ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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グロリアス
日時: 2011/08/28 23:29
名前: セミ (ID: KjZyd1Q/)

初めまして
セミっていいます!
下手かもしんないですけど、よろです

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Re: グロリアス ( No.1 )
日時: 2011/08/29 01:08
名前: セミ (ID: KjZyd1Q/)

 私の名前は法円坂伴視ホウエンザカバンシ今年で23になる、冴えない男である。
 子供の時一流雑誌の記者だった父親にあこがれ、ジャーナリストになることを志すが、大学卒業後結局志望していた出版社に就職できず何の因果か胡散臭い三流ゴシップ誌を書く小さな出版社に勤める事となった。
 勤めて一年がたつが、どれも胡散臭いと言うよりもダークでディープな芸能人のスキャンダルなどという可愛いスクープなどには目もくれず、臓器売買だとか麻薬の密売所などと少しばかり命に関わるものが多いそんな血と血と血で出来た結晶の記事も胡散臭いと数少ない読者に嘲笑されるのである。
 それでも連載が続いているのはそういう世俗とはかけ離れた刺激の強い話が好きな読者が多いからだろう。

 正直一年よくもった方だと思っている、或る時はヤバイ薬を嗅がされ薬漬けにされそうになったり、テロリストに拉致されたり、時代錯誤の大泥棒を追いかけたり、と自分の仕事が本当に記者なのか疑わしくなってきた、さらに言うならば憧れていた父よりも既に遥に大変な仕事をやてのけたのではないか? と思い始めているが気のせいだろう。
 早すぎたのだ、私は今生ではこの職に就くには……来世にもっとタフネスでブラッドピットの様なハードボイルドさを兼ね備えた男に生まれ変われるように祈りたい。
 なんだか遺書の様になってしまったが、兎に角今日私はこの世界から足を洗うべく編集長に退職願を届けるのであった。

「編集長、おはようございます」

 私は会社に着いてすぐ編集長室に向かった、小さい会社のくせに一人だけ部屋何かつくりやがって……と思いながらノックをして入る。

「あ〜おはよう法円坂君、今日も命懸けで頑張ろうねぇ」

 ドアを開けると安っぽいチェアに腰掛けている、無駄に目つきの鋭い私とさほど年が離れていなさそうな編集長の黒羽根鞍馬クロバネクラマはこの会社では冗談には聞こえない冗談を言う。
 不思議な人だ、私は初めてみた時からそう思った、いやその印象は彼の下で働く事で霧散するどころかさらに強まった。
 どこからかネタを掴み私達に指示をしてと、いたってまともな仕事ぶりなのだが、彼には人間臭さがない様な気がした、それどころか本当に生きているのかと疑わしく感じることもある。
 自分でも自分が何を言ってるか分からないが彼の印象を私なりに形容するならばそれ以外の言葉は見当たらなかった。

「どうしたの辛気臭い顔してさぁ、そんな顔してたらさすぐに死んじゃうよ? 去年殉職した中村君もそんな顔してたよ」
 ニコニコしながらパソコンを見ながら黒羽根は言った。

「や、ホント冗談に聞こえないですからやめてください。ていうか充職者がいたなんて初耳ですよ!」
 
 私は声高に叫ぶが今まで自分が片付けた仕事を思い出すと、何故墓の下ではなく自分がここにいるのか不思議に思えてきた。
 その思いがさらに仕事を辞めるという決心に拍車をかける。
「あの編集ちょ・・・…」
「ハハハ、冗談だよ。俺がいる限りこの仕事は世界で一番安全だよ、殉職者なんかいるわけないから、んじゃ今日の仕事三つあるから選んでいいよ?」
 私の言葉を遮る様にして編集長は喋る。
「ん、どうかした? 法円坂君?」
「いえ、何でもないです」
 …………何を言ってるんだ私は!! 何も無いわけないだろう!! 言うんだ仕事を辞めると、簡単じゃないか退職願を届けるただそれだけだ。
「あの……」
 私が辞めると言おうとした時編集長は立ち上がって私の目の前くを歩いてポンポンと肩を叩く。
「喉渇いたからさ、あっちで話さない?」
 目を細めてゾッとするほど綺麗な笑顔で私に言った。
「は……はい」
 な、何だコレ……何か辞めると言えばとんでもないことが起こる様な気が……。
 編集長室を出て休憩室でコーヒーを入れてパイプ椅子に腰かけると、編集長が三つのファイルをきちんと並べて私に見せた。
「法円坂君はオカルトは大丈夫な方? 【超能力者】と【悪魔と天使】と【悪霊】どれが好きかな?」

 コーヒーを思わず吐きだしそうになった、今まで突拍子もない恐ろしい仕事ばかりだったが超能力者やらなにやらと胡散臭さ極まる様な仕事がなかったのに……。三つのファイルには【もう会いたくない大泥棒】と【金髪で眼帯をした隻眼の少女】と【どこか禍々しい島】がそれぞれクリップに留められていた。

「どれも好きじゃないですね」
 私は苦笑しながらファイルの写真を見て言った。

「我が儘だなぁ法円坂君は、まぁ見たら分かるかもしれないけど。大泥棒が【超能力者】でこっちの人形みたいな子が【魔王】でこっちの島が【禍津島】っていうすごい曰くのある島ね、どれもぶっちゃけ死亡率120%の仕事だけど好きなの選んでいいよ」

