ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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‡極悪殺人鬼赤ずきん†
日時: 2011/10/13 18:48
名前: トモヲ (ID: EfKicuSN)

...森の中を一匹の狼が走っていた



狼はあるバケモノから逃げていた

その名は...赤ずきん。

おとぎ話で誰もが知っているような、メルヘンな奴とはかけ離れて異なっている...


ガサッ


「ッ!?」


ガサガサガサッ


『あァ〜、見つけたぁ』



しまった、見つかった


ニヤァ、と気持ちの悪い不気味な笑みを見せてこちらへ歩み寄って来る

手には斧を持っていて、相変わらずガリガリの身体


『狼サンさぁ、かくれんぼ得意なの?見つけるの苦労したぁ』


「...お前が斧持って追いかけて来るから逃げてんだろうが」


『あっははは。美味しそうなんだもん、狼サン』


よく見ると片目に包帯が巻かれている

これは...この間の、あれか





——...



『ぎゃははははははははははっ』


ヒュンヒュンヒュン


斧が頭をかすめる

高笑いをして豪速で走って来る赤ずきんをかわしているしか為す術がない

このまま、この森を抜けられれば...!

森の中ではどうしても赤ずきんが見つけにくい


そんな事を考えていると、目の前に。


       『ばあっ!!!』


いきなりで、頭の思考が停止した

だが辛うじて反射能力は作動してくれた

気付ば腕が動いていて

ヤツの顔面を思いっきり抉っていた


ブシューーーーーーーッ!!


『ぅがああああああああああああああああああッ!!!』


大量の血が赤ずきんの顔面から噴き出す

それを両手で止血しようとするが指の隙間から血がどくどくと溢れ続ける


『熱いぃ〜...顔が熱いなぁ...っぁあああ、血が止まらない、とま、止まらないィ』







その隙に俺は逃げた...





.........








『ね〜、君にやられた左目見てよぉ〜』


そう言っておもむろに包帯をとると、かなり腐っていた

左目があった場所にはもう眼球はなく、穴が開いていた

そこからどろ、と膿みや腐れた体液が出ていて、蛆が湧いている

相当不潔にしていた証拠だ

消毒でもしていればここまで...いや、コイツがそんなことする筈がない


それよりもよくこんな状態でも話せるな...

痛みを感じていないのだろうか


ひどい臭いがする

腐った肉の臭いだ

赤ずきんは周りにたかっている蠅を片手で払って






ぐちゅ



ぐりゅ、ぐちゃ、ぐちゃぐちゃぐちゃ



なんと、自分の指で左目をかき混ぜ始めたのだ





『えっへへ、ほら、見えるかな?中まで蛆がいるの、こいつらかゆいんだよ』



「おい、何してんだよ...!?」



『何って?かゆいから掻き出してるんだってばぁ』



そう言うと指の動きをいっそう早くして、蛆を掻き出す


ぐちゅっぐちゅっぐちゅっ


赤ずきんの足下は血液と膿の水たまりのようになっている



『あっ....あ、少し動かしすぎちゃった。いたたた』


見てるだけで俺は痛かったよ


猛烈な吐き気を抑えながら、俺は立ち尽くしていた






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Re: 極悪殺人鬼赤ずきん ( No.1 )
日時: 2011/10/04 23:10
名前: トモヲ (ID: EfKicuSN)


何故こんなことになっている...?
訳が分からないぞ、俺はおとぎ話の通りに登場したはずだ
話の流れでは赤ずきんは遣いをしている途中で俺と出会い、俺は先回りをし
ババァの元へ行き、ババァを食う。
その後、ババァの服を着た俺がベッドの中で赤ずきんが来るのを待ち、
赤ずきんを食って猟師に殺されるんだったろ?

