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異常者《血》
日時: 2011/11/18 18:19
名前: 乙華 (ID: xPtJmUl6)

いつからだろう?

僕が、僕の頭をおかしいと思い始めたのは。

いつからだろう?

僕という〝人間〟が、他の〝人間〟と違っていると気づいたのは。

いつからだろう?

僕がーーーーーー『血』を好きになり始めたのは。

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Re: 異常者《血》 ( No.1 )
日時: 2011/12/22 15:46
名前: 乙華 (ID: rKVc2nvw)

「××君。今日一緒に帰ろう?」
鳴呼、目障りだ。僕の前から今すぐ消え去って欲しい。
僕の心地よい妄想の時間を邪魔しないで欲しい。
できればその滑らかで白い肌を、僕の手で血まみれにして・・・
「ねぇ。帰ろぉーよ!!私、一緒に行ってくれないと、ずーっと待ってるからね!?」
道具は何がいいだろう?斧か。鋏か。剃刀か。始めてだろうから、なるべく優しく壊してあげよう。どこの部分がいいのかな?
長くてスラリとした脚からか。それとも、家事をした事がなさそうな指からか・・・
「ねぇねぇっ!?聞いてるぅ?よるの話聞いてよぉ!!××君!?」
あー。好い加減イラついてきたかも。くるくるで茶色の髪を鷲掴みにして、机に思いきりぶつけてやりたくなる。そうすれば、このうるさい口も静かになる事だろう。
「・・・・・よると、喋りたくないの?帰りたくないの?」
彼女の声が、泣く寸前になる。教室に残って、僕らのやり取りを見ていた
クラスメイト達が、一斉に冷やかし始めた。
『一緒に帰ってあげろよ!!』
『お熱いね〜!?』
『よっ!!痴話喧嘩っ!!!』
それを聞いた彼女が照れたように髪をいじり、僕の顔を覗き込む。
笑っている、僕の顔を。
「ねぇ、痴話喧嘩だってぇ・・・・。恥ずかしいね?」
「ははっ。恥ずかしくなんかないよ?僕らは付き合ってるんだし?」
さっきまで泣きそうだったくせに、僕の一言でコロリと表情を変えるよる。女って言うのは、本当に操作が簡単だ。勿論、このクラスの奴等も。
「ねぇ、チューして?」
「よる、皆が見てるよ?」
「いいの。だって、××君にならなんだってして貰いたいもん//////」
ハァ。僕は内心溜息を吐く。答えになってないし、第一僕はしてあげたくない。しかしこのクラスで、ある程度の中を保って行く為には、キスしてあげた方が印象的にいいだろうと考え直す。僕は頬をほんのりと染め、期待に満ちた目を向けてくる彼女に、彼女の柔らかい唇に、自らのそれを重ねた。
「全く。よるは甘えん坊だよね。昔と全く変わって無いよ?」
「だって、あの時から、好きだったんだもん!」
そう。僕とついさっきキスをしたのは、僕の幼馴染だ。
あの時から、この性格の片鱗を覗かしていた。両親同士が中が良く、彼女に告られてからすぐに、母に付き合ってあげなさいなどと言われた。あの時の腹ただしさは、今も時々思い出す。言われた日の夜など、四人の女の血を流す事になってしまった。あの赤さは綺麗で見惚れてしまったが。
『ヒューっ!!かっこええ〜!!』
『よくやったっ』
「ビューてフォー』
『おまっ、発音ちがくねぇ?』
僕は興奮する彼等に"笑顔"で手を降り、よるをつれて教室を後にした。











Re: 異常者《血》 ( No.2 )
日時: 2011/12/24 10:41
名前: 乙華 (ID: rKVc2nvw)

