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『指切り』
日時: 2011/07/18 22:37
名前: 亜雄 (ID: .057oP6P)

初めまして亜雄です。


短編を書こうと思うんで、宜しくお願いします。

話が強引ですが、どうかご了承ください。

コメントは大歓迎です。

荒らしや中傷はやめてください。


では書いていきます。


※多少のグロ表現が出ます。

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Re: 『指切り』 ( No.1 )
日時: 2011/07/18 01:08
名前: 亜雄 (ID: .057oP6P)

『指切り 裕也と葵の約束1』

刑務所の中でも、前田裕也は常に静かだった。
貰えるご飯が少なくても、どれだけ雑に扱われても、ぶつぶつと独り言を言うだけで、物に当たったり、殴りかかったりはしなかった。

小さい頃は明るく、普通の子だった。だが裕也は、成人になってすぐに人を殺してしまった。

殺した相手は「三河 直行」21歳。裕也の幼馴染だ。
裕也は三河に金を貸していた。それもかなりの額で、返せないと三河が裕也に言ったのだ。
別にいいじゃないか、と三河は言ったが、裕也は几帳面な為、それを許さなかった。

返せないなら、と裕也は三河の首を切り、臓器を提供したのだ。
金は随分持て余したものの、後々罪悪感を感じ、自首したのだった。
懲役は2年で、死刑にはならなかったものの、三河の両親からは死にたくなるほどの罵声を浴びた。

そして、現在に至る、というわけである。

「葵、葵、葵・・・。」

裕也は今日も、この名前を繰り返していた。
葵は、裕也の幼馴染で、初恋の相手でもあった。
しかし、葵と三河は付き合っていた。殺したのは、それに対しての腹いせでもあったかもしれない。

「葵、葵、葵・・・・・・。」

刑務所にきてから、どうしても葵が恋しくなった。
今、何処で何をしているのか。今も、誰かの隣で笑っているのか。

どうなんだろう・・・・・・。

刑務所の中には、葵という人物の名前が響く。
同室の男は気味悪がるが、裕也はそんなのお構いなしに葵と繰り返していた。

そんな感じで今まで過ごしていた裕也。
ふと、あることを思い出した。

小さい頃、葵とある約束をしていた。

「葵が22歳になる誕生日、絶対に祝ってね!」

「な、何で22歳・・・?」

「それまでに、葵は結婚したいの!だから、裕ちゃん、あれ、頂戴ね♪」

「・・・?」

あの時はわからなかったが、欲しいものはわかっている。
欲しいものは・・・・・・。

「1362、前田裕也!」

いきなり刑務官から呼び出され、裕也は驚く。

「あお・・・はっ、はい・・・。」

刑務官は部屋の扉を開け、裕也の手を引っ張る。
裕也は童謡を隠しきれず、顔には「?」が浮かび上がる。

「今日で2年経った。お前はもう此処に用無しだ。」

裕也の目には、光がかかっていった。

Re: 『指切り』 ( No.2 )
日時: 2011/07/18 22:36
名前: 亜雄 (ID: .057oP6P)

『指切り 裕也と葵の約束2』

「じゃあな、もう此処に用がないようにしろよ。」

そう刑務官に告げられた裕也は、自分の荷物を確認した。
今、何日だ・・・?5月なのはわかるが、日にちまではわからない。

携帯のカレンダー機能をみて絶句してしまった。

「5月・・・、21日・・・・・・。」

葵の誕生日は5月19日。2日も過ぎていた。
葵は・・・、22歳になってしまった。
ポケットのこれは、どうすればいいんだ・・・?
裕也は、せっかく刑務所から出れたのに、あまりの不甲斐無さに涙を浮かべた。

「裕ちゃん、本当の本当に祝ってくれる?」

「当たりめーじゃん。約束するか?」

「うんっ!」

『指切りげんまん 嘘ついたら 針千本 飲ます 指切った』

「約束っ♪」

葵・・・・・・。葵、葵、葵、葵、葵。

葵はあの日の約束を憶えているだろうか。裕也は鮮明に憶えていた。
何より、葵が好きだったから。

「葵・・・。約束守れなくて、ごめん。」

とぼとぼと道を歩き、気がつくと自分の思い出の場所に来ていた。

「ここは・・・・・・。」

向日葵畑だ。まだ咲いてはいないが、蕾が膨らんできている。
ここで、よく3人で向日葵を摘んだ。

「好き、嫌い、好き、嫌い・・・。」

そんな記憶が蘇る。裕也は、無意識のうちに向日葵畑に近寄って行った。
葵との思い出。ほとんどの時間は、ここで過ごしていた。
三河との思い出もあるが、思い出したくは無い。