俺はもう何度も死んでいてこんなやりとりはもう慣れている
子供が絵本を開く度に俺は死に、本を閉じれば生き返る
そんな事はもう分かりきっている
でもなんだ、これは?
この現象は...?
赤ずきんなのか、本当に。
目は朱色で爛々と輝いているし、言葉遣いも全く違う
こんな赤ずきんは知らねぇ。

狼は立ち尽くしたままひたすら考えていたが、赤ずきんが斧と一緒になにか
片手で持っている事に気がついた

それは、ヒトの腕だった。

「だっ、誰の腕だよ...!?それは」

狼自身、人間を食らう獣だが、その声はどこか震えている
その質問に、赤ずきんはクックック、と笑いながら答えた

『これはねぇ、オカアサンだったヒトの腕だよ、きひゃひゃひゃひゃ』

「...は?」

俺は一瞬時間が止まったかのような底無しの虚無感を感じていた
こいつは、実の母親を殺したのか?
童話にはそんな内容はなかったはずだ

『知りたい?』

心を見透かしたようなその言動に思わず喉を鳴らして唾を飲み込む

『私が、このお話を書き換えたっ、書き換えちゃったんだよおおお』

母親の腕を頭上でぶんぶん振り回しながら
奇妙な踊りを踊っている







Re: 極悪殺人鬼赤ずきん ( No.2 )
日時: 2011/09/25 23:40
名前: トモヲ (ID: EfKicuSN)

『ねぇ、こんな所で面食らって突っ立ってるバアイじゃないでしょ』

片目の無くなったひとつだけの瞳で赤ずきんはじっと狼を見つめた
凶器だ、穴が開きそうなくらいにじりじりとこちらを見てくる

狼はハッと我に返り、気を集中させた。
次に赤ずきんがどんな手でくるのか...そもそも何が目的か。
いや、そんなことは今考えるべきじゃないのか

狼は最早こいつは赤ずきんではないのだ、と自分自身に諭すかのように目を閉じた
しかしもちろん気の集中は解かずに赤ずきんの出方をみる


動かない。


全く赤ずきんは動こうと身を構えていなかった
身体こそ子供同然だが中身はバケモノ。
余裕だとでもいうのか、

「何故イキモノを狩る。」

狼は目を閉じたまま、人形のようにしている赤ずきんに問うてみた
すると赤ずきんは僅かに眉をぴく、とだけ動かした
そして口角を上げてこう言った

『娯楽と快感のために決まってるでしょ、いひひ』

ボタボタ、とまた左目から蛆や体液が流れ落ちた
気持ちが悪い、本当に逃げ出したいと切実に願う
娯楽だって?快感だって?
そんなもんのために殺人を犯すのか

空はだんだんと暗くなり始めている—...
コウモリやらカラスが甲高い声で泣き、うるさい音をたてながら飛び去った

『ほぉら、そろそろ鬼ごっこの続きしようよ...』

やっと動いたと思ったら俯きながらまたこんなことを言い出した
左目を掻き回しながら赤ずきんが唄を歌いはじめた


さぁさ、鬼サンが通る

みんなみんなお逃げなさい

殺すも生かすも

ワタシが決めること

小川の流れるほうへ

満月の見える丘のほうへ

鬼サンそこへは行かれない

さぁさ、鬼ごっこの始まりだ

たすけて

たすけて

つかまえた

Re: 極悪殺人鬼赤ずきん ( No.3 )
日時: 2011/09/26 20:24
名前: トモヲ (ID: EfKicuSN)

「相も変わらず訳の解らねぇ唄だぜ...」

木々の中を縫うように全速力で駆け抜け、そんなことを呟いた

が。

『えぇ〜?この唄、結構自信作なんだけどぉ??』
「!?」
なんと、あんなに呑気に唄っていたはずの赤ずきんが高速で走っていた狼のすぐ隣を駆けていたのだ
細い木を斧で叩き切り、隣に並んで走る狼の目の前に斧の切っ先を向け、狙いを定めてそれを一気に投げつけた
ひゅんひゅんと風を切る音が顔の横から聞こえ、狼は自分の鼓動が早くなったのを感じた
...今のを避けていなければ、死んでいた

『あぁー!!斧が飛んでっちゃった』
大きな声で叫んだかと思いきや、赤ずきんは急にぴた、と立ち止まり斧が刺さった木へ一直線に走り寄った
そしてぐいぐいと斧を引き抜こうともがいてみるも、どうにも斧が取れない
狼はチャンスとばかりに赤ずきんの様子を伺いながら、早足でこの場から去ろうと動き出した

