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狐のおはなし
日時: 2011/08/27 00:45
名前: ウィニーア (ID: XvIxIH.G)

 初めましてウィニーアです。
小説を書くのとかは初めてで、ここのサイトも初めてなので無礼なことも多いですが、ご了承お願いします。





 零幕

「そこのお嬢ちゃん、お嬢ちゃん。
少しあっしの話、聞いてやくれませんかねぇ?
面白い話か分かりやせんが、面白いっちゃぁ、面白い。
こわーいお話なんですけどなぁ、聞いてくだせぇ。
そう、これは昔むかしの……。
ああ! お嬢ちゃん、逃げんといてーな!
飴ちゃんあげるわ、ごっつい美味しい飴ちゃんですぜ!
そうかそうか、お菓子で誘うのは誘拐犯ですわ!
ご安心を、あっし、狐のお面被った変人ですが、誘拐犯ほど卑劣じゃありやせん!
不審なものじゃありやせんってばーっ!!」


「あなた、十分不審者ですよ」


 ある学校の帰り道、私は狐の仮面の変人に話しかけられた。

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Re: 狐のおはなし ( No.1 )
日時: 2011/08/28 23:52
名前: ウィニーア (ID: XvIxIH.G)

突然話を書いて突然やめてしまいます、ウィニーアです。
ここの掲示板では初めて書かせていただきますので、皆様には初めましてだと思います。
暗黙のルールがあるだとか、あんまり分からないのですみません。
初めて小説を書くので駄作です、ごめんなさい。



 登場人物

狐の男:今の時代は迂闊に個人情報流しちゃいけませんぜ?
わたし:あなたに名乗る名前なんて、ないわ。




    一幕
 おじいちゃんが倒れた。
学校から帰宅すると、母が苦しい顔でそう告げた。
わたしは驚いて固まってしまった。(その時、コップにミルクを入れていたのだが溢れてしまった)


「でもね、安心して、『わたし』。おじいちゃん、熱中症だって」


「お母さん、安心できるファクターないよ」


 倒れたのは母方の父で、散歩とか好きな人だ。
真夏なのに帽子も被らず散歩をしていて熱中症になったらしい。
全く、年を考えて欲しいわね、と母が呆れていたがやはり心配しているのだろう。
いつものクリクリおめめは悲しげに細められていた。


「ねえ、『わたし』ちゃん。あなた学校の帰りにあの祠に寄ってくれない?」


「殆ど誰の信仰もないあの廃れた悲しい祠に?」


「駄目よー、そんな酷評。神様泣いちゃうわよ」


「泣きそうなのはお母さんだよ」


 そう指摘すると母はまた悲しそうになった。
仕方ない、祠に行くとするか。


「そろそろ空になった牛乳パックから牛乳注ぐのやめたら?」


 足元には白い水溜りがたまっていた。


*


「お嬢ちゃん、ごっつええ子やないか! おっさん感動したわ!」


「ということで帰ります」


「待ち待ち! 飴ちゃんの代わりに300円で残ってくれたんだろィ、お嬢ちゃんの話聞いて300円あげただけならあっし、なぁんも得してねぇぜ!」


「あなたの損得なんて知りません」


 カラスがカア。カア。と鳴いている。
空には雲がかかってきて薄暗い。このままだと雨が降ってしまう。
こんな虫だらけのところに居たくない、早く帰りたい。


「まあまあ、聞いてくださいや」


「却下」


「あっし、神様ですぜ、無下にせんとって。おっさんてナイーブなんだぜ」


「知らない」


 神様なんて、知らないわ。

Re: 狐のおはなし ( No.2 )
日時: 2011/08/28 23:51
名前: ウィニーア (ID: XvIxIH.G)


   二幕

 学校からの道草、近所の廃れた小さな小さな祠に寄った。
山の麓の森の入り口にあり、蚊がたくさん飛んでいる。あっ、痒い、さされたか。
道に敷き詰められている石にはコケが生え、鳥居は半壊している。
神様だと言うのに、ぞんざいな扱いなこと。
 

