ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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   _ ジュゲムとアサギ _   
日時: 2011/10/29 22:05
名前: 海豹 ◆2PnxfuTa8. (ID: MDpJUEHb)





「何でも直してやるよ、俺に直せない物はハッキリ言って無い」
「何度も壊してあげますよ、僕に壊せない物はありませんから」



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破天荒な修理屋と、丁寧な壊し屋のお話です。
感想・アドバイスお待ちしております。




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Re:    _ ジュゲムとアサギ _    ( No.1 )
日時: 2011/10/29 23:09
名前: 海豹 ◆2PnxfuTa8. (ID: MDpJUEHb)





その店は、街でもかなり人気の無い裏通りにある。らしい。
確かな住所は分からない。らしい。
気がついたらそこにある。らしい。


その店は、何でも直せる大柄な男が経営している。らしい。
男は、子供の玩具から国家機密レベルの兵器まで完全に修理できる。らしい。


その店は大柄な男が経営する修理屋が主体だが、店の中にもう1つ、看板は出ていないが店がある。らしい。
その店は、何でも壊せる優男が経営している。らしい。
男は、子供の玩具から国家機密レベルの兵器まで、バラバラに壊せる。らしい。

因みに、直すのも壊すのも、【物】だけじゃない。らしい。


そんな都市伝説がある。今日学校の同級生達が話していたのが聞こえた。
最初は面白い話だな、程度にしか思っていなかった。
実際にあるなら行ってみたいものだが、所詮は都市伝説だ。あるわけがない。


そう思いながら、鞄から音楽プレイヤーを取り出そうとした。つい昨日、やっと買えた最先端の物だ。

しかし、その最先端の音楽プレイヤーはするりと俺の手からすり抜け、地面に落下していった。



外見に特に損傷は見られなかったが、何故か音が流れなくなってしまった。
この安物! ともう1回地面に叩きつけてやろうかと思ったが、顔を上げた瞬間、目の前に、古びた建物が見えた。


≪ 修理屋『寿限無』 ≫と、外れかかった看板が屋根の上に見える。



……こんな店、あったか?




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Re:    _ ジュゲムとアサギ _    ( No.2 )
日時: 2011/11/01 22:38
名前: 海豹 ◆2PnxfuTa8. (ID: MDpJUEHb)





店の前には、太った半笑いの狸の置物が【 何でもすぐに無料で直します!! 】と殴り書かれたダンボールをぶら下げていた。
雰囲気的にも老舗な感じで、見覚えないこと無い筈なのだが。



タイミングに関しては、グッドを通り越してグレートだと思った。
何でもすぐに直せて、しかも無料ならこんなに素晴らしいことは無い。

雰囲気的にも超絶怪しかったが、その時の俺は安物を掴まされた苛立ちで冷静さを失っていた。


とりあえず、入ってみることにした。



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外見は和風なのに、内装は洋風だった。
ドアを押すと一昔前の喫茶店で聞くようなドアベルの音色が鳴った。

まず目に入ってきたのは壁一面に掛かっている時計達だ。
からくり時計、文字盤がローマ数字の時計、大字の時計、大小様々な大きさの時計など、20は超えているだろう。

茶色いカウンターの端には、腰掛けるように置かれている赤色のテディベアが3体。テディベアは可愛らしい物の筈なのだが、あの熊達は何かおぞましかった。

他にも、悪い意味で目を引く置物等が置いてあり、若干この店に入ったことを後悔した。


玄関のお客様用マットの上で直立したまま動けないで居ると、奥の階段から人が降りてくる音が聞こえた。



「あ、すみませんお客様。まだ店主帰ってきてないんですよ」

降りてきたのは栗色の髪をした痩せ型の男性だった。
赤黒チェックのセーターに茶色いジーンズを履いていて、にこりと笑った顔はとても優しく、誠実そうで。
世の中の女子はこういう人をイケメンと呼ぶのだろうな、と思った。


「もうすぐ帰ってくると思いますが……お待ちになりますか?」

どうやらこの店の店員のようだ。
もうすぐ帰ってくるなら、と、待つことにした。


どうぞお座りください、と言われたので、カウンターの前の赤い丸椅子に座る。鞄と他の荷物を足元に置こうとすると、
「お預かりしますよ」と言われたので、預かってもらった。


そして、男性の手に俺のリュックが渡ったところで、ドアベルが激しく鳴り響いた。




「ただいまぁ!!! 疲れたから俺ァ寝んぞ!!!」



驚きすぎて、丸椅子が引っ繰り返りそうになった。




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