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- しにがみふたり(1狩り)
- 日時: 2011/10/13 22:26
- 名前: 狂った道化師 (ID: jB.9aKyA)
「つまらないわ」
道化師は嗤う。自分の鎌に付いた人間の血を舐めとりながら。
「聞き飽きたよ、そのセリフ」
屍は呆れる。自分達で殺した人間を灰にと変えながら。
二人は死神だ。
人間を弄び、強大な力を持った。
しかし、名前を持たなかった。一応の呼び名を持てども、それは死神の組織からもらったものだった。
道化師と屍は魂を狩る。いつまでもいつまでも。
永遠に。
この物語は、しにがみふたりの物語。
1狩り「謹慎」
道化師は朝が嫌いだ。憎ったらしい太陽を睨み付け、腰まである黒髪を適当につないだ。
「あれ、髪つなぐなんて珍しいね」
道化師の部屋に屍が入って来た。こちらも起きたばかりなのか、長い赤毛に寝癖がついている。
「……ご飯のときに邪魔だからよ」
朝に弱い道化師はむすっとした顔で、寝床から這い出た。
「早くしないと食堂しまっちゃうよ、ほら」
自分だけ先に行かずに道化師を待っている辺り、彼女らしいと思う。彼女の優しい面に触れ、自然と道化師の顔が笑顔になる。
「……何ニヤニヤしてんの?」
廊下に出て、食堂に向かっていたときだった。
「道化師さん、屍さん。室長が呼んでましたよー。早く行ったほういいですよー。カンカンに怒ってましたから」
同じころに死神となった同僚から伝えられた内容は、朝食前の二人を盛大にブルーにさせた。
「……気は進まないけど…「まずご飯よ」
屍の言葉を遮り、道化師はそう大きくないむねを張った。
「は?」
「そんなもの無視よ、無視!ご飯抜いてまで説教を聞く義務はないわ!」
道化師は思う存分踏ん反り返ると、食堂へ行こうとした。しかし、屍がそうさせなっかった。
「待て」
道化師が屍の手を振り払おうとするが、屍の黒い笑顔を見ると動けなくなってしまった。
「飯なんかいいから」
「で「いいから」
普段は優しい屍も、このようなときにはとたんに厳しくなる。黒い笑顔もあいまって、道化師はしぶしぶ従った。
「大変なことをしてくれたね」
死神は地域ごとに各部署に分かれている。部署ごとには室長がおり、この男は室長歴15年の大ベテランだ。
「狩らなくていい魂までなぜかってくるんだ!毎回毎回!!特に道化師!」
ほとんど道化師にばかり怒りが向けられているというのに、当の本人はというと鳴り止まないお腹に集中していた。
「……道化師。室長怒ってる」
たまらず屍が道化師に注意するが、時すでに遅し。
「……人の話を聞けーーーー!!」
「室長は人じゃなくて死神ですよー☆」
この言葉で堪忍袋の緒が切れたのか、この後道化師は謹慎を命じられるハメとなった。
「ひーーまーーー!」
謹慎をくらった道化師は、自分の部屋で一人叫んでいた。屍はもちろん謹慎をくらうはずもなく、一人で仕事に向かった。
「……パートナーなのに…、なんで私だけ……」
道化師は布団に突っ伏しながら泣きそうになった。
室長はむかつく。
でも、その室長の言いなりになっている屍は?
道化師の思考回路はどんどん悪い方向へと進む。
「もういい!勝手に外出るから!!室長がなんだ!謹慎がなんだ!!私は道化師よ、誰の指図も受けないわ!!」
意味不明な言い訳をすると、道化師は窓から飛び出した。
もし、この時道化師が謹慎を破らなければ未来が変わっていたかもしれない。
誰も望まない、あの未来が。
「……死神なんて、滅んじゃえ……」
2狩りに続きます。
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