ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 孤独と狂気と恐怖のカーニバル
- 日時: 2011/10/21 09:19
- 名前: 奈緒 ◆SOkleJ9WDA (ID: /iUvxDbR)
私は奈緒と申します。
流血や猟奇的な描写がありますのでご注意ください。
■
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- Re: 孤独と狂気と恐怖のカーニバル ( No.1 )
- 日時: 2011/10/21 18:34
- 名前: 奈緒 ◆SOkleJ9WDA (ID: /iUvxDbR)
もうすぐ本格的な冬が始まる事前の十月下旬。朝夕冷え込む事が多くなった。
防寒グッズを買い揃え、またや用意する者が目立ってきた。
そんな最中、修学旅行で疲れた体を癒す為、今日は休校だった生徒達が街で遊んでる姿が見受けられる。
そして、ある三人組も女子もだ———。
派手な格好と冬に似合わないショートパンツ。
くるくるとヴェーブが掛かった茶髪、そして目元が大きく見えるメイクをしている。
大声で笑い合い。
他人の悪口や教師への不満、家族の愚痴や新作の服やらメイクやら、ゲーセンに行こう等と喋っている。
しばしの沈黙の間、一人が呟いた。
「何か暇だよね、単純な日常に飽きたっつーか」
「は、何。夕夏、あんたさ中二病じゃね」
夕夏と呼ばれる、腰まであるロングヘアの茶髪が一房、肩に落ちる。
それを首を振って払いのける。目の前の友人二人は笑ったままだ。
馬鹿にされた不愉快を滲ませながら、ストローでコーラをすすった。
「怜奈、そんなんじゃない」
「いや、そーでしょ」
セミロングの少し茶髪がかった黒髪で白っぽい服装が印象的の怜奈に指摘されて何も言い返せなかった夕夏を余所に二人は続けた。
「たしかに、そーだよね、綾乃もでしょ」
「そろそろ、彼氏が欲しいかな」
「二人共、合コンとかやろうって話?まだ彼氏は良いよ、あたしは」
怜奈に寂しいね、とからかわれる。しかし、飽きた事実は変わりない。
特別で変わった日常が欲しい、と心底夕夏は願った。
すると、空から彼女等の元に一枚の紙が落ちてきた。
テーブルの上に置かれた紙。
カフェの室内なのに何処からともなく落ちてきた紙に三人は恐怖心で硬直する。
しかし、夕夏だけ好奇心で。
「読んでみよ………カーニバル」
内容は真夜中の午前零時にカーニバルをする、という事だ。
紙も華やかで明るく楽しげなイラストが描かれて、その癖、何処か殺風景だった。
二人に行く事を提案した。
しかし、何処からか現れた不気味な紙にすっかり怯えた様子の彼女等は拒絶する。
けども、夕夏の説得で次第に興味を持った二人も遂に承諾してしまった。
そして、午前零時まで遊びまくる為、カフェを後にした。
■
午前零時。街の光は消えない。妖しく夜の姿を照らしている。
対象に駅は終点を迎え、すっかり静まり返っていた。
そんな中、あの三人組が手にした紙に書かれていた地図を頼りに渋谷駅の前を歩いていた。
そこから、数分歩いた処へ何やら派手な色合いのバスが、こちらへと向かってくるのに気が付く。
バスは三人の前で立ち止まり、中から美しい青年が降りてきた。
「こんばんわ、貴女様方が、カーニバルの参加者でございますね」
黙って頷く。
すると妖しく微笑を浮かべた青年が話を紡いだ。
「それでは、中へお入りくださいませ。足元にご注意を」
三人は中へ入り、それぞれ好きな席に座った。最後に青年が運転席に座ってドアが仕舞う。
ドアが仕舞う時、夕夏の胸が痛んだ気がした。
バスが動く。不思議と三人は黙ったままだった。
訳が分からないけど、とても話す気分ではなかったのだ。
窓を見ると街からどんどんと離れて行く。
急に不安で押し潰されそうになった怜奈が、運転手に口を開いた。
「あ、あの……」
「何でございましょう」
「何処まで、行くつもりなんですか、街から離れてるんですけど…」
街が随分と遠くで光っている。
「ふふ、それは森の入り口近くにカーニバルがございます。ですけど、何も御心配はいりませんよ?ただ人里離れ幻想的な雰囲気を目指して、わざと深い森の近くとしたカーニバルを拓く事にしただけですから…」
そんなの聞いていない。
三人は急に怖くなって帰りたくなった。
いつもなら口煩い親のいる家へ帰る気などなれないのが。