 雲ひとつ無い空は赤黄青のグラデーション。
秋が近づいてきたのか、風がとても冷たい。
学校指定の制服のスカートは校則を守って膝下。(大体の女の子は膝上が多い)
そのため、晒された足がだんだん冷えてきた。

 目の前の狐面の男は着物を何枚にも重ねて着ている。
肌寒いとはいえ、とても暑そうだ。
腕や首にはミイラ男のように包帯をぐるぐると巻いていた。
爪はヴィジュアル系のように真っ黒に塗られ、長く鋭利だ。


「ああ、この爪はマニキュア塗ってるんじゃねぇですぜ、生まれつき」


「病院に見てもらえば?」


「狐の神様ってどの病院行けばいいんでしょうかね? 獣医さんに見てもらうっつーのも微妙でィ」


「電波はどの病院かしらね」


 この男、自分を神と言い張る。おかしいのか。
わたしの考えていることを読まれたかと一瞬焦ったが、わたしはずっと男の爪を凝視していたのだ、わたしの思考を汲み取るのは可能であろう。

 怪しい奴にこれ以上近寄るなどという愚行はせぬまいと一歩下がる。
が、男が一歩近寄る。
下がる。
近寄る。
下がる。
近寄る。
下がる近寄る下がる近寄る下がる近寄る下がる近寄る。
下がる下がる下がる下がる下がる下がる下がる下がる下がる下がる。
近寄る近寄る近寄る近寄る近寄る近寄る近寄る近寄る近寄る近寄る。


「……おかしい」


「何がです?」


「だって、こんなに下がってもこの森から出れないわ」

 もう15mは後ろへ下がっているだろうに。入り口から男の居た祠までは約10m75cm8mmまでしかないはずなのに。

「『約』の意味あらへんやん。約っつーのはアバウトですぜ、アバウト。お嬢ちゃん前世メジャー?」


 「マニキュア」然り「アバウト」然り「メジャー」……。
神様はこんな言葉を知っているのだろうか?



「だからあっしは神様なんですぜ」



 ケラケラと声をあげ首をかしげ男は笑った。どんな顔をしているのかは分からない。
白い狐の面は無表情だ。目を細めている、というよりは、目が一本線で描かれていると表現したほうが正しいのだろう。


「神様ならお願い聞くの?」


「え?ああ、まあ。だからさっきから交渉しようと呼び止めていたんですわ。だのにお嬢ちゃん逃げてまうから」


「それは悪いことをしたわ」


 心にもない謝罪ではるが、一応謝っておこう。仮にも「神様」なのだ。

 わたしはずっと無表情のまま、さっき蚊にさされたところを掻きむしる。かゆい、かゆい。
男の爪は長いけど、わたしの爪は幼子のように短い。
短い爪はこういうときに不便だ。


「さて、交渉。内容は簡単」


「願い一つ叶えるのに寿命が1年縮むとかかしら?」


「あっしは死神か悪魔ですか」


「悪霊みたいね」


「もう何も言いやせんわ……」


 男は呆れていた。

Re: 狐のおはなし ( No.3 )
日時: 2011/08/29 22:48
名前: ウィニーア (ID: XvIxIH.G)

  第三幕

「交渉は至って簡単。祈りを捧げるものは近頃いないもんでね。あっし誰とも喋っとらんのですわ。だからお嬢ちゃんにはあっしの話し相手になってもらいたい」


「面倒ね」


「話相手つーても、ほら、あれ、あれですぜ? あっしが勝手に語ってるだけでィ。ほら簡単」



 怪談話ですわ、男は頭をボリボリ掻きながら呟いた。
白髪ではあるがとても艶のある髪で、老人の髪とは違う。
腰よりも長く、背中の真ん中の位置でくくっている。(垂髪というやつだ)


