ (ID: .zYCudUc)


プロローグ

「揺れ動く絶望」


砂糖の流れ落ちる音がする。

砂時計の形をした容器に砂糖は入っているようだ。
私は砂時計の容器を右手の親指、人差し指で軽くつまむと
左で容器を押さえながら蓋を回し、開けた後中の砂糖を
軽く摘んだ。

「甘い」

中の砂糖は甘く、私の気持ちを静めてくれる。
精神が鎮静し始めた所で、私の視界は水に絵の具を混ぜた様に
深く淀み始めた。

ここは私だけの空間。だがいつまでもここにはいれない。
現実から手に入る沢山の情報は書物としてここに収納されている。
山の様に積みあがった本は私の生き様を表していた。



身体が一瞬、痙攣する。
突き刺す音が部屋中に鳴り響く。
私はまだ重い体を動かし、目覚まし時計を止めた。

冷たい金属の感触が私の目を覚ます。

今日もまた、昨日と同じ。重労働の繰り返しなのだ。
突き付けられた現実を目の前に、私はただそれに従うしかない。
ベッドから体を起し、地面に無造作に捨てられた求人雑誌を
踏み潰しながら私は洗面器に向かった。

蛇口を捻ると冷たい水が溢れて来る。これもまた、私の
眠気を覚ましてくれる。どんどん現実に引き戻される。
水を何度も手で受け止めては、顔にかける。
キンキンに冷えた所で、手前にある髭剃りを右手で掴んで
私は髭を剃り始めた。

ジリジリと音を立て、今日も髭は顎から切り離される。

朝食は取らない。昼食と夕食だけで食生活を過ごすのだ。

歯を磨きに磨き上げ、私は身支度の準備に取りかかった。

ワイシャツを着て、ズボンを穿いた。その上からネクタイを
きちんと調整しながら締め、最後にブレザーを着た後、使い古した
鞄を手に取りながら家を出た。


と、ここである事に気付く。

髪を整えていなかった。
引き戻し、ブラシを使って髪形を整え
今度こそ家を出た。

体が仕事に行くのを嫌がっている。
だがしかし、仕事をしなくては生きてはいけないのだ。
大自然の世の中とは違う。ビジネスに基づいた
社会が今、世の中を制御しているのだ。

私は過労に絶望する者。
そして幸せが欲しい者。

私はこの世の中を突き進む。

プロローグ終り。

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