ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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愛哀逢。 ——愛しい哀しい、でも逢いたい——
日時: 2011/07/28 23:55
名前: 栞。 (ID: 7TIhQdvp)

初めまして、栞。と申します。

亀更新と駄文が基本装備ですb←

化物や幽霊とかをばしばし出していきたいです出来ればね←


注意。

*荒らしだよ☆テヘッ
*駄文とか……www
*栞とかマジきもーいw

な方はお引き取り願います。

それ以外の女神様or神様or天使様は宜しくお願いします^^

コメントは随時受付中で頑張っていきたいと思います!

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Re: 愛哀逢。 ——愛しい哀しい、でも逢いたい—— ( No.1 )
日時: 2011/07/28 23:59
名前: 栞。 (ID: 7TIhQdvp)





『好きなんだ』


 ————愛し愛され互いに想い合うことこそが幸福


 ————化物と、化物と、人間と、怪異の糸が織り成す織物は、どこまで美しくなるのだろうか











scene.00



 俺は今日夢を見た。
 何が起きたか忘れたが、どうでもいい夢だったことだけは覚えている。
 そう、少しだけ思い出した。

 過去の話だ。

 どうでもいい、俺の過去。

 俺が『獣』になった、いつかの夏だ。




**********



「梓君」

 静かに呼ばれた。最初、誰に呼ばれたのか気づかなかった。くるくると回りを見渡すと、教室の扉に佇んでいる人影があった。
 か細く、高く、綺麗な、女の声。
 俺を呼んだその人影は教室の扉によりかかったまま、動こうとしない。
 
「えっと…、和賀?」

 うろ覚えの名前。
 中途半端に暑い6月にはあり得ないこと。

「あ、知っていてくれたんだ」

 和賀は驚いたように声を上げた。そして一歩前にでて、教室に入った。慈しむ様に机をなぞる指は、ひどく白く、一度も日を浴びていないと言われても驚かない。

「今まで会ったこと、無いよね?」

 同じクラスだとは思えない言葉。
 でも、和賀ならばありえた。
 
 空は夕陽で赤くなり、教室全体も赤に染まる。
 窓辺は日が直にあたり、汗ばむほどに暑い。 


「私死んじゃったもんね」


 まだ6月だというのに、蝉が五月蝿い。
 じりじりと照り付ける日はもうすでに空には無く、少し薄暗くなった教室には俺と和賀だけ。
 和賀の小さく細い声が、蝉の声にかき消されることは、なかった。
 和賀がつぶやいた瞬間に、時がとまったような静けさがはしる。


「梓君も、『霊』なの?」


 静けさを壊したのは、静けさを作り出した本人。
 最初から変わっていない無表情が、少し崩れる。


「違うね、梓君はやっぱり私とは違うよ」

 
 自問自答する彼女は、ゆっくりとこちらに近づく。
 机をなぞっている指は、透き通る様に白かった。

 否、

 透き通っていた。


「和賀は、死んだのか」


 自分から見ても、相当間抜けな問いだと思う。
 でも、信じられなかった。
 俺は別に霊感があるとか、そんな特異体質ではなかった。


「おかしい、だろ?」


 突然、降り出した雨。
 雨が窓に激しくぶつかる。


「何言ってるの?」


 問いで返された問いは、空気に消える。
 雨のせいでよく聞き取れない。
 彼女は静かに笑い声を立てる。 


「梓君はもともとおかしいでしょう?」


 滑稽だと笑う彼女は、自分の体が透き通り、向こう側の世界が見えることを滑稽だとは言わないのだろうか。


「梓君は、私とは違うんだね」


 嬉しそうな、哀しそうな、複雑な目で、俺を見つめる。
 まるで、仲間を欲している様なその様子は、外見に似合わぬ幼さが漂っていた。


「また、来るから」


 そういって彼女は教室を出て行った。
 足音は、きちんと聞こえた。
 でも同時に、哀しげに笑うな様な音は、きっと聞き間違いだろう。

Re: 愛哀逢。 ——愛しい哀しい、でも逢いたい—— ( No.2 )
日時: 2011/07/29 16:21
名前: 栞。 (ID: 7TIhQdvp)



