ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- オン・インストール
- 日時: 2011/11/03 11:52
- 名前: zero (ID: 08WtmM2w)
初めまして、zeroといいます。オン・インストールに関する感想やコメントを待っています。
どんなコメントでも受け入れるので、まずは!読んでみてください。
〜あらすじ〜
日本で密かに開発され続けていた感情と知能をもった殺人兵器、鐘原狭(かねはらきょう)。
彼は機関に誘拐される前の記憶を全て、削除されていた。
そして、近頃日本や世界で相次いで目撃される異界の魔物たちに彼は理由もなく剣を振る。
自分が生きている理由も知らずに、狭は苦しんでいた。
そんな彼を変えた、兄の存在—
日本を取り巻く物語が始まった。
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- Re: オン・インストール ( No.1 )
- 日時: 2011/11/03 12:24
- 名前: zero (ID: 08WtmM2w)
1、アズ
同じタイミングで息を吐く。
水中で生まれた空気の粒たちは、留まることも許されずに浮上した。
この世界で生きる意味が分からない。ただ、この液体の中にいると、悲しみも、苦しみも、喜びも、解らなかった。
目を開けるとかすかに人影が目の前に現れた。
「気分はどうかね?」
(…誰…だ?)
「いいかい?君の名前はアズだ。もうじき君は最強の見方に、そして「敵」になる。…解ったかい?」
(……)
「よーし、いい子だ。」
男の声が念仏みたいに、響いた。意味など理解できない。
「デリア様。アズの呼吸が一定に達しました。」
黒服を上下にちなんで纏ったデリアの部下は、研究結果の挟まったボードを横から差し出した。
「正常。アズをインストールしてアズ計画を実施するんだ。」
「はっ」
短く、規律正しくデリアに一礼すると、辺りで精密機械を監視していた者たちも一斉に動き出した。
「BBPシステム作動。—0.00025パーセントの誤差を確認。しかし問題はないと推定—インストール開始!」
数々のボタンのなかで、ガラスカバーで覆われていた特殊なボタンを押した。その途端、機械の耳触りな雑音と共に、彼を包みこんでいた特殊な液体が減少し始めた。
(……体が…重い…)
完璧に液体は抜け、彼は外の空気が肌に触れ、ビクリと身震いした。
「インストール…完了。…か、完成したぞ。」
デリアは開封されたガラスの隙間から、そっと彼の腕を掴んだ。
「……っ」
「やあ、君は生まれ変わったんだ。…さぁ、自分の名前を言ってごらん…さぁ!」
デリアは興奮した様にどなり散らしていた。
「……俺は…ア…アズ。」
「そう、君はアズだ。いいかい?君はこれから我々の仲間になるんだ。」
(仲間……)
アズにはここにいる人間全てがおぞましい者と感じていた。
—秘密機関ANO…
- Re: オン・インストール ( No.2 )
- 日時: 2011/11/03 13:10
- 名前: zero (ID: 08WtmM2w)
2、鐘原霧次(きりつぐ)
くそっ、もう弾が無い—!!
強力な軟体モンスターが次々に現れる中、霧次は物陰で膝を着いた。今退散してしまったら、確実に犠牲者が出る。かといって、素手でどうこうできる相手でもない。
この軟体系モンスターが街の中心部に出没したのは、朝方だった。たまたま近くを巡回していた霧次は、すぐにその場に駆けつけることができたのだったが、肝心の仲間の応援はまだ来ていない状況だ。
巡回用に常に持ち歩いているグルニア型の銃は、制度も今一つなのだ。
(敵の弱点は触覚—やはり、応援がくるまでその場しのぎをするか…)
苦渋の決断の末、待っていたあの声がやってきた。
「遅くなったね、霧くん!」
「悪いな、ほれ…」
KADメンバーの涼子(りょうこ)と和平(かずひら)だった。
和平はKAD特注の制服ポケットから予備の弾を霧次にぽいっとなげてそれぞれ攻撃態勢に移った。
「ありがとな、和平。…思ったより行動が早くて助かったよ。」
受け取った弾丸を慣れた手つきでおさめ、礼を言った。
「…敵の弱点はあの触覚だ!俺は周りのザコを倒す、二人は触覚を撃ってください!」
「解った霧くん!」
「おいよ。」
涼子と和平は互いに頷いて、素早く的を絞り、発砲に試みた。
やはり人数は多ければ多いほど軽快に、かつ、迅速に進むものだ。
バンッ…バンッ…バンッ…
銃声は止まらず、次々に敵の弱点に命中してゆく。
KADのメンバーは、霧次(きりつぐ)を含め、みんな専門知識をもち、実績を積んだ者たちが多い。
今隣で接戦を繰り広げている涼子や和平もその中の一人だ。
「止めだぜ!…くらえっ…」
「援護します!!」
ドババババババババババババババババババババ……
グウェアァェェアァァ…!
化け物は断末魔の叫びをあげ、そのまま大きな音をたてて倒れた。
ちょうどそのころ霧次(きりつぐ)も辺りのモンスターを打ち終えたところで、喜びの声をあげて勝利を分かち合った。
「やりましたね、霧くん、和平(かずひら)さん!」
涼子はてへへ…と笑いを浮かべ、銃をしまった。
「おう、やったな。これでこそKADは最強なんだ!」
和平はつれない顔をしていた霧次の肩に腕をのせて、「なぁ?」と聞いた。
「…そう、だな。」
「霧くん、どうかしました?」
涼子に顔を迫られて、霧次はあわてて苦笑した。
「いえ。なんでもありませんよ。…ハハハ」
「変な奴だな、お前。…それより、この場の後片付けは警察がやっといてくれることだしよぉ、話しでもしに飲みにいかねぇか?」
和平はお腹をさすって制服についた汚れを振り払った。
「いいですね、飲みに行きましょうか…私まだ朝御飯食べてないんです…」
霧次も、溜息をついたが、しょうがないとばかりに肩をすくめた。
「今日は俺のおごり…です。」
そのあと二人の歓声が起こったのは言うまでもないだろう…
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