ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ルガールが如く 前編
- 日時: 2011/07/08 18:02
- 名前: ルガール運送のとある社員 (ID: PSM/zF.z)
- 参照: http://group.ameba.jp/group/6m24KA_mzEm0/
プロローグ
昨夜、異常な光景を見た。
いつものように帰ってきて、俺はなんとなくの窓から外を見た。
一見普通に見えるこの景色の中に一つ、おかしな事があった。
そこには二人の男が走っていた。だが、実質走っているのは一人だけだった。
なぜなら、もう一人は「運ばれている」からだ。
「運ばれている」という表現が正しいかどうかはわからなかった。
だが、それ以外に表現のしようがなかった。
その状態はというと、「運ばれている」男が体をくの字に折り曲げ、走っている男がその曲がっている部分に片手を押し付けているようだった。
走っている男はその片手を自分の体の後ろに伸ばして、「運んでいる」状態に保っていた。
細い路地裏だったので、その姿はすぐに見えなくなり、その後どうなったかは知らかった。
そう、今までは──
第一章 一部 一
次の朝、俺、結城聡が起きたのは9:30くらいだった。
(11時からバイトだっけ・・・)
聡はフリーターだ。今は、運送業や道路整備などのバイトをしている。
今でこそ、こういった事をしているが、中学、高校では柔道で輝かしい成績を残している。
1時期は、プロの団体からスカウトが来るほどだった。
事件が起きたのは、高校3年の冬だった。
轢き逃げだった。聡はその時に轢かれて1週間生死の間をさまよった。一命はとりとめたものの、腕や足などの骨が砕けもう二度と柔道ができなくなってしまったのだ。
犯人は捕まったが、聡の様態は今生きているのが奇跡なくらいひどかったという。
第一章 一部 二
リハビリが終わったのも、事件から3年経った、ちょうど1年前だった。
今のバイトも言われた事をするので精一杯だ。聡にはとってそれだけでもつらかった。
そのため、毎日仕事が終わると精魂尽き果てて帰って寝るだけの毎日だ。
聡はサッと朝食を済ませ、バイト先に行っている途中だった。
人だかりができていた。その人だかりはおそらく野次馬だろう。
なぜなら、そこで人が死んでいるのだから。
第一章 一部 三
聡は野次馬をかき分け、奥へと進んだ。
それを見た瞬間吐き気がするような腐臭と見たこともないような人間の男の姿がそこにあった。
人が死んでいる。
頭がぐちゃぐちゃになり、後ろのコンクリートの壁には血がベッタリとついている。
警察は来たばかりのようで、事件現場付近での聞き込みや死体の処理をこれから行うようだった。
聡は何故かこの男を見たことがあるような気がした。
だが、もやもやしていて思い出せなかった。
ふと腕時計を見ると、時計の針が10時45分を指していた。
聡は急いでバイト先に向かった。
第一章 二部 一
今日は運送会社のバイトだ。
聡がバイト先に着くといつも通りに作業着に着替えた。
すると、聡は異変に気付いた。
今まで使われていなかったロッカーが使われている。
そのロッカーのネームプレートには「ルガール」と表記してある。
(外国人か・・・。こんな仕事場に珍しいな。)
そう考えていると、見慣れない金髪の男が入ってきた。
おそらくこの人がルガールという新人なのだろう。
それと同時にバイトの先輩が入ってきて、聡に話しかけてきた。
「聡くん、こちら新人のルガールくんだ。仕事は今日が初めてだから、世話をしてやってくれ。」
すると、ルガールが口を開いた。
「私はルガール、ルガール=バーンシュタインだ。よろしく頼む。」
このルガールなる人物、新人なのに、敬語でない事に聡は不快に思った。
「新人なんだから、敬語くらい使え、と言いたそうな顔をしているな。まぁ、その通りだろうが私は敬語を好かん。」
(それだけで敬語を使わないんだったら、かなり失礼だろ・・・)
聡は心のそこからそう思うのであった。
第一章 二部 二
「まぁ、俺も敬語は嫌いだけど新人で、なおかつ、それがこれから人に物を教わろうって態度なのか?って俺は思うけど、え〜っと、ルガールくん、だっけ?君はどう思う?」
聡は喉のところまできていた言葉を言い放った。すると
「ふむ・・・、それもそうだな・・・。」
と、ルガールが言ったので
(これを期に態度が変わるといいけど・・・)
と、聡が思った矢先、
「ならば問おう、君は信頼や尊敬するに値しないものに無理してまでわざわざ敬語を使おうと思うかい?思わないだろう?つまり、そういうことだ。」
その言葉に聡はムッとし、
「どういう意味だ?」
と、問いかけるとルガールは
「つまり私からしたら君は信頼や尊敬などの情を掛けるに値しない、ということだ。」
と答えた。
そのやり取りを見ていた先輩が仲裁に入り、この喧嘩じみた言葉のやり取りは終わった。
だが、この時のやり取りが終わっただけだった。その後も何か事ある度に衝突する二人であった。
中篇に続く
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