「ねぇ、私の家によっていかなぁい?」
「いや、いいよ。僕は今日、ちょっと用事があるから」
「えっ・・・・」
クシャっと、彼女の顔が歪む。僕の服の袖を掴み、脚を止めた。
「用事?何の?教えて!」
「いや、別に言うほどの事じゃ無いから。じゃ、時間が無いし、僕は帰るね」
「何処へ?やっぱり、あの噂は本当だったのっ!?あの、むぅと最近仲が良いって」
「…誰がそんな事言ったの?僕と、その子が仲いい何て」
「私の、私の友達が、情報を持ってきてくれて。あの、ゆうみんって言うんだけど。あっ、あだ名だよ?」
「ふぅーん」
ゆうみん・・・、篠原夕美か。あの、デタラメな情報も本当の情報も面白おかしく広める奴。クラスの奴等にかなり人気で、嘘の情報だって皆笑って受け入れていた・・・はずだ。嘘を言われた方は怒ると思うが。
僕が思い出しているのを、よるはどう勘違いしたのか、ぎゅっと抱き付いて来た。
「むぅとは付き合ってるの?それとも、ゆうみんのジョーダン?…本当の事教え、て!」
「夕美が言ったのは、嘘だよ?僕は、よると付き合っているんだから」
「じゃあ、家にも行った事は無いんだね!?」
「うん。無い」
小刻みに震えるよるの体を抱きしめてやれば、よるはしゃくり上げた。
「う、嘘だよ…」
「何でそう思うの?」
「だって、××君かっこ良いし。それに、生徒会長もやってる。頭が良くて、運動だって出来る。私なんか…釣り合わない」
「そんな事無い。よるは可愛いよ」
僕は微笑んで言ってやる。ついでに頭も撫でてやった。いつもならここで静かになるのに、今日のよるはよく喋る。
「嘘っ!嘘嘘嘘っっ!!!私より、むぅの方が可愛いよっ!そう思ってる。
そうでしょっ!?本当の事言って。怒らないし、あきらめ、る…から」
本当に諦めてくれるのか?否。こいつは絶対諦めないだろう。それに、何か思いつめている様にも見れる。僕の家にいる"むぅ"には、後で謝るとして 聞いておくか。僕は心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
「よる、いったいどうしたの?よるらしく無いよ?僕に話してごらん。ほら、こっち来て」
僕は近くのベンチに彼女を座らせ、自販機でホットココアを二つ買った。
「はい。温かいよ」
「…ありがとう」
・・・・・・・風で木の葉が揺れる。しばらく経って、彼女が話し出した。
ポツリ、ポツリと。顔を赤くして。
「私、今三年の今泉先輩いるでしょ?その先輩に告られた。付き合って欲しいって」
ふぅーん。良かったじゃん。
「私、今付き合ってて彼氏いるんで、無理です。ごめんなさいって言ったら、いきなり…ぅっっっぅぅっ」
いきなり泣き始めたんで、ハンカチで涙を拭ってやった。ありがとう、と彼女は言って、また喋る。
「いっいきなりっ、キスっして、きてっ!」
「……」
「俺を振ったお前が悪いってっ!私にっ、私の服ぬっ、ぬがされ…されっ」
「もう、いいよ。分かったから。もう、喋らなくていい。ごめんね、嫌な事話させちゃって。辛かったね」
僕はよるを抱きしめて、耳に優しく語りかける。
「大丈夫。それぐらいじゃ、よるを嫌いに何てならないよ。よるは、あんな事されて僕に嫌われた、って思ったんでしょ?大丈夫。大丈夫」
「ごめ、ん、なさっ」
「うん…」
このやり取りは、よるが落ち着くまで行れた。いつもと違っていたのは、
今日が満月だったと言う事と、僕の声が、冷たかった事。
よるを慰める僕の顔が、無表情だったと言う事。
僕はよるを家まで送り、むぅが待つ自分の家へと向かった。



Re: 異常者《血》 ( No.3 )
日時: 2011/12/24 13:45
名前: 乙華 (ID: c1MPgv6i)

「ただいまぁ〜」
「ちょっと、あんた。可愛い女の子が待ってるけど・・・・。まさか浮気じゃ無いでしょうね?よるちゃんを泣かせたら、お母さん承知しないわよ?」
「そーだよ…お兄ちゃん…可哀想…」
玄関に入ったら、いきなり母親と妹が出てきた。母親の方は怒った様に。
妹の方は心配そうに。
「こんな遅くまで何処言ってたの?」
「お母さん、心配して…た…」
「ごめんごめん。よるといたんだ」
泣いた事は伏せて置く。めんどくさいから。
「じゃあ、僕は部屋に行くから」
「お茶、持って言った方が良いかしら?」
「大丈夫!いらないから。それと、しばらく僕の部屋には近寄らないでね」
笑顔で駄目押しして置いた。二人とも、付いてきたから。
二階の僕の部屋にはいると、むぅが礼儀正しく正座をしていた。
「遅いわ。待ちくたびれた。何して…いいわ。言わないで」
「その無表情、辞めたら?学校の時の笑顔はどーしたの?」
「貴方にだけは言われたく無いわね。貴方も、そんな嘘笑顔辞めたら?」
「…やっぱり分かった?」
今目の前にいる無表情の彼女は、クラスで唯一僕の嘘笑に気づいた
僕の本性までは気づいてないと思うけど、僕が僕本来の顔をしていられるのは、家族でも、クラスの奴等でもなく、彼女だけだった。
「ねぇ、相談していい?」


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