ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- おしろの人魚ひめ
- 日時: 2011/11/27 10:56
- 名前: ぶりぶりくれしん (ID: Hsu/pkT7)
足のラインに沿ってぴったりと張り付く、純白のドレス。
足首まできつく締まり、そこからひらひらと、まるで人魚の尾ひれのように靡く裾。
歩くことも出来ず、ただ自由に泳ぎ出したいと願うわたしは、窓から見える海にそっと願いを落とした。月を作った海は、黒く、底の見えない未来だ。
そっと目蓋を落とし、傍にいた彼が身体を抱きかかえるのを嬉しく、
そして憎く思いながら、彼の肩に手を添えた。
私は人魚姫。
王子に救ってもらった。
ううん、やっぱり私は人魚姫ではない。
だって声は出ないけれども、人魚姫が果たせなかった王子との結婚が出来るのだから。
幸せだ。
一ヶ月後に行う結婚式を思い浮かべて、私を寝台に寝かす彼と微笑みあった。
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- Re: おしろの人魚ひめ ( No.1 )
- 日時: 2011/11/27 19:08
- 名前: ぶりぶりくれしん (ID: Hsu/pkT7)
遥か下の方から聞こえてくる鶏の鳴き声に目を覚ました。
また何の変哲も無い一日が繰り返されるのだろう。喉を布団から出した温かい手で撫で、それからベッドの横にある棚の上に置いてあった呼び出し鈴を鳴らした。
ちりん、ちりんと鳴る高い音に頭が痛む。可愛らしい音なのだが、起きたばかりの時に鳴らすのは得策では無いのかもしれない。
花や鳥の模様が入った金色のベルは、城に呼んだ商業人が偶々持ってきた物で、婚約者の博人さんが何かあった時に丁度良いじゃないか、と言い買ったものだ。
今更ながら、横にあった小さなベルにしておけばよかったと思う。音はこれよりも高いだろうけど、頭に響くほど煩くはないだろうから。
程なくして、ドアをノックする音が鳴り響いた。
「朝食を持って来ました」
古い木のドアが開くと、私専属の使用人の明美さんが朗らかな微笑を湛えながら入ってきた。
「おはようございます。今日はとってもいい天気ですね! きっと空気も美味しいでしょうから、窓を開けませんか?」
こくりと頷くと、明美さんは「中は日光で温かいのですが、外の空気は少し冷たいので寒くなったら言ってくださいね」と言いながら両開きの窓を外へと開け放った。
冷たい寒気がすっと入り込んできた。中と外の温度差の違いに少し驚きつつ、冬が来たんだな、と上半身を起こした。
「今日の朝食は何処で食べますか?」
窓際を指すと、明美さんは「はい」と頷き廊下に置いてある朝食を取りに行った。
その間に布団を捲って足を折り曲げて三角座りになり、ベッドの端に座るようにした。
私は寝る時も、起きている時もドレスを着たままだ。つまり、四六時中足首を拘束されているということで、歩けないのだ。入浴時はさすがにドレスを脱ぐけど、博人さんから足を動かさないように言われているので、極力動かさないようにしている。
けれども、毎日足を拘束され動かさない為か、入浴時に悪戯心と好奇心で動かそうとした時、上手く足が動かず、動きは微々たるものだった。予想していたことだったけれど、少し悲しくなったのを覚えている。
このままでは本当に人魚になってしまう気がしたけれど、このままでいいと、傍観者のように言い聞かせている。
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