ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 月を謡いし闇の姫
- 日時: 2011/10/07 22:53
- 名前: ちゃこ (ID: l9EMFnR1)
「美しき世界に、私の居場所はございません・・・。
私の生きられる場所は、闇の中にしかないのです・・・。
嗚呼、何という不公平!!何という差別!!
生きる場所がないのなら、生きられる場所に変える他ありません。
さあさあ同胞の皆様、参りましょう!!闇のパレードの始まりです!!!!」
世界は光と闇に分断されていました。
光の世界には、太陽を謡いし神が。
闇の世界には、月を謡いし姫が居ました。
しかし・・・・・・。
闇の姫が、光の世界に侵略を開始したのです。
これは、光と闇の、世界を賭けた話-----------------------------
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- 月を謡いし闇の姫 ( No.1 )
- 日時: 2011/10/13 21:00
- 名前: ちゃこ (ID: l9EMFnR1)
Song:1 月の下、謡う人
「光を、喰らう亡者共よ・・・。汝、光の下に還ること叶わん・・・」
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「やばい、完全にやばい・・・」
暗闇の中、一人の青年が、肩を竦めて言った。
額からは止め処なく汗が流れている。
日の輝きのような金色の髪に、輝く空色の瞳をもった少年。
崩れかかった建物の陰に隠れて、じっと息をひそめている。
・・・その理由は・・・・・・・。
「くそっ・・・少し奥まで来過ぎたな・・・。どうやって<アイツ>から逃げようか・・・・・」
青年の見つめる先には、ヒトならざる者の姿があった。
額から日本の白銀の角を生やし、血の色をした瞳をぎょろつかせ、黒い髪を靡かせる・・・・・鬼。
口元からはだらだらと涎を垂らし、獲物を、彼を狙っている。
青年の鼓動は、限界まで高まっていた。
呼吸も浅くなり、その場に縫い付けられたように動けない。
『・・・・夜中に外は出歩くもんじゃないな・・・』
少し後悔し始めた青年は、そっと建物から顔を覗かせた。
しかし視線の先には、先ほどの鬼は見当たらない。
『・・・・・・・消えた?・・・・』
安堵したのもつかの間、すぐ後ろから声が聞こえた。
「ヌシ、我ガ空腹ヲ満タス生贄トナルカ・・・・・・・・・」
「うわっ!!!!!!!!!!!!!」
青年は建物から引き摺り出され、地に叩き付けられた。
背中を強く打ったせいか、気道が狭くなり息ができなくなる。
「嗚呼・・・・腹ガ減ッタ・・・・・食イタイ、食イタイ、食イタイ・・・・!!!!!」
首元をつかまれ、揺さぶられる。
霞む視界で捉えたのは振り上げられる鬼の手。
『・・・・・・・・・・・・死ぬ・・・・・っ・・・』
そう覚悟した、時だった。
「汝、闇の欲に呑まれし哀れな子よ。異種に己が手を、伸ばすことなかれ」
鈴のように凛とした声が響いたかと思うと、目の前の鬼の首は、一瞬にして切り離されていた。
「ゲホッ・・・・うっ・・・・・・はぁ、はあ・・・・・・・・」
青年は、鬼の死骸の先に立つモノを見つめた。
黒く長い髪、穢れを知らないような白い肌、血のように、赤い瞳・・・・。
佇んでいたのは、幼い少女だった。
「・・・・君、は・・・・・・・・・」
「お前は光に愛されたようだな」
間髪入れずに、少女は言葉を紡いだ。
「・・・光・・・?」
「闇ではない方の世界。お前の属性は光のようだな、と言っているんだ」
少女は小さな手を、青年に差し出す。
月の輝きが、二人を照らす・・・・・・・。
「聞け、光の青年。私と共に、闇を殺してくれないか」
何がどうなっているのか、理解こそできなかったが。
青年は、少女の手を取った・・・・・・・。
- Re: 月を謡いし闇の姫 ( No.2 )
- 日時: 2011/10/13 21:14
- 名前: ちゃこ (ID: l9EMFnR1)
Song2 光に愛された青年
「・・・・お前は誰なんだ・・・・・・」
「私の名を聞いているのか、それとも、私の正体を聞いているのか」
どちらだ。と高圧的に問いかける少女。
青年は苦い顔をして少女を見つめた。
「・・・・・どっちもだ」
「欲張りだな。どちらかに絞れ。欲は身を滅ぼすぞ」
「・・・・・・・・・・・・じゃあ、名前」
そういうと、少女はきょとん。とし、軽く笑った。
「<名>を選んだか。面白い、流石は光に愛された子だな」
少女は青年に近づき、そっと頬に手を伸ばした。
「私は灯月。姓はない、ただの灯月だ。よろしくな、光の子」
「・・・・俺にだって名前ぐらいある」
「・・・一応、聞いておこうか。お前の名は、何というんだ」
青年は少女が伸ばしていた手をとり、今度は自分が少女の頬に手を伸ばす。
「拓斗。如月 拓斗だ。灯月、俺はこれからどうすればいい」
「・・・・」
灯月は少し目を伏せた後、妖艶な笑みを彼に向け、耳元で囁く。
「お前は私に力を貸してくれればいい。私が思うこと、願うこと、やりたいこと、欲すること・・・・。
すべてに尽力を注いでくれ。私は食い止めなければならない」
「・・・・・・誰を・・?」
灯月は悲しそうに笑った。
「<姫>を。闇に君臨する<月を謡いし姫>を」
「月を謡いし・・・・姫・・・」
二人の天空に、黄金に輝く月が存在していた。
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