ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

影は今日も光に消え入る
日時: 2011/10/01 19:37
名前: 山 ◆LBa8JREPiQ (ID: nWEjYf1F)

>>01 1
>>02 2
>>04 3(未完成)

>>03 補足1(東雲牛崎の性別について)
>>05 補足2(登場キャラの設定表)

Page:1 2



Re: 影は今日も光に消え入る ( No.1 )
日時: 2011/10/21 13:14
名前: 山 ◆LBa8JREPiQ (ID: nWEjYf1F)

「おーい、お前ら席に着けー」
と、担任の中倉がハゲ散らかした頭を帽子で必死に隠しながら言った。
 それを合図に、生徒たちはぞろぞろと自分の席に戻っていく。全員が席に着いたことを確認した中倉は満足気に微笑み、そして言った。
「今日、このクラスに転校生が来る。引っ越してきたばかりだから分からないことも多いはずだ。皆、力になってやってくれ。今はまだ家の整理をしているらしいから、明日あたりにくるだろう」
 清々しいほどの見事なドヤ顔。中倉が生徒たちに嫌われている理由の一つだと言っても過言では無い。用件を言い終え満足した中倉は、鼻歌を歌いながら教室を出て行った。
 ふいに、背中に極小さな衝撃が走る。後ろの席の子に、背中を突っつかれたのだ。
「ねぇねぇ、トモちゃん。転校生ってどんな子なのカナー」
 わたしの後ろの席に座っている少女——もとい島村セレンは、にへら、と笑いながら言った。
 茶色い髪、茶色い目、白い肌に高い鼻。噂ではヨーロッパと日本のハーフという話だが、実際のところは定かでは無い。しかし、わたしとこの島村がそこそこ仲の良い関係であるということは、紛うこと無き事実である。
「可愛い女の子なのカナー。それとも格好良い男の子なのカナー。はたまた、どちらも兼ね備えた男の娘なのカナー」
「えっと、それはちょっと分からない……かなぁ」
基本的には良い子なのだが、どうも島村と喋るのは疲れる……というより、ついていけないと言った方が良いのかもしれない。何かの専門用語のようなものを延々と口にしたり、いきなり「バルス!」と叫んだり。このクラスで彼女について行けるのは一人としていないと言っても過言では無いだろう……いや、一人いるな。
「トモたん、セレンたん! おっはよぉ! 今日もいい天気だネ!」
噂をすれば。
「おはようシノちゃん! もうホームルーム終わってるしどちらかと言えばお早くないね! おそよう!」
「……おはよ、東雲」
東雲牛崎。カタカナだと、シノノメ、ウシザキ。体は男だが心は女。家族も教師もクラスメートも、皆そんな彼の気持ちを理解していて、宿泊研修のときのお風呂も一緒に入ったし、男女別水泳の時もいつも女子グループにいる。
「ふっふふぅ〜。ホームルームにはいなかったけど、ホームルームで中倉ティーチャーに言われたであろうことはわかりますお! 『転校生が来るから仲良くしてやってくれ。』どう? 当たってるかぬ?」
なんで知ってるんだこいつ。あくまでも友達だから口には出さないが、心の声には出させてもらおう。東雲牛崎、怖いです。
「シノちゃんすごいねー! もしかして超能力者なのカナー?」
そう言って目を輝かせる島村。東雲といいコンビ。
「お前は黙ってろ島村……とにかく! 一時間目、体育だよ。急いで着替えなきゃ遅れる」
そう言って、わたしは自分の体育袋と島村の体育袋、東雲の体育袋を肩にかけた。二人の身長は一五〇センチ以下と華奢。対してわたしは一七八センチのバレー部のキャプテン。三人分の荷物を全てわたしがもってあげるのがいつものお約束である。 
「あ、そうだったー」
仲良くハモった島村と東雲。忘れるなっつの……
「もう、急ぐよ! うちの学校の更衣室狭いんだから、早く行ってスペース確保しないと」
「アイアイサー」
二人は揃って敬礼した。



Re: 影は今日も光に消え入る ( No.2 )
日時: 2011/10/21 13:49
名前: 山 ◆LBa8JREPiQ (ID: nWEjYf1F)

「今日は昨日も言ったとおり、このクラスに転校生が来る……っていうよりもう来てるから、お前らに紹介するぞ。入ってこい、吉田」
 中倉がお得意のドヤ顔でそう言い終えると同時に、教室の扉が勢い良く開いた。そして中に入ってきたのは——
「……おー、男の娘だー。ちょっと可愛いカモー」
 島村はそう言って、キャッキャッと手を叩いた。男の娘というのが何なのかは知らないが、教室に入ってきたのは、男とも女とも言える中性的な顔立ちをした子だった。
「男の子かな」
と東雲。こいつは極度の男好きだ。しかし、男だろうと男の娘だろうと、正直わたしはあまり興味が無い。友達なんて島村と東雲で十分足りる。
 すると、吉田と呼ばれた転校生が、ふいに口を開いた。
「あのー」
たった一言で、騒々しかった教室が一瞬にして静まり返る。
「自己紹介、してもよろしいでしょうか」
そう言って、にこりと笑った吉田は、チョークを手に掴んで、黒板に何かを書き始めた。

吉……田……夜……須。

 どうやら、自分の名前を書いてくれているらしかった。しかも、ご丁寧にフリガナまで添えて。
「僕の名前は、吉田夜須。よしだ、やすです。引っ越してきたばかりで分からないことも多いですが、よかったら手を貸してください。宜しくお願いします」
良く通る、透き通った声で、吉田夜須は言った。声まで中性的な奴だった。
 教室に、吉田への拍手が溢れた。

「名前が『やす』……ってことは男だわね!」
 そう言って目を輝かせる東雲。転校生が男だから何だってんだ。
「えー、シノちゃん、男の娘説はガン無視? それにもしかしたら、ヤスって名前の女の子かもしれないじゃない」
 島村も島村で、またわけのわからないことを言い出している。これだから、こいつらの友達をやるのは大変だ。
「ねぇねぇ、トモちゃんはどう思う!?」
「自分で本人に聞け」
もっともらしいことを言い放って、わたしは机に突っ伏した。昨日は溜まった課題片付けるのに忙しくてあまり寝ていない。
「ちぇ、トモちゃんってばつまんない女ダナー」
「もー、トモちゃんなんか放っておいて、ウチらは仲良く連れションいこっかー」
「そうダネー」
 そう言うと、二人はトイレに走って行った。高校三年生にもなって連れションするなんて、わたしには意味がよく分からない。



Page:1 2



この掲示板は過去ログ化されています。