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- Blood Twilight ~愚者の宴~
- 日時: 2011/09/14 23:16
- 名前: 神永ぜのん (ID: EfKicuSN)
『ZET-5、墜落を確認。』
『...そうか。総員、直ちに帰還せよ』
『...了解』
11xxxx年、時は再び 戦火を撒き散らしていた———...
戦闘兵器、アグナクル...通称ZETと呼ばれる人類抹殺の目的に作られた兵器のパイロットがまた一人、命を落とした
しかし彼の死は無駄にはならなかった、敵軍一派を壊滅することができたからである。
誰が死んで、誰が生き残れるのか。
そんなことは誰にも予知することはできない
もしかすると一番身近にいる友を失うかもしれない
それとも自分が死ぬかもしれない
それは明日か、明後日か...今日死ぬことも否定はできない
今の世の中はもうお終いだ、
皆 自分の私利私欲...欲望のために戦争をし、負けて滅んでゆく
それでも誰かが白旗を挙げる訳でもなく、この戦争の世を生きている
いつまで続くのか、この生きた心地のしない世界で。
何をしたらいいのか、この血と肉の腐った匂いの戦場という名の墓場で。
...兵士の使命は、平和など望んではならない
戦うだけだ。
そのために生まれてきた、軍の道具だ
戦うためだけに....生まれてきたのだ
『...アン、大丈夫か』
そう声を掛けるのは、ZET-2のパイロット、ケイ・シズリだ
『...あと一週間で...結婚できるはずだった...』
アン・メリエンは、死んだZET-5のパイロット、リークと結婚の約束をしていた
しかし、その約束はたった3日で全て崩れ去った
今までは我慢をしていたのだろう、アンを見ると唇をぐっときつく噛み締めて拳を握り震わせている
その目からは大粒の涙が溢れていた
声を出さず、嗚咽さえ漏らしはしないがその表情はひどく悲しみに満ちている
ケイもいたたまれなくなり、思わず泣いてしまいそうになるのを堪えて俯いた
こんなにも残酷で理不尽なことが他にあるのか
『結婚式、挙げないか...アイツのためにも。』
無言を破ったのは、そんな言葉だった
『えっ.......?』
驚いた様子でこちらを見るアンの目元は赤く痛々しく腫れていた
『リークとお前のために俺ができることをしたいんだ。』
その言葉を全て聞き終わらぬうちに、アンは両手で顔を覆い静かに泣いた
震える背中を撫で、ケイはアンが落ち着くまで側にいた
少しでも悲しみを分けてほしい、できることは限られているが、それでも共に過ごしてきた仲間の苦しみは放っておけなかった
辺りが暗くなり始めた頃、二人は基地の中へと歩みを進めた
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- Re: Blood Twilight ~愚者の宴~ ( No.1 )
- 日時: 2011/09/17 20:19
- 名前: 神永ぜのん (ID: EfKicuSN)
基地に戻ると第1ゲートの脇にZET-3パイロット、シグ・ル・LO・アルストがこちらを見据えていた
渋めの薄緑の髪色が特徴的で、その髪を腰下まで伸ばしている。 身長が180cmあるので、相当長い
『基地内にいろと言った筈だぜ。』
『おい...! 今日はリークの葬式だったんだぞ! お前なんで来なかった!?』
『...死んだ兵士に興味はねぇよ』
ドンッ、と頭に血が上り 衝動でシグの胸ぐらを掴んだ
『お前ッ!! それでも人間かよ! アンに謝れ、今すぐ!』
シグは目の前で圧倒されていても眉一つ動かさず ケイをじっと見ている
何を考えているのか全く分からない、闇色の瞳で
『...話はそれだけか、てめぇの偽善丸出しの話には吐き気がするぜ、クソが』
『.................』
無言のケイを睨みつけるとシグは胸ぐらを掴んでいた腕を振りほどき、侮蔑の目をケイへ向けてこう言い放った
『誰だって死ぬときは死ぬ!! それが軍の兵士なら当然だろうが!お前みてぇな甘ったれは軍にはいらねぇんだよ』
言い終わるとすぐにシグは基地へと去っていった
横にいるアンは、必死に涙を堪えていた
『...ごめんな、アン。 あいつの言うことは気にしない方がいい』
とは言っても...そう簡単には無理か
『違うの。シグの言う通り...私、兵士として甘ったれてた。』
『え?』
『結婚式...やっぱりやめましょう。私は軍のために時間を使うわ、そして軍のために...もっと強くなる』
アンは、シグのあんな言動をまともに聞いていた
最愛の人を失ったのに...俺はアンの何も見ていなかったのかもしれない
結婚式をしないのは、これ以上戦争をすることに心揺らぐことを防ぐためだろう
命を失うことへの恐怖、仲間を失った時に哀しまずに旅立ちを見届けられるか....
