PR
ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 咲いて咲いたよ 紅い華
- 日時: 2011/11/29 00:01
- 名前: ask (ID: C2RbzxDw)
真っ暗で、どこまでもどこまでも続く道に
紅い華が咲いている。
地獄の案内人はその華を容易く手折り、自分の影より出でる漆黒の手に渡す。
漆黒の手はそれを受け取り音もなく動き闇の奥へと消えていった。
賽の河原には今、彼岸が訪れている。
地獄の案内人は、この季節が大好きだ。真っ暗な道の中に、透明な水がまるで天の川の様にさらさらと流れている。その周りをまるで、血を零したかのように鮮やかな紅が覆っている・・・。
地獄の案内人はその光景に幼い時から感動し、親の目を盗んではよく水辺まで行き 紅い華を摘んだ。
大人になっても何も変わらず、こうして彼岸になると仕事をさぼり華を摘む。
影から出でた漆黒の手は、自分の足元でゆらゆらと揺らめいている。
地獄の案内人は、歩を進める。
それに倣い、漆黒の手もゆらゆらと移動をする。
しゃがんで、水の中に手を入れる。冷たさを感じる。
白の絵の具で塗りつぶしたかの様に白い肌を、冷たく透き通った水が撫でていく。
ふ、と視線をあげると川上から一輪の紅い華が流れてくるのが見えた。
拾い上げようとするも届かず、華は すぅっ、と流れ落ちていった。
人の命の重さを、誰より知っている。人の命の儚さを、だれより知っている。
だからこそ、その華が流れ落ちていく様が人の死に際のように見えて・・・
地獄の案内人は、漆黒の手に支えられながら
真っ赤な涙を、静かに零した。
Page:1
PR