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- おや、す、み
- 日時: 2011/12/01 22:37
- 名前: ask (ID: C2RbzxDw)
おや、す、み
「・・・」
静かに、朝が訪れる。カーテンの隙間から射す日光が目を刺激する。
「お、はよ、う」
乾いた唇を動かして、言葉を紡いだ。
だれにも届かないその言葉は、虚しく室内に木霊した。
睡眠薬がないと眠れない。
一種の精神症だと医師は言うが、実際は違う。と思う。
「今日、はよく寝れた。」
『そう。良かったじゃない。』
朝。風呂上りに主治医に電話する。のが俺の日課。
「2錠服用して・・・1時間後には寝てた、と思う」
『そう、効果はあるみたいね。』
「今までダメだったから・・・嬉しいです」
『あら、そうなの。それは嬉しいわね。』
「・・・はい」
ぐしゃぐしゃと髪を拭きながら台所へと向かい、冷蔵庫に貼り付けたカレンダーに赤ペンで印を付ける。
「次は1週間後・・・ですか」
『診察の事?なら1週間後よ。合ってるわ。』
携帯越しに聞こえる主治医の声は優しく、心が和んでいくのが感じられる。
俺は、中学2年の頃 両親に口では言えない程 凄まじい事をされた。
それから、俺は眠れなくなった。
そんな俺を見るに見かねた祖父母が俺を精神科に連れて行ってくれた。
そこで出会ったのが、今の電話の相手。つまり主治医。
初めは警戒し口を開かずにいたが、何もされないと分かった俺は自分から距離を詰めていった。
それから、俺はこの人と頻繁に連絡をとるようになった。
『それにしても、一昔前より可愛くなった・・・、ちょっとごめんなさい』
携帯越しに聞こえた、男性の声。どうやら医院長の様だ。
『あ、ごめんなさい。今から診察に行かなきゃならないの・・・またお話聞かせてね。それじゃ』
と言って、電話は一方的に切られた。
「・・・」
俺は静かになった携帯を握りしめ、茫然とした。
「おや、す、み・・・」
俺の唇はその言葉を呟いた後に閉じられ
俺は静かに壁にもたれ、そのまま意識を失った。
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