scene.01







「おはー!」

 後ろから馬鹿でかい声が聞こえる。
 俺は軽く耳を押さえながら後ろを振り返る。

「あっずさー!」

 周りから見れば爽やかな青年、俺から見れば暑苦しさの代名詞が近づいてくる。
 俺は生ぬるい目で見守り、静かに目を逸らして空を見上げる。

「あー…今日も空が青いなぁー……」

 俺が呟いていると、後ろから思い切り男が突っ込んでくる。

 いや、女の体なのだが。

「葱耶、お前もうちょっと身長伸ばせば」

 俺は空を見上げたまま葱耶に呼びかける。
 葱耶は俺に抱き着いたまま離れようとしない。
 いい加減暑いんだが。

「仕方ないだろー一応女の体なんだしさー」

 葱耶は口をとがらせる。
  
 そう。葱耶は女だ。

 男子生徒の制服を着ているとしても、

 髪が男子の様だとしても。

 葱耶は女だ。
 
 別に男装趣味でも、百合趣味なわけでもなくて、ただ自分を男だと信じているのだ。
 自分が、女の体だということはわかっている。けれど、自分は男だと思っているのだ。
 葱耶は周りが自分を「女」だと思っていることもわかっている。
 ぶっちゃけ周りから見れば葱耶はかなりの美少女だ。
 中性的な顔立ちは、美しいという評価がぴったりだろう。
 だから男子と言い張っていることも許されるのだから、やっぱり美形は得だな。

「なぁー…」

「なんだよー?」

 声は女にしては低いが、それでも高い。
 葱耶は自分が「女」と思われているだけで、実は「男」だと考えているのだ。

「お前って変わってるよな」

 俺は葱耶の方を見ながら言い放つ。
 葱耶は「なんだよー」と笑いながら、俺から離れた。
 
 葱耶は変わっている。
 自分のことを男だと信じて疑わないし、それに加えて美少女。
 しかも………

「梓…大好きだよー」

 男が好きだ。
 女が男を好きというのはふつうなのだが、何せ葱耶は男だと信じて疑わない。
 だから余計にややこしい。
 
 俺は耳元で囁いてくる葱耶を、しっしっと手で払い、そのまま歩き出す。
 葱耶に告白されたのは初めてではない。
  
「いいじゃんー!俺可愛いでしょー?」

 葱耶は自分の顔を指さしながら言うが、俺は目を逸らして再び歩きだす。






 もうすぐ校門が見えてくるな。

Re: 愛哀逢。 ——愛しい哀しい、でも逢いたい—— ( No.3 )
日時: 2011/07/30 13:35
名前: 栞。 (ID: 7TIhQdvp)

 

 「はよー」

 俺ががらっと扉を開けると、教室には既に何人かの知り合いが着席していた。

「おはよう、十宮君」

 まず返してくれたのは、ストレートヘアの黒髪。
 副委員長の鬼勢。

「おはよー十宮君!」

 次は手を振りながら寄ってきた軽薄そうな男。
 俺は目を逸らして自分の席に向かうが、その男が目の前に立ちはだかる。

「挨拶しようよ」

 にこにこと笑っている癖に何を考えているかわかったものじゃない。
 俺は小さく挨拶すると、軽薄そうな男をすり抜けて席に座った。

「神谷君、十宮君に付き纏うのやめてください、私に迷惑ですよ」

 鬼勢が軽薄そうな男、神谷の腕を掴む。
 神谷は反省などしていない様にへらへらと笑ったままだ。

「貴方は仮にも委員長なんだから、もう少し落ち着いた態度を取ってください」

 鬼勢は諦めた様に神谷の腕を放すと、自分の席に着いた。
 
 神谷は何かと俺につっかかってくる奴だ。
 何かあれば「学年委員長」という権力を振り回し、俺以外の生徒からも一目置かれている変わり者。

「だってさー十宮君面白いんだもん♪」

 鬼勢が面食らった様に神谷の顔を凝視する。
 教室にいた生徒が一斉に神谷を見た。

 神谷はにこにこと笑いを浮かべたままだが。

「どこが!?どうやったらそんな考えになるんですか!?」

 鬼勢も思わず声を荒げてしまっている。
 その他の生徒もこそこそと何かを囁きあっている様だ。

「反応がないって面白いよね♪」

 さらっとM発言の様なことを言ってのける神谷に、生徒達が思わず一歩下がった。
 女生徒は逆に寄っている様だが。

「大抵はさ、僕のこの輝く美貌に蛾みたいな虫けらが寄ってくるけど、十宮君は違うじゃん?」

 やっぱりこいつはSだと思う。
 残念ながら、神谷は神谷が大っ嫌いな俺から見ても完璧だと思う。
 
 勉強などしていないのに成績はいつも学年でトップクラス、体育祭では『神谷がいるチームは優勝する』といったジンクスがあるほど。
 そしてこの容姿。

 薄茶色の柔らかそうな髪に、見てくれだけは優しそうな茶色の瞳。身長も180弱くらいだろう。

「僕がこうやってさ、女子にキスするだけで女子は倒れちゃうくらいなのにね♪」

 神谷は近くにいた女子を適当に引き寄せると、身を屈めて挨拶代りの軽いキスをする。
 すると女生徒は顔を真っ赤にしてその場にへたり込んでしまった。


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