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狂乱少女(第2乱)
日時: 2011/10/25 09:19
名前: 狂った道化師 (ID: MCeIcGNV)

第2乱「いい気味だね?」
 殺人鬼は走る。
右手には血まみれの日本刀、左手には殺した男の生首。
 殺人鬼は嗤う。
大量の返り血を浴びた顔は、歪な笑顔。
 殺人鬼は踊る。
制服のスカートを翻して、生首とともにクルクルと舞う。

「楽しいね?どこかの知らない生首君?夜中にこうして踊るのは、初めてなんだね?」
しかし、両目を白目にして見開いている生首が反応するはずもない。
「…失礼だね?あたしが話しかけているのに、反応しないなんて。君のその歯と舌は、何のためにあるんだね?」
怜の顔からは、気味が悪いほどの笑顔が消えた。代わりに、恐ろしい無表情になった。
「……そう、君は体だけでなく歯も舌もいらないんだね?」
哀れな生首は地面に投げられ、容赦なく口の中に刀が何度も振り落された。

「いい気味だね?」
 
 殺人鬼は帰る。
なぜか虚しい心を落ち着かせるため、砂嵐を聞くため。
 殺人鬼は舐める。
大量に浴びた返り血を、初めから無かったモノにするように。

 あたしは狂ってなんかない。
近所の奴らも、学校の奴らもみんなアホだ。人間を嫌って何が悪い?お前らだって、裏ではさんざん悪口言ってるくせして。
「楠さんってさ、ちょっとおかしいよね?」
煩い。
「ちょっとじゃないよー、アレは。」
煩い煩い。
「あのな、楠。……もうちっと、お前から歩み寄らんか?そんなんじゃいつまでたっても、クラスで孤立したままだぞ?」
煩い煩い煩い。
 あたしは知ってるんだ。お前らの本音を。
ついさっきまでしゃべっていた友達にも、たとえ血がつながっていようとも。
「ねぇ、一緒にトイレ行こ?」
「いいよー。」
(一人で行けよ。)
ほら。
「どう?おいしいでしょ?」
「普通。」
(毒盛ってやろうかしら。)
また。
殺すことを我慢してる。
そんなふうに無理やり自分の気持ちを抑え込んで、我慢して。
あたしから見たら、お前らのほうがよっぽど狂ってる。

そんなんでは、いつか爆発してしまうよ?

 殺人鬼は嘆く。
殺人衝動を抑え込む、人間たちに対して。
 殺人鬼は呆れる。
自分たちのことを棚にあげて、自分を馬鹿にする行為に対して。


 殺人鬼は出かける。
今夜も哀れな人間を殺すために。



第三乱に続きます。

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