「いや、何ですかどうやって割り出したのか分からない不吉な数字は! ていうか一体どういう記事にすればいいんですか!? 魔王や超能力者なんて最早ライトノベルの領域じゃないですか! ただでさえ胡散臭い雑誌なのに!」
 私は立ち上がり、まるで舞台に立つ役者の様に大げさな身振り手振りでこれの必要性を否定する。
「確かにそうだねぇ……じゃ、一番記事になりそうなのはこの禍津島か……。いやぁ納涼企画には丁度いいかもね」
 そう言いながら編集長は島の写真以外のファイルを自分の方へ持っていこうとする。
「いや、ちょっと待ってください!」
 私は長テーブルに身を乗り出してそれを制する。
「何だよいちいちうるさいな。どうかしたの?」

 正直な話、私は幽霊の類が大の苦手であった。だからどうした? そもそもどれも信憑性が極端にまで低い信じるだけ馬鹿を見るような話だが、私も信じたくないが一年の付き合いで分かった事がある、この編集長が掴んできたネタは間違いなく【ガセ】ではない、無論私もの口から出てきた情報ではなかったら鼻で笑っていたが、他でもない黒羽根の口から出たのだから信じるしかない、彼はホントの事しか言わない【世界一の正直者で真実しか知らない純粋で善良な人間】なのだから。
 つまり、この島には間違いなくでる……悪霊が……、超能力者も魔王も嫌だが悪霊はもっといやだ。
つまり私にとっての選択肢は【超能力者】か【魔王】二つに一つだった。

Re: グロリアス ( No.2 )
日時: 2011/08/30 22:30
名前: セミ (ID: KjZyd1Q/)

 全くこちらの身にもなって欲しいものだ。
 自分が好きな情報をかき集めてそれを確かめて記事にするのは私達の仕事なのだ、【超能力】? 【魔王】? どれもお話にならない、そういうのテレビの特番じゃないんだよゴシップ誌は……。
 一番まともに書けそうなのはやはり【幽霊】か……いやしかし私はそれだけは絶対に選びたくない。
 だとすれば、以前記事に書いた大泥棒か……まさか超能力者だったとは、結局その時の記事は【実態に迫る】と言う見出しだったが、何もできず完全にしてやられちゃいましたテヘッ☆という内容をいかにもそれらしく長たらしく何とか書きあげた。
 人気につき第二弾的な企画でもう一回やるか? 実際いつもよりそこそこ売れたしな……でもあの気持ちの悪い【大泥棒】には会いたくない。
 
 ……となると必然的に【魔王】になってしまう、フフフ、もう笑うしかない。
 その選択肢は幽霊よりないな、うん。

「では編集長、【魔王】でよろしくお願いします」
「はいよ、もう他の仕事は他のに回すからね〜。ああ、後退職するのもう少し考えてくれないかな? うちも人手不足でね〜、ってことでこれは見なかった事にしとくね。」
 
 編集長は笑顔でいつのまにか私のポケットに入っていた退職願をスっていたのか……私の目の前でぐしゃっと握りつぶし、女の子以外のファイルを持ち休憩室から出ていった。
 ……やってしまった……そして死ぬほど怖い。
 私は今さらながらひどく後悔した、何故【魔王】などとほざいたのか、何故あんな男が私の上司なのか? いくら後悔してもしきれない後悔の念に私は押しつぶされそうになる。

「あ、おはよう〜法円坂ちゃん」
「あ、お、おはよう」 

 休憩室に入ってきたのは私と同期の社員の三十三間九重サンジュウサンゲンココノエだった。
 名前が覚えにくいせいもあるが、とにかく私はこの女が苦手だった。
 それは何故か?
「いや〜今日も法円坂ちゃんはかわいいね〜、ホント女の子にしか見えないよ〜」
 そう言って三十三間は私の頭を撫でて後ろから抱きついてきた。
 この女はどこからどう見てもハードボイルドさと哀愁を漂わせるアダルトな私をあろうことか女扱し、あまつさえセクハラ行為に及ぶのである。

「くっ、セクハラだぞ三十三間。それにこのハードボイルドとしか言いようのない私のどこが女なんだ!」
 私は抱き付く三十三間を引き離してクールにそう言った、なんなら俺の後ろに立つな的な勢いで……。
 ひゃん!! 私がクールな眼差しで見つめると何故か三十三間はニヤニヤしながら私のお尻を撫でて来た、思わず声が上がる。

「な、なななななな、何をする三十三間! もうセクハラってレベルじゃないぞ目が! それは性犯罪者の目だ!」

「いやあ、ごめんごめん。何か可愛い法円坂ちゃんを見てるとこう……言いにくいんだけどムラムラするんだよね」
 
 私は涙をこらえて携帯を取り出してここに変態がいることを警察に通報しようと思った、このままでは私はいつ襲われるか分かったものではない。

「いやいや、通報する前に自分の顔を写メでとってみなさいよぉ法円坂ちゃん。女でも欲情しちゃうような美味しそうな草食動物にしか見えないよ。や、嘘ごめん! だから通報はしないで」
 
 そう言って三十三間は迷いもなく無駄のない洗練された、最早職人芸とでも言うべき素早い土下座を見せた。


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