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奪われた日常
日時: 2011/11/06 21:41
名前: 名無 権兵衛 (ID: 3wpMAvcZ)

奪われた日常 作者:名無 権兵衛

中学2年生の駄作ですが、お願いします^^
story№1 あの時の記憶
プロローグ


いつもと変わらぬ週末の土曜日。
その筈だった。
それは真夏の出来事だった。
ジリジリと照るつける日差しが、街を歩く人々のスタミナを奪っていく。
子どもたちが昼食を食べ終え、公園に出て遊ぶ午後1時過ぎ。
高層ビルが立ち並ぶ街の一角から、ただならぬ悲鳴が上がった…。
壁や絨毯に染みつき、黒々とした色の血痕。男の右手に握られた折りたたみ式のナイフから滴り落ちる血が、床に血液の水溜まりをつくった…。すぐそばには、一人の男の身体が横たわっていた。
ピクリとも動かない男を茫然と見つめる少年。
倒れている男の眼球は、エグりとられ、首を切り裂かれ、頭部を突き刺され、この世のものとは思う事の出来ない程の光景だった。
少年は理解出来ずに、ただ恐怖と言う感情に飲み込まれ、ひたすら涙を流した。
血に染まったナイフを持った男と、死んでいる男を交互に見ては泣き叫んだ……。



story№1 あの時の記憶

一人の女性は、いつものように手際よく夕食を作っていた。
女性が料理を作り終え、水道の蛇口を捻り手を洗う。
一部屋に二つは設置されてある監視カメラが女性を撮影し続けた。一瞬女性はカメラに気を取られ、チラリと視線をカメラに向けた。
その為、そばに置いていた包丁に気づかず、肘をぶつけ床へと落としてしまった。
女性が「あっ!」と声を上げると同時に、金属音がキッチンに鳴り響いた。
その時、ただ撮影していただけの監視カメラの映像が何処かに送られていたのだろうか。
包丁を落としてから5分と経たぬ間に、玄関の扉が強引に開けられ、警備員と思われる男が入ってきた。
男は床に落ちている包丁を一目見てから、女性を見る。そして警備員は口元に笑みを浮かばせた。
まるでこの時を心待ちにしていたかのように、警備員は腰から拳銃を取り出し、女性の眉間を躊躇なく撃ちぬいた。
血が飛び散り、女性はピクリと動かなくなりそのまま床に崩れ落ちた。
笑みを浮かべながら、血にまみれた女性の遺体を見つめる警備員。
その時、リビングで母の料理を待っていたのであろう少女が、銃声を聞きつけキッチンに入ってくる。
警備員は舌打ちをした後、顔を無表情へと戻した。
少女はキッチンに入ると同時に目に涙を浮かべ、「お母さん!」と叫んだ。
涙があふれ出し、動かなくなった母の体を何度も揺さぶる少女。しかし母の体は動くはずもない。
少女は怒りに満ち溢れた目つきで警備員を睨みつけると、母の横に落ちていた包丁を拾い、警備員へと向かって行く。
警備員は驚く様な素振りも見せず、もう一度銃を構え、引き金を引いた。
少女は母の隣に倒れ込み、そのまま意識を、そして命を失った…。




2033年7月27日

日に日に暑さ、そして気温は上がり続けてはいたが、この日は異常なほどに暑かった。
雲ひとつない快晴に、さらに暑さが増す。照りつける太陽がより一層暑く感じさせた。
手で顔周辺を仰ぐ者。コンビニの冷えたスポーツドリンクを口に含む者。
道行く女性は皆日傘をさしている。
そんな光景を見ながら、国村 圭一は自身の務め場所。
『成人日常制限法管理部』へと向かった。
向かうまでの間、圭一はある事について考えていた。
昨日一人の女性が”制限された事”以外の行動を行い、射殺されたのだ。
あんな理不尽な法律はいらない…。
圭一はいつの間にかあの日の事を思い浮かべていた。
政府がこの法律を国に発表してからもう13年の月日が流れた。
政府が発表した時の内容は、今でも脳裏に焼きつき、離れない。
完全に記憶し、忘れようとしても忘れる事は出来なかった。
「今国民の日常は、酷く悪影響な方向へと傾き始めている。人として生活するには不必要な日常すらみられる。年々殺人、自殺、大麻所持、薬物依存などの行為は増え続けている。
今や国民の行う事に限りがない。どれもこれも我々政府の目が行き届いていないからである。
よってこれから新たに法律を作りたいと思う。国民の日常の全てにおいて制限いたします。制限された事以外を行った場合、行った人物は即座に射殺されます。
尚、この法律の対象となるのは成人を迎えた二十歳の国民です。二十歳の国民は四十歳になるまでの20年間がこの法律の対象となります。気をつけて行動してください」
この言葉は、発表後国民から数多くの批判を受け、2020年の総理大臣、加藤洋平は当然ながら総理を辞任。
その後新たな総理が決まったものの、この法律は承認され、翌年には『成人日常制限法』と言う名前まで作られた。
法律は初めのうちは元々あった今までの法律に基づき、しっかりとした内容の制限を行われていた。
そのまま10年間、日本は殺人、大麻所持、薬物によるものなどが極限に減り、平和な国であった。
しかし、10年間と言う長い月日が流れ、3年前、遂に総理が変わった。
それからだ。この国がおかしくなったのは…。
新たになった総理の名は伊藤銀司。この男が日本を狂わせた。
制限の内容が変貌し、今では水道の蛇口を捻ってはいけない、ある人は床に物を置いてはいけない、ある者は包丁を落としてはいけないなど理不尽極まりないものだった…。
「こんな世界…狂ってる…」
圭一は怒りに満ち溢れた言葉を小さく呟いた…。