そうだ
俺は....兵士だ
シグはそれを伝えようとしていた
ただ何も考えずに俺たちを見下している訳じゃない、奴は俺たちの中にある甘えを見ていたんだ
自分がやらなくても誰かがやってくれる
死にたくない
まだやりたい事がある
大切な人を失った
シグはこういう人間が嫌いだ
(戦いに私情を持ち込むんじゃねぇ)
自分の甘さにやっと気がついた...
『ケイ、今から一緒に強くなろう...シグも、あんなだけど戦闘の事はよく知ってるもの』
『ああ、リークも...きっと分かってくれるよな』
『分かってくれるよ...仲間だもん』
必ず勝とう...軍のために、国のためにも。
- Re: Blood Twilight ~愚者の宴~ ( No.2 )
- 日時: 2011/09/17 23:23
- 名前: 神永ぜのん (ID: EfKicuSN)
基地へ入ると、軍隊長レイアが待ちくたびれたといった様子でZET-3の傍らに立っていた
『...遅いぞ、ケイにアン。』
『...あの、何故軍隊長がここに...?』
ケイが不振がちに問うと、軍隊長はため息をついた
『今、アルストがシュミレーションを行っている、お前たちも見ておけ』
『シグが...?』
アンはそれを聞くと機体に目を向けた
そして、ハッとして目を見開く
バリアーが消えている
『軍隊長!!バリアーがなければZETは!』
『安心しろ、ZET-3は特殊な造りになっていてバリアー無しでも人的害はないんだ』
軍隊長はこう見えて女性だ
しかし女性にしては肝が据わっていて、生半可な気持ちで指揮をとっている訳ではない
そのため信頼も厚く、他の隊長や兵のリーダーなどからも親しまれている
カエルの細胞を改造し造り出されたZET...
今もその全貌は公にも晒されていないが、いずれは知る時が来るだろう
『...死ねッ!! 邪魔な奴らは俺が全部殺してやる!お前も、お前も!!』
画面に向かってマシンガンを撃っているシグが叫んでいる
いつものように戦闘になると目が爛々とし、一層恐怖感を煽る
ここに来て驚いたのは、シグの銃のセンスだった
百発百中。
敵を逃しはしない
こいつがいなければ戦争をリードするのは難しい
確かに、軍隊長が言っていた通りだ
『よし、アルスト。もういい、終了だ』
『...あと2秒残ってたぞ』
『残ってないも同然だろ...細かいな』
『そういう人間なもんでね』
ヘルメットを脱ぐと長い髪がふわっと舞う
同じ男ながら綺麗に手入れをしていると思う
『ねぇ、シグ。シュミレーションの点数は何点だったの?』
強い兵士でも平均で76.8点が平均点数だ
俺はまだまだそれ以下だが、70点以上あれば英雄兵賞という賞に表彰されることも少なくない
『125.4だったぜ、前回とあんまし変わらねぇよ』
『ほお、また腕をあげたな』
『ひゃ、100点オーバー!?』
『相変わらずすごいわね、シグは』
バンッ! バァン!!
その時、基地内奥で銃声がした
- Re: Blood Twilight ~愚者の宴~ ( No.3 )
- 日時: 2011/09/25 11:29
- 名前: 神永ぜのん (ID: EfKicuSN)
大変遅くなりましたが、主キャラの紹介をさせて頂きます...
「今頃!?」と思う方もいるかもしれませんが、どうかご覧になってください
・ZET-1 パイロット
ネルル・シルベスタ(21)
髪の色は牡丹色でゆるゆるとおさげにしている
おっとりしていて不思議系の女の子。
ケイに憧れていて、かつ、好意を寄せている
新人で、演習でミスをしたときはいつもシグに怒られる
・ZET-2 パイロット
ケイ・シズリ(26)
髪の色は黒色で短髪。
真面目で戦争反対派。
シグとアンとは研修生時代からの仲間
自分にできることを探している
・ZET-3 パイロット
シグ・ル・LO(エルオー)・アルスト(年齢不明)
髪は柳染色で長髪。
残酷非道な性格をしていて敵に容赦はない
態度が悪く軍隊長にしばしば注意されるが反省していない
銃系武器の扱いが上手く、ZETの中でも特に優秀。
・ZET-4
アン・メリエン(24)
髪は深緋色で短め。
ケイと同じく本当は戦争反対派
しかしシグの言葉で徐々に心が変わっていく
リークの死後、強くなろうと誓った
軍隊長:レイア・ハーミリィ
髪色は黒紅。
戦争こそが全てだと思っている
優しい一面もあるが時には残酷な事も考える
まだまだ増えると思います^^
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