家が恋しく感じるのは、何時頃なのか。夕夏は遠い記憶を思い出していた。
■
家はいつも、ばらばらだった。
父が浮気性で母はいつも献身的に健気で穏やかな苦労性の女性だった。
それを良いことに、父は定職に付かず遊んで暮らしていた。母はそれでも父に尽くし、愚痴一つ言いもしない。
しかし、ある日を境に父が家を出て捨てた。母は初めてそこで本性を現した。そう、父を異常に愛する、狂愛の名の束縛を。
初めて思い知らされた。
父が実は遊んでたのは、母からの束縛に逃れる為だと。そして遂に牙は自分へ向けられ、今度は異常に友人と遊ぶことを制限されてしまった。
だから、反抗をし、今に至る。
ろくに家へ帰らない。たまに帰ると母の質問攻めに遭う。鬱陶しい、目障りだ。
家に帰りたくない————。
■
「お客様方、着きましたよ」
運転手の言葉に前を見た三人は言葉を失った。
艶やかで華やかなカーニバルが、始まっていたからだ。
第一章[美しいカーニバル]
- Re: 孤独と狂気と恐怖のカーニバル ( No.2 )
- 日時: 2011/10/22 16:55
- 名前: 奈緒 ◆xj5aoi8gEM (ID: /iUvxDbR)
—— バスから降りたらカーニバルの会場の門があった。
その前に立っている自分達と同い年くらいの外見。彼女等よりも小柄で儚く華奢な体格で透き通る色白の絶世の美少女が、目の前にいた。黒髪の踵まであるロングヘア、黒地でレースがふんだんとあしらわれたイブニングドレスの姿で。
十字架のネックレスが風に揺られる。網状で黒色の手袋をした手でつかむ黒色の日傘を差しながら、微笑んだ。
「こんばんわ、ようこそ……楽しいカーニバルへ」
恭しくお辞儀し、門の向こうへと腕を差し伸ばし、向こう側へ誘う。
戸惑う彼女等に妖しい微笑みを見せ、指をパチンと鳴らした。
段々と近づいてくる楽しげな音楽、そして華やかなカーニバルの象徴。パレードが彼女らの元へ来る。三人は呆気にとられた。
「さあさあ、始まりますわよ。——カーニバルがね」
高らかな声でそう、宣言した。すると一気にそれ以上の派手で華やかで楽しく陽気な音楽と共にパレードが、始まりを告げた。
■
先程から奇妙な違和感を覚え、夕夏は落ち着かなかった。
他の二人は、まるで気付かない。そんな風にパレードを存分に楽しんでいる。
パレードは絶頂を迎えていた。
しかし、ある事に気付いてしまう。それは観客が自分達しかない事を。他の観客は誰一人、人気とていない。
昼間、自分達に落ちてきた宣伝用紙があるなら他の観客も居て良い筈。そもそもカーニバルが始まるという噂すらなかったのだ。
こんな豪華なカーニバルなると話題になるはずだ。
それなのに気付かずに平凡な日常が飽きたが為、非日常に首を突っ込んでしまった……。
震える声で、やっとの思いで二人を呼んだ———。
「れ、怜奈!綾乃!」
最初に綾乃が振り返った。短い横結びの黒髪が特徴のショートヘアだ。
だけど何か違う。綾乃とは違った雰囲気を醸し出していたのだ。
「……あんた、誰よ………」
—— 訊ねたら、ニタ、と普段の笑顔からかけ離れた嫌な笑みを浮かべた。
「綾乃だよぉ、日堂綾乃(ひどう あやの)だよ。…ねぇ、怜奈?」
「そうだよ、水川怜奈(みなかわ れいな)だよぉ?」
いつの間にか、隣に怜奈がいた。
「そうだよね!田中夕夏(たなか ゆか)!」
フルネームで叫ばれるように呼ばれた。その瞬間、全てを悟ったのだ。
もう、彼女等は夕夏の知っている彼女等では無いのだ、と。
そうなると、彼女等の姿をした彼女等は誰なのか。
疑問が過る。
そうしている内、ニタニタと笑い続ける彼女等が交互に喋った。
「さあさあ、いらっしゃいませ!カーニバルの主役、夕夏様!今宵、全てこの世のあの世の境目に通じ者を見つけ、それを祝福する聖なる夜。数百年に一度、産まれるか産まれぬかの者よ、我等の偉大なる主役!」
高らかな声で歌うように言い上げる怜奈。続いて綾乃も——。
「偉大なる主役よ!今宵、乱れ溺れし欲と悪へ誘わん。不条理で下らぬ世を去りて楽しく魅惑な彼岸へと迎いに来た。怯えず、孤独に生きし、汝の嘆きの涙を喜びの涙に。汝の憂いを晴れ晴れしくさせん」
体が硬直し、背筋が凍りつく。冷や汗が首筋に伝って何処からか吹いてきた冷たい夜風が、彼女の体を包み込んだ。
カーニバルは、始まったばかり。
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