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Re: 奪われた日常 ( No.1 )
日時: 2011/11/06 22:39
名前: 名無 権兵衛 (ID: 3wpMAvcZ)

こんな世界…狂ってる…。圭一は口癖のように毎日そう呟きながら成人日常制限法管理部へと出社した。
同僚の名倉竜輝の姿が目に入り、気持ちを切り替え圭一は「よう」と手を上げ、軽くあいさつした。
名倉も「よう」と右手をあげ、圭一は名倉の隣の席に腰を下ろした。
社内は涼しく、先程までの暑さがまるで嘘の様だ。
圭一はかいていた汗をタオルで拭い、その後目の前のモニターに目を移した。
モニターは4分割されており、一つ一つの画面に人が映されていた。
画面の右下には、文字が書いてある。
圭一の仕事は、各家庭に設置された監視カメラを通し、あの”例の法律”の対象となっている人物を監視する事だ。
ただ監視する。そして制限された事以外の行動を行った人物がいた場合、すぐさま政府に雇われた特別警備員へと連絡する。たったそれだけが仕事の内容だった。
仕事の内容は簡単だが、その仕事の辛さは相当なものである。
何と言っても、自分の連絡により人が殺されるのだ。
人殺しと言っても過言ではない。この職に就いている者の心情は皆同じだった。
圭一もほかの人間同様、このモニターを見るたびに、死んでいった人間の顔が鮮明に浮かんだ。
そして胸が抑えつけられ圧迫される様に苦しくなる。初めの内は呼吸が乱れ息をすることすら苦しかった。
特に圭一の様に優しい性格の者には辛すぎる仕事だった…。
その時、突如天井につけてあったランプが赤く光った。
「これは…」
圭一は呟く。これは誰かが制限外の行動を行い、特別警備員に報告した時に起こるものだった。
無意識の内に隣を見る圭一。
報告したのは名倉だった。圭一は怒りと言う感情に支配されそうになる。
しかし圭一自身、昨日に一人の女性を通報し、殺しの報告を行ったのだ。張り裂けそうになる胸を押さえながら通報のボタンを押した事は、言うまでもない。
名倉も同じ気持ちなのだろう。怒りはいつの間にか恐怖へと変わった。
ランプが止まると同時に、天井から特別大きなモニターが降ろされ、そこに通報された人の姿が映し出される。
30代後半くらいの男性だった。画面の右端から警備員の姿が現れる。
圭一は目を逸らしたかった。しかし目を逸らせば自分自身も殺される。デスクに設置されたカメラが常に我々の表情を本部に送っているのだ。
成人日常制限法第2条に、『政府側の人間たるもの、違法者の結末を見届けなければならない』など馬鹿げた法律があるからだ。
もしも人が銃殺される姿を見届けなければ、自分自身も銃殺される。
それはもはや政府側も一般人側も関係ない。『国』による圧倒的恐怖による支配だったのだ。
圭一は瞬きもせずモニターを見つめた。警備員が銃を構え、銃口を男に向ける。
男の悲鳴と銃声が重なり、血が飛び散った。
監視カメラにも血が付着し、一部見えなくなったが、崩れ落ちる男の遺体が圭一の目に焼きついた。
あまりにも惨い光景。圭一を含め、職場の人間は眼を逸らしたくても逸らせない辛い光景をただ見つめるしかなかった…。


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