ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- こっち見んな
- 日時: 2011/09/16 22:40
- 名前: カッカさぬ楽 ◆xH8pjI9WaE (ID: nWEjYf1F)
はじめまして、またはこんにちは。カッカさぬ楽といいます。
インターネットで小説を書くのは初めてで、手馴れていないところもあるとはございますが、お暇でしたら読んでいっていただけると幸いです。
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- Re: こっち見んな ( No.1 )
- 日時: 2011/09/16 22:16
- 名前: カッカさぬ楽 ◆xH8pjI9WaE (ID: nWEjYf1F)
「ねぇわかる? 君に足りない物」
俺の目の前に立っている男はそう言った。
俺は、この男を知らない。顔も声も。見たことも聞いたことも無かった。
『誰だお前は』。そう言いたかった。しかし言えなかった。その代わりに、とでも言うように、口の隙間から零れ出たのは
「……わかりません」
という、投げやりな台詞だった。
俺は小さいころから「わからない」という言葉が一番嫌いだった。理解することを放棄した駄々っ子が言う言葉のように思えたからだ。
しかし俺は今、確かに言った。「わからない」と。
俺は何をしているんだ。というかなんなんだ。
ここはどこだ。今日は何月何日だ。そして本気でお前は誰なんだ。聞きたいことだらけだった。
「だろうね。だって俺にもわからないもん」
男はにやにやと笑いながら言った。悪趣味というあだ名が世界一似合いそうな奴だ。
「……どういう意味スか」
「そのままの意味だよ。君には何かが抜けていると思う。しかし何が抜けているのかはわからない。そもそも本当に何らかの欠陥があるのかさえ、俺にはわからない」
男はわけのわからないことを早口で一気に口にした。国語の点数が毎回一桁の俺には訳が全く分からない。
「何が言いたいんスか。てかここどこスか。俺家で寝てたはずなんスけど」
当たり前といえば当たり前の質問をした。
そうだ。俺は家で寝ていたんだ。
中学二年の俺・春田マツキは、今日家で妹のナツキと一緒にビデオゲームをしていて……疲れて寝た。
そして、起きたらここにいたのだ。
「ここは俺の家だよ。あぁ、そろそろシチューが出来た頃かな。ちょっと待っていて、ついでくるよ」
男は笑いながらキッチンへ入っていった。
それと入れ替わりに、俺の後ろから人影が現れた。
「春田マツキさん、で宜しいですね」
「……よろしいですが」
美少女だった。
なんだここは。夢の中か。起きたら全部夢でしたとかいうアレか。
だってこの女、俺の片思い相手の高城ミサキにそっくりなんだ。
ああ、そういうことか。夢の中なら仕方ない。
すると美少女が言った。
「夢オチとか甘っちょろいこと考えてるんじゃないでしょうね」
「え、普通に考えてますけど」
「……知りませんからね。あなたのように軽い気持ちでここに迷い込んで、最後までここから出られず牢屋の中で骨になった人間は星の数ほどいるんですから」
美少女が無表情で言った。
今日の夢はずいぶん物騒な夢らしい。
「ほら、また、どうせ夢だとか思ってる。そんなことないんですからね。わたし知りませんからね。わたしみたいになっちゃっても」
美少女はそう言うと、怒ったようにどこかへ行ってしまった。
- Re: こっち見んな ( No.2 )
- 日時: 2011/09/16 22:46
- 名前: カッカさぬ楽 ◆xH8pjI9WaE (ID: nWEjYf1F)
「シチューついできたよ」
男が言った。
「……どうも」
そう言って俺は、一応頭を下げておいた。
それにしてもおいしそうなシチューだ。最近シチューなんてめっきり食っていない。夢の中だってわかっていても食べたいような、不思議な魅力のあるシチュー。
スプーンを手にとろうとしたとき、男がふいに口を開いた。
「あのさ君」
「あ……は、はい」
くそぅ。もう少しで食べられたのに。
「俺がいない間に、女の子に会わなかった? 結構かわいい感じの」
高城ミサキに似てるあの美少女のことかな。そう思って、俺は
「見ました」
と言った。
「! どこで!?」
「え、ど、どこで……って、ここで、ですけど」
いきなり声を張り上げられたから、驚いて声が震えてしまった。
「くそ……あいつどこにいんだよ」
男の口調がいきなり荒々しくなり、夢の中と分かっていても鳥肌がたったような感覚に陥った。
「え、えっと……あ、あの」
「ん? あぁ、ごめんよ。気にしないでシチューを食べてくれ」
男は愛想笑いのようなものを顔に浮かべて言った。
「じゃあ、ご遠慮なくいただきます」
俺がそういった途端。
「だめえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえ!!」
すごい大声がして、右手に持っていたスプーンが地面に弾き飛ばされた。
「!?」
俺と男は同時に同じ方向を振り返った。するとそこには先ほどのミサキ(仮)が堂々と佇んでいた。
「その子から離れてくださいませ、ミスター」
そう言ってミサキ(仮)は、俺の向かい側のテーブルに座っている男をきつく睨んだ。
「……やっと会えたね」
そう言って、男はテーブルの上にあったフォークとナイフを手に取り、ミサキ(仮)に向けた。
「この少年が見つかったとなると、君はもう必要ないし、むしろいらない。消えてもらおうか」
「それはこっちの台詞でございます。さっさとその子にかけた術を解いてくださいませ!」
ミサキ(仮)はそう言うと、先ほどまで着ていた、淡い紫色の使用人風のドレスを脱ぎ捨てた。そして中に着ていたチャイナ服の袖をまくしあげ叫んだ。
「貴様の命はわたしが預かります、ミスター! とっと観念してぶっ倒れてくださいませ!」
そしてどこかに隠していたのであろう拳銃をぶっぱなした。
銃声。
銃声銃声。
銃声銃声銃声。
……えーと。
ここって夢の中なんだよな?
今、銃弾が明らかに頬をかすったんだけど……
気のせいだよな。
「ミスター! わたしはもう限界でございます! こんな暗い館に一生閉じ込められるのは!」
そう言うとミサキ(仮)は、男(ミスター?)の心臓に銃弾を命中させた。
「行きますよ春田マツキ! そしてそのシチューを食べてはなりません! ミスターがお作りになられた毒薬が混入しておりますゆえ!」
「そしてあなた様の人生の一億分の一ほどのお時間を少々頂戴いたします! 異論は残念ながら認めさせていただく時間がございません! とにかく今は貴方様の安全を第一に考えて、ここから遠いところに避難します!」
ミサキ(仮)が叫ぶその丁寧な言葉を聞きながら、俺はこう考えていた。
あぁ……今日の夢は長くなりそうだ……ってな。
- Re: こっち見んな ( No.3 )
- 日時: 2011/09/17 06:21
- 名前: ダイ (ID: Xr5Y0osE)
凄く面白いです^^本当に夢の世界なのか?気になります^^
- Re: こっち見んな ( No.4 )
- 日時: 2011/09/19 20:12
- 名前: カッカさぬ楽 ◆xH8pjI9WaE (ID: nWEjYf1F)
>>ダイさん
夢か否かは、今後の展開で明らかにされていくと思います!
もしよろしければまたいらしてくださいね^^
嬉しいコメントありがとうございました。
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