「それは一つ願いを叶えてもらうたびに一度あなたの話を聞かなくちゃならないの?」


「ですな。まあ、なくし物を探してほしいみたいな願いだったら短い話。受験合格みたいな大きな願いは長い話ですぜ」


 毎回毎回この人に願いを叶えてもらうつもりは無い。恐らく、今回の件のみだろう。
願いなど自力で叶えなければ。


「おーっと、言い忘れてたァ。神様特別ルール! 忙しい学生さんのために設けやした、この祠から半径10m以内にお嬢ちゃんが入ると、時間が止まります」


「何それ」


「テスト勉強なのに怪談話なんて聞いていられるか……!! なんてことあるでしょ」


「つっこんだら負けよね」


 それならばテストでいい点がとれますように、とでも願っとけばいいだろう。神様とはつくづくわからない。


「よし、交渉か否か」


「面倒だから今回だけ宜しく」


 きっぱりそう告げると、狐の男は深々と礼をする。
ありがとうございやす、と。


「初回特別限定、怪談話はなしですわ」


「……、初回って事は次もあるのよね」


「お察しの通り」


「ならばやっぱり取り消しに「無駄無駄。諦めが肝心」


 ふざけるな、そんな面倒なことあってたまるか。今すぐに殴ってやりたいが、我慢をする。
手を出してしまえばわたしの負けになる。
飛び掛りそうな右手を強く握っておさえた。


「お嬢ちゃんのお願い」


 おじいちゃんの健康。で、いいですかな? 不老不死は受け付けませんぜ。
両手を軽く広げ、おどけたように訊ねてきた。
 わたしは黙って頷く。


「あっし、ナリって呼んでくだせェ。そちらさんの名前は?」


「『わたし』」


「は? わたしって一人称でしょう?」


「だから『わたし』よ!」


 何を言い出すんだ、この男は。わたしは『わたし』という至って普通の名前なのに、何が一人称だと言うのだ。
ぎろりと睨めば、男はやはりおどけたように肩を竦めた。


「人間さんにゃあ、わからんのか」


 全く持って理解できない男だ。
何だかこの男は信用に値するのかが疑問に思えてきた。


「さてさて、おまじないお呪い」


 男─もとい、ナリ─が何処からともなく真っ白の長方形の和紙を一枚、取り出した。多分お札の類だ。
さっきまで私と向き合っていたのに、男は体から横に向いた。
右手にお札を持ち、左手には数珠のようなものをぶら下げ、何やらぶつぶつと呟いている。

 刹那、ナリが持っていたお札から青白い炎が灯った。
奴は気にも留めずにお札をずっと持ち続けている。
最初は蝋燭のように燃えていた炎が急激に強く燃え盛った。
五、六歩離れていた私でもそれは十分熱いというのに、奴はずっと札を持つ。


「ちょっと、燃えて……!!」


 ナリは首だけこちらに向けた。
黙れ。
声には出していないが、そう聞こえた。
仮面越しに睨まれた。いや、仮面に睨まれた?(あんな線で描かれてる目に睨まれただなんて)


 普通、紙が燃えたら灰になり、原型がなくなり崩れる。
なのにナリの持っている札は真っ黒になるだけで、崩壊などしなかった。
辺りには静寂が広がった。


「おじいちゃん、後十年十五年は元気ですわ。余程のことがなきゃ」


 静けさを壊したのはナリであった。
今まで役者のように大げさに喋っていたのに、この声は消え入りそうであった。


「さてさて学生さんは忙しい忙しい、お家に帰んなせェ。次からは怪談話、忘れんといてくださいや」


「……、ありがとう」


 色々問い詰めたいが、今あった目を疑うような光景に私は言葉が出なくなった。



「ほなさいなら、『わたし』ちゃん」




 気がついたら家の前に私は居た。
右手に何かを握っていたので、手を広げ確かめた。
そこには、真っ黒な紙に白い文字で達筆に書かれていた。

おじいちゃんの健康。

 奴を信じてみよう、私はそう思った。




──、お嬢ちゃんは自分の名前、普通やと思ったでしょう?
すっごく変わったお名前ですねん、『わたし』って。
きっとお嬢ちゃん、悪い妖怪に名前奪われたんですわ。
それか狐か狸に化かされやがったか。


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