気がつくともう夕方で、空は真っ赤に染まっていた。

「帰るか・・・。」

ポケットに手をつっこむ。ふと記憶が返ってきた。
帰る・・・?あの家は、三河の家の近くじゃないか。
もし、両親に出会ったりでもしたら・・・。

「・・・、此処にいるか。」

裕也は向日葵畑のすぐ近くにある小さい丘に寝ころぶ。
芝生がふわふわで気持ちがいい。

このまま・・・、消えたい。

そんなことも思う。

「葵・・・、誕生日祝えなくてごめん・・・。」

「裕ちゃん。」

突然声がきこえ、裕也は驚く。
立ち上がり、周りを見渡すが誰もいない。

「裕ちゃん、こっち。」

声がする方を向く。目を疑った。

「あ・・・おい・・・?」

葵。あの真黒な髪。貧血と間違われたこともある透き通った肌。
大きな目。小さな可愛らしい口。

全部、葵のままだ。

実を言えば、 2人が付き合ってから、気まずくて葵とは会わなかった。
あの約束もあったし、お互いロマンチックと感じたから、というのもあった。

「裕ちゃん。」

「葵、お前、葵か・・・?」

「そうだよ。」

葵は裕也に近づいてくる。裕也の目からは涙が零れた。
と、同時に少し恐怖を感じた。

2年間、髪も髭も伸びっぱなしの自分が、何故裕也だとわかったのだろう。
しかし、葵はこちらに近づいてくる。

「裕ちゃん、約束、守ってくれなかったね。」

葵は、あの日の約束を憶えていた。
が、どうしても恐ろしい。目の前にいる葵は葵じゃないようだ。

「直行はいなかったし、今回は1人だったな。」

「葵・・・?」

「裕ちゃんもいないし、最悪の誕生日だ。
誰も、何もくれないし・・・。」

裕也は、ポケットのものを取り出す。

「葵、遅くなったけど。誕生日おめでとう。
これ、俺の気持ちなんだ。」

葵の目の前に「指輪」を取り出す。
葵の顔は笑顔になり、指輪に手を触れた。

そして、向日葵畑に投げ捨てた。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

「あっ葵っ!?」

葵は蹲り、頭を思い切りひっかく。

「何で、何で何で何で何で何でぇっ!!!」

葵は裕也を押し倒す。裕也はもがくが、力が強く抵抗できない。

「何でっ!何でもっと早くこれをくれなかったのぉっ!!!」

「葵っ!!苦しっ!!」

葵が顔を上げた時、この世のものとは思えない程の絶望に満ちた顔を向けた。
裕也の顔は引きつり、葵を蹴飛ばした。
葵は木にぶつかり、頭をおさえる。

「あ、おい・・・?どうしたん・・・。」

「私はぁっ!私はぁっ!!」

葵は裕也に近づいていく。裕也は思い切り逃げた。
葵は追いかけてくるが、かなりの距離を保つ。

でも、きこえてくる声は、すぐ近くで囁かれているようだった。

「お前がもっと早くこれをくれていたらっ!
私はっ!私はっ!!」

「自殺なんてしなかった!!!!!」

裕也の足が止まる。
後ろから、葵が追いかけてきていたとしても、もうどうでもよかった。

葵が、自殺した・・・?

「貴方が直行を殺したのは5月19日、私の誕生日の時。
だから、憶えていてくれたら、ぎりぎり間に合うと思っていた。
でも、来なかった。これは、私に絶望を与えた。」

確かに、裕也が三河殺したのは19日。でも、返されたのは今日だった。

「指切り げんまん 嘘ついたら・・・?」

裕也は、ゆっくりと後ろを振り返る。

「針千本 飲ぉます♪」

次の日、裕也は路地裏で殺されているのを発見された。
死因は針のようなもので何百か所も指されたことが原因。

そして、左手には。
結婚指輪が握られていた。



『指切り 裕也と葵の約束 完』


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