その時


...——パァン

後ろで銃声がし、狼はバッ、と振り返った
そこには。

腹に大きな穴が開いた赤ずきんの姿と
猟師の姿があった
かまえた猟銃の銃口からは黒煙が細く伸びるように出ていた

『っ、え、え?何、なにこれ。うわあ、血がぁ!お腹から血があふれてるッ!痛いよっ痛い痛い』
左目の時とは違い、これは流石にかなり痛むのか膝を付きもがき苦しんでいる
足下は臓器やら血液が飛び散ったものでどろどろと赤黒くなっていてとても見ていられない
そんな様子を見た猟師は、何を思ったかもう一度銃口を赤ずきんの方向へむけた

...バンッ!

狼は驚愕した
いくら赤ずきんがバケモノになったからといって、これはもう童話の話とは全くの別物だ
有り得ない
普通向けるなら、俺の方へむけるはずだ
理由はどうあれ、今までの流れが解っていなくとも子供に猟銃を向けるなんておかしい
狼は、前に赤ずきんが言っていた『自分が話を書き換えた』と言っていたことを思い出した

「...自分のことだけじゃなく、他の奴らまで変えたのか。」

「ああ、そうだ」
赤ずきんに話しかけたつもりなのだが、猟師が代わりに答えた

「俺は、『狼を殺す』ではなく『赤ずきんを殺す』という目的に書き換えられたんだ」

「...詳しく聞かせろ、何故そんなことになった?」
猟師は銃を下ろし、自身の足の脇に銃を立てかけるように持った
そして視線を狼から赤ずきんへ移すとゆっくりと話しだした

「俺も気づいたらこんなことになってて、詳しいことはよく解らないんだが...
  ともかく、あの殺人鬼赤ずきんを殺す。それが俺の使命だ」

「...それなら、もう大丈夫だろ。あんなでけぇ穴開けりゃあ」

「死ぬとでも思ったか、こんな攻撃で?」
猟師の言葉と共に立ち上がる赤ずきんを見て、狼はすくみ上がった

Re: 極悪殺人鬼赤ずきん ( No.4 )
日時: 2011/09/30 22:40
名前: トモヲ (ID: EfKicuSN)

赤ずきんはふらつきながらもゆっくりと立ち上がる
何なんだ、一体?
まるでロボットだ。
あの血はオイルで、臓器は全て作り物であるかのような...
考えるのも恐ろしいが、そんな思いがふと頭をよぎる

『ねぇねぇねぇ、これってどういうことぉ?』

立ち上がっただけでも驚くべき事なのだが、今度は普通に喋り始めた
「どういうこと、とはどういう事だ?」
俺の代わりに猟師が答えた
体の脇に立てかけていた猟銃をすばやく標的に向けながら。
その様子を血まみれの顔でじっと赤ずきんが見つめる
左目を擦ったかなにかしたんだろう
右目はひどく充血していて赤い
寝ていないんだろう、目の下には隈もできている
腹からは絶えず出血していて、しかしそれを止めようともせずに猟師を見ている
『...私はオトモダチとしか鬼ごっこしないんだよ。それなのにどうして猟師サンが参加してるの?意味が分からない』
「俺にはある役目があるんだよ、何のためかは分からない、だがやらなきゃならない」
『そんなの知らないし、猟師サンのせいでお腹に穴があいたし。とにかく許せないな』
「何を許すんだ?...俺はしてはいけない事なんて何も」
猟師が赤ずきんから視線を外したその隙に赤ずきんは猟師の後ろへ回り込んでいた
斧が首をかすめる
ピッ、と少し細い血管が切れたがなんとか斧をかわした
そして今度は猟師が赤ずきんの後ろへ回り込み、三撃目の銃弾を食らわせた
赤ずきんは反動で数歩後ろへ下がってまたうなり声をあげ、うずくまる
「ぐっ......................!」
赤ずきんが動けないのを見た猟師は首を手で押さえ、顔を歪ませた
いくら細い血管とはいえ、首元を切ると出血がひどい
だが赤ずきんは猟師の様子を窺い、自分の方がダメージが多いくせに、にやりと気持ちの悪い笑みを浮かべて
側にある母親の手と斧を持ち、森の奥へと逃げていった






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