ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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リタイア
日時: 2011/12/03 11:08
名前: 種〜ズ (ID: yqB.sJMY)


登場人物



僕/リュウ

 高校生 イケメンという部類に入る
 何を考えているのか分からない人


ココロ

 高校生 美人という部類に入る
 リュウより年下 惚れやすい性格


桃子ももこ

 美大学生 絵を描くことが好き
 死体の絵を描いてみたいという変な人
 人の名前を覚えるのが苦手


ツバサ

 社会に出ていない社会人 意外と若い
 彼女が亡くなった
 家ではネットをしている


日向(ひなた)

 女子中学生 常識人
 真面目な性格で気が強い
 両親が不仲


マシュウ

 リュウと同い年 不登校男子
 同性愛の気があり援助交際をしている
 

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Re: はろー、ばいばい ( No.1 )
日時: 2011/11/30 18:16
名前: 種〜ズ (ID: yqB.sJMY)



序章



 僕が死んでも、きっと世界は、このままだ。

 
 僕を生み出した者に 「死ね」 と言われたら、僕は死ぬしかないんだろうか。

 物にはなんでも、製造者がいると気づいたのは、小学生の頃だった。
 使っているシャーペンとか、教科書とか。
 必ず物は作られていて、そして、それを使う使用者と、壊す破壊者がいる。

 それは、人間にも当てはまると思った。

 いやらしい男女の絡み合いの結果が形になって、この世界に生まれた僕らは、僕ら自身を使う使用者となる。
 破壊者はどこにいるんだろうと思ったけど、僕ら自身を壊すのは、いつだって人間だった。


「アンタって何のために生きてるのか、わかんないよね」


 僕の心に傷をつけたのは、数年前のあの言葉。


「死んでくれたらよかったのに」


 僕の心を引き裂いたのは、ついさっき。 酔った母親から吐き出しされた、小さな小さな本音だった。

 傷を抉って、指先と爪で大雑把に裂かれた心は、痛みではなく、空虚な悲しさを作り上げた。
 悲しいけれど、涙は出なくて。
 もうこうなったら、僕の生きる意味はどこにも無いのだとわかると。

 生きることが、面倒くさくなって。



「人生を、リタイアしたいです」


 気づけば、僕は。

 自殺願望者の集まるサイト、「リタイア」に入り浸るようになっていた。









                    リュウさんが 入室しました

Re: はろー、ばいばい ( No.2 )
日時: 2011/11/30 18:46
名前: 種〜ズ (ID: yqB.sJMY)


第1章
〜淡々と〜



 秋も終わり、居心地の良かった気温が一気に寒くなった。

 学校の制服もコート着用が許可され、マフラーや手袋などの防寒具を着用する人も多くなった。

 登校中の高校生が自転車で通る公園に、僕は堂々とサボリを決め込んでいる。
 誰もいない、しんみりとした公園のベンチに腰掛けている。
 こうして視野を狭めると、世界も多少はいいもんだと思えるんだけど。

「ぬがー。 さみっ」

 元々冷え性なのに加えて、この風の冷たさだから、かなり寒い。
 携帯の画面を見て、今がちょうど8時だと知る。 ……そろそろか。
 
 待ち合わせ時刻が8時だとすると、今砂場の辺りを歩いてこっちに来る子が、そうなんだろうな。



「ココロさん?」



 これは断じてナンパじゃないと自分に言い聞かせながら、声をかける。

 華奢な体が少し震えて、その女子高生が顔をあげた。
 めちゃくちゃ美人さんだった。

「……リュウさんですかぁ?」

 舌足らずな声でさえ、イラッとこない。それほどまでに顔立ちが整いすぎている彼女は、ジロジロと僕の顔を見てくる。
 そんなにいい男でもないだろうに。

「そうだけど……何で分かったの?」
「ココロが想像していた顔と同じだったも〜ん。 カッチョいいよっ」
「はあ……どうも」

 チャットで話したのとだいぶ雰囲気が違う。
 頬をサクラ色に染め、短すぎるスカートから覗く足を、寒そうにこすりあわせている。
 茶色に染めている髪は腰まであり、イマドキの子という匂いがプンプンする。 現に、香水っぽい匂いするし。

「で、他の皆とはどこで待ち合わせだったっけ?」
「隣町。 通行手段が電車しかないから。 ほら、駅まで行こう」
「はーい」

 ふわふわした声と、冷たかった手に触れる体温。
 驚いて視線を落とすと、ココロが僕と手を繋いでいた。

「きみ、今から何をしに行くかわかってんの?」
「わかってるよ? そのための、集まりデショ?」

 無邪気に笑う顔。
 その瞳が、邪気な感情を持っていると、誰が気づくだろう。



僕らは、これから、死にに行く。



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